買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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授業が自習続きなのでこっそり投稿。
アンケートは投稿後にすぐ締め切るので、その結果によっては次回から新アイテムの匂わせが入ります。


結界の中、救い出す戦乙女!

「やぁぁっ!!」

 

結界にも種類がある。

外界の時間経過、外界で発生した環境の変化に合わせて中身が変化する、基本的なモノ。

外界の変化に一切対応しない、発動した瞬間の時間を切り取った写真のようなモノ。

外界から完全に隔絶され、中身を自分の意のままに変形する事の出来るモノ。

 

ソレ等は基本、結界を貼る魔人或いは戦乙女によって決まるが、魅御音が今閉じ込められている結界は基本形。時間経過に合わせて日が昇り沈み、外で何かが壊れた場合内部のモノも同時に壊れる結界。

オーソドックスなモノを使うのは、基本的には弱い魔人、或いは多少の知性を持った魔族だけだ。だが、異界を生み出せるほどの力を持った魔人が()()()程度の低い結界を生み出す事も、稀にある。

 

今回はそのケースだった。

本来あるはずの『出入口』。結界の急所というべき脆い箇所。それが存在しないのだ。

これは、異界化させない代わりに結界全体の強度を高める方に魔力を割いたという事を意味している。

 

彼女もそれに気づいたのだが、その時点で既に敵に囲まれてしまっていた。

一人一人は大した力のない魔人たち。だがあまりに多すぎる。転移を繰り返して戦っては魔力が尽きてしまうと、既に単純な剣術及び徒手空拳での戦闘にシフトしている。

 

月明りが彼女を照らす。艶やかな黒髪が、白い光を静かに反射する。

銀のサーベルを振るいながら、魔法を、魔人そのものを、何度も何度も斬り捨てる。

体に、スーツに傷は無い。一目見ただけなら、彼女が圧倒的優位に立っていると思う者が殆どだろう。

 

しかし。

 

(―――不味い、魔力が尽きてきた……!!最初の方で魔技を多用しすぎた……いや、そもそも数が多い。その上一人一人に致命傷を負わせるには、かなりの魔力を纏って攻撃しないと効かない!コイツ等、何もしてこないと思ったらソレを狙って……!!)

 

魔力切れ。それは魔人と戦乙女の戦いにおいて、何よりもわかりやすく勝敗を決定する。

魔力を失った途端、相手に攻撃は通らなくなり、逆に相手の攻撃は100パーセント通ってしまう。そも、魔力の差があるだけで攻撃が効かないパターンもあるのだ。神器無しのリヴィがギャンガやメガロドン・デッドマンフェーズ1に攻撃できなかった事が良い例だろう。

 

刃を振るう彼女の表情が、少しずつ苦悶のモノへと変わりゆく。ジリ貧。自分が追いつめられている立場だと理解している彼女は、しかしリヴィアリーが先程のように都合よく助けに来てくれる事はないだろうという事も理解している為、下手な希望を持つ事も無く、己を振るい立たせるように声を発した。

 

「数が多い……しかし、ここで引くわけにはいかんっ!」

 

引く、なんて選択肢はそもそもない、というかできないが、武人気質な彼女にとってそのような言葉は腹の底から力の湧いてくるものだった。

事実、彼女の動きはそこから飛躍的に向上する。戦いの中で、多数の敵に対する立ち回りがメキメキ上達しているのだ。

 

必要最低限の魔力放出を行いながら戦えば、先程までの彼女の想定よりも余裕を持つ事が出来る。

 

―――勝てる!

