買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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書きたいシーンが思いのほか遠くてもどかしい今日この頃。
さっさとベイルの正体バレとかしたいしダイモンも出したいけど、まだ我慢……。

それはそれとしてイラストをいただきました。本当にありがたい限りです。
AI生成らしいですけど、凄いですよね。僕なんてスピリチュアルな家しか作らせることができませんでしたし。


他にもまだまだ募集していますんで、良ければ是非感想欄まで!
勿論普通の感想も大歓迎です!返答に困るアンチコメとか以外ならほぼ全部返信するので!


デート追跡、最悪の敵?

突然だが、俺の住む街は存外都会気味だ。有名なチェーン店は殆ど揃っているし、快速が止まる駅がある。

大型複合商業施設が二つあり、その上商店街も生きている。

その分街そのものが大きいのだが、移動は市電やバスがある為不便さを感じない。そろそろ東京都を名乗っても良いのではないかと俺は密かに思っている。

 

……さて、そんな巨大な街の大型複合商業施設の内一つに、俺と可憐は足を運んでいた。

ゲーセンもあって映画館もあり、カラオケ店も近くのビルに入っている。主に学生をメインにした方の商業施設群の方に、普段なら来ないはずの俺は来ていた。

 

「……場違い感やべぇな」

「なぁに言ってるんですか先輩。大丈夫ですよ、陰のオーラは出てませんし、意外と見た目悪くないので先輩も彼女連れに見えているはずです」

「お前レベルの女と一緒にいるのが許されるような見た目ではないと思うんだが」

「卑屈ですねー」

「事実だろ」

 

周囲にはカップルか、四人以上のグループばかりが目立つ。わずかに少人数で来ている者もいるが、俺の気のせいでなければ居心地悪そうにしているように見える。

 

「ってか、マジで良かったのかよ。ゲーセンで。最初小馬鹿にされてた気がするんだけど」

「ま、確かにデートコースで真っ先に出てきたのが全部ベタ過ぎて笑っちゃいましたけど、別に悪いって訳じゃないので。寧ろ奇をてらって変な所に連れて行かれても反応困りますし。―――それにぃ、意外かもしれないですけど、私結構オタク気味なんですよ?アニメとかちょー見ますし」

「そういって、流行りのヤツ少し見て、流行りのキャラの事推しって言うだけのヤツだろ」

「うわー、偏見強いですねー」

 

すれ違う人達に時々二度見されつつ、ゲームセンターへと向かう。

この建物の中にあるゲーセンが、この街で一番大きいのだ。クレーンゲームもプリクラも、メダルゲームも音ゲーも、なんでも揃っている。俺もどうしても欲しいフィギュアが景品にある時は、周りをとことん気にしない様にして一人で訪れたりする。

 

案外日曜日だとお一人様も多いのだ。だから、平日よりは居心地の悪さが無い。

逆に言えばそれ以外の日、特に平日の放課後にここに来るなんて、今までの俺では考えられなかったわけだが。

 

「おー、でっかいですね」

「来た事無かったのか?」

「実は私、転校生的新入生なので。この街に来たのも最近の事なんですよ」

「そうだったのか」

 

この街に住んでいれば一度は訪れた事があるだろうゲーセンを前に、可憐は初めて見たかのような反応を見せた。

高校に入学するためにここに来た、って事だろうか。それもそれで珍しいな。俺の学校、特に頭の良い所って訳でもないけど。

 

―――まぁ、中学生の時に何かがあった、とかかもしれないし、触れないでおこう。

もしかしたら、アイツの死んだ家族と何か関係があるかもしれないし。

 

「さて先輩。ゲーセンには着きましたが、この後どうするんです?クレーンゲームですか?プリクラですか?音ゲーなんかもあるかもしれないですね。平日だとガチ勢の人もいないでしょうし」

「彼らは音ゲーに関しては強かだから平日とか関係なしに占有してると思うけどな……そうだな、行くんだったら」

 

