買った玩具が本物だった話 作:うぉっ、でっか…
とかなんとか言っても話す事、頼む事は一つだけです。
僕にファンアートをくださいッッ!!
……ごめんなさい。調子乗りました。
反転した戦乙女、愛羅を殺した事。その直後の、ベイルへの敗北。
二つの出来事が俺の心に重くのしかかり、それを忘れる為にも、次こそベイルに勝てるようにするためにも、俺は今まで以上にトレーニングに打ち込み始めた。
学校のある日は、学校に居る時間以外の全てを。休日は、朝起きてから夜遅くになるタイミングまで。
一切家に帰ること無く、生活の殆どがトレーニングルームで行われる毎日。変身時の自動治癒の効果が追いつかなくなるほどのオーバーワークは、しかし着実に結果を残していた。
必殺技をどう発動すればより効果的にダメージを与えられるのか。自分の動きに、相手が対応する手はなんてあるのか。そう言った技術面の事も、勿論肉体方面の事も、結果的に成功している。
だからこそ、止められない。
「……おい、天谷。聞いてるのか?」
「!あ、はい?なんでしょうか?」
「なんでしょうかじゃない。この問題の答えを言えと言っている」
「あ、あー……y=2x?」
「残念、今は英語の時間だ。そしてこのクラスで数学は一限目、英語は四限目!どんだけ寝てたんだお前は!」
意識が途絶える前は数学を受けていたので咄嗟に適当な数字を答えたが、授業を間違っていたらしい。
先生の怒鳴り声に、周りの奴らがクスクスと笑う。畜生、一限目が終わった時点で誰か起こしてくれても良かっただろうに。
―――いや、そうじゃないな。
休み時間を何度か挟んでも眠り続けられるくらいに、疲労が蓄積しているという事だろう。
もしかしたら、休み時間や他の授業の間に誰かが起こしていたが、それでも起きずに眠り続けていたのかもしれない。
笑われている事への羞恥心などをあまり感じる事無く、自分の体が静かに限界を迎えようとしている事に戦慄した。
だが、それでも止まっていられない。ここ数日の間、ヤツ自身の言葉通り、ベイルは一度も現れなかった。ソレだけじゃ無く、魔人も魔族も、だ。
だからこうしてトレーニングに専念できているが、それもいつまで続くかわからない。今まで学校で居眠りなんてしてこなかった俺が、ほぼ気絶レベルの深さで眠る程疲れているのだ。この状態で戦闘なんかしても、本来のパフォーマンスは絶対に発揮できない。
「……このままじゃ、不味いな」
「あぁ、そうだな。で?この問題の答えは?」
知らず声に出ていた俺の焦りに、先生は不機嫌そうに問いかけて来る。
まずは、黒板に書かれている英文を和訳する事だけ考えなくてはならないようだ。
※―――
「先輩、今日暇だったりします?」
放課後。足早に学校を去り、施設まで向かおうとしていた俺の背後から、可憐の声が聞えて来る。
そういえば最近会っていなかったな、となんとなく思いながら、ゆっくりと振り向く。
「なんか久し振りな気がするな、お前に会うの」
「あー、そうかもです。私、最近ちょっと忙しくって」
「お前もか。俺も色々あって、忙しくってさ」
「へぇー。なんか、奇遇ですね」
「忙しいってのは、あまり良い事じゃないとは思うがな」
可憐が忙しかった理由は良くわからないが、大抵忙しいってのは良くない時に使う言葉だ。特に俺なんて命がかかった問題だから、余計に質が悪い。
勿論それを覚悟してリヴィと一緒に戦う道を選んだし、その覚悟は未だに揺らいでいないんだけれども。
溜息交じりの俺の言葉に、可憐は「えぇ~?そうですかぁ?」とクスクス笑いながら、近付いてくる。
リヴィやマリアさん程じゃ無いが、コイツもパーソナルスペースってヤツを少し間違っていると思う。人と人、異性と異性の適切な距離感ってヤツを知らないのか。俺の知り合いの美人は。
