麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

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幕間にするには長くなりすぎた上に、内容も本編そのものなので、普通に続きになりました。
改めて書きますが、この作品は「film RED」とも「ONE PIECE本編」とも違う世界線の話になります。
REDとも違う点があり、本編とも違う点があります。
よろしくお願いします。


第五十二話「島の唄」

 

 

 時はビビとチョッパーの元にガン・フォールが駆けつける少し前へと遡る。

 

 ——空島の外れ ガン・フォールのカボチャ畑。

 

 エネルからの裁きを逃れ、遠く離れたガン・フォールの隠れ家で、コニスたちは身を隠していた。

 ポロロン、ポロロンと、ハープの音が響く。

 

「今年は、カボチャの出来が良いのだ」

 

 ガン・フォールは、ジョウロで実りかけのカボチャに水をかけていた。

 その様子を眺めるコニスとパガヤは、まさかエネルが現れる前の先代の神とこのような形で話すことになるとは思ってもいなかっただろう。

 

「なんとお礼を申し上げてよいものか……」

「よい、サービスだ」

 

 言って、ガン・フォールはジョウロを片付け、最近取れたカボチャを使って作ったジュースを二人に手渡す。

 それを受け取ったコニスは、初めて口にするその味に目を見開いた。

 濃厚でどっしりとした味わいなのに、優しい

甘味が舌を撫でる。

 これが、青海人が普段から口にしてる大地(ヴァース)の恵み。

 

「やはり、憧れますね……」

「そうだな。やはり人は、ないものを求める生き物であるからな」

 

 ガン・フォールはそう言って、この空島の歴史を語り始める。

 空の者とシャンディアとの永く止まぬ、何百年にも渡る戦い。

 ガン・フォールはその争いを無くそうと対話での交渉を試みていたが、その志の半ばでエネルが台頭し、全ては振り出しに戻った。

 

「——スカイピアには、古くから伝わるこんな伝説がある」

 

 はるか昔、聖地アッパーヤードが生まれた日。

 島には黄金の歌声が国中に響いたと。

 それは島唄と呼ばれ、それには遠い昔の誰かが綴った歌詞があると。

 

「先ほど、コニスが弾いていたハープの音色も、島唄の一部と言われておる」

「このメロディも……ですか?」

「うむ。残念ながら、空の者には歌詞は伝わっておらんのだ。しかし、このメロディだけは誰かが聴き、覚え、紡がれてきた」

 

 ガン・フォールは、穏やかな顔で。

 

「我輩が二十年以上も前に出会った海賊とも、この話をしたのだ。いつか青海人にも、この歌を届けてほしいと」

「海賊……?」

「青き海を行く犯罪者のことだ。あの麦わらの少年たちも、我輩たち外れ者の仲間よ」

「そう、なんですね」

 

 コニスはポロンとハープを鳴らした。

 寂しげな音色が、カボチャ畑に響く。

 

「ウタさんは、とても歌が上手なようでした。この歌も、伝えればよかったです」

「そうであるな。いつか島の歌声を——島唄を我々が耳にするとき、この戦いは終わると、そう言われておる」

「それが、黄金の音色……」

「うむ。聖地は再び歌に包まれるのだ。きっと、いつかな……」

 

 直後、ピエ〜〜〜!! と甲高いピエールの鳴き声が響く。

 それは、ガン・フォールの預けたホイッスルが鳴らされたことをピエールが聞き取ったという合図。

 ガン・フォールはすぐに兜を被り、ピエールに飛び乗る。

 

「おぬしら! 留守を頼む!」

 

 笛が鳴ったということは、彼らでも困難な敵が現れたということ。

 つまり、神官が本格的に動き出したということだ。

 彼らの力ならば簡単にやられることはないだろうが、だからこそ不安なこともある。

 

「ゲリラたちも動き出せば、事態は深刻……!」

 

 海賊、神官、シャンディア。三つの勢力がぶつかり、もし神官かシャンディアのどちらかが落ちることがあれば、エネルが君臨してから続いてきた均衡が崩れることになる。

 さらに、麦わらの少年たちは、そんな均衡の崩壊を巻き起こすだけの力と影響を持つ者たち。

 

