買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

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今更ながら、この作品は必殺技をかなりの頻度で使いますし、エフェクトを利用した攻撃を多用します。
そりゃ予算とか気にしなくて良いですし。その分ちゃんと描写しきれているかという問題が浮上しますが。


ヒーローか、一般人か!?

時は、少し遡る。

 

「アイツ、迷わず一人で向かっていきやがって……」

 

アパートの通路で、一人立ち尽くす真。その手には、懐から取り出したツインキメラバイスタンプが握られていた。

オレンジ色のクリアパーツ。カニとワニが彫られたソレは、陽光によって怪しく輝いている。

 

彼の戦う力。そして、彼が戦いに巻き込まれんとしている原因。

 

「半々、ねぇ」

 

戦うか、戦わないか。向き合うか、見て見ぬふりをするか。

三日間ずっと頭を悩ませていたこの二択は、言ってしまえば『仮面ライダーになるか、一般人のまま生きるか』という二択に等しく。

 

仮面ライダーに成りたい。幼少期に抱いたその夢は、高校生になった今もまだ胸の奥に微かに残っていて。

けれど、一般人である事をやめる―――それは、今までの自分を否定し、捨てる行為のような気もして。

 

「せめて、一緒に戦えって命令してくれたら気が楽だったんだが」

 

もっと戦う事を強いられた方が良かった、と彼は呟く。巻き込まれてされるがままだったら、命の奪い合いの中でも逃げ道がある―――情けない事だが、今までただの一般人として暮らしてきた彼には、そんな考えがどうしても浮かんでしまうのだった。

 

「……にしても静かだな、結界貼ってるんだろうけど、ここまで戦闘の気配を感じさせないなんて……」

 

頭を振り、一度違う事を考えようとした彼だが、そこである違和感を覚える。

結界。それは過去に交戦した『魔人』が言っていた、基礎技術の一つ。戦闘など、一般人に気づかれたくない物を隠す際に発動する物で、このように戦闘音だとかを完全に隠す事が出来る。

 

―――そう、つまり、最初のあの破壊音はわざと立てられた物という事になる。

 

「人を襲うにしても、普通はバレないように結界を貼るはず。最初から貼らねぇって事は、『戦乙女』をおびき出そうとしている……そうしても大丈夫だって、自信があってやった訳だよな……」

 

まさかリヴィアリーは、まんまと罠に嵌められたのでは。そんな考えが頭に浮かぶ。

いやいやまさか、と否定しようとするも、否定する材料が見当たらない。

 

「……このまま、黙って待ってるだけで良いのか?」

 

悩み続けていた、長期的な視点を必要とする二択ではなく、今自分が何をすべきかという二択を持ち出す。

危険を承知で助太刀しに行くか、リヴィアリーの勝利を信じて黙って待つか。

 

不思議なことに、その答えは迷わずに出た。いや、答えを出したというよりも、体が動いたというべきか。

 

先程リヴィアリーが走っていた場所を、彼もまた駆け出していた。

 

「畜生、なんで走ってんだよ俺。命かける覚悟もねぇ癖に、仮面ライダーに成る覚悟もねぇ癖に、戦場なんぞに向かいやがって……!!」

 

愚痴を吐きながらも、その足を止める事はない。寧ろ速度はどんどん増していき、息が荒くなってもなお遅くすることは無かった。

 

走り続ける事数分。彼は、ある場所で足を止めた。

普通の人ならば、そこはただの道と同じようにしか感じられないだろう。しかし、キメラドライバーを持っている彼には、そこの空間が少し色が変わり、半透明のヴェールのような物が揺らいでいるのが見える。

 

「これが結界……前は中から見たけど、外から見るとこんな感じなのか……多分、普通の人には見えねぇんだろうな、この半透明の膜も」

 

そっと手を伸ばして触れようとするも、特に膜は反応を示さない。本当に、ただそこにあるだけのようだ。

 

少しの間顎に手を当てて思案顔をした真は、映画でキメラドライバーが結界を破るのに使われていた事をふと思い出し、これなら入れるのでは、と考えた。

 

「……ただ、映画の説明だと『ギフ』の目が入ってるドライバーが発生させた結界を、同じく目が入ってるドライバーで打ち破ったって話だからな……無条件に結界を敗れるって訳じゃねぇだろうけど。まぁこれが『神器』であって本物のキメラドライバーじゃないってんなら、可能性はあるよな」

 