「確かに、私の方は嫌な忙しさでしたケド。っていうか現在進行形で忙しんですよねー。今日先輩をお誘いしたのは、先日のデートの約束を守ってもらうのと忙しさのストレス発散を兼ねての物ですし」
「……あー」
そういや、ベイルと戦ったあの日、リヴィと可憐が修羅場になって、それを脱するのに適当な事言って走り去ったな俺。
デートの約束とか、すっかり忘れてた。やっぱダメだな、俺という男は。
―――いい機会、かもしれない。
今日の居眠りの件で、俺の疲労が限界近くまで溜まっている事が明らかになった。ここは無理にトレーニングを行うのではなく、一度休息をとって万全の状態で挑むべきではないのか。
「で、今日は暇だったりしますか?」
「暇って訳じゃないが……約束は約束だしな。あまり期待するなよ?」
「いいですよー。どーせ先輩、女の人とデートした経験とか無さそうですし」
「…………あ、あるし」
「嘘だぁ」
嘘ではない。確かに、忘れ去りたい記憶の一つではあるが。
「俺の女性遍歴なんてどーでも良いだろ。ほら、さっさと行くぞ」
「はーい」
上機嫌そうに俺の背後をついてくる可憐に、一体どんな揶揄いを考えているのかと微かに寒気を感じながら、俺はリヴィに「今日は帰るけど遅くなるかも」とメールを送った。
その時、可憐が何事かを呟いていたような気がしなくも無いが、俺には聞き取れなかった。
「先輩、『神速』とデートした事、無いんだぁ♡」
※―――
「……で、真っ先に向かうのがスタバですか。無難ですね」
「悪かったなつまらん男で」
「別にそうは言ってないですけどね~」
不貞腐れる俺を、可憐はニヤニヤしながらなんかすごい名前の飲み物をストローで飲みつつ見つめて来る。誘ったのはなんだかんだ俺なので俺が奢ったのだが、しかし高かった。サイズと値段が釣り合っていなさすぎる。缶の三ツ矢サイダーを見習ってほしい。アイツ、アレで百円しないんだぞ。
ただ、まぁ。スタバでフラペチーノ?とかなんとかを飲む可憐は、中々絵になっているというか……あるべき姿って感じというか。上手く言葉にできないが、悪くはない。
「先輩は買わなくて良かったんですか?」
「見るからに甘くどいだろソレ。飲み切れねぇよ」
「うわ、オッサンですね」
「おいやめろ、男だって年齢気にするんだぞ」
俺はまだ高校二年生だ。一個年下の女にオッサン呼ばわりされるような歳じゃない。はず。
「因みに次はどこに行くとか、決めてるんですかぁ?」
「次ぃ?そうだな……思いつく限りだと、映画とかカラオケとか」
鼻で嗤われた。ご丁寧に口元を手で隠すようにして、さも「笑ってないですよ」と言っているようなのがムカつく。
「帰るか」
「いやいやいや」
立ち上がった俺の手を可憐が掴む。意外と力が強い。
本気で帰ろうとしていたわけではないのだが、こうも強く握られると抗えない。仕方なく座ると、可憐はわざとらしく頬を膨らませた。
「もーっ、不貞腐れないでくださいよぉ」
「いいか可憐。今のは俺以外でも不貞腐れる。直接行動に移すヤツが稀有なだけで、選択肢として『帰る』のコマンドは真っ先に出るんだ」
「わー、ゲーム脳。けど考えはわかりますよ。仮にも男子を手玉に取っている一年の悪女枠ですし」
「悪女の自覚あったのかよ」
「クラスの女子たちが割と聞こえる声で陰口叩いてくるので。ま、クラスの男子たちはほぼ全員私のワンちゃんなので、正直どうでも良いですけどね~」
なんだろう。四つん這いになった男達の視線を浴びながら蠱惑的に、女王のような哄笑をあげる可憐の姿が容易に想像できた。
「今、失礼な事考えませんでした?」
「………さぁ?」
「その反応は認めてるようなモノですぅー」
