買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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主人公の名前は天谷真(あまやまこと)です。しばらく自己紹介シーンなさそうなので、今のうちに書いておきます。


初勝利はほろ苦い!?

 

ちょっぴり高くなった視界に映るのは、カニのハサミのような複眼に、オレンジと銀の装甲。ペタペタと顔中を触る手は、無骨で金属的。

 

これが鏡で自分の姿を見ての感想だとわかる人は、果たして何人いるだろうか。

 

「わ、わ、わぁあああああっ!?へ、変身してるよ俺ぇ!!!」

 

鏡に映るのは、紛れもなく『仮面ライダーキマイラ』。変身に強烈な負荷がかかり、変身失敗すれば悪魔になってしまうという恐ろしい仮面ライダー。作中での変身者は二人いるが、俺は片方しか知らない。なぜなら一人の話は有料の配信サイトでなければ見れないからだ。

ただ、俺の知る方はとても重い覚悟の下変身していた。そりゃ、負荷に失敗リスク。こんなドライバー、なにも無しに使えるはずがない。

 

―――はずなのに、俺は「やったー、変身遊びができるぞぅ!」なんてノリで変身してしまった。意図せず。

 

「ど、どうなってんだコレ、マジでなんなんだ……!?」

 

ドンッ!!

上の階から、床を殴りつける音。恐らく、変身音や変身後のドタバタがうるさかったのだろう。集合住宅はこういうのが嫌になる。いかに一軒家での暮らしがノンストレスだったか、ここ数か月で死ぬほどわからせられた。

 

……まぁ、愚痴を言っても仕方あるまい。上の階の人は、普段は人柄も良い優しい人だし、ここは素直に自分の非を認めよう。いや、不慮の事故だけど。

 

「体調に大きな変化はない……変身者二人とも凄いダメージを負って変身してたはずだけど……え、これどういう事?」

 

改めて、変身までに起きた事を頭の中で整理。

返品前に遊んでおこうと、ドライバーを取り出した。で、その時にベルト帯が入っていない事に気づく。

本当に不良品だな、と悪態をついて、仕方ないから腰の辺りで持っておいて、気分だけ変身ゴッコをしようとして―――腰に当てたら、ベルトが飛び出して。

勝手に装着されて驚いたけど、もしかして今回それくらい力入ってる?なんて今考えれば明らかにおかしい事を考えて、特に何も考えずに『ツインキメラバイスタンプ』を装填して―――。

 

「……もしかしてこれ、本物?」

 

絶対にありえない話。所詮は創作物の中の一アイテム。本物なんて、そもそもこの世に存在しない。科学力的にも、ファンタジー的にも不可能極まる。

だが、今俺が実際に変身しているのはどう説明すれば良いのだろうか。

 

一度バイスタンプを引き抜いて、変身解除を行う。もしこれで姿が変わらなければ、どうしようか。そんな心配が一瞬脳裏をよぎったが、ありがたいことに―――そして信じがたい事に、俺の身を包んでいた装甲は溶けるように消えていった。

 

「えぇ……」

 

嬉しさ四分の一。疑念四分の一、恐ろしさ半分。そんな声が出る。

仮面ライダーに変身できた。特撮オタクとしてソレは嬉しい。だがそれ以上に、なんで玩具で変身できるんだ、という冷めた……無駄に現実的な思考が脳内を占めてしまう。

 

「どうしよう、これ。本当に変身できちゃってたなら、バ●ダイ云々って話じゃないだろ?多分」

 

ドライバーを撫でてみる。思えば、質感がどことなく金属チックだ。玩具なのに。

光沢の感じとか、冷静になれば違和感ばかり。いよいよ本格的に薄ら寒くなってきた俺は、色々と考えるのを止め、

 

「―――飯にするか」

 

諦めて、一度このドライバー関連の問題は放置することにした。

 

※―――

 

本物チックな不思議ドライバーを手に入れてから、早一週間。

俺は結局バン●イに電話することも、まして警察に届ける事もせず、ドライバーを自分で保管していた。

 