行くんだったら、どれにしよう。

 

クレーンゲームを見て回る。とはいえ俺がやるのは基本アニメかゲームのキャラが水着やメイド服を着ているフィギュアのヤツだけだ。そんな場所に可憐を連れて行こうものなら「うわー、無いですね」とか言われる事間違い無しだろうし、無難な景品の台なんか経験不足過ぎて恥を晒す未来しか見えない。

 

かといってプリクラ。未経験にも程がある。証明写真の機械なら使った事はあるが、プリクラは本当に経験が無い。チャリで来た、くらいしか知らないぞ俺。

 

言葉に詰まり考え込む俺を、可憐はニヤニヤしながら待つ。一応待ってくれているのだろうが、これ以上間を開けるとそれはそれでだめだろう。

 

―――仕方ない。俺にクレーンゲームの才能がある事に賭けよう。

 

「クレーンゲーム、かな」

「でしょうねー。だって先輩、プリクラとか興味無さそうですし」

「写真自体、ここ数年撮ってねぇな。……いや、集合写真は撮ったか」

「撮ったって言いませんよ?ソレ」

「酷くない?」

 

俺個人を撮った写真という意味では、確かに違うかもしれないが。

 

ま、どうでも良いですよー。と言って、可憐は自然と俺の手を取り、クレーンゲームが並ぶ場所へ向かって歩き出す。

 

「私はともかく、先輩は時間無いでしょ?もう、五時過ぎですし」

「………まぁ、一人暮らしだからそこまでシビアじゃねぇけど」

 

一応気遣ってはくれるのか、と微かに関心しつつ、急かす彼女に従って、移動を再開した。

 

※―――

 

「……こんな場所、連れてこられた事無い」

「そ、そうか」

「奇遇ねリヴィ。私も彼にこういう場所に連れてきてもらった事も、そもそもデートに誘われた事も無いわよ」

「リヴィアリーはともかく、マリアはアプローチと呼べるアプローチをしていないのが原因なのでは―――いや、なんでもない」

 

視線だけ向け、私を鋭く睨みつけて来るマリアに両手をあげつつ言葉を途切れさせる。

実際、彼女は真に対してリヴィアリーのような直接的なアプローチをするのではなく、『純情な青少年を挑発する怪しげなお姉さん』的なムーブしかしていないと思うのだが、マリア自身はどうもそう思っていないらしい。或いは自分自身そう思っている節があって、図星を突かれたから黙らせたのだろうか。

どちらにせよ恐ろしい殺気だった。つい先ほどまで私達を遠巻きに眺めていた学生たちが一斉に違う方向を向くくらいには。

 

というかそれほどの殺気を漏らして彼らに気づかれないのか?

 

そう思い目を向けるも、特に彼らが反応しているようには見えなかった。

あくまで私や、私達を注視している人間にしかわからない、という訳か。流石というか、呆れるべきか。

 

「クラスメイトから聞いた。こういうのを、横恋慕というらしい」

「今のリヴィアリーの状況の事か?」

「違う。石動可憐の事。―――それにデレデレする真も、どうかと思うけど」

 

目から光が消える。構えてはいないし、彼女に限ってあり得ないとは思うが、いつカバンの中の『一気呵成』を掴んで彼らの下に突撃するかわからない勢いだ。

これでもまだ、彼への感情がわからないというのだから驚きである。

 

彼らが移動するのに合わせて、ゲームセンターの中に入る。平日だというのにそれなりに混んでいて、学生のグループが多く見られる。一応子供連れの親なんかも数名見られるが、学生の楽園と呼ばれる(マリア調べ)だけあって制服姿の者が圧倒的に多い。

 

