買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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いやぁ、お久しぶりです。イラスト、感想、その他諸々頂いておきながらこの体たらく。お恥ずかしい限りです。

今年は凄く忙しい一年なので、何か月もお待たせするような事があるとは思いますが、気長にお待ちいただけると幸いです。

終わりの部分まで考えてあるのでね。少なくとも打ち切りは無いですよ。


増殖するデッドマン!交錯する五人!

なんだ、これは。

 

呻くデッドマンの群れに、俺は理解しきれずに硬直する。

魔族はおらず、代わりに全く同じ姿の、明らかにフェーズ2以上のデッドマン達が蠢いている。人々はコレを見て怯え逃げ出したのだろう。

 

デッドマン、という事はつまり神器……バイスタンプが原因だろう。だが、俺はここに魔族の気配を感じていた。今は既にいないが、普通魔族は知性があっても動物の延長。神器を扱うなんて、それこそ不可能に等しいと思っていたが……。

 

「何より、単なるバイスタンプで推定フェーズ4近くあるデッドマンを生み出せるもんか?―――うぉっ!?」

 

ただ苦しんでいるだけのように見えるデッドマンたちに、その元となっているのが逃げ遅れた一般人の可能性が思い当たり動けずにいた俺を、呻いていたデッドマンの一体が急に襲ってくる。

かなり離れた場所にいたはずなのに、凄い速さだ。リヴィとの鍛錬で動体視力を鍛えていなければやられていたかもしれない。

 

「元一般人かもしれねぇけど、やるってんなら無力化するしかねぇな」

『キングクラブエッジ!』

 

銀色の幻影と共に、クロスカウンター気味に拳を打ち付ける。金属同士をぶつけたような轟音と共に、デッドマンは吹っ飛ばされた。

だが、今の一撃で自分が危険な状況にある事に気づかされた。

 

攻撃そのものは、まるで苦しみに悶える延長のような、でたらめな動き。だが体があまりに頑丈過ぎて、殴りつけたこちらの腕が破壊されかねなかった。

ビリビリと痺れている右腕を庇うようにしながら、嘆くような声を上げるデッドマン達を警戒する。

 

「この感覚……多分、一般人がバイスタンプを無理矢理押印されてあの姿になってる、って考えるのが正しいだろうな……分離って行けるのか?」

 

キマイラの機能にそんなものがあるとは思えないが、しかしコレは神器だ。似て非なるモノ……可能性は捨てきれない。

バイスタンプを横に倒し、先程殴り飛ばしたデッドマンへと駆け出す。そして走りながらバイスタンプをさらに二度倒し、必殺技を発動。

 

『クロコダイルエッジ!』

「せりゃぁっ!!」

 

仮面ライダーの様式美、飛び蹴り。クリーンヒットしたそれは、やはり攻撃を仕掛けた側の俺にもダメージが入る。あまりに硬すぎるのだ。

しかし相手も無傷という訳にはいかなかったらしく、体中に紫電を迸らせ、さらに呻く。

 

そして、爆散した。

 

「ッ、おいマジか!!」

 

煙を振り払い、デッドマンがいた場所を見るも、そこに人はいない。

明らかにフェーズ2以上のデッドマンが倒されても人が居ないという事は、つまり俺が、この手で。

 

「クソッ!!」

 

周囲のデッドマンは、幸いにも俺に攻撃してくる様子はない。いやそれどころか、俺が先程()()()しまったデッドマンですら、明確に俺を狙って攻撃してきたわけではないのだろう。

きっと彼らは、苦しみ悶えているだけ。あまりの苦しさに蠢いている過程で、俺を傷つけようとしてしまったのがさっきの個体だったのだろう。

 

―――俺は今、一般人(被害者)を。

 

「まだ、まだそうと決まった訳じゃ……ッ!」

「あっれ~?おっかしいですねぇ、私を誘い出しただろう相手と全く関係ないのがいるんですけど」

 

最悪の可能性から目を逸らす俺に、頭上から声が聞こえる。

ソイツは俺と同じように人込みをかき分け、吹き抜けから飛び降りてきた。

 

黒いボディに、紅いライン。

手に持ったのは、ヤツ自身の名を冠する特殊なバイスタンプ。

 

「ベイル……ッ!!」

「お久しぶりでーす♡けどぉ、今は貴方と殺し合ってる暇、無いんですよね~」

「何?」

「一応ですけど聞いておきますねー?魔族の気配がここからしてたんですけど、見ませんでした?」

 

魔族。魔力を利用し、己が頂点に立とうという思想を持つ存在。中でも知性がある物を魔人と呼び、知性を持たないモノを魔族と呼ぶ。

 

俺を挑発し、この惨状を生み出して逃げたソイツを、ベイルも追っているらしい。

ご丁寧に結界も張らず、だ。そこそこ離れた場所にいる野次馬達を見ると、ソレがわかる。

 

「……生憎見てねぇ。気配を感じてここに来た時にはこのザマだ」

「あら以外。教えてくれるんですね、優しー。でも困りましたねぇ、適当に魔力ばら撒いて逃げてるのか、一向に居場所が掴めませんし……そこのデッドマン、殺し尽くしたら出てきてくれませんかね」

