麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

56 / 63
第五十話「VS神官サトリ」

 

 

 

 生け贄としてメリー号ごと連れ去られた仲間たちの元へ向かうため、ウタたちは雲の川(ミルキーウェイ)を進み、祭壇への向かっていた。

 

「コニスは大丈夫かな……」

「きっと大丈夫だよ。空の騎士が付いてるんだもん」

 

 四人と一匹ではいささか窮屈なカラス丸に座り、ゆったりと皆は進んでいく。

 メンバーはウタ、ルフィ、サンジ、ウソップ、それとカルー(ビビは飛んでメリー号を追ったが、カルーは飛べないのでウタサイドになった)。

 

「見ろ、でっけェ森だ!」

「地図には森があるが……こんなにデカくはないぞ……?」

「どうなってんだ……? それに、この入り口は……」

「な、なんか禍々しいね……!」

「クエ……!?」

 

 ウタが見つめる先にあるのは、コニスが言っていたヴァースと呼ばれる像が並び、槍とドクロで装飾された入り口。

 まさしく、生け贄の祭壇へ続く最初の道だろう。

 加えて、ウタたちへの歓迎までしてくれているようで、

 

「ウソップ、アクセルを!」

「お、おう! ルフィ、サンジ! オールで漕げ! 全力だ!」

 

 気配を先に感じ取ったウタとウソップが、強引にボートを先へ進める。

 直後、

 

「うわァ!!??」

 

 ルフィたちが通過したそのすぐ後ろを、巨大な斧のトラップが襲いかかった。

 間一髪。

 だが、危機は終わらない。

 

「思いっっっきり漕げェ〜!!!!」

「ク、クエ〜っ!!!」

 

 オールを漕ぐサンジとウソップ。

 手伝いたいが、持つ手がないために頑張って翼を動かして少しでも先へ進んでくれと涙を流すカルー。

 そして、ルフィはウタにオールを渡して、後方へと向いた。

 

「ゴムゴムの……!」

「え、ルフィ!? 斧を弾くなら前を……!」

「そっちじゃねえ! バズーカっ!!」

 

 ドンっ! と、ルフィは川へと技を放ち、その推進力で前方へとボートを吹き飛ばした。

 強引に斧のトラップ群を抜けたルフィたちだが、その先には更なる壁が迫る。

 

「今度は巨人か!?」

 

 ルフィはそう言ったが、視界に映ったのは石像の顔だ。その首元には四つの入り口があり、それぞれに名前が書かれていた。

 

 玉の試練。

 紐の試練。

 鉄の試練。

 沼の試練。

 

 このうち、通ることができるのは一つだけ。

 すぐに声を上げたのはルフィだった。

 

「よし、玉の試練にしよう! 楽しそうだ!」

「そうだね! 弾むような響き、嫌いじゃないかも!」

「どれでも試練なら変わんねえだろ!」

「クエっ! クエっ!」

「決まりだな! だが、油断するな。ここは上空一万キロの神の島。何が起こっても不思議じゃねえ」

 

 意を決して、玉の試練へと向かっているルフィたち。

 

「真っ暗だ!」

「結構先まで続いてるみたい!」

「もしかして、ここってハズレだったとかか?」

「クエっ!?」

「ハズレだったら、空島から落ちるとか!」

「バカ言え、落ちてたまるか! 何十週走馬灯を見る気だっての!」

「まったく、そんなわけ……」

 

 サンジが言い切る直前。

 

「は???」

 

 ルフィたちは、宙へと投げ出された。

 

「嘘だろォ!?」

「クエ……」

 

 ついにカルーが気絶し、ウタヘと持たれかかった。

 その身体を押さえながら、ウタは落下の衝撃に備える。

 不幸中の幸いか、落下は崖から落ちる程度で、空島内の雲の川(ミルキーウェイ)に着水した。

 そのまま、ゆったりとルフィたちは大樹の森へと進んでいく。

 

「なんだ、ここは……」

 

 目の前の光景に困惑するサンジの言葉に、ルフィとウタが反応する。

 

「玉?」

「玉だな!」

 

 小さい島雲の玉。

 真っ白でふわふわとした球体が、無数に浮かんでいた。

 さらに、この先の雲の川(ミルキーウェイ)は蛇のように縦横無尽に曲がっており、木の幹の隙間や上を流れている。

 

「これが試練……?」

「もしかして、当たりなんじゃねえか?」

「なんもねえならそれが一番だが……」

 

 ゆったりと、ウタたちは何事もなく先へと進み続ける。

 そのうち、ウタとルフィはじっとしていられなくなって、

 