 

彼女はそう確信した。してしまった。

だから、ほんの微かな油断が生じてしまう。

 

「がはっ!?」

 

魔人たちの間を縫い、彼女にほんの一瞬でも隙が生じるのを待ち望んでいた『魔族』が、そのゴリラのような剛腕を振るい、無防備な背中を殴りつける。

体を守る魔力が極限まで希薄になっていた彼女に、その凶悪な一撃を耐える事なんてできるはずも無く。

 

血反吐を吐く勢いで咳き込みのた打つ彼女に、焦らすように魔人たちが近づいていった。

元より守りの弱い彼女は、ソレに対し武器を手に抵抗する事なんてできるはずも無く。呆気なくその両手首を掴まれ、持ち上げられた。

 

「くっ、は、離せっ、止めろ……!!」

 

抵抗する様に身を捩るも、しかしそれはスーツによって強調されているセクシャルなボディを、より強く性的に見せるだけに過ぎず。

魔人たちは、それをまるで娼婦が裸で踊る姿を楽しむように見つめ、ニヤニヤと嗤う。

 

「おい、しっかり押さえておけよ」

 

彼女を拘束している魔人に、他の魔人が声をかける。その手は彼女の胸を掴むべく広げられ、抵抗する都度にプルプルと揺れる果実を鷲掴みにする直前まで迫る。

 

―――誰も助けに来やしない。

自分はこのまま、この男達に慰み者にされる。

 

そう絶望しかけた彼女の耳に、そして今にも彼女の体を弄ぼうとしていた男達の耳に、不可思議な音が聞えた。

 

「あん?」

「な、に……?」

 

全員の視線が、音の聞こえる方へ向かう。楽しみを邪魔された魔人たちは不機嫌そうに。未だに殴られた痛みの抜けない彼女は、くぐもった声を出す。

 

遥か遠くから聞こえる音の正体は、最初こそ誰の目にも見えなかった。

しかし、それが駆け寄ってくると、微かな音もよく聞こえるようになり、その姿も見えるようになる。

 

『キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!』

 

ループし続ける音声。それが何らかの歌である事を理解すると同時、彼らの視界の奥で明滅する光が何者かの腰辺りの光だという事に気づく。

 

それと同時に、魔人たちが魅御音に問う。

 

「っ、なんだアイツ」

「チカチカ光ってるモンを腰に巻いてるが……なんだありゃ。テメェの仲間か?」

「お、教えるわけがないだろう!」

「あー、こりゃ部外者だな。どーする?」

「はんっ、相手がなんだろうと、何人だろうと、俺達エリート部隊には敵わねぇんだよ。それをわからせてやろうぜ」

「ひゃっはーっ、そう来なくっちゃ!」

 

いきり立つ魔人たちだが、魅御音と男が全く無関係で初対面だという予想は間違いだ。

彼女は、駆け寄ってくる男の正体に気づいている。そして、だからこそわからなかった。

 

(彼は、私の胸を凝視していた謎の少年!?どうして結界の中に!?)

 

困惑する魅御音に、ダメ押しとばかりに少年は、真はバイスタンプを横に倒す。

その瞬間、リラックス気味に彼を迎撃しようとしていた魔人たちも、一気に緊張感を増す事になる。

 

「―――変身!!」

『スクランブル!』

 

カニのハサミ、ワニの顎。オレンジと銀の幻影が、彼の体を挟み込む。

そして彼の言葉通り、『変身』した。

 

『キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!』

 

土煙をあげながら、コンクリートの上を滑り、男達の前で止まる。

 

魔人たちも魅御音も即座に彼を「神器使い」と理解し、魔人の内一人が警戒心を隠そうともせずに問いかけた。

 

「……テメェ、何者だ?」

 

微かに開いている距離を埋めるように、真は歩く。

一歩ずつ、力強く地面を踏みつけ、そして己の名を答えた。

 

「仮面ライダーキマイラ。お前らの敵だ!!」

 

※―――

 

戦乙女らしき女性に、胸を凝視していたことを咎められてから少し後。

気恥ずかしさのあまり家に帰ることすら憚ってしまっていた俺に、マリアさんからメールが来た。

彼女が送ってくるメールは大抵ちょっとエッチな自撮りか、戦乙女としての連絡である。どちらにせよ重要な事に変わりはないので、慌てて確認した。

 

