買った玩具が本物だった話 作:うぉっ、でっか…
「邪魔だッ!」
『キングクラブエッジ!』
ゴブリンの山、と言うべき壁に拳を叩きつけ、爆発させる。異界と化した校舎は爆破の衝撃でも傷一つ付かず、迷宮は迷宮のままだった。
教室でゴブリンと遭遇し、そいつ等を難なく倒してから体感で数十分。俺達は迷路と化した校舎の中を、ひたすら走り続けていた。
道中の敵は、体力を温存するためにもリヴィが基本的に倒し、あまりに数が多い場合は俺が必殺技でぶっ飛ばす方法で処理していた。おかげで、俺もリヴィもまだまだ動ける。
だがゴールである校庭には、たどり着くどころか進展の一つも無い。一つ一つ部屋を虱潰しにしようにも、本来の階等を超越した場所に繋がる(三階の教室のドアを開けたら、一階にあるはずの職員室に繋がっていた、等)のでどこを開けたのかがわからなくなる。
「一度、休む?神器の解放は、かなり体力を消耗するって話だけど」
「いや、問題ねぇ。基本お前が何とかしてくれてるからな。自動回復が間に合ってる。―――お前の方こそ、大丈夫か?」
「私は全然平気。神速の異名は、その最高速度と維持時間の両方を称賛する意味を込めてつけられたモノだから。持久力も、私の自慢」
「なるほどねぇ。―――んじゃ、さっさと校庭に着くよう頑張りますか!」
屈伸運動を二、三度行い、そのまま駆け出す。変身後の俺の走力はかなりのモノだと思うが、隣を走るリヴィはこれでも小走り程度にすらなっていないらしい。流石神速。
「なぁ、一つ疑問なんだが」
「?何?」
走りながら尋ねる。リヴィはこの程度なら歩きながら会話をする程度だろうし、俺は日課のランニングでかなり肺活量だとかが鍛えられているから平気だ。
意識はいつゴブリンに襲われても良いようにあちらこちらに向けてあるが、会話を続ける。
「お前の話だと、ゴブリンはもっとこう、強くて面倒くさい奴だと思ってたんだが……今まで遭遇したヤツ、全員棍棒持って突っ込んでくるだけで、雑魚ばっかりじゃないか?」
「……多分、ゴブリンがこの校舎に慣れていないだけ。ゴブリンの真価は、自分のテリトリーでの戦いで発揮されるから。地の利を生かした戦いで、相手を着実に削っていく……繁殖力は高いから、防衛戦でも個体数は維持できるし」
「それが面倒な点って事か。ったく、猶更時間かけられねぇじゃねぇか。迷路をスピード勝負でって、無茶振りしやがって……!!」
文句を言いながらも足は止めない。いや、止めるわけにはいかなくなったというべきか。
走っている最中、一つもドアを見つけられない。異界と化している影響か、廊下が異常に長く、入り組んだ形をしているのだ。見た目が学校なだけで、実際はぐにゃぐにゃとした全く別の何かというべきだろう。この空間は。
「なぁ、『戦乙女』のなんかで目的地にパッとたどり着ける何かとか無いのか?」
「無い。正確にはあるけど、私の『魔技』では不可能」
「あー、そういう………俺の力で何とかって思ったけど、キメラドライバーの結界こじ開ける力がいまいちよくわかってないしなぁ……やっぱ走る他ねぇのか」
※―――
時折会話をしながら、不定期に出現するゴブリン達を逐一抹殺して校舎を探索する。そんな事をひたすら繰り返していた俺達だが、途中である事に気づく。
……ゴブリンが、強くなっている。
「俺の勘違いじゃ無けりゃ、アイツ等……絡め手とか使ってくるようになってないか?」
「勘違いじゃ無いと思う。恐らくはもう、この校舎の構造に慣れてる」
「早すぎねぇかなぁッ!!」
ゴブリンの強さについての話は、ついさっきしたばかりのような気がする。一応俺達の探索もかなり進んでいる(体感)し、妥当ではあるんだろうけど……
隠れて弓を撃って来るヤツとか、面倒なヤツが増えてきたんだよな。真正面からだと無理だと理解したのか、ゲリラ戦ばかり仕掛けてくるし。こっちが大技撃とうとしたら離脱するし、かといって一体一体チマチマ狙ってたらキリがないし。
そろそろ、やばいかもしれない。
「校庭は未だにここだ、って思えるようなドアが見つからねぇし、どうすりゃ……」