何故か、と聞かれればわからない。ただ何故か、漠然とした「コレは俺のだ」という考えが、頭から離れなかったのだ。

あんなに恐れたのに。よしんばこれが本物だとしたら、演者さん……ないし、実際の登場人物の物だろうに。

キメラドライバーどころか、一緒に入っていたジュウガドライバー……ジョージ狩埼という男の専用ドライバーですら、我が物顔で保管してしまっている。そんな自分が普通なら「痛い子」と客観的に評価できるはずが、今回ばかりは「当然だろう」と認めてしまっている。まるで、自分が自分じゃなくなってしまったようで、少し身震いした。

 

「でさー、俺どーしよっか悩んでんだよねー。先輩と付き合うか、後輩ちゃんの想いに応えるか」

「そうだな、俺からアドバイスするとすれば、どっちも脈無しだし後者に至ってはお前の思い込みだからさっさと目を覚ませって事だ。顔洗って来い」

「はぁっ!?いやいや、あの子絶対に俺の事好きだって!だって、目あったし!」

「やめろ俺にまでダメージを波及させるな!中学生時代のガチで痛かった自分を思い出す!」

 

親に無理言って、一人暮らしをしている俺。土日祝にあるバイトと月一の仕送りで何とか細々とした生活を送っている俺の本業は、やっぱりこの学生生活な訳で。

カバンの中に何故か仕舞っているキメラドライバー&ツインキメラバイスタンプを時折意識しながら、中学からの親友、満田徹(みつだとおる)とバカな話で盛り上がる。

 

「……因みにマジで脈無し?」

「お前、アレでイケるなら俺なんて今まで五十人は彼女できてるわ」

「アッ……そ、そっすか……」

「そんな露骨に落ち込むなよ。あー、そうだ。最近美味そうな中華料理屋見つけたんだよ。値段見たら、結構安そうだし。バイト代入ったばっかだしさ、一緒に行こうぜ」

「はぁ……そうだな。過去の女の事なんざ、忘れるのが一番だよな!よしっ、俺は新たな恋を見つけてやるぜ!」

「おうおう、その意気だ」

「よっし。で、その中華料理屋ってどこにあるんだ?」

「結構近いぜ。確か俺の家から歩いて――――ん?」

 

昼休み。俺らだけでなく、殆どの生徒が席を立ち歩き、教室を変え、場所を変え、食事や雑談に興じる時間。アニメなんかだと、よく屋上で食事をとっているキャラが居るだろう。だが、この学校は屋上は鍵がかかっているため入れない。

 

そう。入れないはずなのだ。

しかし今俺の目は、屋上に何者かが立っているのを確認した。一瞬用務員とか、工事とか整備とかの人かな、と思ったが、様子がおかしい。トレンチコートのような服を着て、フェンスに背をもたれさせて黄昏ている。

俺の座っている場所からは屋上が良く見えるから、間違いない。見間違いでも何でもなく、今屋上に何者かが居る。

 

今までだったら、前述した用務員たちの内誰かが黄昏てるのかな?なんて適当な結論をつけて終わらせていただろう。しかし今の俺には、キメラドライバーという不可思議の塊が手元にある。

だから、ちょっと考えてしまうのだ。

 

今屋上にいるのは、超常的な存在なのではないか―――なんて。

 

「うぉぁっ!?な、何事!?」

 

あり得ないよな、と荒唐無稽な考えを鼻で笑ったその瞬間、窓ガラスが派手に砕け散り、教室内に強風が吹き荒れた。

自然現象、とは思えない。何か作為的な物を感じる。

 

そう。明確な、殺意を感じた。

 

「……おい、怪我は無いか?」

「あ、あぁ。お前は?」

「俺も何とか平気だ」

「そうか……しっかし驚いたな。ウチの学校の窓ガラス、全部強化ガラスだって話だけど」

「あれって、鋭い物で軽く叩くと簡単に割れるんだぜ」

「えっ、マジで!?」

 

じゃあ、石の粒でも刺さっちゃったんだろうな。そう納得する満田を放って、改めて屋上の方を見る。俺は視力は良い方だし、この教室は屋上に近くて、一番よく見える。

だから、確かに見えた。先程までフェンスにもたれかかっていた男が、フードで隠れた顔の中で唯一見える口元が、ニヤリと歪んだのを。

 

「ッ、悪い。ちょっとトイレ行ってくる」

「え、おう。―――って、トイレにカバン持ってく必要あるのかよー?」

 