「クレーンゲーム……スターバックスと言い、全体的に無難ね。彼の事だから、もっと奇抜な所に連れて行くと思っていたけど」

「それだけ石動可憐の扱いに困っていると見るべきか、敢えて適当な場所に連れて行って消化試合にしているか……私は後者だと思うけれど」

「彼が女性慣れしていないという線も捨てきれないわ。今までの私とリヴィの接触から、彼の自己肯定感の低さ……特に異性から好かれるという事に対する評価が圧倒的に低く、大抵のアプローチを距離感の測り損ないと勘違いする傾向にある事は確定済み。それはすなわち、今まで彼がそのレベルで親密になる女性、ひいてはデートするような間柄になる女性と出会った事が無い事を証明している。―――今度私からデートに誘ってみようかしら」

 

周りの音に掻き消されて会話の所々が聞えないが、彼女達がいかに真剣にどうでも良い(彼女達にとってはそうでもないのだろうが)話をしているのかはわかる。

正直彼の様子を見ている分にはリヴィアリー達が危惧するような事態は起こりえないと思うが、それでは納得できない物なのだろうか。

 

可愛らしいぬいぐるみが景品の台の前で、彼らが立ち止まる。石動可憐がその景品を指さし、何事かを言うと、一度肩を竦めてから、真が100円玉を投下した。

どうやらまずはあの景品を狙うらしい。大方「アレが欲しいですー」とか言われたのだろう。失礼かもしれないが、彼が率先して石動可憐が好むようなモノを取って渡すような真似をするとは思えないし。

 

「マリア、あのぬいぐるみは?」

「多分、有名な企業のキャラクターね。声は聞こえないけど、動きから見る限り石動可憐に頼まれてチャレンジしている……と見るのが正しそう。彼、ああいうキャラクターに興味無さそうだし」

「そうでもない。真は結構、可愛い物が好き」

「……へぇ」

 

そうなのか。意外だ。

仮面ライダー?だとか、スーパー戦隊?だとか、そう言った物ばかり……或いは深夜アニメだとか漫画だとか、その類しか興味が無いと思っていたが。

 

しかしリヴィアリーもマリアも、協力し合っているように見えてどこか牽制、挑発しあっているように見えるのはなぜだろうか。あわよくばこのまま蹴落としたい、と考えているように見えるのは果たして私の考えすぎか。

 

「ど、どうやら取れたらしいぞ」

「あら、本当みたいね。あの台、そこそこ難しいはずだけど……慣れているって感じでもなさそうだし、センスあるのかしら」

「真は自分では否定しているけど、色んな才能があるから」

「実際、華麗山流の体術も殆どマスターしかかっているしな。少なくとも格闘術のセンスに関しては目を見張るモノがある」

 

彼は自分を「単なる一般人」としか評さないが、実際はそんな枠に収まるような人材ではないと思う。他の要素についてはあまり知らないが、少なくとも格闘術に関しては申し分ないセンスを持っているし努力も出来る。応用力もあるし、実際ベイルと遭うまでは無敗だった。

 

自分でも取れると思っていなかったのかやや上機嫌になった彼を見ながら、不思議な感覚を覚える。

表情の変化がわかりやすいからだろうか。戦闘中や鍛錬中の険しい顔とも、普段会話している時の表情とも違う、心の底から喜んでいるような、子供のような無邪気な顔に、少し驚いた。

 

「なぁ。やはり帰らないか?彼を見ていても、別段恋愛的な、そういった物は感じられないのだが」

 

面倒だから、とかではなく、今になって彼を尾行していた事に後ろめたさを感じ始めたが故の提案。今までと口調やら雰囲気やらが違ったソレに、リヴィアリー達も少し黙り込む。先程までのような食い気味の否定ではなく、考えてくれるようになった。

 

彼女達も、薄々この尾行をこのまま続けていても意味がないと気づき始めている……なんなら、最初からわかっていたのだろう。それを、彼が色恋だとかそういった事を気にせず楽しんでいる姿を見て改めて感じただけのだ。きっと。

 

「そう、かもねぇ。あの子も多分、本人が言っていた通り、彼の事は純粋に反応が面白い先輩としか見ていなさそうだし。どうみても普通の一般人だし……」

「………真には帰って来てから話を聞けば良いし、もう、終わりにしよう」

 

