買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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久しぶりに戦闘シーン書いたら下手過ぎて笑った。

クリスマスの性の六時間を犠牲にしたこの作品、同じくパートナー無しの同志達へ届け……!!


深紅の暴虐!屈辱の敗北!

「しかし、私にもようやく回って来ましたねぇ。ツキってヤツが。『神速』殺せれば御の字って思ってましたけど、まさか華麗山の女もキマイラもいるなんて」

 

近づいてくる敵に、俺は少し後退る。

クリムゾンベイル。アイテム自体は神器なのだろうが、恐らくそのスペックは変わりないはず。

 

テレビ本編では一度しか登場しなかったクリムゾンベイルは、ベイルという悪魔がとある男を殺す為に変身を遂げたライダー(?)だ。なぜ疑問符なのか、の話とか、とある男とは、とかの話をすると長くなるので省略する。

とにかく今わかってもらいたいのは、クリムゾンベイルは『復讐』の為に変身されるライダーであり、そしてその力がとても強大であるという事だ。

 

「……神器使いの、魔人?」

「お初にお目にかかります。私はディゴリー様により派遣された魔人。名は――――ベイル」

 

そう名乗っておきましょう、と、ヤツは恭しく頭を下げた。

三体一という状況でありながら、どこまでも余裕な態度。それほどに自信があるのか、はたまた何か隠し玉があるのか。

 

警戒する俺達に、ベイルは手に持ったクリムゾンベイルバイスタンプを微かに揺らし、突然攻撃してきた。

 

「ッ、リヴィ!!」

 

最初に狙われたのは、真正面に立つ俺ではなくリヴィ。

振るわれたバイスタンプから黒い線が飛び出し、飛び道具のように彼女を襲った。

リヴィは瞬時に刃でソレを迎撃しようとするが、受けきれずに倒れる。

 

「お仲間さんの心配、している場合ですかぁ?」

 

リヴィに気を取られていた俺に、いつの間にか目の前まで迫っていたベイルが拳と共にバイスタンプを振り下ろす。黒い軌跡と共に襲い掛かるソレを、俺は咄嗟に腕で防ぐ。

 

凄まじい衝撃と痛み。デッドマンや上位ゴブリンだって、ここまでの攻撃はしてこなかった。

強い。ふざけたヤツだとは思うが、強者であるのも事実。

 

バイスタンプを横に倒し、空いた手で敵の腕を掴む。

 

『キングクラブエッジ!』

 

逃がす者かと腕を強く掴みながら、必殺技を発動。ハサミのエフェクトと共に振るわれた俺の拳は、ベイルに直撃した。

微かなうめき声が聞こえ、俺は予想以上にダメージが少ない事への驚きと、一先ず一発は叩き込めたという高揚が混ざった感情を覚えた。

 

だが残心も放心もしていられない。まだ敵は余裕さを余している。

もう一発くらい、と再びバイスタンプに手をかけて、同時に蹴り飛ばされた。

 

「今のは結構痛かったですねぇ~……け、ど。解放してその程度なら、結構簡単に倒しきれそうですね」

「そうとも限らない」

「私達の事を忘れてもらっては困るな!」

 

攻撃の当たった部分を撫で摩るベイルを、背後からリヴィと魅御音先輩が強襲する。既に刃は振り下ろされており、回避は困難……かと思われたが、ベイルはソレを振り向くことなく回避し、カウンター気味に二人を殴りつけた。

 

「忘れてませんよぉ~?っていうか、魔力でバレバレです。片や二つ名持ち、片や格闘術の開祖……の、一門だっていうのに、この程度ですかぁ?」

「ぐっ……舐めるな!!」

 

魅御音先輩がサーベルを投擲し、そのまま駆け出す。ベイルは飛来するサーベルを最低限の動作で回避し、先輩の蹴りをも回避して足を掴み、放り投げた。

 

「ふふふ、舐めるなって言う割には、ですねぇ。弱い弱い。ハンデでもあげちゃいたいくらい―――ぐぅっ!?」

「油断禁物」

 

