買った玩具が本物だった話   作:うぉっ、でっか…

7 / 23
始まる戦い、始まる同棲!?

ちゃぶ台を挟み、無言のまま時間だけを浪費する俺達二人。リヴィアリーはボロボロだった戦闘装束(ただのエロコスでは無かったらしい)を脱ぎ、俺の服を着ている。顔だとかについていた傷は既になく、これは戦乙女の再生能力が故だそうで。

体中を流れる『魔力』が、生物としての強みを全体的に強化しているのだとか。詳しい事はよくわからないが、すぐに傷が治ったりするのは羨ましい限りだ。俺の場合だと、変身を挟まないといけないからな。

 

因みにだが、今俺は死ぬほど疲れている。恐らく久しぶりに実際の戦闘を行ったからだろう。今布団に入ってしまえば、一呼吸する前に深い眠りについてしまうだろうと思われる程だ。

 

「……それで、どうして私を助けに来たの?」

 

しばらく続いていた沈黙を、リヴィアリーが破った。感情の読み取れない声。俯き気味なせいで、本当にどういう意味での「助けに来たの?」なのかわからない。

純粋に「なぜ来たか」なのか、「助けなんか不要だった」なのか。

 

「どうしてって……その、なんでかは、俺も良くわかんねぇけど」

「貴方には戦う覚悟が無かったはず。いや、厳密には決めきれていなかった。命を奪う事を、奪われる危険を受け入れる事を」

 

その言葉に、俺はつい黙り込む。

戦う覚悟がどうとか、そういう事はあの時全く考えていなかった。

 

ただ、リヴィアリーが……少なくとも俺にとって他人ではないヤツが、危険な状況にあるかもしれなかった。そう思うと居ても立っても居られなくなって、自然と駆け出していた……というか。

今でも戦いに協力するか見て見ぬふりをするかで悩んでいるし、答えを出せって言われても無理だ。

 

「本当に……本当に、なんでかわかんねぇんだよ。自分でも、確かに戦うのが怖くて、命を懸けるなんてもってのほか……って思ってる部分がある。正直、あの『魔族』を目の前にした時は回れ右して帰ってやろうかなって思ったくらいだし。でも実際は戦っちまったワケでさ」

「……確かに、まだ()()って顔のまま」

「その半々って顔はどんな顔だよ……まぁ良い。とにかく、俺は完全に戦いに身を置く覚悟ができたわけじゃない。自分で言うのもなんだけど、戦場に居ていいようなヤツじゃない」

「協力はしない、って事?」

 

決めかねている、という顔をしているのに?と首を傾げるリヴィアリーに、俺は目を閉じて首を横に振る。

 

「……多分さ。長期的な目で見ようとしたら、ダメなんだと思う。今回の件で、なんとなく分かった」

「それは、どういう事?」

「あー、「嫌になったらやめるけど取り敢えず今は一緒に戦う」なんて事は言わねぇよ。仮にも殺し合いだ、そんなノリで挑もうなんざ思わねぇ」

 

大した理由も無いだろうに、クラスメイトが攻撃された。(厳密には窓が割られただけだが)

『魔族』の拳で、まるで水切りの石みたいに吹っ飛ばされた。

何より、ボロボロのリヴィアリーを、襲われる直前の彼女を見た。

 

―――皆、命を、尊厳を、何かを懸けてる。

たった二度だけしか体験していないが、戦場がどういう場所なのかは十分理解できた……つもりだ。

 

「………もし。もしも俺の知りうる範囲で、俺の手の届く範囲で、誰かが戦いに巻き込まれたり……理不尽に殺されたり。そんな事があったらって考えた時に、俺は真っ先に『助けたい』って思った。そりゃ、一般人としての自分を捨てるなんて、って思う部分もあるし、死にたくないって思いもある。―――けど、今更何も知らなかった頃に戻るなんて無理だから。だから俺は」

「戦う、って?」

「……あぁ」

 

俺の言葉に、彼女はしばらく黙ったまま真っ直ぐに見つめてきた。気恥ずかしかったものの、目を逸らしてはいけないと思った俺は、黙って見つめ返す事にした。

 

そして、数分程が経過した時。

 

「……不思議な目。迷ってるのに、迷ってない。これなら一緒に戦うとしても、安心できる」

 