二人から視線を外し、立ち上がる。リヴィアリーの方はまだ少し釈然としていなさそうだが、しかしマリアの方は心配事が無くなった、と言いたげな顔をしている。

 

彼よりも先に帰ろう。そう思い、ゲームセンターを出ようとしたその時。

リヴィアリーが『一気呵成』を構え、私はサーベルを構えた。

マリアは武器を持っていない代わり、スマートフォンのようなデバイスを手に持っている。

 

―――感じたのだ。強大な魔力を。それも凄く近くに。

 

「マリア」

「えぇ、反応は西口……このゲームセンターのすぐ下。ここまであからさまに魔力を出しながら侵入してくるなん、て……いえ、これは」

「魔族も魔人も関係ない。そろそろ夕暮れ時とは言え、まだ学生も、他の一般人も多い。私とリヴィアリーで先に向かう。マリアは組織の方に連絡を―――」

「待って、おかしいの。これを見て頂戴」

 

デバイスを私達の方へ向け、画面を見せて来る。これはマリア個人が作った代物で、周囲の魔力を探知し、そのタイプから『戦乙女』『魔人、魔族』『反転した戦乙女』『神器』の四つを判別し、細かい場所を示すというアイテムだ。

色によって魔力のタイプを識別できるようにしているが、今回の色は緑。つまり、『神器』の反応だった。

 

「神器が、突然この建物の中に現れたの?」

 

神器はまだ未知の部分が多い。リヴィアリーの言うように、瞬間移動的に現れる神器があっても不思議ではない。

 

―――が、マリアはその考えを否定した。

 

「あり得ないわ。だって私達が構えた理由は、その魔力の強大さと、込められた()()。所詮スフィアの加工品に過ぎない神器が、意志を持って瞬間移動してここに?はっきり言って可能性が薄すぎるわ。仮にそうだったとしても、ここまで露骨な敵意を私達にピンポイントで向けて来た理由もわからないし………っ、そう。ピンポイントで向けてきているのよ!違和感の正体はこれだわ。魔力も殺気も、結界無しでそのまま放てば一般人だって気づく。魔力も所詮は地球上に存在するエネルギー。戦乙女や魔族でなければ知覚できないなんて道理はない。敵意、殺気を察知するなんて、生物なら持っていて然るべき機能よ。けれど周りを見ても、誰も違和感を感じている様子はない。私達が狙われているのは確定事項だわ。でもだとしたら、私達の居場所に感づいている……?私達がここにいる事を理解して侵入してきた()()()……?」

「―――マリア、見て」

「何よ、今少し考えて―――」

 

リヴィアリーが指さした方は、真達がいる場所だった。そう、真。私達に協力し、神器を自在に操る以上、魔力に関しては周りの一般人よりも詳しく、敏感だ。それどころか結界が貼られている場所をなんとなくの感覚で見つけ出せるように、魔力に対する察知能力が高い。

 

それなのに、全く気付いている素振りを見せていない。

可憐と一緒に談笑しているだけだ。表面を取り繕っているにしては、一般人である可憐から離れて対処に向かうとか、そういった素振りが見られない。

 

本当に、私達だけを狙ったのか?

 

「真が気づいていない……私達に対する、挑戦状かも」

「挑戦状?そんな真似する、愉快犯的な―――まさか」

「思いつく節でもあったか?」

 

ブツブツと考えを声に出し続けるマリアに、答えを聞く。

すると彼女は、予想が正しければ不味い、と言ってから、こう答えた。

 

「私達を知っていて、神器と関係があって、私達と敵対している。コレを満たすのは、アイツしかいない。―――ベイルよ」

 

※―――

 

可愛い猫なで声に、萌えとあざとさを意識したポーズ、動き。計算されつくした『ぶりっ子』は、もはや私の()だった。

最初こそ単なるメッキ、キャラづくりの類だったが、今では私そのものと言って良い。

 