リヴィの、音速すら遥か及ばない程の一撃が、ベイルを背後から襲う。

そう。魅御音先輩がサーベルを投げ、視線誘導した瞬間。同時にリヴィは魔力を極限まで希薄にして、その場を離れていたのだ。

後は自分が最高速度になるまで加速して、相手の隙を穿つだけ。彼女らしく、そして強力な一撃がベイルに苦悶の声をあげさせた。

 

よろめいた彼女に、頭上に転移した先輩の飛び蹴りが突き刺さる。ダメ押しするかのようなその一撃に、ベイルは地面に倒れ込んだ。

 

「あぐっ!?」

「強力な神器を手に入れて舞い上がっていたようだが、どうやら貴様には場数が足りなかったみたいだな。ある程度の経験があれば、魔技を確認する前に慢心する事は無いはずだ」

 

サーベルを手の中に呼び寄せ、ベイルの装甲に突き立てる。魔力をかなり纏ったソレは、しかし装甲に突き刺さることも、傷跡を残す事も無い。

だが、どちらが優位に立っているか。ソレを示すには、効果的だった。

 

「しかし本当に堅牢だな……私のサーベルは、神器ではないがそれなりの魔力を込めて作られた武器だというのに」

「『一気呵成』から魔力を大量に引き出して、ぶつけるとか?」

 

動かなくなったベイルを、どうやって仕留めるかと話し合う二人。

一見油断しているように見えるが、しかし隙は一切生じていない。これも経験、というヤツなのだろう。

 

「俺がやるよ。必殺技か……最悪マッドリミックスでもすれば、クリムゾンベイルの装甲でも貫けるはずだ」

「クリムゾンベイル?」

「あぁ、その神器を使って変身した後の事はそう言うんだ。俺のキマイラと同じ作品に出てたヤツだから、良く知ってる」

「さく、ひん?……それって」

「へぇー、知ってるんですか。()()()()()()()()()()

 

緊張感の欠片も無い声が、リヴィの言葉を遮る。

視線を向けると、踏みつけられ、刃を突きつけられているベイルが、ケラケラと笑っていた。

 

「そう言えばキマイラ、何かで聞いた事あるなぁって思ってたんです。今やっと思い出しました。確か映画の予告に出てましたよね、そのドライバー」

「お前も知ってるのか」

「えぇ。映画までは見てませんけど、テレビの方は軽ーく」

 

弟が、見ていたので。

 

多分聞かせるつもりは無かったのであろう呟きの後、ベイルはバイスタンプをカチャカチャと動かして弄びながら、言葉を続けた。

 

「見たり見てなかったりしてましたけど、コレが出てくる回はちょーど見てましたよ、私。だから、えぇ。―――使い方は、よーく知ってまぁす♡」

 

言い終わるや否や、ベイルはバイスタンプのローラー部分を手のひらで回転させた。

リヴィや先輩は勿論、その行動の意味が分かる俺は唐突なソレに一瞬だけ硬直しながらも、止めるべく行動する。

 

―――が、遅い。

 

『ベイルアップ』

 

赤黒いオーラをまき散らしながら、ローラーは三度の回転を迎える。

そしてソレは、クリムゾンベイルの『必殺技』の準備ができた事を意味している。

 

「クソッ、二人とも離れて!」

『クロコダイルエッジ!』

 

俺の言葉に従い飛び退いたリヴィ達と入れ替わる様にベイルへ接近し、足にオレンジ色のオーラを纏わせて蹴りを放つ。

倒せるなんて思っていない。ただ必殺技でノックバックを狙い、必殺技を外させることを狙っただけだ。

 

だが、ソレすら敵わなかった。

俺の蹴りがベイルのボディを襲うよりも先に、クリムゾンベイルバイスタンプのトリガーが引かれ、荘厳さと怪しさを兼ね備えたコーラスが途絶える。

 

『クリムゾンインパクト!』

「無駄ですよッ!!」

 

