買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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お久しぶりです。本当は今年一年投稿は難しいと思っていましたが、なんとか書き上がりました。

多分またしばらくお待ちしていただく事になりますが、よろしくお願いします。


並び立つライダー、曇る神速のヴァルキュリア

terrifying(悍ましい)……まさか、こんな事になるなんて」

 

銀色の軌跡が、触手の化け物を斬り刻む。

再生と切断が無限に繰り返される様を離れた場所で眺めるのは、白衣に身を包んだ女。

英語の発音がやけに流暢な彼女は、悔しそうに唇を噛んだ。

 

()()貴重なスフィアを大量に消費して作り上げたRider system(神器)が、化け物に……shit!形だけの別物だとしても、仮面ライダーの力があんな風に成り果てるなんて……!!」

 

膝から崩れ落ち、床に拳を叩きつける。

さながら愛しい我が子を奪われた母親のような嘆きは、誰にも聞かれることはなく破砕音にかき消される。

リヴィアリーが速度を上げ、魔族の攻撃がより過激に、乱暴になった為だ。床も壁も、無差別に破壊されていた。

 

「……私はあくまでdeveloper(非戦闘員)。回収は『神速』に任せる他ない、けど……」

 

もしもの時は、と懐に手を入れ、鋭く戦場を睨め付ける。

しばらくの間黙ってリヴィアリーと魔族との戦闘を眺めていた彼女だったが、唐突に訪れた変化に息を呑んだ。

 

「っ、生成―――じゃない、召喚!?」

 

一方的に斬り刻まれ続けていた魔族が咆哮し、リヴィアリーが怯んだ隙に後方へ跳躍。

直後、魔族とリヴィアリーとの間に壁を作るように、大量のデッドマンが出現した。

地面に大量に展開された召喚陣から、這い出るように。

 

一瞬デッドマンを魔力を元に生成したのかと考えた彼女だったが、戦場を俯瞰していたからこそ直ぐに間違いに気づいた。

なぜなら、魅御音が戦っていたデッドマンの姿が一瞬にして消えていたから。

 

「強制的にデッドマンにした人間を呼び出す……どころじゃ無い!操作まで出来るの!?」

 

今まではあくまで苦しみ悶える過程で周りを傷つけていたデッドマンだったが、召喚された直後は、一斉にリヴィアリーを狙って突進し、攻撃した。

召喚というプロセスを経たからなのか、それともデッドマンにした時点で支配可能だったのか、生憎とソレを理解する事は彼女にも戦っているリヴィアリー達にもわからなかったが、危機的状況に陥った事に変わりはない。

 

「『一気呵成』があるからと言って、恐らくフェーズ4相当のデッドマンを『神速』や華麗山の裔に処理できるとは思えない……やはり、私が出るしか」

『ペインティングフィニッシュ!』

 

彼女が一歩踏み出すと同時、デッドマンたちが拘束され、全員が足をもつれさせて座り込んだ。

唐突な出来事に、そして何より聞えて来た声に彼女は驚愕し、音の発生源を注視する。

 

「クリムゾン、ベイル……!!?」

 

※―――

 

「ッ、これは」

「お察しの通り、私でーす♡」

 

背後から突然現れたベイルに、リヴィ達は驚くと同時に構え、いつでも迎撃できるような姿を見せる。

 

「警戒されちゃってますねー。ま、当然ですケド。―――でもコレを見てもまだ、敵対行動取れますかぁ?」

 

挑発するような言葉と共に、彼女が半歩下がる。

するとそこで俺に気づいたらしく(ベイルの陰に隠れてしまっていたらしい)三人とも驚愕の声を漏らした。

 

「驚きますよねぇ、大事な仲間が裏切っちゃって」

「っ、裏切った……?」

「んな訳ないだろ。今回は色んな事情があって一時的に手を組む事になっただけだ。んでお前もお前でなんで煽るような言い方するんだよ」

「えー?だって、こういう展開ってあるあるじゃないですかぁ」

「楽しんでんじゃねぇっての」

 

手を組む?どういう事?と混乱しているリヴィ達を一旦放置して魔族へ視線を向ける。

俺達、というよりもデッドマン達を捕縛したベイルを警戒しているのか、唸り声と共に身を屈めていた。

 