「嵐が起きるぞ……!!」

 

 せめて、少しでも良い方へ空島の未来が進むように。

 先代の神、ガン・フォールは神の祭壇へと向かう。

 

 

 

 

 

 ——ジャヤの外れ モンブラン・クリケットの家。

 

 

 麦わらの一味を突き上げる海流(ノックアップストリーム)によって空へと運び、空島への手引きをした猿山連合軍は、拠点への戻り、そわそわと海と空を交互に見つめていた。

 

「大丈夫かなぁ、あいつら……」

「空島がなかったら、今頃海に打ち付けられて……」

 

 マシラとショウジョウは、心配そうに言葉を重ねる。

 空島はあると、この場いる全員が信じている。だが、誰もその目で空島の存在を確認したわけではないのだ。

 万が一がないという確信も、同じように存在しない。

 

「狼狽えるんじゃねえ、お前ら! ロマンを追って旅路に出た奴らの心配をすること自体が、あいつらの夢への冒涜だ!」

「それは分かってるけどよぉ……」

 

 そうは言いつつも、マシラはそれ以上のことは言わない。

 口にしないだけで、親分であるクリケットも心配なのだ。

 さっきから忙しなくタバコを吸っては、全てを吸い切らぬうちに火を消し、また新しいタバコをつける。

 何か手を動かしていなければ、不安な想像に思考を奪われてしまうことを分かっているのだ。

 嫌な沈黙だった。

 それを嫌ってか、クリケットは特大のため息を吐いて、おもむろに自分の家へと向かい、一冊の本を持ってきた。

 

「ノーランドの航海日誌……?」

「ああ。夢とロマンを追った、正直者の日誌だ。ここに、確かに空島の存在を示唆する記述がある」

 

 だから、空島はある、と。

 クリケットは自分に言い聞かせる。

 そのまま気を紛らわせるように、他のページもペラペラとめくっていく。

 

「そういえば、このページくらいは、あの小娘に見せてやってもよかったかな……」

 

 航海日誌を覗き込んだショウジョウは、ポツリと呟く。

 

「それって、ノーランドが最後に残したっていう……?」

「ああ。髑髏の右目に黄金を見た。これがノーランドが残した最後の言葉だ。だが……」

 

 クリケットはもう一つ、ページを捲る。

 

「それとは別に、まったく意味のわからない、脈略のない文章があるんだ」

 

 日誌でもなければ、情報でもない。

 一言で表すならば、これは。

 

「おれはこれを『詩』だと思ってる」

「歌……?」

「この詩にメロディがあったのかどうかも、おれには分からねえ」

 

 これはきっと、黄金郷に関わる何かしらのメッセージだとクリケットは考えている。

 クリケットは、自分たちが手助けをした海賊たちの手配書を眺めた。

 

「『麦わらの一味 歌姫のウタ』、か。あの小娘にこれを見せれば、メロディでもつけて歌ってくれたんだろうが……」

 

 ノーランドは、日誌に書かれた歌詞をなぞる。

 

 

 ただひとつの夢 決して譲れない

 心に帆を揚げて 願いのまま進め

 いつだってあなたへ 届くように歌う

 大海原を駆ける 新しい風になれ

 

 

「気休めでこの歌を歌ってもらうつもりは、毛頭ねえ」

 

 クリケットはニヤリと笑う。

 

「いつかこの歌を聴くときが、おれたちが黄金郷を見つけるときだ。それこそ、ロマンじゃねえか!」

 

 声を張って、クリケットは言う。

 ただ、と。

 クリケットはパタンと航海日誌を閉じて、小さく呟いた。

 

「教えてくれよ、ノーランド。この歌は一体、誰に届けようとした歌なんだ」

 

 何もない目の前に、クリケットは問いかける。

 しかし、海も空も、何も言うことはなかった。

 

 

 

 

 ——シャンディア(ゲリラ) 雲隠れの村。

 