今回のは、後者だった。

魔人の出現告知。ここ数週間で送られ慣れたメッセージだ。

因みに、最初俺と同居する理由はあくまで「情報を即座に伝えるため」だったリヴィだが、マリアさんと俺が連絡先を交換して組織からの連絡が直接俺にくるようになったにも関わらず、なんだかんだ俺の家に居座り続けている。

それとなく「お前が無理に俺のそばにいる必要はねぇんじゃねぇの」と伝えると、反応できないスピードで手刀を喰らわされたのでそれ以来言わないようにしている。

 

さて、マリアさんから送られてきたメッセージ。つまり組織から送られてきたメッセージには、この街の地図の一箇所に赤いバツ印がついた画像と、強力な結界を確認した旨が書かれていた。

強力な結界……そう聞いて、真っ先に思い出したのは学校に現れた魔人だ。メガロドンのバイスタンプを持っていたあの男。校舎を異界化させた事といい、あの性欲増強ゴブリンといい、あいつ自身といい……かなりの強敵だった。それこそ、俺が仮面ライダーに変身できるようになってから戦ってきた敵の中で、現状一番強かったと言えるほどに。

 

ここ最近の敵が言ってしまえば手応えのないやつばかりだったから、自然と口元が緩む。俺はどうやら、バトルジャンキーらしい。

鍛えた自分の力を、仮面ライダーとしての力を実際の戦闘で使いたい……まるで父親に怪人役を任せ、仮面ライダーごっこをしていた子供の頃のような欲求が、俺の中に沸々とたぎっていた。

 

古本屋で立ち読みをしていた俺は、すぐさま地図に示された場所へ向かった。

隠しポケットにしまってあるキメラドライバーとバイスタンプを時折服の上から撫でながら、全速力で。

特訓の成果か、俺の体力は昔とは比べ物にならないレベルになった。速力も同様に、並の部活生なら比べ物にならないほどになっている。

すれ違う人々が驚いて二度見してくるのを少々心地よく思いながら走っていると、どこからともなくリヴィが現れた。

 

初めて会ったときの、フルフェイスのヘルメットと体のラインが丸わかりのボディスーツ姿である。

 

「っ、い、いつの間に」

「帰って来ないから、心配した」

「探しに来たのか?」

「もう少し遅かったら探す気だった。けど今走ってるのは、組織から送られてきたメールの指示に従ってるだけ……あなたも、マリアから送られたんでしょ?」

 

並走しながら小首を傾げるリヴィに、小さく頷く。

確かに、家から最短で目的地に向かうなら、この道を通るのが普通だろう。しかし、家からここまでどこまで距離があると思っているのか。リヴィの速度が『神速」と呼ばれるほどなのもわかっているし、変身していない自分の基礎スペックなんて一般人に毛が生えた程度だという事も重々承知しているが、やっぱり少し複雑だ。

 

「そういや、街中で戦乙女だろう女と会ったんだけど、知ってるか?」

「?おかしい。私にそういう連絡は来ていない……この街の守護を任されてるのは、私とマリア……別の人員を補充するって話なら、どちらかに連絡が送られてくるはずなのに」

「……きな臭いか?」

「別に。多分、なんらかの特殊な任務を与えられていて、この街を通過しようとしていただけだと思う。私も守護する地域を割り当てられていなかった時は、日本も海外も、色々なところを転々としたし」

「そういうもんか」

 

気分を切り替えるために、そして純粋に気になっていたということもあって、戦乙女らしきあの女性についてリヴィに尋ねてみた。

なるほど。彼女は守る地域のないフリーの戦乙女だったわけか。それで、任務を受けてこの街、あるいはこの街を経由した先にあるどこかに向かっていた……と。

 