少しだけ微笑んで、そっと右手を伸ばしてきた。

握手だ。応じない理由は無い。

 

「改めて、よろしく。天谷真だ」

「よろしく、真。私はリヴィアリー・フラスベル。この街の守護を任された『戦乙女』の一人。気軽に、リヴィと呼んで欲しい」

 

温かい。握った手の熱が、俺が本格的に非日常へ足を踏み入れた事を教えてくれる。

 

俺達の戦いはこれからだ!とか言ってしまいたくなる雰囲気だが、それよりもまずは最初の質問と洒落込もう。

 

「……いきなり、あだ名呼び?」

「リヴィアリーだと、長いでしょ?」

 

いや、確かにそうだと思うけど。距離感バグってないかな、この子。

さり気なく俺の事名前呼びだし。

 

ま、いいけどさ。

 

※―――

 

この世界には、『魔力』と呼ばれる力が満ちている。

『魔力』はあらゆる生物がどれだけ微量だろうと必ず持っている力であり、基本的にどの生き物もソレを持っている事に気づく事すらなく一生を終える。

だが中には、先天的か後天的にか、ある一定の量を超えて『魔力』を保有するモノが居る。それが『魔族』であり『魔人』であり、『戦乙女』なのだとか。

 

『魔族』と『魔人』は本質的には同じだが、理性があるかないかという点で区別される。『魔人』=人の形をした『魔族』という認識だったし、そんな感じの説明を受けたような気がするが、リヴィ曰く違うらしい。

 

『戦乙女』は、一定以上の魔力を持つ上で、その魔力を『魔技(まぎ)』に昇華できた者のみを指すらしい。

『魔技』は『魔力』に自分だけの性質を与え、それに特化させた『魔法』の事……と説明されたがよくわかっていない。因みにリヴィは自分の身体能力を上昇させる『魔技』を一応持っているらしいが、他の『戦乙女』が魔力を体内で循環させた際に生じる身体能力上昇の効果よりも劣っているようで、実質『魔技』無しの『戦乙女』として唯一無二の存在なのだとか。

 

『戦乙女』と『魔人』、『魔族』の戦いは遥か千年以上昔から続いており、世界各地でその戦いが人々の安寧の裏で行われている―――と、ここまで聞かされて。

 

目の前のリヴィは、粗方話し終えて満足だ、というような顔をして茶を飲み、そのまま黙り込んだ。俺から何かないか、という事だろうか。

 

「……あの、大分端折った?」

「まぁ、それなりに。あまり説明しても、ピンとこないと思う」

「それは……正直、全体的にわかっていない所はあるけども」

 

今俺が説明した以外にも色々な話があったのだが、そっちは専門用語のオンパレード過ぎて理解しきれなかった。どうやら俺がこれから戦場で背中を預ける相手は、説明能力にも難があるらしい。

 

「でもまぁ、『魔族』とか『魔人』とか『戦乙女』とかの概要はわかった。ようは同じ力を持っててもそれを振るう目的が違うって事だろ?んで、俺達は与えられた区域を連中から守れば良いわけだ」

「大体そう。それだけわかっていれば、後はその都度説明すれば良いだけ」

 

出来れば今簡潔に全部の説明をして欲しいんだけどなぁ、という思いを胸に秘めて、俺も茶を飲む。そろそろ冷めてきたが、まぁそれでも美味い。凝り性な自分に感謝だ。

 

「で、協力するって具体的に何をすれば良いんだ?」

「『魔族』の出現情報だとかは、基本的に組織から連絡が入る。私達の場合は、その都度それに向かえば良い。だから、普段はいつも通りの生活をしていても構わない」

「組織?」

「話してなかった?『戦乙女』の中でも情報収集等に長けた『魔技』を持つ者達を筆頭に作られた、各保護地域内部の状況をリアルタイムで把握し、『魔族』の反応を検知すると即座に担当の『戦乙女』に討伐指令を出す。それが組織」

「名前とかねぇの?」

「無い。組織は一つしかないし、名前を態々付ける必要も無い」

 

本当にどうでもよいと思っているのか、全く気にする素振りも無く言い切るリヴィ。男の子だからだろうか、俺としてはそういう組織は、必要性が無くとも名前をつけたくなってしまうが。

 