リュックの片方の輪だけに手を通し、屋上まで走る。途中すれ違う生徒たちが奇異の目を向けて来るが、そんな事は気にならない。

今俺の頭には、先ほど俺達の教室に()()してきたアイツならこの異常なキメラドライバーについて何か知っているのではないかと、なんの根拠もない確信だけがあった。

 

息を切らして走る。途中何度も転びそうになりながらも、ヤツを逃がさぬためにと執念で走る。俺の中にずっとつっかえていた何とも言えない感覚。まるで魚の骨が喉に刺さったままのような気持ち悪さが、解消できるかもしれない。一縷の望みを確実な物と思いながら、ついに俺は屋上にたどり着いた。

 

鍵は、掛かっていない。ヤツが開けたのか、それとも最近は開いていたのか。わからないが、立ち止まる理由はない。俺は息を少し整えてから、ドアを開けた。

 

「……んん?お客さんかな?」

 

道化師。真っ先にそんな言葉が頭に浮かんだ。おかしなイントネーションと、若干の不快感を感じさせる高い声。首と同時に体を思いっきり横に倒し、大仰な素振りで俺に話しかけてくる。

 

一瞬で気勢が削がれてしまったが、軽く咳払いして気を取り直し、カバンの中からキメラドライバーを取り出す。すると、ヤツはぴくっ、と肩を震わせた。

 

これは―――きっと、知っている反応だ。

 

「アンタ、これについて何か知らないか?」

 

キメラドライバーを目の前に突き出し、問いかける。するとヤツは、剣呑な雰囲気を醸し出しながら、逆に問いかけてきた。

 

「キミ、ソレをどこで手に入れたんだい?」

「……家に、届いてきた」

「届いてきたぁ?おいおい、嘘もほどほどにしてくれたまえよぉ。()()をただの一般人が持ってるだけでもおかしいってのに、ソレが届いた?冗談にしては笑えないねぇ」

「神器?」

「ふむ……その態度、どうやら本当にわかっていないらしい。届いたというのは嘘だとしても、意図せず手に入れてしまった事は確かみたいだ。なら特別に教えてあげるよ」

 

指を鳴らす。風の音がうるさい中でも、その音は大きく響いた。

すると徐々に空が暗くなっていき、数秒後には辺りは真夜中のようになっていた。

 

な、なんだコレ!?

 

「僕は『魔人』。『魔族』って呼ばれる、君たちで言う所の魔法とか、そうした力を扱う生命体の中でも知能に優れた個体さ。基本的に、普通の人間のような姿をしているね」

「ま、魔人?魔族?」

「あぁ、そうさ。今辺りが暗くなっているのも、僕の力のせい。結界と呼ばれる、初歩的な技術だよ。通常世界に一切干渉しない特殊空間。僕たち『魔人』は、あまり目立ちたがらないからね。内緒話をする時や、戦闘の際には必ず結界を貼る」

「……じゃあ、この『神器』ってヤツは、アンタ等が使う物ないし作った物……って事か?」

「いや、違う」

 

俺の言葉を即座に否定し、男は一歩、俺へと近づいた。

 

「僕たち『魔人』に仲間意識は殆どない。ある個体もいなくはないが、ソレは少数派だね。だから基本群れることなく個人で活動するんだが……示し合わせたように、誰もがある事を目的とする」

「なんだよ、世界征服とかか?」

()()()()()

 

再び食い気味に否定されるだろう、と思って発した冗談を、男は事実だと認めた。その事に驚く間もなく、言葉は続く。

 

「僕たち『魔人』という優れた種族が、この世界の頂点に立つべきじゃないか。大した力も持たない、知恵しか取り柄のない愚かな『人間』という種族を、他の家畜たちと同じ立ち位置へと落としてね。―――だが、ソレに納得できないと、反抗する連中がいる。それが『戦乙女(ヴァルキュリア)』。僕たちの力と似て非なる力を持つ、女どもさ」

「ヴァルキュリアって……じゃあ、男はいない、って事かよ」

「あぁ。なぜだか知らないが、連中の力は女にしか宿らないらしい。―――だが、例外として『神器』だけは、男も女も平等に力を与える」

「っ!」

 

神器。俺の持つキメラドライバーその他諸々も、恐らくその類らしい。知らず身構える俺に、ヤツは忌々しそうに口の端を歪めながら説明してくれた。

 