「っ、考えるのは後。また来た」
ギィ、ギィ、と耳障りな泣き声が聞こえる。そちらの方に目を向けると、風切り音と共に矢が飛来してきた。それを難なく受け止めるも、背中に軽い衝撃が伝わる。
どうやら、今掴んだ矢は視線誘導のための物だったようだ。もし変身していなければ余裕で刺さっていただろう事に、冷や汗が流れる。
「くっ、このっ」
リヴィが苦戦している声が聞える。彼女の速度にまともにやったら敵わないとわかっているらしく、ゴブリン達は障害物を利用したり、自ら設置したりしてリヴィをいなしている。仮にアイツ一人だった場合、既にやられていてもおかしくない。俺が後ろからゴブリンを攻撃したり、リヴィに当たるような攻撃を防いだりしているから何とかなっているが。
……何というか、俺はキマイラの堅牢さくらいしか活用できていない気がする。もしかたら、ダイモンが使えないのもそこが原因なのかもしれない。
いい加減、戦闘技術の方も鍛えないとな。
っと、そんな事を考えている余裕はないんだった。
そろそろ体力の方がやばくなってきたが、このままだとジリ貧だし、必殺技を使うしかない。
バイスタンプを横に倒し、必殺待機音を響かせる。それに反応したリヴィがゴブリン達を誘導し、俺の攻撃がより大人数に当たるように仕向けてくれる。
『クロコダイルエッジ!』
オレンジ色のクロコダイルが、俺の足の動きに合わせてゴブリン達を食い荒らす。噛みついて、噛み砕いて、切り裂いて。そんな派手な攻撃の都度、爆発が発生する。
そして一頻りゴブリンを掃討し終えると、俺の変身が勝手に解除された。
同時に、襲い来る倦怠感。どうやら変身が維持できない程に疲労がたまってしまったらしい。ただの呼吸を意識するも、どうしても息が荒くなってしまう。
崩れ落ちるようにその場に座り込み、ハンドサインで何とか「申し訳ない」とリヴィに伝える。
「大丈夫?流石に、神器の解放がここまで連続すると……」
「単に俺の、体力不足だ……俺が悪いだけさ。……所でさ、その……神器の、解放?ってのは何の事なんだ?」
「知らないで使っていたの?」
信じられない、という顔をして、リヴィは俺の隣に座る。時間も無いのに申し訳ないな、と思いながら、せめてより早く動けるようにと体力回復を心掛けつつ彼女から説明を受ける。
「神器を持つ者は、基本的に『神器持ち』と呼ばれる。どうしてか、わかる?」
「……使い方が、わからねぇから?」
「そう。説明書があるわけでも、教えてくれる人が居る訳でもない。わかりやすい見た目をしていても、本当の使い道が違う事もある。だから大抵の人は、『神器持ち』にしかなり得ない」
「でも俺は、変身もできるし必殺技も使える……もしかして解放って、神器を正しく使うって意味なのか?」
「部分的には、あってる。だけど厳密には違う。神器を正しく扱えるだけなら、それは『神器使い』と呼ばれるようになるだけ。解放は、その先にある物を指す」
「その先に、ある物?」
リヴィの言葉に、一瞬周囲の警戒を忘れ、身を乗り出す。俺が既に掴んでいるらしいもの。神器を正しく扱う事の、その先。
皆目見当もつかない俺に、リヴィは真っ直ぐに俺を見つめながら答えた。
「神器には、多かれ少なかれ、魔力的な力が込められている。それをどんな形であれ表に出す、深層にある物を引っ張りだす事を、解放と呼ぶ。聖剣と呼ばれる神器が、極光を放出する大砲になるように。貴方の神器にある力……バイスタンプ?とやらの力を引き出して、あのカニやワニの幻影を生み出して攻撃している事。ソレが、解放」
「要は、必殺技って訳か」
「必ず殺せるかどうかは置いておいて、その認識で良い」
なるほどなぁ、と呟いて立ち上がる。一応、再変身して校舎を走り回る程度の体力は回復した。今まで曖昧だった概念がある程度認識できたし、この休憩は有意義なモノだったといえよう。
というか俺の都合で立ち止まらせて申し訳ない。こんな状況なのに。
「なんとなく分かった。ありがとな、説明してくれて。後、待っててくれて」