―――だが、ソレが剥がれかけるような事態が、たった今発生した。

 

「これ、最近人気なんだっけ」

「えー、そうでしたっけぇ」

 

台を指さし、そんな事を言ってくる先輩。本当なら「先輩から流行って言葉が出て来るなんて意外です~」とか煽っている所だが、そんな事が出来ないくらいに私は焦っていた。

とても先輩には言えないような緊急事態が、発生しているから。

 

(チッ、魔族?結界無しで来てる辺りはぐれでしょーけど、ご丁寧に狙い絞って魔力放出なんかしちゃって知性アピールですか。なんにせよ、大切な私と先輩の二人っきりの時間を邪魔しようとしてくれてるわけですし。さっさと殺処分してやる―――って言いたいけど)

 

先輩の顔を見ても、当たり前だが先程の魔力に反応している様子はない。

当然だ、一般人なんだから。

 

だが、それが困る。敵意の籠った先程の魔力を、仮に一般人の先輩も感じていたら、嫌な気配にこの建物を離れたがり、私はソレを上手く利用して一人で魔族の下へ向かえただろう。

 

でも先輩にここを離れる理由が無い場合。最悪痺れを切らした魔族がこちらに向かってくるかもしれないし、何なら無差別に暴れて、この建物を倒壊させる可能性だってある。

 

(そろそろお開きにしましょうか、なんて言いたくない。魔族を殺してさっさと戻ってきて、先輩とのデートを再開するのは当然……じゃあ、トイレに行く振り?いや、仮にも知性持ちの魔族。本能剥き出しな分、死にかけた時の逃げっぷりも抵抗っぷりも魔人以上。はっきり言って殺すのに時間がかかる。とてもトイレって言い訳じゃ済ませられないくらいに。―――それに、戦闘するなら結界を貼る必要がある。そして結界を貼れば、組織が探知してすぐに『神速』達を派遣してくる―――ッ、どうする?)

「………あのさ、可憐」

「っ、は、はい?なんです?」

「すっげぇ言いにくいんだけど、ちょっと腹が痛くてさ」

「!!」

 

申し訳なさそうに、お腹を摩りながらそんな事を言ってくる。

最高だ。ここまで思い通りに事が運ぶことがあるだろうか。いや、無い。

千載一遇とはまさにこのことだろう。先輩自ら一時的な別行動を言い出してくれるなんてありがた過ぎる。

 

「もうちょっと遠回しに言えませんでしたぁ~?」

「あ、あはは、悪い悪い。ちょっと余裕なくてさ。結構不味いんで、行ってくるわ。できればここで待っててほしいけど、もし場所変えるとかあったら連絡してくれ。んじゃ!」

 

そう言って先輩は足早にゲーセンを出て行った。かなり限界だったらしい。中々全力疾走だ。

先輩からしたら付き合うつもりも無いんだろうし、多少情けない姿を見せて幻滅されてもどうでも良い、って思っているのだろう。

 

―――ま、私がその程度で嫌ったり幻滅したりするわけないんですけどねー。

 

「さ、先輩も行った事ですし。私もささっと害虫駆除、しますかー」

 

学生カバンを撫で摩り、ゲーセンの喧しさに掻き消される程度の声で、私はそう呟いた。

 

 

 

『ブラックアウト』

 

※―――

 

ゲーセンを飛び出し、俺は一直線にトイレへ―――ではなく、一階にある建物の入り口へ向かっていた。

可憐の手前なんてこと無いように振舞ってはいたが、突然感じたのだ。

入口の方から、俺を挑発するような敵意と魔力を。

 

丁度可憐が喋っていたから、離れる口実を会話に出す機会が無くて演技しっぱなしだったけど……苦労した分、可憐にはきっと怪しまれていない。俺が本当に腹痛に苦しんでいたように見えていたはずだ。