キメラドライバーを片手に持ち、ゆっくりと結界へ近づける。ある程度近づいた瞬間、結界がキメラドライバーを避けるようにして動き始め、最終的には人が一人通れる程度の孔が開いた。

どうやら、彼の読みは正しかったらしい。

 

「―――行くか」

 

一般人か、仮面ライダーか。そのような大きな二択ならつい立ち止まってしまう彼だけど。

目の前の誰かを助けるか否かという二択なら、迷わずに『助ける』と選べた。

 

それこそがヒーローの資質だという事に、彼はまだ気づかない。

 

※―――

 

「皆殺しだぁ?神器持ちだからって、調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

「ぶっ殺してやるぜぇッ、ヒーロー気取りさんよぉおおおっ!!」

 

『魔人』達が、武器を構えたり、握りしめた拳をそのまま振るってきたりと、数で攻めて来る。だがソレは、乱暴に蹴りを放つ事で対応しきる事が出来た。

劇場版ではあまり良い所が無かったが、これでもキマイラは強いのである。

 

性能だけじゃなくって、俺のセンスが良いってのもあれば……ちょっと嬉しいかな。

 

無限にいるのでは、と思われる量の敵をバッタバッタと薙ぎ払っていく中で、時折変な感覚に襲われる事に気づく。その発生源を探してみると、奥に奇抜な恰好をした女性が居るのに気づいた。

そう言えば、リヴィアリーを拘束している怪物……恐らくは『魔族』を使役しているような雰囲気の女。この沢山いる『魔人』とは一味違う風格を出しているアイツが、ボスだろう。

 

「にしても数が多いな、まとめてぶっ飛ばすか」

『キングクラブエッジ!』

 

バイスタンプを横に倒し、必殺技を発動。銀色のハサミが、俺の拳の動きに合わせて敵を一掃する。

爆発の連鎖と共に男達は塵も残さず消えていき、残るは『魔族』と『魔人』の女……ギャンガ、とか言われてたっけ。ソイツだけになった。

 

「神器の、解放……?貴方、何者よ」

「まだ何者でもねぇよ。ここにいるのだって思いつきだし、神器のその、解放?だとかもさっぱりわかんねぇ。けど」

 

言ってる事は意味が分からない。正直、魔人だとか戦乙女だとか、付いて行けてない部分がある。

だが、今俺の目に映っている物は。今俺が居るこの状況は、事実だ。

 

知らないなりに、わからないなりに、場をかき乱す。仮面ライダーとは程遠いかもしれないが、今はそれで良い!

 

「リヴィアリーは良い奴で、ソレを傷つけたテメェらが悪い奴だって思ってる。そして俺は、その考えに従って動く。それだけだ!」

「所詮は元一般人って事かしら。まぁ、どうでも良いけど。くっきぃちゃん、あの神器使い、魔力にある程度の抵抗力があるわ。適当に弱めなさい」

 

ギャンガの言葉に、『魔族』はリヴィアリーを投げ捨て、瞬間移動とも言うべき速度で接近してきた。そして俺がそれに気づいたときには、巨大な拳が俺の眼前に迫っていて―――。

 

「ぐぅっ!?」

 

等速直線運動。ソレを全身で体感した俺は、人のいない家の中に埋まってようやく何があったかを理解する。あの巨体で勝手に勘違いしていたが、とんでもないスピードだ。キマイラの装甲越しでも、喰らった部分が少し痺れている。

 

「さっさと体制を整え―――速ッ!?」

 

起き上がった俺の眼前には、再び高速で迫る拳が。デジャヴを感じたその直後、俺はさらに遠くへ吹っ飛ばされた。

完全に弄ばれている。そう理解するも、どう対応すべきかがまだ定まらない。

 

スピード。パワー。どちらとも俺は劣っている。唯一、あの拳を後もう数十発くらいノーガードで受けても平気そうなのが勝っている点か。仮面ライダーの装甲、流石である。

しかしだからと言って黙ってやられ続けるのは不本意極まる。というかその間にリヴィアリーが何かされたら終わりだ。

 

目指すは短期決戦。次の接近の時に、まずは一撃喰らわせる。

 

バイスタンプを横に一度倒し、必殺待機状態にする。そのままゆっくりと立ち上がり、先程と同様に拳を振るっている『魔族』が見えたのを確認して、即座に必殺技を発動。

 

『クロコダイルエッジ!』

 

バイスタンプを二度倒し、拳に向かって足を蹴り上げる。クロコダイルの幻影が大きく口を開き、その腕を飲み込んだ。

足が触れると同時に噛み砕いたその腕は、爆発するでもなくそのまま千切れた。

 