「へーい! ルフィ、パス!」

「おっし! オーライ!」

「おいルフィ! やることないなら見張ってろ! 敵がいるかもしれねえんだぞ!」

「サンジ! なんでウタには言わねえんだ!」

「男が見張れ! ウタちゃんに余計なことやらせんな!」

「ぶーぶー! 私も仲間にいれてよ、サンジ〜」

「なんでウタちゃんがそっち側回ってんだ!?」

「クエ〜!」

「お、カルーは見張っててくれるよな」

「へい、カルー! パス!」

「クエ〜っ!!」

「オメェも遊ぶんかいっ!!」

 

 ルフィとウタがカルーも交えて呑気に玉遊びを始め、サンジは怒鳴っても無駄だと気付いたのか、うんざりとため息を吐く。

 

「ったく、そんなことしてると痛い目を見……

「「ぎゃあああ!? ヘビが出たァ〜!?」」

「言わんこっちゃねえ!!」

 

 ルフィとウタが遊んでいた玉の中から、獰猛なヘビが飛び出してきたのだ。

 サンジが慌てて玉ごとヘビを蹴飛ばす。

 

「なんなんだ!? この玉、もしかして全部ヘビの巣なのか!?」

「あ、ルフィ! 後ろに玉が来てるよ!」

「よぉし、ぶっ飛ばす!」

 

 そして、ルフィは玉を殴りつけて、

 

 ドゴァァン!!

 

 勢いよく爆発した。

 

「どうなってんだこの玉はァ〜!!」

 

 叫び声をあげる一同。

 その言葉たちに返事をしたのは、聞き覚えのない声だった。

 

「ほーーーうほうほう! それはびっくり雲! 何が出るかはお楽しみの玉の試練だ! ほっほほう!」

「なんだ! お前が玉の試練か!?」

「そのとおーり! おれはサトリ! 全能なる(ゴッド)エネルに仕える神官が一人! この迷いの森のヴァースを掌っている!」

 

 堂々と名乗りを上げたサトリだが、一味に怖気付く様子は微塵もない。

 

「迷いの森?」

「そう、この森のことさ!」

 

 サトリは大きく手を広げて、

 

「この森の雲の川(ミルキーウェイ)は、やがて生け贄の祭壇へ続く一本の出口へと繋がる。それまでにおれの攻撃とびっくり雲が襲いかかる! 生き残れる確率は10パーセント! ようこそ、禁断の地、神の島(アッパーヤード)へ! そして、玉の試練へ!!!」

 

 これが、ウタたちに課せられた試練。

 長い説明があったが、簡単に言えば。

 

「ようは、お前をぶっ倒して船に乗ってれば仲間のところに着くんだな!?」

「その通りだよ、ルフィ! やろう!」

 

 やることは決まった。

 神官サトリの撃破。それだけだ。

 即座に構えたのは、ルフィだった。

 

「ゴムゴムの……」

 

 ルフィが腕を引いた瞬間、ウタは違和感を覚えた。

 

「ほう、伸びるのか……」

「……え?」

(ピストル)!!」

 

 ルフィのパンチは、いともたやすくかわされてしまった。

 まるで、どんな攻撃がくるのかを知っていたかのように。

 

「アイイイイ!!」

 

 ドォゥン!! と。

 サトリがルフィへ掌底打ちをした瞬間、凄まじい音が響き、その身体が吹き飛んだ。

 

「ルフィ!?」

 

 打撃が効かないゴムのはずなのに。

 その攻撃は、間違いなくルフィへとダメージを与えていた。

 

「どうして!? ただの打撃がルフィに効くなんて……!」

「打撃……? 少し違うな」

 

 即座に追撃をするのはサンジ。

 だが、

 

「ほっほう。右足の上段蹴り……!」

首肉(コリエ)……何!?」

 

 サンジの攻撃もかわされ、ルフィと同じ掌底がサンジの頭を弾く。

 

「修行者にのみ授けられる力は心網(マントラ)……! その狙撃も、わかってるぞ!」

「火炎星……ッ!」

 

 ウソップの狙いを済ました狙撃も当たらず、即座に反撃をくらう。

 

「ウソップ!」

「お前は攻撃してこないのか!」

「なっ……!?」

 

 今度の狙いはウタだ。

 問答無用で、サトリの手のひらがウタへ向かう。

 

「——くっ!」

「アイイイイ!」

 

 ドゴァ! とウタが衝撃を受けて吹き飛ぶ。

 大樹の幹に身体が打ち付けられたウタだが、ダメージ自体は少ない。

 

(ギリギリ腕を硬くして防御できたけど……! この人やっぱり、()()()()()()()()()()()……!!)