「神器は、力の結晶体である『スフィア』を加工して作られる。君のソレから感じられるエネルギーは、まさしくスフィアの物だ。一体どのような力を持っているかは、不明だがね」

「……待てよ、じゃあつまり、俺とアンタは」

「敵、だね」

 

いや、怪しい雰囲気の人だとは思ってたけど。けど、なんというか、こう……理解が及ばないというか。

敵?そもそも世界征服だとか魔人だとか魔族だとか、全く意味が分からないんだけど。

 

男は右手を俺の方へと向ける。するとそこに、紫色の球体が発生した。恐らくは、アイツが言っていた特殊な力だろう。ただ塊にしただけ、のように見えるが、実際それだけでも殺傷能力は高いはず―――って、なんでソレが俺に向けられて。

 

「ちょっ」

 

ズガァァンッ!!!という音が響く。突然放たれたエネルギー弾が、着弾したのだ。

反射的に目を閉じ、痛みや衝撃、最悪の場合訪れる死から逃れようとする。が、おかしい。普通俺に着弾したなら、あんな音を聞くまでも無くこの世とさよならしているはずだ。

 

なのに、なぜ俺は無事なのか。その答えは、目を開けたらすぐに分かった。

 

「……これって」

 

目の前には、半透明の壁。ドーム状のソレは、俺を守る様に展開されている。

映画で見た覚えがある。キメラドライバーの機能の一つである、防御壁だ。

 

「ほう、コレが君の神器の力か。防御壁の展開……直接的な攻撃能力を持たないか。なら、殺すのは簡単だろう」

「ま、待てよ!いきなりすぎてわけわかんねぇって!なんで急に、殺すとか殺されるとかの話になってんだよ!?」

「さっき言った通りだよ。僕は人間なんて矮小な種族とは違う。崇高な種族。そして君は、人間の中でも『神器』を手にした、僕たちの敵……殺さない理由がないじゃないか」

「げ、現代日本でそんな事が許されるとでも思ってんのか!!」

「国も時代も、今の僕たちに関係ないだろうッ!!」

 

ガギィン!!と、男の手にいつの間にか握られていた剣が壁を斬りつける。傷一つ付かないが、音は途轍もない。いつ砕けてもおかしくないと、そう考えてしまう。

 

殺す。殺される。そんなの、普通に生きていて直面するはずのない話だ。

 

けど、心のどこかに、ソレに納得しているような―――いや、歓喜しているような自分が居る。

 

半透明の壁一枚隔てた向こうで、殺気を俺へと向けながら、命を奪うに足るであろう攻撃を繰り返す男がいる。普通なら取り乱し何もできなくなるだろうその状況で、俺はどこか冷静に、キメラドライバーを腰へと当てた。

 

ソレだけが、自分のすべきことだというように。

 

『ツインキメラ!』

 

足元のカバンからツインキメラバイスタンプを取り出し、天面のボタンを押す。すると、どこから聞こえているかもわからない音声が響く。

 

迷いなくバイスタンプをキメラドライバーに装填し、注文した日からずっと考え続けていたオリジナルの変身ポーズをとる。

ともすれば奇行ともいえる俺の行動に、男の攻撃の手が止まる。

 

『キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!』

「変身!」

 

巨大なカニと、大きく口を開いたワニ。幻影のようなソレが見える中、俺はバイスタンプを横に倒した。

 

『スクランブル!』

 

陽気で不気味な音楽は消え、二匹の幻影は砕け、俺の体に纏わりつく。防御壁は消えているが、男が攻撃して来ようとする素振りは無かった。

 

『キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!』

「………なるほどね。防御壁だけじゃないって事か」

 

素人ながらに構える俺に、男の方は愉快そうに笑いながら剣を投げつけて来る。まさか初手で投擲が来るとは思いもしなかったが、何よりもその剣がゆっくりに見えた事に驚いた。

変身して、自分の能力も向上している……とかだろうか。

 

だが好都合だ。ただ鎧を装備しただけで何も変わっていない、だったら酷い事になっていた事間違いなしだし。

 

剣を躱し、そのまま男のすぐそばへ向かって、腹を殴りつける。ドンッ、という鈍い音を立てて、男は吹き飛んでいった。

 

「うぉおっ、すっげぇ!」

 