「感謝なんていらない。仲間だから、当然でしょ?」
リヴィの言葉に、俺は何も言えなくなる。コイツ、マジで距離のつめ方どうかしてるんじゃないか。俺じゃ無けりゃ簡単に勘違いして惚れちまうぞ。
「……ん、んんっ。まぁ良い。それよりも―――妙じゃないか?ずっとここに座ってたってのに、ゴブリンが微塵も見当たらないなんて」
「確かに妙。それなりの時間座っていたつもりだけど、ゴブリンがここに来た気配すら感じなかった……もしかして、どこかに固まっている?」
「だとしたら、今が探索のチャンスって事か?」
「恐らくは、そう……だけど、もう一つ、違う可能性がある」
思案顔で、リヴィは呟く。確証はないけれど、と先に言ってから、彼女は自身の考えを述べた。
「ゴブリンが、校庭への入り口で待機している可能性」
「はぁ?そんな、出待ちとかすんのかよ」
「いくら性欲が増強されてやや本能が強くなっているとは言え、あの戦い方……理性や知性は、全然残っている。寧ろ、そうした遠回りこそが近道だと気づいてる。そうでなかったら、奇襲と離脱とを繰り返す消耗戦を挑むはずがない」
「………なるほどな。そう言われれば、そんな気もする」
流石、場数を踏んでいるだけある。俺のような素人では見逃すような点を、しっかりと考慮している当たり凄い。仲間……いや、相棒がこうも優秀だと、安心して戦える。
「けど、校庭に繋がる入口の前で待って何があるんだよ」
「全体でまとめて攻撃できるって言う利点が一つ。確実に私達と遭遇できるという利点が一つ。後は、純粋にそこが連中にとって待ち構えるに相応しい場所……迎撃しやすい場所だったという可能性」
「大体わかった」
何にせよ、俺達にとって良い事とはいえないって話だろう。どうせやる事も変わり無いんだし、あまり深刻に捉えない方が良いとは思うが。
軽く柔軟をして、再び走り出す。先程よりも、速度は少し落とし気味だ。もうすでにゴブリンは万全の状態だろうし、そうで無いとしても移動で体力を使うのは避けておきたい事だからだ。
無言のまま廊下を走り、変わり映えの無い景色に辟易し始めた時、ついに視界の奥の方に、緑色の影を見つけた。
ゴブリンだ。つまり、リヴィの予想通りならゴールに到着したということになる。
「……私が先行する」
「背中は任せろ」
「言われなくても、とっくに任せてる」
こっちが恥ずかしくなるようなセリフを呟き、リヴィはゴブリンを追ってその場を離脱。一瞬にして姿が掻き消え、すぐに遠くから小さな断末魔が聞こえてくる。
遅れちゃまずい、と速度を上げ、リヴィが先程曲がったであろう角を曲がると、そこにはすでに凄惨な光景が広がっていた。
見渡す限りの血、死体。返り血を浴びたリヴィが高速で動き回っているのが、赤い軌跡でわかる。
「……これじゃ、後ろを歩くことすら難しそうだな」
乾いた笑いと共に、リヴィによって無理やり切り開かれていく道を歩く。予想通り、ゴブリン達は一箇所に集中していた。リヴィが言ったように校庭へ繋がるドアを守っているのかは不明だが、ここにいる奴らを殺し尽くせば一時解決なのは確かだろう。
よし、と改めて気合いを入れて、再び駆け出そうとしたその時。廊下の壁が
何度爆発しても傷一つ付かなかった、壁が。
土煙の中から、他のゴブリンよりも2回りほど大きいゴブリンが出てくる。壁が破壊されてから動きを止めていたリヴィが、険しい表情のまま、俺のすぐ隣へと離脱してきた。
「あれ、ゴブリンなのか?」
「一応。上位種、って言葉がつくけど」
上位種。その言葉に、俺は仮面の下で眉を顰めた。
明らかに別格。あいつを敵にするのは、そう容易なことでは無いだろう。なんなら必殺技一回使った程度じゃ倒せないような雰囲気である。
「あの見た目、多分体力とパワーに特化したタイプ。私が苦手なタイプ」
「じゃあ俺がなんとかする。代わりに、他の雑魚ゴブリン頼むぞ」
「任された」
合図は無い。だが俺もリヴィも、同時に駆け出した。
『キングクラブエッジ!』
挨拶がわりの一発。銀色のハサミと俺の拳が、上位種の巨体にぶつかる。
