ようやく辿り着いた空島。
早速、ルフィとウタが先陣を切って上陸する。
「すごいすごい! この島、地面が雲で出来てるよ!」
「うほー! フカフカ雲だ!!」
それに続いて、チョッパーとウソップ、そしてビビとカルーが上陸する。
「スゲー! フカフカ
「本当だわ。こんな世界が、空の上にあっただんて……!」
感動する先頭組を眺めるゾロは、落ち着きながらもその光景に驚いていた。
「しかし、たまげたな。まるで夢だ……」
「全くだ。それに、あいつらのハシャギ様ときたら……しかたねえな」
ゾロの言葉を肯定しながらも、サンジは靴を脱いで足のスソを持ち上げた。
「ひゃっほ〜〜う!!!」
「おめェもだよ」
うんざりとため息を吐くゾロの後ろで、ナミの叫び声が聞こえた。
「ジョジョジョ〜〜〜!!!!」
「痛い痛い! ごめんごめんっ!」
空島上陸のための方位磁針となってくれたサウスバードを逃し忘れていたため、訳の分からないところに連れてきやがってと、ナミは攻撃されていた。
一通り復讐を終えると、サウスバードはどこかへと去っていく。
「人が生きてるような場所だ。ここでも生きていけるだろ」
遠くへ消えていくサウスバードを見送って、ナミは懐から地図を取り出した。
「ねえ、航海士さん。スカイピアって……」
ロビンの問いかけに、ナミは頷く。
「ええ。ルフィが見つけた地図にあった名前よ。空から降ってきたガレオン船は二百年前に確かにここに来ていたんだわ」
ナミは甲板の手すりを飛び越えながら、
「あの時は空の世界なんて想像もしなかったけど」
雲の浅瀬に飛び降りたナミは、満面の笑みで両手を広げた。
「ほら、体感しちゃったもの! 疑いようがないわ!」
ナミはウタたちの元へ走りながら、ぐっと背筋を伸ばした。
「ここなら海軍も追ってこないし、羽を伸ばせるわね!」
「確かに! 歌も気持ちよく歌えそう!」
「カルー! 私たちも遊びましょう! あなたも羽根を伸ばさないと!」
「クエ〜っ!」
雲の砂浜で、カルーはパタパタと羽根を振って水浴びをして、ビビはカルーの体を雲の海で流し始める。
その横で、ウタは砂浜に生えているヤシの木を指差した。
「ルフィ! 実がなってるよ!」
「ほんとだ! 食えるかなぁ〜」
ルフィは実を一つ取ると、そのまま噛みついてみるが、あまりの硬さにルフィの歯が負けてしまっていた。
「何らコレ……?」
「うわぁ。カチカチだね。食べられないやつなのかも……」
「よし、じゃあこの実やるよ、ウソップ!」
「危ねえ! 当たったらどうすんだ、ルフィ!」
ルフィとウソップが、わちゃわちゃと遊んでいる横で、ナミとチョッパーは砂浜に置かれた雲製の椅子に腰掛けていた。
「雲で造形する技術もあるのかしら」
「気持ちいい椅子だけど、フカフカ雲とは別だな! まふっとしてる!」
皆がそれぞれに雲の砂浜を堪能している中で、いち早くその音に気づいたのはウタだった。
ポロロロロン。
ポロロロロン。
「……ハープの音?」
自然が奏でる音ではなく、人が鳴らす音だ。
音の方向へ目を向けると、そこには……
「天使がいるぞ!」
いち早く反応したサンジが、彼女を一言で言い表した。
体格や顔立ちは皆と変わらぬ普通の人間だが、その背中には白い翼があり、髪の毛はチャーミングにまとめられた団子が二つ、触覚のように付いている。
自分たちとは違う世界の人なのだと、信じる他なかった。
彼女は麦わらの一味を一瞥し、穏やかに笑って、
「へそ!!」
「……へそ?」
言葉の意味にわからず首を傾げるウタだが、彼女は笑顔のままこちらへと歩いてくる。
「青海からいらしたんですか? ほら、スーもこっちへ」
「スー!」
彼女の足元を、キツネのような白い四足の動物がちょろちょろと走る。
アリクイのように細長い口は見たことがない。この空島固有の動物なのだろうか。
「おれたち、下から飛んできたんだ。お前、ここに住んでんのか?」
「はい。住人です」
優しく笑いながら、彼女はこの場所の説明をし始めた。
「ここはスカイピアのエンジェルビーチです。……あ、そのコナッシュ、飲みたいんですか?」
ルフィが持っていたカチコチな木の実を手にした彼女は、懐からナイフを取り出してヘタの部分に先端を突き刺してくるりと回す。
