買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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お久しぶりです。色々あって遅れました。
そしてこれからしばらくの間色々あるので、多分投稿ペースが酷いことになります。多分。

出来る限り早く投稿できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。


成長する二人!新たな出会い!

「それじゃ、始めて頂戴」

「はい」

『トライキメラ!!』

 

見渡す限り真っ白な部屋。言いようの無い圧迫感のあるこの部屋は、今スピーカー越しに俺に指示を出した女性の所有する建物の一室で、具体的な名称は『実験室』。まさしくと言った感じの部屋だ。

 

その部屋の中央で、俺はトライキメラバイスタンプ……仮面ライダーダイモンに変身するためのバイスタンプを起動し、腰に装着されているキメラドライバーへと装填する。

 

『オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!』

「ぐっ、ぐぅっ、が、あぁぁっ………!!!」

 

高圧電流に全身を襲われているかのような痛みに、喉を裂くようなうめき声が漏れる。胸を掻きむしりたい衝動に駆られながら、けれど変身シークエンスを終えねばこの痛みは終わらない。だから、バイスタンプを横に倒そうとする。必死に、筋肉が弛緩したように力が入らない手をかけて。

 

そうしている内に、次第に変身待機音がおかしくなっていく。バグっている、というのが最も適切だろうか。壊れたラジオみたいに、同じ部分を繰り返したり、声が低くなったり、リズムが不規則になったり。

 

そして、ついに待機音が消え、俺の全身の痛みも治まる。代わりに、勢いよくバイスタンプが外れ、床を転がった。

 

「はぁッ、はーァッ………クソッ」

 

さっさと拾いに行こう、そう思って足を動かそうとするも、体は床にへばりついて離れない。足はガクガクと痙攣し、呼吸はどれだけ深呼吸を意識しても荒く浅いモノしかできない。

 

「この短時間で、もう三十回も連続で変身失敗してるから、かなり限界でしょ?」

 

いつの間にか俺のすぐ近くに歩み寄ってきていたリヴィが、静かに腰かける。柔らかいタオルで俺の汗を拭い、優しい声音で労ってくる。

三十回連続で変身失敗。改めて言葉にされると、よく体力が持ったなというか、これだけやってやっぱりダメなのかというか。

 

 

メガロドンバイスタンプを持っていた魔人との戦いに勝利した俺は、バイスタンプを入手した。とはいえ悪魔を召喚するつもりはさらさらないし、アレはしばらく部屋に放置されることになるだろう。

その後はまぁ、結界が崩壊した影響で保健室に出現したらしい俺たちを保健医が発見してベッドに寝かせてくれていて、起きたら満田がいて、リヴィとの関係を誤解されて挙句大声で言いふらされて…………既に他の学年にすら俺とリヴィがそういう関係だと噂が広まってしまったようで、今でも生徒からヒソヒソと陰で何か話される日々を過ごしている。まぁ、リヴィ程の美人に交際相手が、となれば学年を跨ぐ大ニュースになってしまうだろう。

もう誤解を解くのが面倒臭くなったから無理に否定したりはしなくなったけど、これってこの先リヴィに本当の恋人ができたりしたとき、俺が寝取られたって話が広がるのか。それはなんかヤダなぁ。

 

話を戻そう。魔人を倒した後は意外と何事もなく……というか、ギャンガやメガロドンバイスタンプを持った魔人が上澄みだっただけで、他の魔人も魔族も意外と大した敵ではなく、俺とリヴィは余裕を持って街の平和を守れていた。しかしリヴィとしては学校の時もギャンガの時もあまり役に立てなかった事を気にしていたらしく、彼女が以前使っていた神器を取りに行く事になった。組織の拠点の一つで、リヴィが戦場を舞う銀雪と恐れられた時代に愛用していた神器が調整を受けていたらしい。

本当はリヴィだけで行く予定だったらしいが、彼女の友人であり同僚でもある戦乙女、水城(みずき)マリアさんが一応新入りに当たる俺に会っておきたいと言ったことで、俺もついていく事に。