体を捻り、起き上がる動作の勢いのまま、俺の蹴りに拳をぶつけて来る。一瞬の膠着状態が訪れるも、即座にこちらが()()()()()

 

必殺技同士の衝突に敗北した俺の体は宙を浮き、吹っ飛ばされた。

地面を転がり、微かな眩暈に襲われながらも起き上がった俺の目には、やはり余裕な態度のままのベイルが立っているのが映った。

 

「実際の作品ではどうなのか知りませんけど、どうやら神器だとクリムゾンベイルの方が出力は上みたいですね。貴方の必殺技、どっちも普通の打撃程度にしか響きませんでしたよ?」

 

煽るような言葉に、何も言い返す事が出来ない。

仮面ライダーは、スペックが全てじゃない。思いの力で窮地を脱する事なんてザラだ。

だがそれを踏まえた上でも、このスペック差は不味い。

 

相手に入っているダメージに関してはわからないにしても、こちらが受けるダメージが大きすぎる。今まで格上との戦いは、なんだかんだこちらの防御力は相手の攻撃を何度受けても戦闘継続可能なレベルだった。だからこそ精神力で勝利を掴む事が出来たし、これからもキマイラの装甲があればある程度戦いにはなるだろうと、どこか楽観視している自分がいた。

 

しかしベイルは、俺の頼みの綱でもある装甲などお構いなしに高威力の一撃を連発してくる。

いくらリヴィや先輩に鍛えてもらって体術も身についたとは言え、装甲があるからと回避自体は後回し気味だった今の俺には、正直勝ちきれる自信がない。

 

とはいえ、逃げる訳にも諦める訳にもいかないし、絶望するのはやれることを全部やり尽くしてから、だが。

 

「さーて。そろそろ貴方達で遊ぶのもつまらなくなってきましたしー……止め、刺しちゃいますねー?」

『ベイルアップ』

 

再びローラーを三回転させたベイルに、俺は無言でバイスタンプを横に倒し、天面のボタンを押してから再び倒した。

 

『マッドリミックス!』

『必殺!カオス!ツインキメラチャージ!』

 

突然濁流のようにエネルギーが供給される感覚に眉を顰めながらも、しかし過去に比べ余裕を持って発動できるようになったマッドリミックス。

目で見える範囲の装甲がより生物的に、より刺々しく変貌を遂げた事を確認して、すぐさまバイスタンプを倒す。

 

やれることを、やれるだけ。

マッドリミックス状態の必殺技……現時点で俺が出せる最大火力。ソレを只管撃ちこむ。

 

幸い、相手の動きを見ているとそこまで手練れているようには見えない。先輩達が言っていた通り、場数が足りないのだろう。

 

「二人とも、一緒に行くぞ!!」

「ん」

「あぁ!」

『ツインキメラエッジ!!』

「おぉっと、流石にこれは不味いかも?」

『クリムゾンインパクト!』

 

わざとらしい言葉と共にトリガーを引くベイルに、俺達の攻撃が一斉に襲い掛かる。

同時攻撃は流石に防げないだろう。誰か一人、或いは二人を防げても、三人目の攻撃は確実に通る……そう思っていた。

 

だが、ベイルはまずリヴィの攻撃を手で逸らし、ボディにバイスタンプを持った手で殴りつけ彼女を無力化した後、その場で左足を軸に回転し、殴りつけた勢いのまま隣の先輩のボディも殴りつける。

そのまま俺の攻撃が当たる範囲から少し離れたベイルは一度止まり、押印面を手の甲に押し込んだ。

 

『クリムゾンフィニッシュ!!』

 

そしてさらに圧を増したクリムゾンベイルバイスタンプを俺へと振るい、再び蹴りと衝突した。

 

今度は、先程よりも長い間拮抗する。

しかし結果は同じく、俺が押し返される形で終わった。

 

「ぐぁっ!?」

「あっははは!弱い、弱すぎですよぉ、三人とも。あぁ、こういう時は―――ざぁ~こ♡って言うんでしたっけ。んふ、んっふふふ!ざぁこざぁこ、ざぁ~っこ♡」

 

嘲笑う姿はあくまでクリムゾンベイルなのだが、そのシュールさに笑う事すらできない。

マッドリミックスは既に解除され、恐らく必殺技を後一度撃つだけで変身が解けてしまうだろう。

 

視線を巡らせる。フラフラしながら起き上がるリヴィと先輩をすぐに見つけたが、彼女達は軽装甲でありながら必殺技をモロに喰らった直後。俺同様、戦闘はもう不可能と見た方が良いだろう。

 

……じゃあ、どうする?