そう、ぶつかっただけ。今までは貫通していたはずが、その肉体を叩くだけにとどまった。
少し遅れて、俺の腕にビリビリと衝撃が伝わってくる。あまりに硬いのだ。こいつの体が。
「くそっ、一筋縄じゃいかねぇよなぁっ!!」
『クロコダイルエッジ!』
上位種の拳が俺に叩きつけられる直前にバイスタンプを倒し、迎撃するように蹴り上げる。
ワニの幻影が拳に噛み付き、逆に砕け散った。
嘘だろ!?と叫ぶ間も無く、迎撃しきれなかった拳が俺を襲う。今まであらゆる攻撃を防いできたキマイラの装甲が、まるで砕かれたかのような衝撃と痛み。
幾度の爆発でも傷一つ付かなかった壁を破壊するほどの一撃。なるほど、これなら無理もないな、と一周回って冷静になった脳で考えた。
「お前は、神器使いか」
「ッ、しゃ、しゃべるのかよ!?」
今まで鳴き声を一切発していなかった上位ゴブリンが、ゆっくりと口を開いた。どうやらこいつは喋れるらしい。
驚く俺に、ゴブリンは気にすることなく話しかけてくる。
「あの『戦乙女』さえ手に入れられれば、我らは他に求めん。この腹の奥底から湧き立つ欲望を満たせればそれで良い。お前は神器の解放ができると、仲間から聞いていた。だから警戒していたし、我が直々に出てきたが……今のでわかっただろう。お前の力では傷一つ付けられない。同胞はこれから増えるし、殺した分は許してやろう」
「……なんだよ、見逃すってか?」
「男に用はない。我らはあの女を望む。悪くない取引だろう。お前もあの女も、このままならいずれ殺され、捕らえられる。それを、あの女がより早く捕まるだけで、それを見捨てるだけで、お前は死なずに済むのだ」
リヴィの方を見る。ゴブリンを何体も切り殺しているが、そろそろ限界らしい。俺と共に一度休んだが、それでも癒しきれない疲労が溜まっていたようだ。動きのキレが悪くなってきているのが、彼女の敗北が間近に迫っていることを視覚的に認識させる。
あれを見捨てて、目の前のゴブリンに背を向ければ、俺の命は助かる。
代わりに、生き残ったゴブリン達に死ぬまで陵辱されつくすのを、見殺すことになる……か。
「悩む余地なんかねぇな」
「だろう?神器の解放まで可能とはいえ、元は人間だ。死は最も忌む事だろう?」
では、お前はもうどこかへ行け。そう言って、目の前のデカブツは俺に背を向け。
『キングクラブエッジ!』
「ぬぅ?」
その背を、殴りつけられた。
まるでダメージを受けていないが、まさか攻撃されると思っていなかったらしく目を丸くしてこちらを向いてくるので、その目に向かって跳躍し、俺は蹴りを繰り出す。
『クロコダイルエッジ!』
「グゥッ!?」
無論、バイスタンプの力を解放して。
片目を蹴り付けられたゴブリンは目を抑えて硬直する。ほんの一瞬だけのの隙だ。
だが、俺はそんな隙を見逃さない。
『クロコダイルエッジ!』
『クロコダイルエッジ!』
『キングクラブエッジ!』
何度も何度もバイスタンプを倒し、何度も何度も殴り、蹴る。
傷一つ付きそうに無かったゴブリンの肌に、段々と血が滲んできた。皮膚が裂けてきているのだ。必殺技の連続に。
「ぐ、グォおおおおおおおおあああああああああッ!!!!」
鼓膜が破れたと錯覚するような爆音。そんな雄叫びを上げながら、ゴブリンはその拳を俺に向かって振り抜く。だがスピードは大したことなく、簡単に回避できる。当たらなかったことにさらに腹を立ててか、ゴブリンは次は自分の番だというように拳の雨を降らせた。
一発でも当たれば良い。そんなラッシュ。無論、俺がそんな攻撃を受けてやるはずもなく。
後方に跳躍し、攻撃範囲を離脱。必殺技の連発で疲弊し切った体は、あと一発でも撃てば変身解除してしまうこと間違いなし、といった様子で。
それでもその事を悟られないようにと、俺は平常を装った。
「お、前。なんのつもりだ。あの女を見捨てるといったはずじゃ」
「言ってねぇよそんなこと。俺は悩む余地はないってことしか言ってねぇぜ。
言い終わると同時に、バイスタンプを横に倒す。