「ん?組織からの連絡って、『戦乙女』にしか行かないんじゃないか?」

「そう。だから、貴方には私から連絡を入れる必要がある」

「じゃあ連絡先交換しないとだな。スマホ持ってる?」

「携帯電話は持ってるけど……必要無いと思う」

「え、必要ないって……魔法の力があれば念話も可能って事?」

「可能だけど私はできない。―――まぁ、良い。電話番号と、メールアドレス、私が交換しておく」

「あ、うん、どうも。ってか今時ガラケーって」

「色が気に入ってる」

「そ、そうか」

 

なんだかちょっとキリっとした表情になった彼女に、俺は何と反応したら良いかわからず曖昧な顔だけ見せ、スマホを手渡した。

別に見られて恥ずかしいモノは、そっちには入ってないしな。

 

リヴィは慣れた様子でスマホとガラケーとを操作し、少し経ってから「ん」と一言呟きながらスマホを返してきた。

てっきりスマホには慣れていないと思ったが、ちゃんとわかっているらしい。

 

……ただ、必要無いと思うってどういう事?

 

「これで、もし離れた場所に居ても連絡できるようになった」

「……あのさ、もし、とか連絡先交換が必要無いと思う、とか……どういう事?俺の理解力が無いせいなのか、お前の説明不足なのかわからないんだけど、結局何が言いたいんだ?」

「?多分、私が言っていないだけだと思う」

 

そういうと、彼女は立ち上がった。ぐぐ、と背中を伸ばし目を細める姿すら美しく、同時に押し上げられた胸がとても大きかった。俺が理性的な生物でなければ飛びついて揉みしだいていたところである。いやいや何を考えてるんだ俺は。

 

部屋を見渡すように視線をあちらこちらに動かした後、リヴィはある一点を見て動きを止め、そこへ向かって歩き出した。

勿論、その間も説明は無しである。後、向かっている部屋が俺の寝室兼趣味の部屋。

 

「ちょ、ちょっと待ってって!いきなりなんで人のパーソナルスペースに入り込もうとしてんの!?」

「この一室の中で、唯一寝室と思しき場所がそこだったから」

「じゃなんで寝室があったら向かうって選択肢が出てくるんだよ!?」

「だって、今日からここに住むし」

「はぁッ!?」

 

やべぇ、今日一日で何回俺の脳の許容範囲が限界突破した!?ここに住むって、俺の家に!?こんなボロアパートの一室に、とても二人以上じゃ生活できないような貧乏部屋に男女二人で!?

バカじゃねぇのかコイツ!!

 

「な、何言ってんだよお前、俺とお前で住むって事か?―――いや、もしかして俺に出てけとか言うんじゃ」

「違う。貴方と、ここに住む」

「なんで?!」

「?携帯だと連絡に気づかない場合がある。だったら、常に行動を共にした方が良い。だからさっき、連絡先交換は不要だって言った」

「いやいやいやいや」

 

言ってる事は理にかなっている気がしなくもないが、ツッコミどころが多すぎるだろう。そもそもコイツ、さっき『魔人』の男共に襲われかけたばっかりじゃないか。だというのに男と一つ屋根の下暮らす、だなんて……なんだか頭が痛くなってきた。

 

「……あのさ、俺も男なんだけど」

「?それで?」

「っ、な、なんかの間違いってのだってあり得る訳だろ?自分で言うのもなんだけど、思春期だし?我慢しきれないって事がある可能性だって―――」

「それは大丈夫。もしそうなっても、貴方なら簡単に撃退できる」

「お、お前が負けた相手に勝ったんだぜ?」

 

俺がそういうと、微塵も視線を向けることなく布団の用意を行っていた彼女は手を止めてこちらを見てきた。とても落ち着いた様子で、こんな事を言ってくる。

 

「貴方の神器は、変身というプロセスを経て力を発揮する。なら変身する前に無力化すれば良い」

「あらかじめ変身して、とか考えねぇのかよ」

「あの全身鎧を身に纏って何をするの?」

「………」

 

何も言えなくなった俺から視線を外し、掛け布団を綺麗に広げたリヴィは、満足げにそれを眺めてから付け足すように言った。

 

「何より。貴方はそういう事をしない。少なくとも、私はそう思っている」

 

…………あぁ、畜生。

そんなことをそんな風に言われて、マジで手を出せるやつがどこにいるよ。

 

俺はこれから始まる禁欲生活を想像し、大きくため息を吐くのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。