 

 ウタの『聞く力』よりも、サトリのいう心網(マントラ)の方が、現状は上だ。

 このままでは、こちらの攻撃は当たらず、玉に翻弄される中でルフィにも効く打撃をくらってしまう。

 

「さて、次の一匹は……?」

「クエ……!?」

 

 サトリが次に見たのは、大樹の影に隠れて震えているカルー。

 迫るサトリを見て、カルーはぶんぶんと首を振る。

 

「……まぁ、鳥はいいか」

「クエ!?」

 

 敵とすら認識されてないことはさすがに嫌なのか、カルーは意を決して前へ進みだすが、

 

「おれが手を出すまでもないってだけだぞ」

 

 サトリが指差したのは、カルーの横でふわふわと浮いている雲の玉。それが、走り出したカルーにコツンと当たり、ドン! と爆発した。

 

「カルー!!」

「……ク、エ……!」

 

 このままでは、有効打がないまま戦うことになる。

 頭を必死に回すウタだが、その間にルフィはサトリへと突っ込んでいた。

 

「あの玉のやつは、おれが仕留める! ゴムゴムの……バズーカ!」

「ほっほう! 当たらないぜ! それに、いいのか? そんな無闇に攻撃をして」

「ルフィ! 外れた攻撃で玉が跳ね返ってる!」

「お、おおお!?」

 

 ルフィのバズーカはビリヤードのように玉を弾き、それがさまざまな攻撃となってルフィたちへ襲いかかる。

 炎や武器や動物が続々と飛び出し、ウソップやサンジが必死に避ける。

 

(単純な攻撃は当たらない……! こうなったら、歌って……!)

 

 幸いにも、相手はサトリ一人だけ。

 それならば、歌で眠らせてその隙に船に乗って逃げればそれでいい。

 ウタは深く息を吸って、

 

「——この風は

「おい、その歌! なんかヤバいな!?」

 

 即座にサトリはウタの歌の脅威に気付いた。ルフィたちの相手を止めて、強引にウタヘと距離を詰める。

 

「……ぐ……ぁ」

「危なかった。なんだかよく分からねえが、その歌を聴いたあとに負ける予感がした……! なんなんだ、お前……!!」

 

 ワンフレーズも歌うことができず、サトリはウタの首を掴んで持ち上げた。

 声が出すことができなければ、ウタワールドへ引き込むことなどできない。

 

「ウタァ!」

「ほっほう! お前らの攻撃もわかってるぞ!」

 

 反射的にパンチを繰り出すルフィ。

 そして、ウタは首を絞められた状態でできる唯一の抵抗を行っていた。

 

「は、な……して、よ……!!」

 

 バチン! と、黒い火花が散る。

 体力をかなり消耗してしまうが、仕方がない。

 この『睨みつけ』で少しでも怯んでくれれば、それだけで御の字だ。

 だが、

 

「ほっほう!! 青海人にしては鋭い威圧感だな!」

(——効かない!!)

 

 分かってはいたことだ。

 ある程度の精神力を持つ相手には、ウタの『睨みつけ』は通用しない。そこらへんの下っ端ならば余裕だろうが、ウタよりも鋭敏に気配を読み取ることのできる精神を持つサトリが、この程度で怯むわけがない。

 

「ウタから手を離せェ!!」

 

 横から、ルフィの声が聞こえる。

 視界には捉えられないが、おそらくパンチを繰り出そうとしているのだろう。

 しかし、きっと通じない。

 攻撃は必ず避けられる。相手の予想を超える攻撃じゃないと、サトリは倒せない。

 

「ほっほう! お前のパンチなんて簡単に見切って——」

「ゴムゴムの(ピストル)!!」

「ゴブファ!?!?!?」

 

 ルフィの攻撃がサトリの顔面をとらえ、木の幹へとぶっ飛ばした。

 ウタは喉を掴まれて詰まっていた息を吐き出して、目の前の光景を眺める。

 

「すごいよ、ルフィ! どうやって当てたの!?」

「ん? 普通に殴っただけだぞ?」

「……あれぇ?」

 

 ルフィとウタは目を合わせながらお互いに不思議そうに首を傾げる。

 と、後ろでサトリはゆっくりと腰を上げて、

 

「なんなんだ……? 今、心網(マントラ)が乱れた……! 集中が欠けたのか……!? いや、そんなことはないはず……!」

 