「皮は鉄のように硬いから、後ろから飲み口を作るんです。こんな風に」
ストローを刺したコナッシュを受け取ったルフィは、それをちゅ〜っと飲んで、
「んんんんめぇぇえエ〜〜!!!」
あまりの美味しさにルフィの下が波打っていた。想像以上の反応にほんの少しだけ驚いてから、彼女はクスッと笑って白いキツネを抱き抱えた。
「私はコニス。この子は雲キツネのスーです。何かお困りでしたら、力にならせてください」
「ありがたいわ。知らないことと不思議なことでいっぱいなのよ」
「はい。なんでも聞いてください」
笑顔で頷くコニスへ、早速ナミは質問を投げかけようとするが、
「おい、海から何かするぞ!」
いち早く反応したゾロの視線の先には、小型の船のようなものに乗った人影だった。
「あ、父です」
「コニスさん、へそ!!」
「ええ、へそ! 父上!」
「いや、何言ってんだお前ら!」
独特の挨拶にドン引きしているルフィへ向かって、コニスの父親は勢いよくこちらへと向かってくる。
「あの乗り物は何!?」
「ああ、ウェイバーのことですか?」
「あれって、もしかして!」
ナミは思い出したようにルフィへと声をかける。
「あんた、海底からああいうの、持ってこなかった!?」
「ああ、持ってきたな」
「あれがウェイバーだったのよ! ノーランドの日誌で読んだ、風がなくても走る船!」
その言葉に、ウタの髪の毛がピクリと反応した。
「あの船にあったやつが、空島のものなら……!」
ウタは自分の懐から、薄汚れた白い貝を取り出した。
それは、ルフィの壊れたウェイバーと同じく、空から降ってきた巨大ガレオン船に残っていたもの。
そこかしこに穴の空いた不思議な形のこの貝も、もしかしたら空島のものなのかもしれないと思ったのだ。
「まあ、ダイアルをお持ちなんですね!」
「……ダイアル?」
皆が一斉に首を傾げる。
聞き覚えのない単語だ。
「お持ちなのに、ご存知ないのですか?」
「これ、沈没船で拾っただけだから、どういうものなのかは知らないんだよね」
「そうなのですね。では、父と一緒に説明をしましょうか」
コニスはこちらへと向かってくる父親へと視線を移して……
「はい、すいません。止まりますよ」
直後。
ドガァン! とブレーキに失敗して陸に乗り上げ、ヤシの木に突っ込んでようやくコニスの父親は止まった。
「みなさん、お怪我はないですか」
「おめェがどうだよ!」
ゾロにツッコミを入れられたコニスの父親は、パガヤと名乗り、背負った木の皮でできた壺からロブスターを取り出した。
「ちょうど今、漁から帰ってスカイロブスターなどを捕ってきたところなのですが。コニスさん。この方々は……?」
「今、知り合ったんです。青海からいらしたそうで」
「そうですか。それは戸惑うことも多いでしょう。ここは白々海ですいません」
「父上。彼らはダイアルのことを知りたいようなのです」
「ほう。それなら、是非是非このウェイバーで体験してもらいますか」
と、いうわけで……。
「任せたよ、ルフィ!」
「おう。このアクセルを踏めばいいんだな」
本来は一人用のウェイバーに、ルフィとウタは二人で乗っていた。ウタは体重が軽いからとハンドルを握るルフィの腰に手を回し、ワクワクと発進を待つ。
そして、ルフィがアクセルを踏むと、ボンっ! と白い海が飛沫をあげて、ウェイバーが勢いよく進み始める。
「うおおおお! 走ったぞ!」
「すごーい! 本当に、風がなくても走ってる!」
空島の神秘に感動しているルフィとウタだが、すぐにその表情が強張り始める。
「あばばばば!?」
「ど、どうしたのルフィ!? すっごく揺れてるよ!?」
「ゆ、揺れが止まらねえんだ! 舵が上手く取れねえ!」
「大丈夫! ルフィならできるよ、頑張って!」
ルフィのことをぎゅっと抱きしめて、ウタは応援する。しかし、そんな応援も虚しく、ウェイバーは弾け飛び、ルフィとウタは白い海へと投げ出される。
「こけたぞ」
「この上ない大転倒だな」
「やだ。ウタってば、どさくさに紛れてあんなに抱きしめちゃって」
その様子をのんびりと眺めている一味たちは、とあることを思い出す。