アレがこの惨状を引き起こした魔族か。道中のベイルの話が本当なら、神器……バイスタンプと融合してるらしいが、あんな姿だとは。

いや、融合した影響じゃなくって、元々あんなグロい見た目だった可能性もない訳ではないけど。

 

「リヴィ、アイツはどの程度だ?」

「……反応速度、攻撃速度共に私未満。防御は『一気呵成』込みでなんとかダメージが入る程度。けど、どれだけ斬っても再生するからキリがない。その上、一定以上の魔力で体を覆っていないと、触れられただけで……」

「デッドマンになる、か。やっぱベイルと休戦しといて正解だったな。コレでベイルも一緒に相手するってなったら面倒だった」

「私も今はちょっと時間がありませんし……デッドマンの拘束も、あの調子ですと後三分後くらいには無理矢理破ってきそうですし。さっさとはぐれ魔族の駆除、始めましょうか」

『スパイダー!』

『エナジー!!』

 

先程デッドマンを拘束したように、スパイダーのバイスタンプを読み込んで待機状態に入るベイル。

ベイル一人の攻撃で倒しきれない場合を想定し、慌てて俺もバイスタンプを横に倒し、必殺技を構える。

 

「ちゃーんと合わせてくださいね?」

『ペインティングフィニッシュ!!』

「言ってろ!」

『ツインキメラエッジ!!』

 

魔族の触手が蠢いた瞬間、小馬鹿にしたような声と共にベイルがその場で拳を振り抜く。

瞬間、蜘蛛の脚を模した巨大なエネルギー体が8本出現し、鋭い先端部分が魔族を突き刺した。

当然、刺し穿たれて床に縫い付けられているのだから、苦しみ悶えてもその場から動くことは出来ない。

その隙を狙って、俺は魔族に向かって駆け出し、頭部と思しき部分に全力の蹴りを放った。

 

激しく爆発し、建物が大きく揺れる。断末魔めいた叫び声が聞こえた事に勝利を確信しかけると同時、俺の目の前に勢いよく触手が伸びてきた。

 

「危ねぇッ!?」

「あーあ。倒したかもわからないのに油断するからですよぉ。ほら、邪魔なんで退いてくださーい」

『ベイルアップ』

『クリムゾンインパクト!』

 

慌てて回避した俺を軽く押し退け、伸びきった触手を弾き、魔族の姿を隠す煙を吹き飛ばす。

あまりに悠然とした様子で、魔族の姿が露出した瞬間に必殺の拳を叩き込んだ。

 

「硬っ。結構本気で殴ったつもりだったのに、まだまだ元気そうですね……ま、私との力の差を理解して、及び腰になっちゃったみたいですけど」

 

微かにノックバックしたものの、全く倒れる気配の無い魔族に、ベイルはため息混じりに呟いた。

が、彼女の言う通り、魔族はどこか怯えた様子でベイルを見つめ、ジリジリと後ずさった。

 

「私に挑発しておいてこのザマなんて。普段ならとことんおちょくってから殺しますけど、時間も無いので、さっさと殺し―――っ!」

「馬鹿!テメェも油断してんじゃえねぇ!」

『ツインキメラエッジ!!』

 

怯えていたのは演技だったとでも言うように、魔族は一瞬で距離を詰め、ベイルを()()()()()とした。

その横っ腹を蹴り飛ばして彼女を守るも、俺の足に触手が絡みついた。

急いで剥がそうとするが、それよりも先に魔族が俺を引っ張る。

 

「チッ!」

『マッドリミックス!』

『必殺!カオス!ツインキメラチャージ!!』

 

相手の体力がまだまだ残っている今使うのは避けたかったが、背に腹はかえられない。

急いでマッドリミックスを行い、上昇したパワーにモノを言わせて触手を引きちぎる。

 

マッドリミックスを使用して活動できるのは一時間程度。無尽蔵にも見える魔族の体力を、それまでに削り切らなければならない。

 