 

マリアさんはなんというか、妖艶な貴婦人といった様子の人だった。肩よりも少し下の部分まで伸びた茶髪は艶やかで、ややタレ目気味な目元には泣きぼくろ。戦乙女だからか、スタイルは破茶滅茶に良い。初めて会った時はつい生唾を飲み込み、リヴィに脇腹を肘で殴られてしまった。なんでアイツが怒ったんだろう。今でもよくわからない。

しかもこんな美貌を持った人なのに、独身らしい。恋人の類が今までいなかった訳でも無いが長続きしなかったと語っていたが、リヴィ曰く恋人すらできたことが無かったらしい。世の男達は勿体無いな、とつい感想を溢してしまったが、よく考えればマリアさんは恋人ができないんじゃなくて作らなかっただけだろうし、きっと彼女と出会った男たちは皆玉砕したんだろうなと簡単に予想できた。まぁ、訂正するのも面倒だったしそのままにしたが。しかもなんか、マリアさんも満更でもなさげだったし。人に褒められなれて無いんだろうか。だとしたら今まで彼女に会った男達はどれだけ口下手だったのか。

 

そんな感じでマリアさんとのファーストコンタクトも終わり、彼女が管理しているという組織の施設を案内してもらい、今俺がいる実験室の事も知った。ここでは戦闘訓練も行えるらしく、俺の戦闘経験不足をここで解消できるかもしれないという話を持ちかけられた。勿論、俺はその申し出に頷いた。コレが一ヶ月ちょっと前くらいの事である。

 

そこからは、神器を使うリヴィと組み手し続けたり、さっきのようにトライキメラバイスタンプやジュウガドライバーを使って戦闘の幅を広げる試みをしたり(とはいえトライキメラは見ての通りで、ジュウガドライバーは相変わらず無反応なのだが)トレーニングルームにある機材で今までよりも効率的にトレーニングに励んだり、かなり充実した日々を過ごした。

学校での戦いで使ったマッドリミックスの反動もかなり抑えられたし(とはいえ一度使えばその日はもう戦闘不能になるが)普通の必殺技は通常攻撃レベルの頻度で発動できるようになった。自分でも、かなり成長していると思う。

 

まぁ、神器が戻ってきたリヴィが明らかに俺よりも異常なスピードで成長しているというか、もっと強くなっているのだが。

 

「……せめてコイツが使えれば、俺ももうちょっとはお前の役に立てるんだけどな」

「真は充分私の助けになってる。というか、前までは私が真の足を引っ張っていた」

 

そんなことは無いと思うのだが、リヴィは前からずっとこう言って譲らない。確かに神器が無かった時は火力不足が否めなかったが、それでも持ち前のスピードで充分活躍していたはずだ。

本人が言うんだからそう言う事にしておいて良いんだろうけどさ。

 

若干意識が朦朧としている俺の元に、先程変身の合図をアナウンスしていた女性……マリアさんもやってくる。手にはペットボトルが握られており、ラベルには有名なスポーツドリンクの商品名が書かれていた。

 

「お疲れ様。前よりも変身待機の時間、伸びてたわよ」

「ははは……でも、まだまだ変身には遠いですね」

「そう悲観しないの。あなたの成長スピードなら、四月にはトライキメラの力も扱えるはずよ?」

「それまで強い魔人が現れない保証はないですし、あまり悠長な事も言っていられませんよ。ーーー後十分くらい休憩したら、またリヴィに組み手を頼もうかと」

「……私は良いけど、真はもう、今日はこれ以上何もしない方がいいんじゃ」

「大丈夫。前からこんな感じだし平気平気」

 

トライキメラの変身負荷はかなりきついが、最初の頃の一キロ全力ダッシュのがもっとキツかった。アレを思えばこの程度、なんてことは無い。

………それに、俺はさっさとダイモンに変身したいんだ。キマイラだって好きだが、個人的にはダイモンの方が好きだし。

 