「そういや、能力者にこの海はどうなんだろうな……」
「多分、浮かんでこないわよ」
それに答えたのは、ロビンだった。
「白海に上がってきた時、若干の気怠さがあったの。空気が薄いからだと思っていたけど、海の水を浴びたことも要因かもしれないわ」
「ということは……」
「底がないから、早く引き上げないと下に落ちて水面に打ち付けられた衝撃でバラバラになるわね」
「「「急いで引き上げるぞォォ!!」」」
ゾロとサンジとウソップが一斉に海へと飛び込み、ルフィたちの元へと泳ぎ始める。
それを見て、ビビもカルーと目を合わせて、
「私たちも、二人を助けに行くわよ、カルー!」
「クエ〜!」
「お、おれも行くぞ!」
「だからあんたらも能力者でしょうが! 黙って待ってなさい!」
「いてェ〜!!!」
「いたいっ!」
ナミの愛の拳をくらったビビとチョッパーは、二人で手を握ってソワソワしながらルフィとウタの行方を見守る。
そして。
「危ねえな! 下に突き抜ける寸前だったじゃねえか!」
「うるせえな! お前が呑気に眺めてるからじゃねえか!」
ガミガミと文句を言いながら、ゾロとサンジがルフィとウタを引き上げていた。
喧嘩腰の二人へ、パガヤとコニス親子は駆け寄っていく。
「私が初心者にアレを貸してすいません!」
「大変! お怪我はありませんか……!」
砂浜に倒れるルフィとウタを心配そうに見つめる横で、ウソップはウェイバーを引き上げて陸へと引き上げていた。
「それにしても、すげえ乗り物だな、これ」
「これがダイアルを動力にしたウェイバーですいません。船体は動力を活かすためにとても軽く作られていて、小さな波にさえ舵を取られてしまうので、波を予測できるほど海を知っていないと乗りこなせないのです」
「そんなに難しいのか!」
「ええ。私も子供の頃から訓練して、ようやく最近乗れるようになったんですよ」
「一〇年も訓練すれば乗れますよ」
「ものすげえ根気がいるぞ!?」
そんな品物なのかとウソップがドン引きしている横で、ナミがウェイバーの後方に付けられた動力部分を眺める。
「この機械がダイアルってやつなの?」
「はい。正確には、その部分の核となる貝がダイアルです」
「これが風を生み出してるってわけね」
「ふふふ。生み出すのではなく、蓄えたものを放出しているんですよ」
コニスは笑いながら、ダイアルの説明をしてくれた。
ウェイバーの動力として使われているのは「
「他にも、
「じゃあ、これは?」
ウタは沈没船で手に入れたダイアルをコニスに渡した。コニスはそれをまじまじと眺めながら、
「おそらく
コニスはカチっと貝のてっぺんを押すが、何も起こらない。
「これは音を蓄え、放出する貝の一種のはずなのですが、どうやら壊れてしまっているようです。蓄える機能がなくなってしまっているみたいで」
「そっかぁ〜。残念だなぁ」
ウタはがっくりと肩を落としながら壊れてしまった貝のボタンを押して、声を出してみた。
「こんにちは〜〜!!!!!」
ウタの声が、とてつもない大きな声となって辺りに響き渡った。
その場にいた全員が一斉に耳を塞ぎ(間に合わなかったルフィとチョッパーとカルーがあまりの爆音に泡を吹いて気絶している)、声を出したウタ本人も目を丸くしてその轟音に戸惑っていた。
「……なんじゃこりゃ」
不思議な顔をしたウタヘ、耳鳴りに苦しみながら、コニスは声をかけた。
「
コニスの言葉を聞いて、ウタがハッと思い出す。
「蓄える機能が壊れちゃってる……?」
「はい。放出する機能だけが生きていたので、発した声をそのまま大きくしてしまったのでしょう」
「なるほど……それはそれで、あり……?」
壊れたと聞いてがっかりしていたが、どうやら使い道はありそうだ。
大切そうにダイアルをしまっていると、いつの間にかナミがウェイバーの方へと近づいていた。
「あ! 抜け駆けしてる〜!」
「てへ。バレちゃった。ウタも乗る? 一人乗り用だけど、私とウタなら大丈夫じゃないかしら?」
「それより、大丈夫なの? 訓練が必要だって言ってたよ?」
「波を予測できるほどに海を知るまでに十年って、ことでしょ? なら、私の場合は?」