救援は呼んでいない。逃げてもその先に何がある?そもそも、逃げられるか?

かといって立ち向かえば死を早めるだけ。まさに絶体絶命。ひっくり返す手段を、何とかして探さなくては。

 

頭が痛くなるくらい考える。どうする、どうすれば生き延びられる。せめて俺は無理でも、リヴィと先輩を逃がすには?

殿なんて務まらない事は既にわかっている。そもそもキメラドライバー無しじゃすぐに結界から抜け出す事は困難。

じゃあ一緒に逃げる?だとしてもマッドリミックス中でも無い俺は足手まといにしかならない。

 

詰み。

その二文字が脳裏をよぎる。

どうすれば良い、どうすれば良い……と固まる俺のすぐそばに、ベイルは迫っていた。

気づかなかった。気づいていても、特に何が出来るという訳でも無かっただろうが。

 

「全員殺すのは決定事項ですけど、この出力差じゃドライバーも壊しちゃいそうですし。まずは外しますねー?」

「っ、そうはいくか!」

 

必殺技が使えない以上、真正面から抵抗するわけにはいかない。咄嗟に後方へ飛び退き、ゴロゴロと地面を転がるようにしながら距離をとる。

そんな俺の必死の抵抗が無様で面白いらしく、ベイルはさらに上機嫌になる。

 

「ふふ、ふふふふっ!面白いですねぇ、貴方()。新しい玩具を手に入れた感じでさいこーです」

「……へぇ、気に入ってくれたなら、いっそ見逃してみるとかどーよ」

「それはダメです。私も、嫌々ですけど命令されているのでねー。殺さないで家に持ち帰ってお人形さんにするのもありかもですけどー」

 

じりじりと近づいてくるベイルに、仮面の下では汗がダラダラだ。

せめてこの隙にリヴィと先輩に逃げてもらいたい、と思い視線を一瞬だけ向けるも、二人は立ち上がっているのがやっとらしく、俺の方を悔しそうに見ているだけだ。

 

「じゃ、ドライバー。貰いますねー」

 

ついに逃げ場を失った俺のドライバーに、ベイルが手を伸ばし。

 

その動きが、突然停止する。

 

「っ、はい。何か御用でしょうか、ディゴリー様―――って、なんだセドリック様ですか。今いい所だったんですけど、それを遮るような用件ってなんですかぁ?」

 

電話に出ているかのように、虚空に話しかける。その言葉の中に出てきた『ディゴリー』『セドリック』という言葉に聞き覚えがあり驚くも、ソレに気づく事なんて無くベイルは話し続ける。

 

「えぇ?嫌ですよそんなめんどくさい。ていうか私今戦闘中なんですけど?ディゴリー様最優先じゃないんですかー?……はぁ、なるほど?ふーん、へー、あっそ。私には関係ないじゃないですか――――は?」

 

面倒くさそうに手をプラプラと遊ばせながら会話を続けていたベイルだったが、突然雰囲気が変わった。

 

「へぇ、いいじゃないですか。ははは、あははははは。面白い事言いますね、ワタぶちまけたいんですか?……チッ、あーあーあー!わかりましたよ!そっち優先すりゃいいんでしょ?もう声も聞きたくないんでさっさと切ってくださぁい」

 

乱暴に会話を止めたベイルは、不機嫌そうにこちらに向き直ると、大きく鼻で息を吐くような声を漏らしてからこう言ってきた。

 