マリアさんから渡されたスポドリを飲み干して、大きく息を吐いてから立ち上がる。体幹が少し傾いているが、許容範囲だ。最初の頃の無茶なトレーニングのおかげか、体力の回復が異常に早くなったようだ。

二人は呆れたように俺を見てから互いに目を合わせて頷き、各々歩き出した。マリアさんは部屋の外、アナウンスをする機材がある場所へ。リヴィは俺から少し離れた、勝負を始める前のちょうど良い間合いの場所へ。

 

「………ルールは?」

「互いに武器、神器無しの格闘戦。勝敗はいつも通りマリアさんの判定で」

「ん。手加減は?」

「いらねぇよ」

「準備はいいかしら?」

 

マリアさんの声が響く。俺もリヴィも同時に首肯し、構えを取った。

 

「では…………開始ッ!」

 

その声と共に、姿が掻き消えるリヴィ。

次の瞬間には、彼女の蹴りと俺の蹴りが衝突し、人体同士がぶつかり合った時特有の乾いた音が実験室に轟いた。

 

※―――

 

リヴィと出会ってから、既に約二ヶ月が経過している。来週には春休みに入り、そして高校二年としての一年が始まるのだが、相変わらずリヴィは俺の家に居候しているし、マリアさんと知り合ってからはよく彼女が泊まるようになった。正直に言ってしまえばとても居心地が悪いし、男ならば日々少なからず溜まっていく欲求的なものが発散できず、ここ最近は悶々としっぱなしだ。

 

だからそう、仕方ないのだ。

 

俺が今、目の前にいる初対面の名前も知らない女性の胸元を凝視してしまっているのは、仕方のないことなのだ。

 

「デケェ……」

「あの格好、なんのコスプレだ?」

「ママー、あの人……」

「しっ、見ちゃダメ!」

 

道行く人たちも、俺の前に立つ彼女を見て、ヒソヒソと言いたい放題である。

しかしそれも当然だと思う。何せ彼女の着ているのはリヴィの戦闘装束と同じボディスーツ。光沢のある素材でできたソレは彼女の全身に張り付き、いっそ奇跡とすら言うべき体のラインを際立たせていた。

 

この格好をしている以上、戦乙女なのは確実なんだろうけど………いきなり俺の前に、しかも街中で堂々と現れて……なんのつもりだ?

 

改めて彼女の顔の方に視線を移す。ストレートに伸ばしている黒髪は、スーツ同様に輝いて見え、白磁のような肌にはシミもニキビも一切ない。どこか日本人離れして見えるのは、俺を見つめている瞳が紅色をしているからだろう。

 

「えっと。俺に何か用ですか?」

 

恐る恐る口を開いてみる。これで違ったら俺は勘違い野郎、あるいは新手のナンパだな………なんて事が一瞬脳裏をよぎるが、目の前の女性は確かに頷いた。

そして、半眼気味に俺を見つつ、答えた。

 

「胸を凝視するのはともかく、そこを退いてもらっても良いか?」

「すみませんでしたッ!!」

 

ほぼ直角に腰を折り曲げて謝罪し、逃走。きっと今の俺の顔は真っ赤になっている事だろう。周りのヒソヒソ声が、「胸を凝視だって」だの「きも……」だのといった俺に対する言葉に聞こえてきて、すごく居た堪れない。

 

いきなり俺の前に出現したもんだから勝手に俺に用があると思い込んでいたが、多分勘違いだ。そもそもあの戦乙女が俺が神器持ちである事を知っているかどうかすら怪しい。

俺に何か頼んでくるんだろうな、だったら仕事料がわりに胸元見つめても良いだろ、なんて考えをした方がバカだった。

 

まだ買い物が終わっていないにも関わらず、俺は全力疾走で家に帰るのだった。

 

※―――

 

(目の前に立ち止まって視姦したかと思えばあの逃走っぷり……度胸があるのか無いのか、よくわからん男だったな)

 

