買った玩具が本物だった話 作:うぉっ、でっか…
仮面ライダーリバイス、という作品がある。
悪魔と契約、家族とは、正義とは……みたいなテーマが色々混ざった作品だ。個人的には最初の頃が面白かった分後半の雰囲気や流れが残念に感じた物の、とにかく面白い作品だった。まぁ、作品の内容は今はどうでも良い。個人の感想なんざ誰も聞きたくはないだろう。
俺の今からする話に重要なのは、あくまでその『仮面ライダーリバイス』に登場する変身アイテムの玩具。音が鳴って、光って、子供も大人も楽しめる玩具の話。所謂
DXキメラドライバー。ネットでしか販売していない玩具で、実質三つのバイスタンプ(リバイス全編を通して使われるアイテムだ)とドライバー本体、そしてバイスタンプやドライバーに着けるユニット(言ってしまえばただのプラスチック)がセットになって、送料込みで一万円越え。
実際に劇中で使われたのは、劇場版、テレビ本編(二話程度)、そしてネット限定配信のみ。正直に言えば、普通の精神をしていれば買わない。確かに登場した時は全部かっこよかったし、変身者もその変身にかける思いだとか動機だとかも確かに素晴らしかった。
けど一万は高い。何とか抑えようと本体価格を9999円に抑えてくれてはいたが、一市民として言わせてもらえばまだ高い。それに俺はネット限定の分が見れていない。なぜならそれを見るためのサイトに登録していないからだ。金がない=何もできない、がこの世界である。よく覚えておくように。
―――話が大分逸れてしまった気もするが、結論を話すと俺はこのキメラドライバーセット(正式名称ではないがここではこう呼ぶ)を買った。
勿論生活は困窮を極めたが、それでも到着が楽しみだった。劇中キャラクターになりきるのも良し、何なら自分なりの変身ポーズなんかを考えて、同じドライバーを使う新キャラごっこをするのも良い。俺はいくつになってもそういう遊びができるタイプだったから、この手の玩具はいくらあっても足りなかった。
で、待ちに待った2023年2月。住んでいる場所的に普通の人よりも遅れて届いたキメラドライバーセット。さぁ、遊びつくそう……と思ったのだが、なんだか様子がおかしい。
というのも、普通プレミアムバ●ダイ(以下、プレバン)の商品は、商品のロゴが印刷された段ボールに入った状態で送られてくる。
しかし俺の下に届いたのはジュラルミンケース。作中でドライバーを持ち運ぶのに良く使われるアレである。
その上、中身もおかしい。俺の頼んだ商品は、ドライバーは一個、バイスタンプは二個、外付けのパーツが二個、というセットだ。だが、ジュラルミンケースの中にはドライバーが二個。バイスタンプが三個だけ入っていた。
訳が分からなかった。確実に何らかのミスなのだが、それにしてもミスし過ぎではないだろうか。仮にも一万円払って、何か月も待たされたドライバーなのだが。
普通ならすぐにでも不良在庫のクレームを入れて、まともな商品と交換してもらうべきだろう。だがその時の俺は、やっと届いた玩具で遊べないなんて考えたくもない事だった。そりゃそうだ。もやし生活をどれだけ過ごしたと思ってるんだ。
で、返品する前に少しくらい遊んでも良いだろうと、そう考えた。
―――それが、俺の人生を大きく変える事になるとは露ほども知らずに。
※―――
この世ならざる怪物。この世ならざる力を操る存在。ソレ等をまとめて、『魔族』と呼ぶ。
『魔族』達はこの世界を支配せんと画策している者が殆どであり、それに興味がない者であっても破壊と狂騒とを求める危険な存在である事に変わりはない。
だが、その脅威が表だって語られる事はない。それは何故か。
「たぁああああッ!!!」
「ぐぎゃあああああっ!」
体のラインがこれでもかとばかりに浮き出るスーツ。変態、と言われても仕方ないような恰好でありながら、なんだか様になっている女性が、サーベルを振るう。
彼女は秘密裏に『魔族』を狩る存在。『
彼女ら『戦乙女』が『魔族』を先んじて打ち滅ぼしているからこそ、今の平和があると言っても良い。
「数が多い……しかし、ここで引くわけにはいかんっ!」
艶やかな黒髪をなびかせ、月夜に照らされて美しく輝く銀の刃を素早く振るう。敵に周囲を囲まれていながら、彼女は未だに無傷。その強さが良くわかる。
だが、いくら力があっても、いくら一騎当千の実力があったとしても、そこに限界は存在する。
そして、それは唐突に訪れる。
「がはっ!?」
背後からゴリラのような『魔族』に殴りつけられ、遠くへ吹き飛ぶ。たったの一撃でボロボロになった彼女を、未だ多数いる敵が、焦らすように近づく。
彼女のような『戦乙女』は、基本的に耐久が無い。一撃食らわせれば、大抵『魔族』側に軍配が上がる。それを、良く理解しているのだ。
そして、敗北した『戦士』がどうなるか。それもまた、当たり前のことであった。
「くっ、は、離せっ、止めろ……!!」
両腕を掴まれ、抵抗できないようにされて捕まる。足を必死にバタバタと動かすが、そんな抵抗、彼等を喜ばせるスパイスにしかならない。
「おい、しっかり押さえておけよ」
比較的人間のような『魔族』……『魔人』の男が、下卑た笑みを浮かべて、その手を彼女の胸元へと運ぶ。あまりに巨大なソレを、躊躇なく鷲掴みにする―――その瞬間。
『キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!』
「あん?」
「な、に……?」
陽気な、されど不気味な音楽が、歌声が、近づいてくる。『魔族』達は『戦乙女』を楽しむのを一旦後回しにして、その音の正体を探る。そして、その答えはすぐに分かった。
「っ、なんだアイツ」
「チカチカ光ってるモンを腰に巻いてるが……なんだありゃ。テメェの仲間か?」
「お、教えるわけがないだろう!」
「あー、こりゃ部外者だな。どーする?」
「はんっ、相手がなんだろうと、何人だろうと、俺達エリート部隊には敵わねぇんだよ。それをわからせてやろうぜ」
「ひゃっはーっ、そう来なくっちゃ!」
駆け寄ってくる、光る物を腰に装着した男。単なる一般人にしか見えない彼相手に、とてもリラックスした状態で武器を構え、すぐにでも殺してやろうと笑う魔人達。
だが、次の瞬間、大いに驚かされる事となる。
「―――
『スクランブル!』
ずっとリピートされていた音楽を遮るようにして、光る物を横に倒す。すると男の体を包むように、不思議なエフェクトが出現した。
それはまるで、カニとワニのような。
『キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!』
普通の人間の姿が、カニの
変身、という言葉を叫んでいた以上、先ほどの男がその正体だろう。
「……テメェ、何者だ?」
『魔人』の一人が、険しい表情のまま問いかける。
それに対し男は、一歩ずつ彼等に近づきながら、力強く答えた。
「仮面ライダーキマイラ。お前らの敵だ!!」
まだ前置きなんで、ちゃんとした説明は次回以降やります。
まぁ、ストックなんて無いんだけどネ!
因みに主人公は一人暮らしの高校生です。バイト代と仕送りだけで生活してます。
なのにキメラドライバー買うとか……。