 遠くの気配や声を聞くとされるエネルの心網(マントラ)の範囲の外に位置する、神の島(アッパーヤード)の外れの村。

 そこでは、エネルへの反逆を企てるシャンディアと呼ばれるゲリラたちが息を潜めている。

 その村の中で、ヒソヒソとしながらも、機嫌が良さそうに鼻唄を歌う少女が一人。

 

 ——ただひとつの夢〜♪ 決して譲れない〜♪

 ——心に帆を揚げて〜♪ 願いのまま進め〜♪

 

 その少女は、肩掛けのバッグを大切そうに抱きしめながら歩いている。

 

「どこへ行っていた、アイサ」

「わっ!?」

 

 上機嫌な少女に声をかけたのは、真っ黒なモヒカンとサングラスの痩せ型な男。

 その男の名を、その少女——アイサは口にする。

 

「げ、カマキリ!」

「また神の島(アッパーヤード)か。バッグの中身は大地(ヴァース)だな? 危険すぎる。ほどほどにしろ」

「べろべろべろ! あたいの勝手だよ!」

 

 カマキリから逃げるように走り出したアイサだが、その途中でテントから聞こえてきた声に足を止める。

 

「どいつもこいつも、排除すべきだ!」

 

 シャンディアの戦士をまとめるリーダーのワイパーの声だった。

 アイサはひっそりとテントを覗き込む。

 左目の周りから後頭部にかけて、そして左肩の周りに刺青を入れた、いつもタバコを咥えている筋肉質な男が、主要武器であるバズーカを抱えながら怒鳴っていた。

 彼の怒りは、アイサが物心ついたときから褪せることはない。

 ワイパーの主張は昔から変わらず、一つだけだった。

 

「『シャンドラの灯をともし、島の歌を響かせろ』。これが、大戦士カルガラの言葉だ」

 

 耳にタコができるほど聞いた言葉。

 先代の神、ガン・フォールだとしても、(ゴッド)エネルだとしても、ワイパーにとっては関係ない。

 目的はただ一つ。

 神の島(アッパーヤード)

 

「帰るんだ。シャンディアの四〇〇年前の、故郷に……!!」

 

 鋭い目つきで決意を口にするワイパー。

 そんな姿をテントの隙間から覗いていたアイサは、「おーこわ!」とテントを閉じて踵を返した。

 そしてまた、先ほどの歌を歌い始める。

 

 ——いつだってあなたへ〜♪ 届くように歌う〜♪

 

 アイサは歌いながら、テントの側で武器の整備をするカマキリに問いかける。

 

「ねえ、カマキリ。この歌って、本当に大戦士が作ったの?」

「ん? ああ、島唄のことか? どうだろうな。おれ大戦士カルガラとノーランドが二人で作ったって聞いてるぜ」

「二人で? じゃあこれは誰に向けた歌なの?」

「さあな。大戦士カルガラが交わしたノーランドとの約束ってことしか知らねえよ」

「もう一度、会いたいってこと?」

「ああ。いつか再会をしたときに、その歌を届けてまた肩を組んで歌えるように。そのための歌なんだってさ」

「ふーん。それもきっと、大地(ヴァース)に帰れたら叶うのかな」

「きっとな。シャンドラの灯がともるときに、この歌は完成して響き渡る。ノーランドは死んじまってるから、肩を組むことはできねえだろうが」

「でも、想いはきっと……」

「そのための、何百年にも渡る戦いだ」

 

 アイサは「そうなるといいね」と呟いた瞬間。

 ピンとその背筋が伸びた。

 聞こえたのだ。

 彼女が生まれつき持つ、鋭敏な心網(マントラ)が。

 思いもよらぬ事態を察知する。

 

「ねえ、カマキリ」

「今度はなんだ。もう知ってることは何もない——」

「神官が二人、やられたみたい!」

「——なんだと?」

 

 カマキリはこの言葉を疑わない。

 幼いアイサではあるが、その心網(マントラ)はシャンディアで横に並ぶ者はいない。

 だからこそ、ひっそりと人目を盗んで危険な神の島(アッパーヤード)へと忍び込めてしまう。

 いつもは厄介に思うこの力だが、今回ばかりは大手柄だ。

 