常人にしてはあり得ない速度で駆け抜けていった真を見送るように見つめた後、彼女は再び視線を前に向けた。

 

周囲の、彼女の服装やスタイルに反応を示している一般人たちには見えていないモノ。ともすれば戦乙女や魔人ですら見落とす可能性のある、微かな魔力の残滓。魔法が行使された残り香、に見えるが、実際には発動前のなんらかの魔法が隠蔽されている証拠だった。

 

彼女は微かに目を細めると、徐にサーベルを引き抜く。人々がさらに騒がしさを増す、かに思われたが、訪れたのは静寂。

結界が張られたのだ。彼女の武器であるサーベルが纏う魔力に反応し、隠蔽されていた魔法陣が起動したのだ。

 

「やはり魔力感応型か。結界の自動生成だけじゃ無いだろう?」

 

語りかけるような口調は、結果の中にこれを設置した何者か―――魔人がいると確信しているが故。

歴戦の戦乙女である彼女、華麗山魅御音(かれいざんみおね)は、気配を感じずとも、経験から魔人の存在を読み取っていた。

 

「いいえ?ソレの役割は結界構築だけよ?」

 

魅御音の背後に、改造した燕尾服のような服を着た少女が出現する。肌は浅黒く、目は本来白の部分が黒に、黒の部分が緑になっていて、頭部にはまさしく「悪魔」というべき角が一対あった。

隠れるのを止め、姿を現した彼女に、魅御音は無言でサーベルを振るう。ソレを動じる事無く回避した少女は、くすくすと笑う。

 

「あらあら、お話はもうお終い?」

「魔人と話すことなど無い。私はただ、貴様を殺すだけ。―――華麗山家次期当主、魅御音……参るッ!!」

 

名乗りと共に、彼女から大量の魔力が迸る。それでも魔人は余裕の笑みを崩すことなく、懐に手を入れた。

 

(武器か、魔法か……どちらにせよ真っ向から切り捨てるのみッ!)

 

魔技。彼女を戦乙女たらしめる特殊魔法が発動し、その体が薄緑色に輝く。そして一歩踏み出した次の瞬間には、魔人の目の前に迫っていた。

悠長に物を取り出している場合では無いと、彼女は慌ててその場を離れる。

 

「高速移動、ってわけじゃ無さそうね」

「あぁ。あの『神速』のような芸当は、私には不可能だからな。己の不得手とするものは、ちゃんと理解している」

「あーあー、馬鹿正直に答えちゃって。良いの?私、結構賢いのよ?あなたの魔技、もう殆どわかっちゃったけど」

「魔技を知られたところで、私にはなんの痛痒も無いからな。知られていても、そう簡単に対処できるような魔技では無い………ハァッ!!」

 

今度は、魔人の背後に出現する。それも躱されると、カウンターを喰らわされる前に一度離脱し、再び彼女の死角に移動。

現れては消えてを繰り返す彼女の魔技は、一言で言えば『空間跳躍』。自身の最初の立ち位置という点と目的地という点を、線で結ぶこと無く移動する能力。

発動から一瞬のズレも無く点を移動する彼女は、リヴィアリーとはまた違う速度を実現していた。

 

「空間転移……いや、跳躍かしら?どちらにせよ、確かに厄介な力………だ、け、ど」

『カマキリ!』

 

魅御音の攻撃を回避しつつ彼女の動きに対応し始めていた魔人が、ついに懐から目当ての品を―――バイスタンプを取り出す。

そして天面のボタンを押し、迷いなく自分の体に押印した。

 

折り紙のような体。髑髏の顔。蟷螂をモチーフとした見た目は、どこか歪で悍ましい。魔人も魅御音も知る由も無いことだが、その存在の名はカマキリ・デッドマン。『悪魔』である。

 

「その神器……貴様()持っていたか」

「あら、その口ぶりだと貴方も持っているのかしら?それとも、知り合いに持っている人が?」

「………答える義理は無い」

 