「っと、これか」

「魔力の濃度が高い……入口も出口も封鎖するこのやり口、もしかして……」

「知り合いの魔人、なんているのか?」

「……三人だけいる。そして、この結界の貼り方をするのは、一人しか思い当たらない」

「聞くまでもねぇけど、お前が知り合いの魔人、なんて殺し損ねるくらい強いやつ、って話でいいんだよな?」

「ん。癪だけど、その三人には勝てなかった。うち一人……多分、この結界を貼った魔人だろう女は、逃げに徹してなんとか抜け出した」

「そりゃ、随分な強敵だな」

「力自体は大したものでもない。問題は、出入り口のない結界。必ず結界のどこかに発生する脆弱性のある箇所が、彼女の結界には存在しない。そして結界自体の規模がでかいから、その事実を知らずに脱出口を探すと、それだけで体力や魔力を消耗させられる」

 

よく生きて逃げ出せたな、と思うと同時、そんな結界の中に入れるのかと少し不安になる。キメラドライバーの結界破りは今のところ全部成功しているが、今回はどうだろうか。

 

目の前の空間の揺らぎに、リヴィが頷くのを確認してからドライバーを近づける。すると、いつもの結界と同様に、ドライバーを避けるようにして穴が開いていった。

リヴィが先に中に入り、俺も後からついていく。結界と外の境界にあたる部分を歩き抜けると、リヴィが肩を震わせた。結界内部に足を踏み入れて直ぐに、何かを探知したようだ。

 

「どうした?」

「………この気配、やっぱり『悪辣』」

「悪辣?」

「組織が識別名をつけるくらいに強い魔人、って認識で良い。ヴィヴィアンという女だけど……この魔力のうねり、もう戦闘が始まってる」

「まじか!」

 

あの人がどれくらい強いのかわからないが、あまり良い状況と言えない事は確かだろう。ドライバーを装着し、今のうちに変身してしまおうとした俺の前に、突如黒い影の集団が現れる。シルエット的には、ライオンか。タテガミに似たモノが揺らいでいるのが見える。

 

「魔族か。リヴィ、コイツらは俺が何とかする。お前は先に『悪辣』とかいうヤツの所に向かえ」

「ん。任せた」

 

神器を鞘から抜き、そして姿が掻き消える。しかし魔族が斬られると言った事は無く、ただその場を離脱しただけということがわかる。

魔族たちはリヴィが居なくなった事に対して特に反応を示さず、俺ににじり寄ってくる。

 

狙いは俺、ってわけか。好都合だ。

 

「キメラドライバー!……なんつって」

『ツインキメラ!』

 

キメラドライバーを装着し、バイスタンプの天面を押す。いつも通りの変身フェーズ。だが敵にとっては目新しいモノだ。

だから警戒されて、誰も近づいてこない状況ができる。それは仮面ライダーやスーパー戦隊のお約束、変身を待つ敵、という現象を現実のものにする。

 

『キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!』

「変身!」

『スクランブル!』

 

※―――

 

(アレは………なんだ??)

 

未だ立つこともままならない程に疲弊しきっている彼女の目には、オレンジと銀の装甲を身に纏った男が魔人達を薙ぎ払う姿が映っている。

キマイラ、と名乗ったその存在は、昼間彼女の胸を凝視していた少年。はっきり言って、その時と今の彼は別人のようだった。

 

「くそっ、舐めてんじゃねぇぞ神器持ちが!」

「いいや、神器使()()、らしいぜ」

『キングクラブエッジ!』

 

銀色のハサミが、周囲の魔人を爆散させる。圧倒的なパワー。並の神器では再現でき無いような光景に、知らず魅御音は息を呑んだ。

あれほどに強力な神器が存在していたのか、という驚愕と、それを扱う彼の技量の高さに対する賞賛。自分を捕らえていた魔人すら彼の下へ向かい呆気なく倒され、自由の身になった彼女は、見える範囲の魔人がいなくなったこともあって、彼に声をかけた。

 

「き、キマイラ、殿?」

「……かしこまった呼び方をされると何だかなぁ……んんっ、ご無事ですか?」

「あ、あぁ。一撃もらったが、大したものじゃ無い。連中も私を辱めるのが目的だったようだし、内臓なんかに損傷が、ということも無い。改めて、助かった」

「なら良かった」

 