唇を尖らせる。中々にあざとい行動だが、何故かコイツの場合はそれが自然というか、許されて然るべきという感じがある。
「じゃあ聞くけど、お前はこの後どうしたい?」
「うわー、それ聞いちゃいます?―――まぁ、先輩の女性遍歴考えたら仕方ないか」
「お前に何がわかるんだよ」
「これに関しては私以外でも簡単に想像できますよぉ。そうですね、私的にはこのフラペチーノ一杯で何時間も居座って駄弁り続ける迷惑客ムーブに興じたい所です」
「二度とこの店来れなくなるじゃねぇか」
「そういう迷惑な行為でも『青春』の一言で許されるのが高校生なんですぅー。特権は濫用してなんぼじゃないですか」
周りを見てみると確かに、一、二杯の飲み物をテーブルに置いて、スマホを弄りながらダラダラと喋っている様子の高校生たちがチラホラ見受けられる。
これが普通なのか。俺にはよくわからない世界だ。仮にも現役高校二年生なのに。
「……いいけど、何話すんだよ」
「そこは先輩のトーク力の見せ所ですよぉ。なんか面白い事言ってくださーい」
「お前一番嫌なネタの振り方してくるじゃん」
口ではそう言いつつも、なんだかんだ何か面白い話題は無いかと考えてしまう。
しかし相手は可憐。女子高生の中でもクラスカーストトップみたいな女だ。バリバリ一軍女子相手に俺みたいなオタク気質の男が話せる内容なんて無い。
……いや、俺が話す必要はないのでは?
「生憎面白い話はねぇし、そっちの話が聞きてぇな」
「へぇ。今度は正解ですよ先輩。私は聞き手に回るのも得意ですが話す方が好きなのでグッドです」
意外そうに目を丸くしながら、可憐はフラペチーノをテーブルに置いて、姿勢を直した。
なんだろう、正解を選んだはずなのに、大きな間違いをした気がする。
主に、これから長い事話を聞かされることになりそう、という意味で。
※―――
「なぁ、リヴィアリー」
「何」
「帰っても良いか?」
リヴィアリー・フラスベル。彼女は私と同じ戦乙女であり、かつては嫉妬を、今では純粋な憧れを抱いている相手である。
常に冷静さを失わずに行動する彼女は、どんな戦場であってもその場に即した正しい行動を即座に導き出し実行する力があり、ソレに驕らない謙虚さも持ち合わせている素晴らしい戦乙女……なのだが。
『とある男』が関係する話となると、途端にこう……ポンコツ化する、というか。
「ダメ。あの二人を監視する目は多い方が良い」
「マリアがいるのだから良いだろう」
「ダメよ。これは私達三人の問題。あのポッと出の女に彼を取られたとあったら私が結婚するチャンスは完全に消失―――んんっ。この街を守る戦いから離脱される可能性すらあるわ」
「本音がまるで隠せていないのだが」
少年、天谷真は一見するとただの男子高校生だ。だが『キメラドライバー』や『ツインキメラバイスタンプ』といった神器を所有し、その力を操る事が出来る上、元一般人にして戦場に立つ覚悟を持つという稀有な存在であり、私達に協力してくれている心強い仲間だ。
現時点でもかなりの力を持っているが、それに胡坐をかくことなく研鑽を怠らない姿勢は見習わなくてはと思う。
だが、このモテっぷりはいかがなものか。
マリアの方は、100歩譲ってわかる。男性と関わる機会が拷問以外で存在しない彼女にとって、戦乙女の使命を知り自分の拷問趣味を知った上でなお交流してくれる彼は決して逃したくない優良物件だろうし。
しかしリヴィアリー。彼女は色恋どころか他者と交流る事を疎んでいる節すらあったはずなのにコレとは、一体どういう事か。
数週間近く彼と関わってきて彼の為人だとか色んな事を知ったが、あのリヴィアリーが惚れるような、と言うなら疑問符が付く。
勿論、決して悪い男ではないと、思うが。
「……貴方が今何を考えているかについては