目の前のデカブツは、まだ擦り傷程度の負傷しかしていない。最強生物一体分じゃ、これが限界。
だったら、キマイラの最大の強みを。二種類の最強生物が混じったが故の力を、ぶつけてやれば良い。
必殺待機音が響く中、ゴブリンが信じられないと言いたげな顔をして、唾を撒き散らしながら叫んだ。
「に、人間にそんな考えができるかぁっ!!自分の命と他者の尊厳とを比べて、他者を選べる奴がいるか!勝算もない戦いに、挑もうとするだなんて……知性ある生命として、欠陥以外の何者でも」
「知性なんて関係ねぇよ。だってこれは感情……本能なんだからなぁあああああああッ!!!」
『ツインキメラエッジ!!』
バイスタンプを三度倒す。瞬間、今まで必殺技を発動した時とは全く違う感覚が全身を駆け巡る。
本来あり得るはずの無い、二種類の動物の混合。人為的な、不自然な力が、圧倒的な暴力となって顕現する。
ライダーキックは、本来飛び蹴りの事を指す。
だが今回、俺は跳躍することなく駆け寄って、ゴブリンにできた微かな傷口を狙って蹴りつけた。
意識するのは、蹴りと同時に、グチャグチャに混ぜ合わせられた最強生物の力を無防備な体の中に流し込むイメージ。
そして。
極彩色のオーラに包まれた右足は、防御も回避もされること無く、ゴブリンの傷口を蹴りつけた。
同時に、極彩色のオーラは傷口に吸い込まれるように消えていく。見た目の上では、成功だ。
蹴りの衝撃で後方へ跳躍し、離脱。しかし着地する直前に、変身が解除されてしまう。気絶寸前の倦怠感。二種の最強生物の力を同時に解放するだけで、ここまでの消耗があるとは。
「ぐっ、あぁっ、クソッ、なぜ我が、たかが神器使いの一撃にッ!!!」
「テメェの本能より、俺の本能の方が強かったって事だ。―――大人しく負けを認めろ、デカブツ」
キマイラどころか、リバイスにまるで関係ないが、俺の大好きなあの仮面ライダーのように……大道克己のように、親指を下に向ける。
ちょうどそのタイミングで、ゴブリンの体は内側から爆発。呻きながら後退りしたせいか、奥でリヴィを追いつめているゴブリンの大群を巻き込むようにして、廊下の壁を破壊する程の巨大な爆発を起こした。
後方に跳躍していなければ、俺は生身でその爆発に巻き込まれるところだった。少し背筋が凍る思いをしつつ、リヴィの助けになったのでは、と考え―――。
「痛っ」
「やりすぎ。私まで巻き込むなんて、酷い」
「……お、お前も巻き込まれるレベルだったか」
ぽかっ、と軽く頭を叩かれる。隣を見ると、やや煤けたリヴィが、むすっとした表情で立っていた。
残るゴブリンは、と周囲を見渡すも、どこにもいない。どうやらあの爆発、俺の予想以上だったらしい。ゴブリンをまとめて消し去るレベルだったとは。
……ほんと、ギリギリ巻き込まれなかったみたいだな俺。自分の必殺技のせいで死んだ情けない仮面ライダー、なんて汚名を被る事にならなくて良かった。
「でも、凄かった。今までで一番の破壊力……あんな隠し玉があったなら、あの時にも使えばよかったのに」
「あー、いや。コレ正直できる自信無かったし。今一回使っただけで、この疲れっぷりだし……だから、また少し休憩させて欲しいわ」
「頼まれなくても、私も疲れてる。―――多分、あの大きな扉。あの先が校庭。これほどの結界を用意して、あの数のゴブリンを用意できる『魔人』……絶対に強敵。万全とまでは行かなくとも、今用意できる最大のコンディションで挑むべき」
「だな。―――多分
?と首を傾げるリヴィに曖昧な笑みを返して、俺はツインキメラバイスタンプに目を向けた。
まだ俺が使っていない。扱いきれないと判断していた力。
二種の生物を掛け合わせた必殺技が使えた今の俺なら、きっと使えるはず。
そう考えつつ、俺は次の戦いに備え、全力で休むのだった。
主人公の好きな仮面ライダー作品は『仮面ライダービルド』です。作中の時間はキメラドライバーが届いてから少し後なので、現実の時間よりも先の話になっていますが、勿論小説版ビルドは音沙汰ありません。
つまり、そういう事です。