変身解除し、魅御音へと近づく。少し気まずそうな顔を見せつつも、手を伸ばして「立てるか?」と言外に尋ねた。

魅御音は首を横に振って答え、まだ動けそうに無いと返す。

 

「えっと、さっきはキマイラって名乗ったけど、本名は天谷真って言います」

「天谷、真?どこかで聞いたような気がするが……私は華麗山魅御音。華麗山家の次期当主であり、戦乙女だ」

 

会話が途切れる。ひたすら気まずそうな顔をしている真に、魅御音は困惑した。

何かあったのだろうか。敵の攻撃で、服が損傷したか?それとも、別の何かが……と、そこまで考えて、思い当たる節があった。

 

「あぁ、昼間私の胸を凝視していた事なら気にしなくとも良い。そういった視線にはもう慣れたし、君は他の男よりも下卑た感じでは無かったからな。それと敬語も不要だ。歳の頃は恐らく大して変わらない」

「っ、お、覚えてたか。そりゃ当然だろーけど………うん、でもやっぱりごめん。多少は不快だったろうし。てっきり俺が神器使いだから、戦乙女として接触してきた……なんて思ってたから」

「組織からは特に君の事は聞いていなかったな……その口ぶりだと、私よりも前に君に接触した戦乙女がいるようだが、その人は?」

 

警戒されないようにサーベルを手に持つ。今自分を助けてくれた恩人だが、まだどんな人間かわからない以上、戦乙女を知っていながら組織に知られていない彼は、もしかしたら自身に関わった戦乙女を始末したのでは?と考えてしまったのだ。

真はそんな彼女に「警戒されてんな、多分」と内心思いながら、特に隠す事なく伝える。

 

「リヴィ……この街の守護をやってる戦乙女と、その友人のマリアって人にだけ会った。神器使いとして二人に協力してるし、今この結界の中にいるのもマリアさん経由で組織からの連絡を受けたからで……」

「り、リヴィアリー・フラスベルに、水城マリア!?いや、この街を担当しているのは確かにその二人だし、あの二人なら神器を完全に確保した訳でもなければ特に報告はしないだろう。すまないな、少し警戒してしまった」

「仕方ないとは思うし、気にもして無い。ただ、あの二人ってそんなに有名なのか?」

 

隠し持っていたサーベルを置き頭を下げた魅御音は、真の言葉に「何を言ってるんだ」と驚く。

あまりの驚きように、真の方も「何か変なこと言ったかなぁ」とバツの悪そうな顔をした。

 

「リヴィアリー・フラスベルは『神速』の二つ名を持つ最速の戦乙女!それだけでなく、戦場を舞う銀雪の異名を敵から与えられる程に強かで、様々な魔人、魔族を討ち滅ぼしてきた経歴を持つ。私たち戦乙女たちが、憧れ、嫉妬し、目指す者の一人だ!水城マリアは直接本人が戦場に立ち武勲を上げるタイプではないが、その尋問、拷問の技術や戦術の考案などで活躍し、孤高の存在である『神速』が唯一心を許す相手としても知られている。強大な魔人、魔族の出現が多かったこの街が比較的平和になったのも、彼女達二人がこの街の守護をしているからこそ、と言われている!それを知らないだと?いや、本人としか会っていないなら言われていないかもしれないが!だが釈然としないな。あの二人と知り合い、その上協力者だと?確かに貴様の神器は強力だろうが……そもそもあの『神速』を愛称で呼ぶとは何事か!」

「え、えー……でも本人がそう呼べって言ってくるし、言わないと怒るし」

 

面倒な厄介オタクに話を聞いてしまった、と若干後退さりつつ、事実を伝える。

実際リヴィアリーは真にリヴィと呼ばれたがっているし、それ以外で呼ばれると不機嫌になる(本人曰く、愛称以外で呼ばれると胸の奥にモヤモヤした寂しさのようなものが湧いてくるとのこと)のだが、噂で若干神格化されつつあるリヴィアリーしか知らない魅御音にとっては、あからさまな嘘をつかれているとしか思えないのだった。