「う……し、しかし。彼が石動可憐と逢引きしている最中なのは既に確定しているし、こうして影で隠れて見ていても何の意味も」
「無い、とは言えないわ。そもそもこのデートは、数日前の真の適当な口約束が原因。相手の性格とかを鑑みても、今現在互いに恋愛感情だとかそういったモノは無いと考えるのが妥当。だけど、コレが原因で何かが芽生える可能性は否定できないわ」
凄く真剣な表情をしているが、やっている事がいかにしょうもないかわかっているのだろうか。
いや、彼女にとっては死活問題なのだから無理も無いか。一緒にいる私が恥ずかしいだけで。
通りすがる人達の視線が痛い。
気を紛らわせる意味も込めて、私も彼らの方を見てみる。
やはりというか、ただ談笑しているようにしか見えない。少し真がゲッソリしているように見えるくらいか。対照的に石動可憐の方は生き生きとしている。
大方、彼女の話を聞く側に回ったら予想以上のマシンガントークを喰らわされたと言ったところだろう。あの男ならきっとそうだ。
「……はぁ。さっさと鍛錬に戻りたい」
二人に聞こえないように呟いたその言葉の後、私は大きく息を吐くのだった。
※―――
「で、姫島って子が―――」
俺は石動可憐を、女子を舐めていたのかもしれない。
彼女に語り手を任せてから既に一時間ちょっと経過しているが、彼女の話が終わる事は無く。次の話題、次の話題、と連鎖を続け、既に最初の話題からかなり離れた場所にいる。
連想ゲームとか得意だろうなコイツ、とかしょうもない事を考えつつ聞き手に回っているが、相槌を打つのも一苦労だ。
何せ彼女の話は、学校の愚痴……主に女子の愚痴なのだから。
前にネット記事で見た事がある。女子の愚痴は対応が難しいと。相手は共感が欲しいのであって、特に何か口を挟むような事をしてはいけないと。なおただ相槌を打つだけでもアウトらしい。じゃあどうしろと。
「……なぁ可憐」
「?はい?どうかしましたか?」
「嫌なら話さなくても良いんだけどさ。お前、家族と何かあったのか?」
このまま相槌に悩み続けるくらいなら、と最初のスタンスから打って変わって話題を投げてみる。
とはいえ、彼女の話を聞いている中で気になった事を尋ねただけなのだが。
彼女の愚痴の中で、彼女を妬む女子たちからの陰口だとか嫌がらせに対して話すうちに、誰に対しても「親がいる癖に」とかそういった事を呟いていたのだ。その時だけはやけに真剣な目をしているし、何より言いかけて無理矢理違う言葉に言い換えたりとか、本当に言うつもりが無いのについ言ってしまうと言った感じだったので、気になってしまった。
咄嗟に出てきてしまうが隠しておきたいと思っている当たり、触れちゃいけない話題なのだろうが……こうも何度も言われると気になってしまう。これで少しでも疑問が解決できるような情報を溢してくれればこの後彼女が似たような事を呟いても快く無視できるのだが。
俺の質問を聞くと、彼女は一瞬止まった。ピタ、と完全に静止して、すぐに復帰して俯く。
表情は見えないが、まぁ明らかに地雷を踏んだのは確かだ。元々見えていた地雷だから、不味い、とかそういう感覚は無いが。
―――コレで嫌われたりしても仕方ないな。殴られるくらい覚悟しておくか。
そんな考えで彼女のレスポンスを待つと、意外にも彼女は素直に話してくれた。
「………死にました。パパも、ママも」
囁くような声音で発された言葉は、ある程度予想できるような内容だった。
まぁ、死んだか喧嘩別れしたかのどちらかだろうとは思っていたし、事故や病気で家族を失うってのは、良くない事だが存外ありふれた事だから、無駄に驚いたりはしない。
寧ろここで大仰な反応をする方が失礼だろう。彼女にも、彼女の家族にも。
「そう、か。―――悪いな、興味本位で聞いたりして」