そんなのありかよ、と自分で叫びたい気持ちになりつつもソレを抑え、動揺し一歩後ろへ下がった『魔族』相手に、追撃の必殺技を叩きこむ。

 

『キングクラブエッジ!』

 

劇中では殴るときに使っていた技だが、今回は蹴りで発動。俺のイメージ通りにキングクラブの幻影が出現し、蹴りと同時にその鋭利なハサミの先端を突き刺した。

直後、爆発。仮面ライダーの必殺技を喰らえば、相手が爆発する。コレはもはや、お約束なのだろうか。実はさっきから爆発している原理がわからない。

 

ま、今はそれを考えてる場合じゃねぇな。

 

倒した事に一喜一憂してやりたい所だが、まだ敵を倒し切った訳ではない。リヴィアリーのすぐそばに、ギャンガが残っている。

数度深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、瓦礫の中を飛び出す。やはり仮面ライダー。走る速度も変身前のソレと比べ物にならない。

 

直ぐに、ギャンガの下まで戻ってこれた。二発であれだけ吹っ飛ばされたのか、と走りながら戦慄したが、ダメージも疲労感もまだまだ許容範囲なので良し。

拳を握りながら、自分の部下、或いはペットが倒された事に歯噛みするギャンガを仮面越しに睨みつける。

リヴィアリーは、座り込んだままだった。特に何かをされた様には見えない。

 

「私のっ、私のらっきぃちゃんを良くもォおおおおおおおッ!!」

 

鞭が地面を叩くと、ギャンガの周囲に黄色の球体がいくつも出現し、バチバチと放電しながら俺の方へと飛来してきた。中々の速度だが、先程の『魔族』の拳に比べれば全然余裕で躱せる。

 

攻撃の悉くを回避、或いは拳で叩き落としながら着実に接近する姿は、傍から見ればどちらが悪者かわからなくなるほどだろう。

俺の憧れた仮面ライダー的な戦い方とは程遠い。自嘲的な笑みが自然と零れるが、対照的に相手の顔はどんどんと恐怖に歪み始めた。

 

「くっ、来るな!私に、近づくなぁあぁっ!!」

「………終わりだ」

 

その姿に、止めを刺す必要はないのでは、と一瞬躊躇いそうになるも、ほぼ全裸のような恰好で座り込んでいるリヴィアリーを見て覚悟を決める。

俺はあくまで部外者で、リヴィアリーとは知り合い程度でしかない。けど、見るからに酷い事をされて、俺が居なければもっと酷い事をされていただろうという状況で、命のやり取りを中断するなんて考えは浮かばなかった。

 

バイスタンプを横に倒す。必殺技待機音が響くと、ギャンガは攻撃することも無く、俺から逃げようと背中を向けた。

 

……ここしか、無いか。

 

『クロコダイルエッジ!』

 

逃げようとするギャンガの背中を踏みつけるように、蹴りつける。クロコダイルの幻影が噛み砕き、蹴りの衝撃で彼女は転び、這うようにして立ち上がる。だがその体を迸る紫電が、映像作品で何度も見た末路が彼女を待っている事を知らせて来る。

俺は、それから目を逸らすことなく、黙って変身を解除した。

 

そして、その直後。

 

「こんな、はずじゃ……私は、私が世界を――――ッッッ!!」

 

一際大きな爆発と共に、彼女の姿が、最後の言葉が、消えていく。結界内特有の雰囲気が掠れていき、本当に戦闘が終了したんだと感覚で理解できる。

 

見渡せば、普段と変わり映えの無い景色。先程まで戦闘があったなんて思えないような住宅街。俺のせいで壊れた場所は、無傷で残っていた。

 

呆然と俺を見つめて来るリヴィアリーに、なんといえば良いのか悩みながら上着を渡して、手を差し伸べる。一瞬意味がわからなかったのか上着で体を隠したままポカンとしていた彼女は、すぐに俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

「………取り敢えず、俺の家に来てもらっていいか?」

「うん」

 

もしかしたら、今は男という存在全てが嫌になっているかもしれない……そんな可能性もあったが、俺の申し出を彼女は迷わずに了承し、俺の手を引いて家まで歩き始めた。

 

その姿に、もしかしたら服を脱がされただけで一応ギリギリセーフだったのかもな、と安堵の溜息を吐き、久しぶりの戦闘で疲労しきった体がさらに重くなったのを実感するのだった。

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