得意げに笑ったナミを見て、ウタは顔を明るくしてウェイバーに飛び乗った。
「任せたよ、ナミ!」
「よし! 行くわよ!」
「なんと……! すごいですね。信じられません……!」
パガヤが驚嘆の声を出し、実際に乗ってみてその難易度を体感しているルフィはあんぐりと口を開けていた。
「確かにコツがいるわね! こんなデリケートな乗り物、あんたには無理よ、ルフィ!」
「残念でした〜!」
「お前が運転してるわけじゃねえだろ、ウタ!」
「べ〜! 負け惜しみィ〜!」
舌を出して挑発するウタを乗せて、ナミはウェイバーを走らせていく。
その背中へ、ビビが声をかけた。
「ウタ! パガヤさんとコニスさんが、家に招待してくださっているの! 早く戻ってきてね!」
「分かった! もうちょっとしたら後から行くから、先に行ってて〜!」
「ええ! もう少し遊んでから行くわ!」
「気をつけてくださいね〜!」
みんなに手を振って、ナミとウタは二人で雲の海を走っていく。
気持ちの良い風を浴びながら、ウタは大きく腕を広げる。
「本当にすごいね! 風がなくても進むなんて!」
「ええ、夢みたい! 普通の海でも使えるなら、手に入れて帰りたいわね!」
二人でワイワイとウェイバーでの航海を満喫していると、ナミがサラッと、
「さっき、ルフィと一緒に乗ってたときは積極的だったわね?」
「ほえあっ!?!? な、なに急に!」
「あれだけギュッて抱きしめてるのを、私が見逃すと思う?」
「あれはそういうのじゃないから! 普通に危ないから捕まってただけで……!」
「じゃあ、私の腰にはこんな少ししか手を回してないのはなんでかなぁ〜?」
「運転技術を信頼してるからだってば! もう!」
「あはははっ! はいはい。そういうことにしておいてあげる!」
「もう! この、このっ!」
顔を真っ赤にしながら、ペシペシとナミの背中を叩いてるウタは、どうにか話を逸らそうと周りをキョロキョロと見回して、
「あ、ナミ! あっちに何かあるよ!」
「ん……? 本当だ。っていうか、あれって……」
ナミはそれの光景に、戸惑っていた。
ここは空島。土地も海も雲でできた、空にだけ存在する神秘の島。
そのはずなのだが。
「地面があるわ……!」
強く、分厚く、たくましい大地と、それを土壌にしたドリーやブロギーたちのような巨人族にも引けを取らない巨大な樹。
「すごい大きさ……」
「てっぺんが見えないね……」
「樹齢何年なのかしら。こんなに大きな木、見たことないわ……」
「——!? 待って、ナミ! 誰かいる……!」
ナミたちの後方。
そこには、武器を構えた仮面の……男だろうか(上裸から見える身体的特徴から)。スケートのような形の靴を使って雲の海に立つ彼は、肩に担いだ無機質な筒を構えていて……
「あれ、バズーカじゃ……!」
「いや、違う! あの人が狙ってるのは……!」
ウタはすぐに正面を向いた。
仮面の男が狙っている敵は、大地にいる。
「伏せてっ!」
ナミの頭を掴んで、慌ててその場に座り込む。
直後、ドンッ! と目の前の地面と木々が吹き飛ぶ。
「……!!」
爆発の衝撃で、ナミとウタの皮膚をビリビリと揺らす。
と、舞い上がった砂煙が消えていく中から、声が聞こえた。
「う、うう……!」
「ナミ! 誰かいる!」
血だらけの男が、土地の端に腕をぶら下げて倒れていた。どうやら、まだ息はある。
いち早くその存在に気づいたウタは、目の前の土地へと跳ぼうとするが、
「ま、待って、ウタ! 状況も分からずに行っても、どうなるか……!」
「でも……っ!」
ナミの腕を振り払おうとするウタヘ、男は声を絞り出す。
「助けてくれ! 乗せてくれ! 船に……乗り損、ねたんだ……!」
「分かった! いますぐ……」
「ウタ! ウェイバーは元々一人乗りなのよ! たださえ無理して乗ってるのに、もう一人なんて……!」
「だからって、見捨てられないよ!」
「頼む…………、う、うわ……っ!?」
男が驚いたのは、ウタたちの後ろにいる仮面の男に気づいたからだった。
彼を見つめた男は、小さな呟きを口にして、
「ゲリラ——」
男が言い切る直前、
「何か、来る! お兄さん、今すぐそこから逃げ——」
カッ!!!!!