「いえ。話の途中で、何回も興味煽るような言い方しちゃってましたし、当然ですよ。―――ダメですね、私。家族の事になるとつい感情的になっちゃって、止まれなくって」
「何も悪い事はねぇだろ。寧ろ当然だと思うぞ、俺は」
俺は家族が全員生きている。真っ当な生活を送っているし、関係も良好だ。
だからという訳ではないが、俺に可憐の気持ちだとかを語る資格は無い。大切な物を失った者の感情を、持っている俺に理解できるはずがない。
だけど、失った家族に関して過敏になるのは悪い事ではないという事くらい、わかる。
寧ろ過敏じゃない方がおかしいと、俺は思う。それが大事な家族だったなら、だが。
俺の言葉に、可憐は目を丸くしてこちらを見つめ、小さく「え?」と声を漏らした。
意外だ、と言っているようだが、何が意外だったのだろうか。至極当然の事を言ったつもりなのだが、何か間違っていただろうか。
「………普通、感情的になるのはダメな事だって、言うと思いますけど」
「俺だって短気ですぐ感情的になるし、人の事言えねぇよ。お前みたいに理由があるわけでもないし。―――お前は偉いよ。俺なんかに言われても何言ってんだって感じだろうけど、凄いと思う。家族失ってもこうして強かに生きて、感情的になる部分をいけない事だって自制できてて。普通のヤツじゃ無理だよ」
今まで逆立ちしても敵わないと思っていた小悪魔少女が、今この瞬間はちっぽけで無力な女の子にしか見えない。
その儚さが何とも痛々しくて、ガラにも無く優しい言葉や雰囲気を心掛けてしまう。らしくない。下手な同情は、こういう時にはいけないとわかっているのに。
「………ぷっ、ふふ……はは、あはははははっ!」
「なっ!?」
再び俯き、肩を震わせていた彼女は、突然笑い出した。
あまりに唐突の事で驚いた俺は、何があったと問いかけようとして、すぐにやめた。
笑っている彼女の目元に、薄っすらと光る物が見えたから。
「ふふふっ……もう。ダメですよ、先輩。そんな事言ったら」
「うぐ……す、すまん」
しばらくの間笑い続けていた彼女は、自然な動作で涙を拭い、そしていつもの様子に戻って、微かに頬を膨らませながらそう言ってきた。
同情するような言い方をしたのは我ながら失敗だったと思っているし、言い返す理由も無い。
気恥ずかしいやら申し訳ないやらで頭を下げると、可憐は何か慈しむような笑い声と共に、「絶対勘違いしてますよねー」と呟いた。
何故か俺が憐れまれているような気がするが、そもそも何をどう勘違いしているのかがわからない以上、何とも言えなかった。
「―――ま、いいですよー。私も私で色々気づかされたっていうか、わからせられたので」
「な、何を?」
「んー?」
残り少ないフラペチーノを飲み干し、席を立ちあがった彼女は、これまたあざといポーズと共に可愛らしい笑顔を浮かべ、こう答えた。
「
『あの人』は別に、私の家族がどうして死んだのかを知らない。
私がどんな思いで生きてきて、どんな思いでここに来て、どんな思いで生きていくのかなんて、一般人に過ぎない『あの人』には絶対理解できない。
なのに。
今まで、私の境遇を知った男の人達も、皆優しい言葉や慰める言葉や、同情的な言葉をかけてきた。そしてそれは全部不快な物でしか無くて、私はそういう言葉を向けて来るようなヤツがこれまでもこれからも大っ嫌いなはず。
なのに。
『あの人』の言葉だけは、違った。何かが違った。
初めて気が楽になった。初めて
慰めるでも同情するでもなく、今までの私を、労ってくれた。褒めてくれた。
そんなの、ダメじゃないですか。
そんなの、反則じゃないですか。
私、チョロくないはずなのに。
私、こんな程度で堕ちる女じゃないはずなのに。
――――大好きです、先輩。