一般人に過ぎないアイツに、俺がキマイラだって事とか、魔人とか魔族とか戦乙女とか、そういう事を知られるわけにはいかないしな。

 

……しかし。

 

「ゲーセンがうるさかったってのもあるし、魔族が現れたらしい場所とゲーセンが一階と三階で離れてたってのもあるんだろうけど………下の方が騒がしいな。ゲーセンだと俺以外誰も反応してなかったし、巧妙な結界の貼り方でもしているのか、隠れ潜んでいるもんだと思ったが……まるで、逃げ惑っているような……」

 

癖である独り言で周囲の状況から敵を考察していると、視界に最悪な物が映る様になる。

入り口付近にあるエスカレーターまでの道を走っている最中に、吹き抜けから一階の様子が見えるのだが、そこの人達が、叫びながら西口の部分から押し寄せてきているのだ。

 

それこそ、何かから逃げているように。

 

下を見ている人達や、その叫び声を聞いた人達がなんだなんだと視線を、スマホを下の階へ向けている合間を走り抜けつつ、俺は既に魔族による攻撃が始まっている事を確信した。

 

「狙いは俺じゃねぇのかよっ、クソ野郎!!」

 

もはやなりふり構っていられない。人々の視線が下の階へ向かっているのを一応確認してから、俺はベルトを装着し、バイスタンプを起動する。

 

『ツインキメラ!』

 

逃げ惑う人々で混み合う中でも密度の薄い場所めがけて、手すりに足をかけて、飛び降りる。

その直前にバイスタンプを装填し、横に倒す。

 

『スクランブル!』

『キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!』

 

魅御音先輩に教わった、衝撃を上手く逃がす着地方法を実践しつつ、一階の、それも魔族の気配が濃い場所へと降り立つ。

二階に居る人々や逃げ惑う人々がどよめく中、俺はすぐに魔族の居場所を探す。いや、探そうとした。

 

だが俺の視界には、魔力を放ってきたであろう魔族の姿は映らず、代わりに入り口付近にいくつも存在する、蠢く人影のようなモノだけが映った。

 

ソレらは、苦しむような声をあげながら、ゆっくりとこちらを向く。

まだ日は沈んでおらず、そもそも店内は明るい。だから、その姿はしっかりと見えた。

 

体全体から、白い牙のような棘が生え、それ以外の部分を薄汚れた白い毛皮が覆っている。

顔は巨大な赤い目が一つだけあり、まるで泣く事を堪え、歯を食いしばっているかのような口が見える。

腹部の毛皮だけ、まるで返り血が付着しているかのような赤い模様が浮かんでいた。

 

「………デッド、マン?」

 

俺の知るデッドマンの中に、このような見た目の物はいない。

恐らくは、劇中でフェーズ1でしか使用されなかった……或いはフェーズ3以降が公開されなかったデッドマン。

パッと見た感じ、ウルフ・デッドマン・ライオット……フェーズ4のデッドマンが見た目的には一番近しいだろうか。

 

いや、見た目はこの際どうでも良い。重要なのは、その数だ。

 

(上級契約の、その先……なのか?いや、それにしたっておかしい)

 

フェーズ4デッドマン。不気味さ溢れる容姿をした怪物は、一体だけではなく。

見える範囲でも6体。

 

彼らは、まるで生まれたてのように蠢き、苦悶の呻き声(産声)をあげていた。





という訳で始まりました。というか始まってました。新章です。
この作品、敢えて章ごとに区切らないようにしているのですが、一応僕の中では

序章1『キマイラ』1~2話
序章2『ヒーローの第一歩』3~6話
序章3『迷宮校舎』7~11話
序章4『戦乙女達』12~15話

第一章『深紅の襲撃者』16~18話
第二章『デッドマン・パニック』19話~

というイメージで進めています。
タイトルは結構適当です。章の内容そのままですので、今の章がどういう話かもなんとなく想像できてしまうのではないでしょうか。


では、次回をお楽しみに!
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