「ま、今の聞いててわかったと思いますけど。私急用ができたんで帰ります。次会う日もそう遠くない……と言いたいですけど、どうせ用事長引きそうですしぃ。執行猶予ってヤツです。せいぜい身近な人にお別れでも伝えるのに時間を使えばいいんじゃないですかぁ?―――特に『神速』」

「……な、に?」

 

意味深な言葉に、リヴィが首を傾げる。それを一瞥し、つまらなそうに鼻を鳴らしたアイツは、俺達なんてどうでも良いというように、その場を離れて行った。

 

―――どうやら、本当に見逃されたらしい。

訳が分からないが、助かった、ようだ。

 

変身を解除し、無理して立っていた俺達は全員へたりこむ。

 

今までが順調すぎたのか、はたまたベイルが強すぎたのか。

どちらにせよ、殆ど抵抗する間も無くやられた。ソレが事実で、ソレが現実だった。

 

「……畜生ッ!!!」

 

悔しさのあまり、拳を地面に叩きつけて叫ぶ。

 

結界の消えた空は、腹立たしい位に真っ青だった。





クリスマスに全く関係ない話だったので、ここにクリスマス特別回と称して簡単な短い文章だけ書きます。
日常回です。誰も死にません。シャケも出ません。





【クリぼっちが報われる時】

「……真」
「んー?どしたー?」

部屋でゴロゴロしていると、時折リヴィは俺の名前を呼んでくる。大抵は呼んでいる漫画の用語がわからないとか、小説の感想を語り合いたいとかで、今回もそうなんだろうなぁと勝手に思っていた。

間延びした声で返事をすると、リヴィは俺のすぐそばまで移動し、真剣な目で俺の顔を覗き込んできた。
ただならぬ様子に、一体どうしたと体を起こす。

「聞きたいことがある」
「……お、おう?」

なんだろう。何か気になる事でもあっただろうか。

「真は、去年のクリスマス、誰かと一緒に過ごした?」
「リヴィは俺を殺したいのか?」

半食い気味に答える。
なんだ、その質問は。その聞き方でするような内容じゃないだろう。
そしてソレをよりによって俺に聞くか。彼女無し歴=年齢の俺に。

俺の言葉に、リヴィは「そう」とだけ呟いて、足早にその場を去って行った。
そう、去って行ったのだ。特に何を言うでも、するでも、理由を話すでも何でもなく。

「え、いや何!?怖い!怖いんだけど!?」

※―――

で、それが約四時間前の事。
もしかしたらこれが、俺が今目を隠すように布で覆われ、椅子に拘束されている原因なのかもなぁとなんとなく思った。

「え、いや何!?怖い!怖いんだけど!?」

四時間前と同じセリフを吐く。
何故俺は自室で拘束されているのか。全く訳が分からなかった。

周囲の音から何が起きようとしているのか探ろうとするも、衣擦れのような音ばかり聞こえる。なんだろう、首を絞める用のロープでも結んでいるとか?いや、なんで俺は自宅で絞殺される可能性を浮かべているんだ。

「大丈夫、悪い事はしない。ただ、少し準備を待ってほしかっただけ」
「は、はぁ?何言ってんだよ。ってか今までどこ行って」
「マリアの所」

リヴィの声が聞える。その間も衣擦れのような音は止まらず、ジッパーを閉じるような音まで聞こえてきた。

これは……着替えている?

「ま、マリアさんの所?一体どういう……」
「ん、準備できた。それじゃあ、外す」

その言葉の後、リヴィが俺の背後に回った気配を感じ、そしてすぐに目隠しが外された。
瞬間、視界が一瞬白一面に染まる。眩しさに目を細めながら、ゆっくりと開くと、そこは普通の部屋。