苦々しげな顔を見せる彼女の脳裏には、先日組織から送られてきた報告書の内容が浮かんでいた。

最近確認されるようになった新種の神器。ほぼ同一の形状、力を持つソレ等は一般的な人間よりも魔人や戦乙女との相性が良い事が研究により発覚しており、特に魔力が平均以上の魔人が使用した場合は討伐の危険度が一気に跳ね上がると言っても構わない程に嚙み合ってしまう。そんな文言を思い出していた。

 

我が子のようにデッドマンを撫で、魔人は嗤う。魅御音は戦乙女の中でも一際()()()()()()というか、馬鹿正直な女。抱いている危機感も、もしかしたら勝てないかもしれないと考えている事も、これでもかと表情に出ている。ソレがあまりに愉快だから、彼女は嗤ったのだ。

 

「うっふふ、可愛い子ね。あからさま過ぎて逆に疑っちゃうわ。―――その反応、どうやら知っているようね。この神器を」

「答える義理は無いと言ったはずだ」

「あー、そうね。じゃあ一応これだけ質問させて?」

 

クスクスと笑いながら、しかし途端に態度を豹変させて、魔人は問うた。

 

「―――キマイラ、って知ってるかしら?」

「は……?」

 

キマイラ。あるいは、キメラ。一般人でも知っているような、空想の動物。

実際にはとある神器を持った魔人が魔族の死体を掛け合わせて作った『魔獣』が当時の一般人に目撃されて話が広まった存在だが、きっとわざわざ尋ねてくるあたりそれとは違うキマイラだろう。彼女はそこまで考えて、しかしまるで思い当たる節が無かった。

やはりそれは表情に出ており、魔人はつまらなそうに「あっそ」と呟いて、魔力を滾らせた。

 

「知っていたら生捕りにしようと思ったけど、その様子じゃ知らないっぽいし……死んでもらうわ」

「っ、舐めるなよ。私は華麗山家の次期当主。代々受け継がれてきた剣技と、一族史上最高と称される魔力が、たかが神器に負けると思うな!」

「あっははは!肩書きがそんなに大事なら、私も名乗ってあげようかしら!」

 

魅御音の斬撃をデッドマンに受け止めさせ、魔力を放出する。光の柱というべき力の奔流を回避すべく離れた彼女を、クナイのような形をした魔力弾が追撃する。

サーベルと転移で攻撃を捌き切ったのを確認すると、魔人は声高に名乗った。

 

「私はヴィヴィアン。今はディゴリー様の部下だけど、『悪辣』の名前の方が貴方にはわかりやすいかしら?」

「『悪辣』だと!?」

 

多くの戦乙女を殺害、反転させた強力かつ凶悪な魔人は、上位の戦乙女同様に二つ名が付けられる。必ずしも二つ名持ちは全員が知っているというわけでは無いが、『悪辣』は全戦乙女が知っていると言っても過言ではないほどに有名だった。

今まで殺害した戦乙女は三十以上。魔力の総量はそこそこだが、魔法の技術がトップクラス。結界内部に閉じ込めた戦乙女を長く苦しめて殺し、それを武勇伝として自ら語っていた事から、悪辣の名を与えられたのだ。

 

魅御音は、高名な戦乙女を数多く輩出している名門一家、華麗山家の長女である。

幼少期から戦乙女たれと育てられ、鍛えてきた彼女は戦乙女の中でもかなり上位に位置する実力者であり、空間転移という高度な魔技を扱える類まれな人材でもあった。

 

だが、そんな彼女でも二つ名持ちの魔人を、『悪辣』を相手にするのは困難を極める……いや、悪辣が神器を手にした今、勝ち目は無いと言って差し支えなかった。

 

(不味い………逃げに徹するにしても、この結界から逃げ出す事は可能なのか?)