 

「そんなはずがあるか!あの『神速』が、そんな恋する乙女みたいな真似をするわけないだろう!」

 

実際彼女は恋する乙女であるが、同時に恋を知らない少女でもあるのでそこら辺は複雑である。惚れた相手が自己肯定感低い上に鈍感というラノベ主人公御用達の属性持ちなのも相まって、進展と呼べる進展をしていないのがミソだ。

 

「まぁ、愛称云々は戯言としても、他は恐らく事実だろう。神器使いな上、その出力。あれほどの戦闘を終えてもまだ余裕が有り余っているようだし、戦闘時の体運びなんかも熟練のそれと比べて遜色ない。『神速』や水城マリアと肩を並べて、というほどではないだろうが、その手伝いくらいはできているのだろうな」

「本当なんだけどな……別にいいけど」

 

戯言扱いされたのを流したのは、自信のなかった体術を褒められて気分が良くなったからではない。決して。

 

微かに上機嫌になった真は、改めて「立てるか?」と問う。魅御音を放っておくわけにもいかないし、かといって過去にリヴィアリー自身が敗走したという相手と一対一のままにさせておくのも危険だと考えたからだ。

結界の中に入ってから魔族だったり魔人だったりと連戦続きではあるが、まだ彼は体力が有り余っている。最悪彼女が立てなければ背負って運び、目の届く場所に置いた上でリヴィアリーに助太刀しようと考えていた。

 

だが、魅御音もかなり回復したらしく、問題ない、の一言と共に立ち上がった。

 

「大丈夫そうだな。俺はこのままリヴィの手助けに向かうけど、お前はどうする?」

「あの孤高の存在に、助力はかえって足を引っ張るだけだとは思うが……私は元々、ここで得た情報を組織に伝えるべく、帰還する予定だった。敗走という形にはなるがな。だが、組織に戻るための魔力も尽きているし、そもそもこの結界に出口の類は見当たらない。いや待て、出口がないなら入口もないはずだ。なのになぜ貴様はここに?」

「俺の神器、どうも結界を破る力もあるっぽくってさ。リヴィと俺はそれを使って入ってきたってわけ。だから、出るんなら結界に穴開けるくらいできるぞ?」

 

真に一度訝しむような視線を向けた後、彼が嘘をついていない事を表情や様子から理解し、顎に指を当てて考え込む。

自分は今どうすべきか。魔力のない自分が残っていても足手纏いになるだけだが、かといって組織に瞬時に帰還できない以上外に出るメリットもない。

なら、ここに残って魔力の回復に専念し、仮に二人が敗北するような事があれば、それを回収して離脱する……という役割を担うのが最適では無いか。

 

「いや、私も共に行こう。戦闘に参加することはできないが、相手は神器持ちの『悪辣』。貴様ら二人でも敵わなかった場合、私の『魔技』で逃げられるようにしておいた方が良い」

「そうか。ならさっさと向かおうぜ」

「……あぁ」

 

走り出した真に、少し遅れてついていく。

その表情に見える微かな翳りは、これから再びその姿を見ることになる彼女への羨望と嫉妬。

 

(リヴィアリー・フラスベル……私が憧れ、そして憎んだ戦乙女。きっと彼女は、私の事など)

 

覚えていないだろうな、きっと。

 

口の中でそっと呟いたその言葉は、誰にも聞こえることはなかった。




リヴィが顔と名前を覚えている相手は自分が過去に敗北した相手とマリアと真、後は家族くらいです。

キメラドライバー関連以外のアイテムで登場させたい物があるのですがよろしいでしょうか

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  • 分からない(好きにして良い)
  • たぶん良い部分的に良い
  • たぶん悪い出すべきではない
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