「すぐにワイパーに知らせるぞ。何が起こったのかは分からないが、神官が二人も落ちるなんて、これ以上ない好機だ」

 

 カマキリは整備していた武器を担ぎ、すぐにテントに向かっていく。

 ワイパーやその他の仲間も事態を聞き、瞬く間にゲリラの準備を進めていく。

 慌ただしく動き始める仲間たちを不安そうに見つめながら、アイサは大地(ヴァース)を詰め込んだバッグを強く抱きしめる。

 

「不安そうね、アイサ」

「ラキ!」

 

 シャンディアの戦闘員では珍しい、女性のゲリラ——ラキが声をかけてきた。

 彫刻のように整えられたスタイルから溢れる凛とした雰囲気と鋭い目つきを前に、アイサはうっ、と後ろ下がってしまうが、本当は怖い人でないことはよく知っていた。

 ラキはアイサが握りしめるバッグを見て、

 

「そのバッグ、こっちへよこしな」

「え、なんでよ! これはあたいの秘匿バッグなのに——」

「知ってるよ。あたしも少しだけ取ってきてやるよ」

 

 ワイパーの影になるように小さく笑ったラキを見て、アイサは嬉しそうにバッグを手渡す。

 こっそりとバッグを懐に忍ばせたラキは、すぐに踵を返して戦闘準備を始める。

 カマキリやラキだけでなく、ワイパーだって本当はみんなのことを思っている優しい人だと分かっている。

 だからこそ、いつか故郷とされている神の島(アッパーヤード)で、憧れの大地(ヴァース)でみんなで過ごす日々を、アイサはまた焦がれていた。

 

「いつか、この歌も完成する日が来るといいな……」

 

 アイサは小さく呟いて、俯いた。

 そのためにどれだけの血が流れてしまうのかを想像して、不安だった。

 と、

 

「————!?」

 

 急にアイサは顔を上げた。

 彼女の心網(マントラ)が、また何かを聞いたのだ。

 それは誰かが倒れたわけでも、敵が近づいたわけでもない。

 

「誰かが、あの歌を歌ってる……?」

 

 シャンディアでも、空の者でもない。

 アイサは不思議そうに、神の島(アッパーヤード)の方角を見つめる。

 

「…………あなたは、誰……?」

 

 鬨の声を上げ、神の島(アッパーヤード)へと向かって進み始める同胞たちの背中を見つめながら、アイサは小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 ——神の島(アッパーヤード) ミルキーロード、迷いの森上流。

 

 

 神官サトリを撃破したルフィ、ウタ、サンジ、ウソップ、カルーは、カラス丸に乗って連れ去られた仲間たちが待つ神の祭壇へと向かっていた。

 

 入り組んだミルキーロードはいつの間にか一本道となっており、視界いっぱいに大樹の森が広がっている。

 今進んでいるところは、見る限りただの平原だ。

 遮るものが何もないが故に、心地よい風が通り抜けていく。

 

「風が気持ち〜!」

「ウタちゃん。次の試練が来るかもしれないんだ。気を緩めすぎるのはやめといたほうがいいぜ」

「いいじゃねえか、サンジ! 気楽にいこーぜ!」

「お、おい待てルフィ、ウタ! ここの草原に刺さってる棒、全部先にガイコツが乗ってるぞ!」

「あ、ホントだ」

 

 この試練を超えることができなかった者たちの亡骸なのだろうか。

 死ねば骨だけ。

 そんな中でも、ウタはのんびりとカルーの羽毛をクッション代わりによりかかって、鼻歌を歌う。

 

「〜〜♪」

 

 風が気持ちいいときには、このメロディがよく似合う。

 

「そういえば、その歌のときだけ、ウタって鼻歌だよな」

「うん。これね、昔にシャンクスから教えてもらった歌なんだ! シャンクスも詩は知らなかったみたいで、メロディだけなの!」

 