準備とか言っておきながら何もないじゃないか、そう言おうと思った瞬間、平常と同じ状態に戻った俺の視界に、リヴィが映り込んだ。

「えっ」
「じゃーん……どう?」

どう?
そう聞いてくるリヴィは、予想外の姿をしていた。

まずは赤。服は赤の一色だった。首元とかに白いモコモコが付いているが、それにしても赤い。円柱の帽子を被っているが、それも赤だ。
服はサイズが合っていないのか、彼女の普通に比べ大きすぎる胸が胸元を大きく押し上げ、健康的な肌と谷間、そして小さな黒子が見えてしまっている。
下の方も、健康的でむっちりした太ももが、限界まで大胆に露出している。

これは、ミニスカサンタ、というべきだろう。ボディコンのようにも見えるが、見た目にはミニスカサンタコスだ。彼女の銀髪が、より冬の感じと合っていて、つい見惚れてしまう。

「……あまり、気に入らなかった?」
「い、いやいやすっげぇ良いと思う!―――ってそうじゃなくって。い、いきなりなんだよその恰好」
「良いと思う?ふふっ、なら良かった。………読んでたライトノベルに、クリスマスの話が出てて。家族以外とクリスマスを過ごした事の無い主人公に、ヒロイン達がこんな感じの恰好をしてたから……やってみた」
「あ、あぁー……アレか」

覚えている。俺の好きな日常系のラノベにそんなシーンがあった。
なるほど、だからあの質問で、この衣装か。イラストもまだ覚えているくらい印象強い回だった。ヒロインの一人が、ちょっと暴走してな。

まぁそれはさておき、覚えているからこそ言える事が一つある。
それは、あの作品随一のスタイルを誇るヒロインすら、ここまでムッチムチでパッツパツな感じにはなっていなかったという事だ。
あまりリヴィをそういう目で見たくないけど、流石にスケベが過ぎる。俺の理性をどこまで破壊すれば気が済むんだ。

「因みに後ろ姿はこんな感じ」
「ッ、お、おぉ」

胸が凄い事はわかっていたが、尻もすげぇ。真っ先に抱いた感想がソレだった。俺はもうダメかもしれない。

ギリギリ下着は見えない物の、所謂パンティーラインというのは透けて見える。あの尻はダメだろう。無自覚にオスを誘っているとしか思えない。
背中のラインも抜群だ。肉付きが良すぎるでも、勿論悪いでもない。装飾は前に比べ控えめだが、腰回りに緑のリボンが結んであるのが可愛らしい。

「その様子だと、気に入ってくれたみたい」
「あ、あぁ。すっごく良かった。それはもう、すごく」

赤べこ並に首を上下させる俺に、リヴィは満足そうに口元を緩めると、やや歩きにくそうにしつつも俺に近づき、足と手の拘束を外した。

「じゃあ、次はパーティ」
「え、料理とか用意してあんの?」

首を横に振るう。どうやら料理は無いらしい。
てっきりこのまま一足遅れのクリスマスパーティかと思ったが、違うようだ。

困惑する俺に、リヴィはこっそりと深呼吸をしてから、ずいと身を寄せてきた。
ほぼゼロ距離。俺の方が背が高いために、胸元がよく見える。

いや違う。これは……見せて、きている?

「真」
「お、おぅ?」
「………ツイスターゲームって、知ってる?」

良し、俺。断れ。絶対だぞ。

※―――

『左手、赤』
「んっ……これ、結構キツい、かも」

断れなかったぜ俺。

コスプレ衣装同様、どこから仕入れてきたのかわからないツイスターのマットと専用アプリ(画面をタップすると、音声が次の行動をアナウンスしてくれる)を持ちだしたリヴィに押し切られる形で……とはいえどこか期待しながら、俺はツイスターゲームに興じる事になった。

既に両手両足が各色についており、今は根競べの状態。
なお今リヴィが左手を赤に乗せるために動いた結果、その凶悪な胸が俺に押し当てられることになった。
擬音で表現するなら、ムギュッ、といった感じ。全力で舌を噛んで勃起を回避しているが、限界も近い。次の指示でコイツからうまく離れなければ、俺は限界を迎えるだろう。