光の柱だった。
遅れて、爆音と高熱の衝撃波がウタたちを襲う。
「これは……!?」
あまりの眩しさに、目をつぶってしまった二人の後ろで、仮面の男が声を発する。
「くそ、エネルか……! よくもヴァースを……!」
ドンッッ!!!!!
言い切る暇もなく、光の柱がもう一つ。
仮面の男は体をひねって飛び跳ね、紙一重でそれを回避し、海に着地するやいなや、ウェイバーにも劣らぬ速度でどこかへと去っていった。
そして。
「……動かないでよ、ウタ……!!」
助けられなかった血だらけの男の元へ行こうとするウタを必死に押さえつけるナミは、巨木の影に隠れて様子を伺っていた。
どうやら、男が四人。光の柱にやられた血だらけの男を追っていたようで、崩れ落ちた木と大地を眺めながら話しているようだ。
ウタを押さえながらなのでよく聞こえないが、ナミは必死に聞き耳を立てる。
「今の男、誰かと話を……」
「しかし、エネル様はどういうつもりで……」
「時間切れ……」
「青海人九人が不法入国を……」
「アマゾン婆さんから報告が……」
その言葉に、ナミはハッと息を呑む。
「不法入国って、私たちのこと……!? 入国料を払わなかったから……!?」
小さく呟いたナミは、震える指先でウタの口元を押さえ続ける。
「待ってよ。じゃあ、私たちもあの人みたいな攻撃を受ける可能性があるってこと……!?」
ナミはウタから手を離し、ウェイバーのハンドルを握った。
「ウタ。戻るわよ」
「待ってよ、あいつらに一言、言ってやらないと……!」
「ルフィたちが、危険なのかもしれないのよ……!」
「……っ!」
ウタはグッと唇を噛み締めて、上を見上げた。
どこか遠くを見つめて、ウタは呟く。
「分かった。あいつらのことは、あとでにする」
「ありがとう。それじゃあ、すぐに戻るわよ……!」
男たちの目を盗み、ひっそりとナミとウタはルフィたちの元へと進んでいく。
「早く、みんなに知らせないと……! ルフィたちが喧嘩しちゃってたら、あの光の柱でやられちゃうかもしれない……!」
「うん。そうだね……」
「……? どうしたのよ、うわの空で。ウタらしくないわね」
ナミの背中をぎゅっと抱きしめるウタは、空を、さらに上を見つめていた。
「……もっと、上に誰かいる」
「はあ!? ここが空島なのよ!? その上って……」
「分からないけど。嫌な音が聞こえる。私、あの音、嫌い」
「こっちの方が分からないってば! シャキッとしなさい! まずは仲間の心配でしょ!」
「……うん! そうだね、ごめん!」
パン! と頬を叩いて、ウタは前を向く。
「戻ろう! みんなのところに!」
ナミの肩をグッと掴むウタだったが、その胸には言葉にしようのない胸騒ぎがずっと彼女の中で蠢いていた。
第四十一話「遠くからの声」でウタが拾っていた貝の大きさを手で掴める程度のサイズに修正しました。
書いてる最中に懐から取り出せねえやってなっちゃった。