 かつては、自分で詩をつけてみようとも思ったことがある。

 しかし、ウタの思いつく言葉では、どんな詩もこのメロディの本質を彩ることはできなかった。

 

「へぇ〜。でも、どうして急にその歌なんだ?」

 

 首を傾げて問いかけたルフィに対して、ウタも同じように首を倒した。

 

「うーん。なんでだろ?」

「なんだそりゃ」

「なんとなくなんだけど、思い出したの。懐かしいメロディが、聞こえてきた気がして」

「ふ〜ん。おれには聞こえねェけどな」

「そりゃあ、おバカなルフィには聞こえないよ」

「な、なにぃ!? おれはバカじゃねえ!」

「はいはい。分かってますよ〜」

「バカにしてるだろ、ウタ!」

「あははっ! ルフィってば、単純すぎ!」

 

 ウタは楽しそうに笑って、ルフィの鼻先をツンとつついた。

 フガっと仰け反ったルフィは、ムキー! っと暴れ始めるが、カラス丸が横転するかもしれないと感じ取ったサンジとウソップが慌てて押さえつける。

 そんな様子もひとしきり笑ったウタは、風で揺れる髪をかけ上げて、呟く。

 

「歌詞はつけてないけど。この歌の名前はもう決めてあるんだ」

 

 ウタは言う。

 

「——風のゆくえ」

 

 この歌にはきっと、本来歌詞があったはずだ。

 誰かが、届かぬ想いを届けようとした、さまざまな気持ちの絡む尊い詩が綴られていたはずだ。

 

「いつかこの詩を見つけたら、思いっきり歌いたいな〜!」

 

 ウタは大きく両手を広げた。

 優しい風が指先に絡む感じが、なんともいえず気持ちいい。

 このままのんびりと、メリー号へと到着するのだろうと誰もが思った、その瞬間。

 

「「——!!??」」

 

 ウタとウソップが、ほぼ同時に気がついた。

 

「何か来るぞ!」

 

 すぐに身構えたウソップを見て、サンジとルフィが構える。

 

「あの格好は……!」

 

 ミルキーロードをスケート靴のようなもので滑走しながらやってきたのは、民族衣装を身にまとった武装集団。

 それはウタたちが空島へとやってきた瞬間に襲ってきた者と同じ外観。

 おそらく、ゲリラと呼ばれる者たちだ。

 

「…………!」

 

 ゲリラの先頭を走る刺青の入った男が、肩に担いだバズーカをこちらへ構える。

 そして、迷いなく引き金を引いた。

 

「——! ゴムゴムの……風船!!」

 

 皆の盾になるように身体を膨らませたルフィが、バズーカの弾を弾き返し、大木の幹に直撃した。

 

超人系(パラメシア)か……!」

 

 人の限界を超えたルフィの身体を見て、悪魔の実の能力者だと察したゲリラは、距離を取って大木の枝を足場にして立つ。

 

「お前たちか。スカイピアで暴れてる青海人ってのは。神官を倒したようで浮かれてるかもしれねえが、死なないうちに青海に帰るんだな」

「帰らないって、言ったら?」

 

 問いかけたのウタだった。

 それに対して、ゲリラはこちらを睨みつけて、

 

「おれたちの邪魔をするなら、エネル同様、消すぞ」

 

 それだけ言って、ゲリラは森の中へと消えていった。

 なんだったんだと、ルフィは苛立ちをあらわにしてゲリラの背中を睨みつける。

 

「……なんだか私、あの人たちが悪い人には見えないや」

「何言ってんだ、ウタちゃん。おれたちは攻撃されたんだぜ?」

「分かってるけど、でも……」

 

 ウタはなぜか、空を見上げる。

 

「何かが……誰かが……待ってる気がするの」

「おれにはなーにも聞こえねえぞ、ウタ」

 

 サンジもウソップも、ウタの言葉は真に受けない。

 しかし、それでもウタだけは。

 

 風のゆくえと名付けるつもりの歌を口ずさみながら、どこか遠くをじっと眺めていた。

 

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