「えっと、ありがとうございます?」

「言ってる場合か。……弱点教えるみたいで癪だが、マッドリミックスは今から一時間程度しかもたない」

「必殺技を使えばさらに短く、ですか。まぁでも?マッドリミックス状態の攻撃ならダメージになりそうですし……私の()()、よろしくお願いしますね?」

「ああ任せろ。女の子のエスコートはリヴィで十分慣れてるからな」

「……ま、その『銀雪』は他の男に夢中っぽいですケド」

「あん?」

「なんでも無いでーす。―――じゃ、行きますか」

『ベイルアップ』

 

ローラーを回転させ、魔族に接近。明らかに速度と威力の増した触手の攻撃は全て俺が弾き、無防備になった体をベイルが殴りつけた。

 

『クリムゾンインパクト!』

「っ〜〜!?さ、さっきより硬い!?」

 

苦悶の声を漏らすベイル。彼女の言葉と、気持ち柔らかくなった触手から察するに、体を守ること優先にしているのだろう。

攻撃速度と威力が増したのは、攻撃をメインに据えたのではなく、触手の柔軟性が増した事による偶然の産物だった訳だ。

 

「なら一点を狙ってぶっ壊す!」

『キングクラブエッジ!』

『キングクラブエッジ!』

『キングクラブエッジ!』

「ちょっ、馬鹿なんですか!?そんな連続して攻撃しても体力の無駄―――ああ、()()()()()()ですか。なら」

『クリムゾンインパクト!』

 

俺の攻撃の意図を悟ったのか、ベイルが入れ替わるようにして、俺が殴り続けていた場所を寸分違わず殴りつけた。

必殺技四つ分のダメージを受ければいくら硬いとはいえ耐えきれず、触手に覆われた体の中身が露出する。

 

この瞬間を待ってたんだよ!!

 

「合わせろベイル!!」

「そっちの方こそ!」

『ツインキメラエッジ!!』

『クリムゾンフィニッシュ!!』

 

露出した箇所をすぐさま触手で覆おうとするが、それよりも先に俺とベイルの蹴りが同時に入る。

決まった―――と、思った次の瞬間には、俺達は落下していた。

 

度重なる必殺技の力に耐えきれず、床が崩落したのだと気づいたのは、受け身も取れないまま地面に体を打ち付け、変身が解けた時だった。

 

※―――

 

見るも悍ましい魔族に立ち向かう、頼れる仲間(キマイラ)宿敵(ベイル)の姿を、リヴィアリーは呆然と見ていた。

まるで、悪夢でも見ているような気分だった。

 

キマイラの、真の隣に立って戦うべきは自分。そう信じて疑わず、彼と一緒なら最強だと、そう思っていた。

 

(なの、に)

 

魔族の動きを食い止める為に戦い続け、疲弊しているのは事実。だがまだまだ戦闘に支障をきたす程でも無い。

にも関わらず自分は、ただ座り込んで傍観者に徹しているだけ。真の隣に立つばかりか、武器を握ることさえしていない。

 

情けない。

そして、それ以上に。

 

「悔しい……ッ……!!」

 

拳を硬く握り、歯を食いしばる。感情表現が乏しい普段の姿からは想像できない程、激情を発露させていた。

大事な彼が戦っていて、自分は戦っていない。その代わりとばかりに宿敵が隣に立っている。

 

それのなんと情けなく、悔しい事か――――――否。

この激情の根源は、()()()()()()

 

「なんで、真は、ベイルと一緒に………なんで、なんでなんでなんで―――()()()()()()()()()()()()()()()!!?」

 

今まで一度も出したことも無いような声量で、彼女は叫ぶ。

ボロボロと涙が流れるように、言葉が溢れ出す。

 

「なんで私以外の女と呼吸を合わせてるの!?なんで私以外の女を頼るの!?なんで私以外の女とッ、私、以外とぉっ……!」

 

嗚咽混じりに叫び、慣れない大声に咳き込む。

端正な顔が涙と嫉妬でぐしゃぐしゃに歪んでいる姿に、マリアも魅御音も何も言えない。

 

「………なんで、私だけじゃダメなの……?」

 

その言葉と同時に、空間が振動するほどの衝撃と轟音が彼女達を襲う。

地面が崩落し、重力に従って落ちていくリヴィアリーだったが、受け身を取ろうとも、崩落から逃れようともせず。

 

ただ泣きじゃくりながら、打ちひしがれたまま、落ちていった。

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