落ち着いて考えれば、初対面の男を殴り飛ばしたという異常な状況ながら、俺の心には昂揚感しかなく。命を狙われていたんだから別に良いだろう、という適当な言い訳を自分にして、フェンスにもたれかかる男の胸倉をつかんだ。

 

 

「げほっ……くっ、単なる人間風情が、神器を持っているからって調子に乗るなよ……!!」

「いいや、とことん乗らせてもらうぜっ!」

 

男を投げ飛ばし、即座に駆け寄って蹴り上げる。抵抗する間も許さずに、思うままに動く。本来動かないはずの体は、変身の影響か俺の要望を完璧に叶え、目の前の敵をゴム毬のように弄ばさせた。

 

殴る、蹴る、投げ飛ばす……それを何度も繰り返す中で、俺は自分の攻撃が何かに阻まれているような感覚がある事に気づいた。そこで反射的に動きを止めると、男はすぐに後方へと跳躍して、俺から距離をとった。

 

「やっぱり戦いは不慣れみたいだね。最初の数発以外、僕にダメージを与えられた攻撃は無かったよ。まぁ、その馬鹿力のせいで抜け出せなかったわけだけど」

「ノーダメとかマジかよ……」

「そうさ。無駄な攻撃ご苦労様……じゃ、次は僕のターンかなっ!!」

 

エネルギー弾が、今度は細かく襲ってくる。逃げ出す隙間もない連続攻撃に、俺は両腕で攻撃を耐える以外の選択肢を失ってしまう。

何とか隙を見つけて、と踏ん張っていると、攻撃が突然止む。驚いて一瞬硬直した所を、今度は直接攻撃してくる。

ダメージはさほどないが、対応できないもどかしさに歯噛みする。なされるがままだ。アイツの攻撃がもう少し強ければ、俺は簡単にやられていたはず。

 

―――クソっ、こうなったらダメ元で―――!!

 

「そらそらそらそらっ!!さっさとくたばれっ、神器使い!!」

「死ぬのは―――お前だッ!!」

『キングクラブエッジ!』

 

相手の動きが単調になるように防御し、必殺技を叩きこむタイミングを無理矢理作る。上手くいく可能性は低かったが、成功した。

アイツの剣の切っ先が俺の喉を貫こうとした直前に、俺の拳の動きに合わせて銀色のハサミが突き出され、男の体を叩く。

 

鋭利な先端部分ではなく、丸っこい、殴打に使えそうな部分での攻撃。ソレは男を吹っ飛ばし、フェンスを越えたその先へと追い出した。

 

「ぐっ、ちゃんと技まであるのか……!だがっ、僕が落下死なんて単純な死に方するとでも」

「する、じゃねぇ。させてやるよ」

『キングクラブエッジ!』

 

再びバイスタンプを倒し、必殺技を発動。今度はエフェクトのハサミの鋭利な部分が男を貫き、落ちて行くことに対処しようとしたアイツを怯ませた。腹に大穴が開いているように見えるが、まだ死んではいない。

 

―――だが、その数秒後。

どしゃっ、という音と共に、一人の命が潰えた音が聞えた。

 

どうやら、初勝利、らしい。

 

「………わけわかんねぇ」

 

変身解除し、倦怠感にされるがまま、横になる。空はいつの間にか青色に戻っており、戦闘の最中破壊された部分は全て元通りになっていた。

 

だが、男を殴った感触は、命を奪った感覚は、全部残っている。

反射的に変身し、反射的に戦い、反射的に殺した。まるで夢でも見ているような気持ちで戦っていたが、いざ戦闘が終わり冷静になると、なんだか怖くなってくる。

 

「―――正義のために戦う仮面ライダーが、初戦で人殺し、か」

 

怒涛の展開と、戦闘での疲労が重なってか。

俺は、気絶するように眠るのだった。




【次回予告】

初めての戦闘と、初めての人殺しを経験した真。普通なら絶対に経験することのないソレを、仕方がないと無理矢理飲み込んだ彼は、他の『魔人』や『魔族』と戦う事になる可能性を考え、特訓を開始した。
そうして仮面ライダーの力を上手く扱えるようになった彼の下に、フルフェイスヘルメットにボディスーツ姿の何者かが現れる。

「―――天谷真。貴方には、この世界を救う素質がある」


次回、『謎の女は刺激的!?』
お楽しみに!
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