「わ、悪いリヴィ。押すのやってもらっていいか?位置的に、届かねぇんだ」
「ん。わかった」
『右足、緑』
「み、緑?」

指示に従い、まずは色を探す。押し当てられている胸は勿論だが、仰け反るようなポーズになってしまっている現状、素でこの格好がキツイ。色を探すのも精一杯だ。リヴィの胸に視線が誘導されるし。俺そこまでおっぱいスキーじゃないのに。

自分が触れている色から緑の位置を確かめ、いざ足を動かそうとして気づく。
これ、絶対リヴィに足を絡める形になるじゃん、と。
俺は仰け反り、リヴィはうつ伏せ(伏せてはいないが下向きという事だ)の状態で、リヴィは『左手赤、右手青、左足青、右足黄』、俺は『左手青、右手赤、左足青、右足赤』だった。
そこから右足を赤から緑へ動かす場合、どう頑張っても確実にリヴィの下腹部を俺の足……主に膝が撫でる事になる。
そうなった場合、そもそもこの体がほぼ浮き出ているような恰好はアウトだし、何なら敏感なリヴィは確実に悩まし気な吐息を溢す。

問題です。俺にソレを耐える事が出来るでしょうか。

「む、無理だ!リヴィに足が当たったりしたら―――」
「?別に良いけど」

俺が良くない。

ってか顔近良ッ!?顔良ッ!まつ毛長いし目は綺麗な青色だし唇なんかプルプルでピンク色で……!!

どんどんと加速する鼓動がうるさい。リヴィはいつまでも動かない俺に不思議そうな顔を見せるが、それすら可愛い。

「……お、俺の負けってコトで」
「駄目。せめて動かして」
「えぇ……」

目を逸らしながら頼むも、即却下。

仕方ない。覚悟を決めろ俺。リヴィがどんな声を出しても、リヴィのどこに触れても、平常心だ平常心。

意を決して足を動かす。当たらない様にと、全身を動かして上手く緑色の丸の上に乗せ―――。

「ん、ふ、んんぅ……ぁっ、ぁ、あぁ……っ!?」
「いや無理ッ!!」

何時までも耳元で聞こえるリヴィの喘ぎ声に似た吐息に限界を迎え、俺は崩れ落ちた。
しかし釈然としない。俺の膝は、最新の注意を払ったがために彼女のどこにも触れていない。だというのに、なぜリヴィはあんなに喘ぐような声を出していたというのか。

まさか、それが作戦?と、俺の敗北と同時に普通に座り込んだリヴィを注視する。
頬を赤く染め、少し大きく呼吸をしている彼女は、本当に何かを感じていたように見える。

そんなはずは、と彼女の体の方に視線を向けたその時。
俺は、気づいた。

彼女の大きな胸によって、服が弾けんばかりに圧迫されている事は既に話していただろう。
だがしかし、その胸元にちょっとした、しかし俺にとっては超重大な変化があった。

胸の、恐らくは先端辺り。やや上の部分に、今までは無かったはずの影。
胸全体に比べれば小さい物の、そこそこ大きなふくらみが、両方の胸に一つずつできていた。
そしてそのふくらみは、俺の体にずっと当たっていた左胸の物の方が微かに大きく、より形がはっきりとしていて。

「……あっ」

これは、推測に過ぎないが。

下半身に注意を払い過ぎたあまり、元々触れている胸に関しては意識しないようにしていた俺が、気づかぬうちに彼女の胸の、一番敏感な部分を知らず知らずのうちに刺激してしまっていたのではないか。
そう言えば、背中を見た時にパンツは透けていたが、ブラジャーは終ぞ透けて見えなかったような。

ノーブラで、あの質感の服で、ちょうど俺の肩辺り……刺激を与えるには丁度良いだろう部分で、モゾモゾと()()()()
だから今、彼女のソレが服の上からでもわかるくらいコリコリに―――。

「真」
「っ、は、はい!!」
「…………もう一戦、する?」

濡れた瞳を向けて来るリヴィに、俺はどう返すのが正解だったのだろうか。
それは、いつまでもわかる事は無いだろう。
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