 

既に『悪辣』がディゴリーの一派に所属した、という重要すぎる情報を確保している上、キマイラという謎の存在ついても聞けている。

どうせ挑んでも死ぬだけだと自分の実力に見切りをつけている彼女は、いかに逃げるかに思考をシフトさせていた。

 

「あら、あらあら。後退ったりして、どうしたのかしら?まさか逃げるつもり?うふ、うっふふふふ!!それができると思っているのかしら。もし本当にそうなら―――救いようの無い子ね!」

 

魔人が手を振るうと、デッドマンが両手を前方で組み合わせた。両手の鎌がカツン、とくっつくと、一瞬で緑色の光が射出された。

慌ててサーベルで攻撃を防ぐと、甲高い音と共に光が砕け、濃密な魔力の残滓が漂った。

 

「魔力弾……やけに威力が高いな」

「だって私から生み出した『悪魔』よ?魔力の扱いは並の魔人も、戦乙女も追いつけないわ!」

 

矢の形をした魔力弾が、弓の形を作っている両手から隙間なく射出される。最初こそサーベルで捌いていた魅御音だったが、あまりの量に対応しきれなくなり、転移での回避に徹せざるを得なくなる。

押し返す事も、逃げる事も不可能な密度。体力だけが消耗していき、いずれは回避する事すら不可能になるだろう。ソレを理解した彼女の頬に、汗が伝う。

 

このままでは、死ぬ。

そこまで考えた彼女だったが、状況は唐突に一変する事となった。

 

高笑いする魔人の声が舌打ちに変わり、デッドマンの魔力弾が途切れた。一体何が、と視線を向けると、魔人とデッドマンが躍っている姿が見えた。

 

―――いや、違う。踊っているのではない。

 

「何かに、襲われている……?」

 

耳を澄ませば、風を切る……いや、裂くような音が聞こえる。眼で見えない程の速度で動く何かに襲われているのだ。あの魔人は。

 

そしてそこまで考えた彼女は、やっと自分が誰に助けられたのかを理解する。

 

「リヴィアリー・フラスベルか!」

 

元々この街の守護を任されている戦乙女であり、二つ名を持つ唯一無二の力を持った少女。

過去会った時の姿を思いだしながら、魅御音は感謝を胸の中で告げ、背を向けて走り出した。

 

戦闘では、自分はきっと足手まとい。ならば手にした情報を持ち帰るのが最優先だと、判断したからだ。

 

そしてその判断は正しかった。彼女は詳しく知らない物の、リヴィアリーは本来一人で戦うのが最も得意。ここ最近は真という最高のパートナー(リヴィアリー談)と出会った為その限りではないが、少なくとも名前すら憶えていない魅御音が一緒に戦おうとしたところで邪魔にしかならなかったはずだ。

 

 

魅御音は結界を走り、抜け出せる場所を探す。

転移を多用して素早く結界内を移動する彼女は、すぐに気づく事になる。

 

この場所に、出口なんて無い事に。

だがその絶望は、すぐに希望に変わる。

 

彼女が知る由も無い事だが、この街を守っているのは今やリヴィアリーだけではなく。

リヴィアリーが最も信頼し、密かに特別な感情を向けている男が、天谷真(仮面ライダー)がいるのだから。




魅御音の胸を見つめる変態ムーブをかましましたが、ほぼ二か月の間エロゲのキャラみたいなドスケベすぎる体の女と同棲しつつバグった距離感のせいで同衾する事がしばしばあり、普通にしているだけで発せられる凄まじい雌フェロモンを浴び続けた挙句一切性欲処理が出来ていない状態の思春期男子高校生ならこれが妥当かなって思います。
まぁ、仮面ライダーの姿ではないですね。

それと『悪辣』の結界が特別強固なだけで普通の魔人が貼る結界には出口(になりうる弱い部分)が存在するので、魅御音の行動は正しかったです。
ただ実力と運が不足しているだけで。


アンケートを実施する予定ですので、是非お答えください!

キメラドライバー関連以外のアイテムで登場させたい物があるのですがよろしいでしょうか

  • 良い
  • 悪い
  • 分からない(好きにして良い)
  • たぶん良い部分的に良い
  • たぶん悪い出すべきではない
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