 何かをぶつぶつと呟いているサトリ。

 どうやら、彼のいう心網(マントラ)が機能しなかったようだ。だから、ルフィの攻撃を予測できず、くらってしまった。

 しかし、その理由は誰にも分からない。

 

「ウタ、大丈夫か!」

「ウタちゃん! すまねえ、遅くなった!」

 

 ワンテンポ遅れて、ウソップとサンジがウタの元へやってきた。

 

「へっ! あいつ、ルフィのパンチが当たって動揺してやがる! 今がチャンスだ!」

 

 すぐさま、追いうちのパチンコをウソップが放つが、それはいとも容易く回避される。

 

「なんでおれの弾は避けんだよ!」

「ほっほーう! 少し心網(マントラ)が乱れただけで、お前の弾を避けることなんて簡単だ!」

「クソっ! おれの『目』じゃあ、あいつを狙いきれない!」

「大丈夫だよ、ウソップ! ヤソップは、どんな敵にだって狙えば必ず当たったんだから!」

 

 そう、当たるはずなのだ。

 だが、それにはサトリよりも優れた先読みをできるようにこの場で成長しなければならない。

 

「今、おれにできることはなんだ。考えろ、考えろォ〜!」

「今ここで進化だよ、ウソップ! ヤソップが狙っても当てることが出来なかったのは、シャンクスだけ……」

 

 そこで、ウタの思考が何か引っかかった。

 ふと、思ったのだ。

 おそらく、ヤソップは今のウソップよりもずっと先を見る力がある。ウタはずっと、シャンクスがそれよりも先を読んで動いているから当てることができていないのだと思っていた。

 だが、本当にそうなのだろうか。

 ウタが隣で見てきたシャンクスの本当の強さは、そこではなかったはずだ。

 

(もしかして……)

 

 シャンクスはいつだって負けなかった。誰よりも先に動き、誰に予想される前に攻撃を仕掛けていた。

 しかし同時に、相手は皆、意表をつかれたような顔をしていたのだ。

 大海賊時代の猛者たちが、そんなにも慌てることがあるのだろうか。

 

「シャンクスはそもそも、()()()()()()()()()()()()()()……?」

「お前もぶつぶつ言い出してどうしたんだ、ウタ?」

「ルフィ。できるよ、私たち」

 

 ウタの考えが正しいとしたら。

 たとえ今はシャンクスの真似事だとしても。

 

「サトリに、勝てる!」

「何か作戦があるんだな、ウタ!」

「うん! 援護は任せるよ、ウソップ!」

「おう!」

「ルフィとサンジも、私が指示するからその通りに!」

「「りょーかい!」」

 

 一斉に全員が動き始める。

 しかし、サトリに狼狽える様子はない。

 

「ほっほーう! 一気に動いて、おれの心網(マントラ)の裏をかく気か? その程度では、おれの心は乱れないぞ!」

「じゃあ、これならどう! ルフィ!」

「おう! ゴムゴムの……銃乱打(ガトリング)!!!」

 

 ルフィが狙ったのは、サトリではなく、宙に浮く玉だった。周りの玉全てにルフィのパンチが当たり、縦横無尽に玉が暴れ回る。

 さすがのサトリも、この玉を読み切るのは集中力を使うようだ。

 

「狙い通り!」

「こんなものでおれを騙せるかァ!」

 

 サトリの打撃がウタを狙うが、ウタは正面を向いたまま、真っ直ぐにサトリを睨みつけた。

 

 バチバチッ!!!

 黒い火花が散る。

 直後。

 

「——ッ!?」

「必殺、火炎星っ!!」

「うがァ!?」

 

 またしても、サトリに攻撃が当たった。

 もくもくと上がる煙をかき分け、サトリは声を上げる。

 

「何か小細工をしてやがるな! 神の遣いを騙すとは、なんたる侮辱!」

「サンジ、ラスト!」

「任せてくれ、ウタちゃん。コショウを最高のミニョネットに仕上げるために、強く粗く砕ききる……!」

 

 サンジは上へと飛び上がり、大きなタメを作ってグルグルと縦に回る。

 しかし、それだけの大技ならば、この状況のサトリでも避けるのは容易い。

 

「ほっーほっう! それは見えてるぞ! おれを舐めるなよ!」

「そうだよね。あなたには、その程度しか見えてないよね」

「何……!?」

 