「それはダメだ!コイツ等、多分被害者で―――」

「さっき一匹殺しておいて、今更何言ってるんですか?」

「っ、見てたのかよ」

「そりゃあ騒ぎの中心ですし?まさかキマイラが先に来ているなんて思いませんでしたけど」

 

何てこと無いように話すベイルに、知らず拳を握りしめる。

そりゃあ、アイツも魔人だ。人の命について真摯に向き合うような存在じゃない。

けど、俺が今殺した人も、今こうして苦しんでいるように見える人達も、ソレを全部ひっくるめて『どうでも良いモノ』扱いしているのを見て、何も思わないで居られる程俺は腐っていない。

 

自分がやった事、自分が奪ったモノについては後回しだ。今は後悔したり詫びたりしてる場合じゃない。

 

「幸いまだ結界を貼ってるわけじゃないし、『神速』達が来ていない可能性も……」

「お前はさっきから何をブツブツ言ってるんだ?」

「あぁ、いえ。少し考え事をしていまして。―――それで、今ちょっと考えてみたんですけど」

 

普通に近づいてくる。殺気も何も無く、武器を構える事も必殺技の待機をするでもなく。

それが不気味で、身構えつつバイスタンプに手を触れさせた俺に、ベイルはこんな提案を持ち掛けてきた。

 

「一時休戦して、手を組むとかどうです?」

「は、はぁっ!?」

 

※―――

 

ベイル。私達が敗北を喫し、気まぐれで見逃された相手。

今しがた私達に挑発してきた何者かを、マリアはベイルだと判断した。

ヤツの言っていた執行猶予。ソレが終わり、私達の平穏を破壊しようと現れた……そう考えれば、確かに自然である。

 

一度は負けた相手だ。普段よりも一層気を引き締めて挑もう。

そう考えながら気配を感じた場所へ向かうと、予想外の光景があった。

 

まずは、あまりに多い野次馬。隠れ潜む事が主な魔人にとって、多くの一般人に見られながら力を振るうのは最も避けたいであろう物のはず。すぐにでも場所を変えるか、それとも結界を貼るかするはずだろうに、しかしそのどちらもしていない。

 

何より私達が驚いたのは、ベイルと真が会話していた事。二人とも変身した姿だ。

真がしっかりと気配を察知していた事も驚きだし、ベイルが真と戦闘するでもなく会話している事も衝撃的だった。

 

「一体、どういう事よ?」

「あのベイルと話をするような事態になるモノか……?それに、奥の方に何か、人影のような物も見える」

 

野次馬達に巻き込まれない位置から彼らを観察し、どうするべきかと考える。

改めて状況を整理すると、私達が気配を感じた場所にいたのは、ベイルと真。両者とも神器を使用していて、それを結界だとかで隠すような事はしていない。その上、ここからだと良く見えないが奥に何らかの影が見える。ソレがもしかしたら敵なのかもしれないが、現状断言する根拠はない。

 

「……奥の影、どうも神器の影響を受けているようね。独特の波長を感じるわ」

「ベイルが神器を使用したか、或いはベイル以外か……ともかく参ったな。この人の量だと、顔を隠せない私達が前に出るわけには……勿論、ベイルが戦闘を開始するようならそうも言っていられないが」

「けど見ている分にはあまり険悪なムード、って訳でもないし……」

「やっぱりベイル以外の何者かが神器の所有者で、私達を呼んだ者、って事なのかしら。だとしたら移動した方が良いわね。この近くに反応は無いもの」

「真を放っておくの?ベイルと二人で?」

「私だって、それを何とも思わない訳じゃないわ。―――だけど、仮にベイルに交戦の意志があるとしたら、既に戦闘は始まっているはず。多分だけど、今回の敵はベイルの敵でもあると思うのよね」

 

予想に過ぎないけどね、と付け足すマリアに私達は知らず唾を飲み込む。

 

最初の予想が外れた今、敵は完全に未知数。

しかしながら、私達のみならず私達が一度敗北を喫した相手であるベイルにまとめて喧嘩を売るなんて、身の程知らずか私達全員を相手してなお無事でいられる自信があるのか……。前者はともかく、後者なら不味い。

あの日よりも鍛錬を行い、ある程度成長したとはいえ微々たる差。ベイルにすら勝てるかどうか怪しいに、ヤツを倒すだけの力を持ったヤツが相手なら、勝ち目はほぼ無いと見て良い。

 

その上、結界を貼らずに一般人を堂々と襲うような敵だ。敗走して時間を空けてから―――なんて事を言う余裕は絶対にない。

 

「ここは彼を信じて、他の犠牲者が出る前に魔族を討ちましょう。―――反応はここからそう遠くないわ。動きも無いし、速く向かいましょう」

 

マリアの言葉に、私と魅御音が同時に頷く。

 

不安だけど、真を信じる。最悪戦闘になった所で、彼は馬鹿正直に勝ち目のない相手と戦い続けるような真似はしないはず。

 

敵の居場所をリアルタイムで知る事が出来るマリアを先頭に、走る。

こういう時、地図が苦手なのが情けない。私があの端末を使いこなせれば、普段通りの速度で到着できるのに。

 