 ウタの黒い火花は以前として散っている。つまり、サトリは心網(マントラ)ではなく、ただ普通に目の前にいるサンジの攻撃を見て、避けようとしているだけなのだ。

 つまり、それ以外の予想外には、一切対応する準備ができていない。

 

「クエーッ!!!」

「聞こえてるよ、あなたの勇気も! カルー!」

 

 ドンっ! と。

 力強い全力の突進が、サトリの背中に直撃した。

 そして、その衝撃でバランスを崩し、サンジが描く放物線の先へ。

 

「ま、待て……っ! それは痛い——

粗砕(コンカッセ)!!!!!」

「が、は…………!!」

 

 脳天にサンジの蹴りが直撃したサトリは、力なくその場に崩れ落ちる。身動きはもう取れそうにないが、それでも朦朧と意識は残っていて、

 

「お前たち……! 神官に裁かれないという罪は、第一級犯罪に値する……それはまさしく、全能なる(ゴッド)エネルへの宣戦布告を意味するのだぞ……!?」

「あー、そういうやつ? 別にいいよ」

 

 ウタはケロッと笑って、

 

宣戦布告(それ)はもう、済ませてるから」

 

 ゴン! とウタは最後の一撃の拳をサトリへと叩き込んだ。

 そうして、完全に意識は途絶え、ウタたちは全員で手を合わせる。

 

「私たちの、勝ち!!!」

「クエ〜〜!!」

 

 四人と一匹はカラス丸に乗り込み、迷いの森を抜けて、神の島(アッパーヤード)をひた走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、生け贄の祭壇では。

 

「やめてくれよォ!!! 船だけはやめてくれ!!!」

 

 メリー号は、燃やされていた。

 怪我なく生け贄の祭壇に連れられたナミ、ゾロ、ロビン、チョッパー。

 その中で、ナミ、ゾロ、ロビンの三人が神の島(アッパーヤード)の探索へと出向き、チョッパーが一人で船番をすることになったのだが。

 

「生け贄が勝手に脱走したんだ。本来の裁きの形から外れた場合、それは罪となる。故に、お前が犠牲なのだ」

「ハァ……ハァ……クソォ!」

 

 チョッパーはどうにか戦おうとはしているが、相手は神官シュラ。

 パイロットのような服装とゴーグルに身を包んだ、鋭い目つきと鼻下でピンと伸びる二本の髭が特徴的な男。

 心網(マントラ)によって動きは予測され、(ダイアル)が仕込まれた燃える槍によって船も自分も攻撃される。

 おまけに、口から火を吹く大きな鳥を連れた、空中戦すらこなすのだ。

 チョッパーがたった一人で戦うのには、荷が重い。

 

「お前の命を(ゴッド)に差し出せ!!」

「い、いやだ!!!」

 

 槍を構えて向かってくる神官シュラに対して、チョッパーは決死に拳を構え、殴りかかる。

 しかし、変哲のないパンチが神官に当たるわけもない。

 

「グアアアア!!」

 

 槍がチョッパーの肩に突き刺さり、炎が溢れ出る。

 その痛みにもがき苦しむチョッパーへ、シュラは躊躇いなくトドメの一撃を……

 

獅子牙突(レオーネスラッシャ)!!!」

 

 視界に映ったのは、強靭な爪だった。

 続けて見えたのは、青い毛並みに純白の翼。

 美しい体躯を彩る蒼い炎。

 視線を上げれば。

 そこにあったのは、仲間の顔だった。

 

「ビビィ〜〜!!!!」

 

 超特急エビにチョッパーたちが連れ去られてから、必死に飛行能力で追いかけ続け、ようやく追いついたビビが、シュラの攻撃を間一髪で食い止めた。

 

「私の仲間にも、この船にも、もう傷はつけさせない!」

「不思議な力を持っているな。だが、それだけだろう」

 

 シュラはゴーグルを装着しながら、

 

「わがままを言う奴は、実に腹立たしい」

「あなたがどう思うかなんてどうでもいいわ。みんなを襲うというのなら、私はただ守るだけ」

「……ふむ。どうやら、簡単に勝てる相手ではないようだ」

 

 シュラは大きく手を広げ、叫ぶ。

 

「そこまで言うなら、守ってみろ。おれのこの紐の試練からな」

「ええ、守ってみせるわ」

 

 ビビは鮮やかな青の髪を揺らして、不敵に笑った。

 

「だって私は、守護神だもの」

「あいにくだが、この世界に神は(ゴッド)エネルただ一人だけだ」

 

 直後。

 赤と蒼の炎がぶつかり合った。

 

 




次回、ビビVS神官シュラ!

お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。