※―――

 

野次馬達の目がある場所はお互い不味いでしょう?というベイルの言葉に従い、一先ず俺達は誰の目にもつかない場所まで移動した。

先程のデッドマンと化した犠牲者たちは一度放置して、だ。下手に攻撃すれば殺すだけだと、自分自身の手で確かめてしまった訳だし。

 

「で、手を組むってどういう事だよ」

「言葉通りの意味ですよぉ。今この建物に入り込んでいる魔族。簡単に言うと私達共通の敵なんです。無差別に敵意振りまいて、まとめて相手しようとか横着な真似をしてますし。―――なら、お望み通りまとめて相手してやれば良いんですよ。多分ですけど、さっきまで私を尾行してた『神速』達も魔族のいる方に向かったっぽいですし」

「えっ、リヴィ達が!?」

 

俺が可憐と遊んでいる間に、アイツ等はコイツの尾行なんて危険な真似をしていたのか……なんだか、申し訳なくなってくるな。

 

というか、可憐。ゲーセンに残してきちゃったけど、魔族が移動してるならこの建物に居る時点でアイツも危険なのでは?

 

「奇しくもこの場に全員揃ってしまった、って感じですかねー。ま、貴方が私と手を組めば、他も勝手に許してくれるでしょ?私もちょっと事情があって、この腐れ魔族をさっさと殺処分してやらないと不味いんですよねー」

「奇遇だな。俺も今日はさっさと終わらせないと不味いんだ」

「なら、休戦条約は締結って事でよろしいですか?」

 

静かに右手を差し出してくる。

 

俺はその手を、一度躊躇いつつも、握った。

 

「ふふっ、素直な人は好きですよ?」

「……これが終わったらまた敵同士だけどな」

「えぇ。明日以降は、ですけど」

 

※―――

 

「アレが、この一件の発端……?」

 

リヴィアリーが、信じられないというように呟く。

それに同意するようにマリアも魅御音も生唾を呑み込み、視界に映る悍ましい化け物を観察した。

 

蛆のような黒い物に身を包まれ、体の至る所から白い牙が生えており、正面に巨大な眼が一つだけついている。

見ているだけで正気を失ってしまいそうなソレは、触手をウネウネと動かしながら、人の手のような足を数十本生やし、歩いていた。

 

「アレが本当に魔族、なのか?」

「……恐らく、魔族が神器と融合するとあんな風になるんじゃないかしら。てっきり、魔人の方が今回の敵かと思っていたけれど……あんなモノが敵だなんて」

 

ひたひたと音を立てつつ、ソレは蠢く。ただ移動しているだけに過ぎなかったソレは、突如として触手を四方に伸ばし、振り回した。

 

理性が無いのか?と三人が考えたのも束の間。触手によって薙ぎ倒された看板の影から、数名の一般人が姿を現した。

見るも悍ましい化け物に、咄嗟に姿を隠していたのだ。

 

「ッ、不味い!!」

 

『一気呵成』を手に、魔力を大量供給したリヴィアリーが魔族へと特攻する。しかしそれは、触手が一般人の体に触れるよりも遅く。

もし斬り落とす事が出来なかったら、というリスクを避けて本体に向かった事が仇となった事を知り、彼女が顔を顰めたその瞬間、触手に触れられた人々の体に、まるでバイスタンプを押印された時のような模様が浮かび上がった。

 

「う、うあぁあああああああっ!」

 

痛みから来る絶叫と共に蹲る。服が破け、大量の毛がその体を覆い、次に棘が体全体から飛び出す。

両手を広げ、天を仰ぐようなポーズを取ったと同時、何も無かった顔に巨大な赤い眼が一つ開かれた。

 

「触れた人間を……!?」

「リヴィ!一度下がって!ソイツに触れる事すら危険な可能性があるわ!」

 

マリアの言葉に従い、刃を振り抜きかけていたリヴィアリーは咄嗟に体を引き、元居た場所へと戻った。

額には汗が伝い、表情は普段以上に硬い。

 

「神器で攻撃するだけでも危険?」

「……今のはバイスタンプ系の神器と同じ現象……それを、神器そのものではなくそれを持っている、或いは融合しているだけの体で触れただけで起こした。出力の高さ的に、神器でも押し負ける可能性がある。『一気呵成』から供給する魔力をもっと増やしておかないと危険だし、私達は戦いに参加する事すらできないわ」

「真が仮に来た場合、戦える?」

「……マッドリミックスを使えば、或いは」

「なら良い。真が来るまで時間を稼いで、来たら一緒に戦う」

 

攻撃されかけた事で、魔族が警戒する様に彼女達を見つめている。

しかし、その悍ましい見た目や異常な力を前にして、リヴィアリーは不敵に笑った。

 

「私と真。二人一緒なら、最強だから」

 

足止めをして真を待てば。攻撃できるなら、自分と真で戦えるなら、負けは無い。

 

『一気呵成』から大量の魔力を供給した彼女は、魔族が触手を伸ばす素振りを見せたその瞬間に、敵の体を刃で斬り裂いた。

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