異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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魔法の訓練入門編

 

 私が地球に初めて行ってから一週間。あれから一日一回、地球に、というより真美の家にお邪魔してる。目的は美味しいごはん、というわけじゃなくて、いやそれもあるけど。

 

「んー……。感じる?」

「ちょっとあったかい?」

「いい感じ」

 

 ちいちゃんの両手を握って、魔力を感じてもらう特訓だ。

 お母さんには真美が話したみたいで、一応許可はもらえたらしい。一応というのは、半信半疑というか、そういう遊びなんだろうと思われてるらしいから。

 真美が言うには、いきなり魔法なんて言われてもそういう反応になるんだって。

 

 それでも、許可は許可だ。だからあれから、ちいちゃんに少しずつ教えていってる。

 まあ、教えてるといっても、魔力を感じる訓練しかしてないけれど。

 魔法を使うためには、魔力を扱う技術が必須だ。そして扱うためには、魔力がどんなものか感じ取れるようにならないといけない。

 

 つまり、ちいちゃんがやってることは、魔法を使う上での最初の訓練ってこと。

 そしてこの訓練は、最初にして最大の難関とも言われてる。精霊様が言うには、私たちの世界の人でも十人に一人しか魔力を感じることができないそうだ。

 

『でも十人に一人ってわりと多いって感じる』

『いやいや。感じることができるのが十人に一人、てだけだろ。実際に魔法を使うってなったらさらに少なくなるんじゃないか?』

『なるほど理解』

 

 まあ、そういうことらしい。生活に便利な魔法を使えるのはその中からさらに二人に一人ぐらいで、実戦的な魔法となるとさらに十人に一人とか。

 だからまあ、一週間も魔力を感じる訓練をしてるけど、ちいちゃんが特別遅いとか才能がないってわけじゃない。人によっては一年以上かかる人もいるらしいから。

 ちなみにこの訓練に興味があるのか、希望が多かったから配信で流してはいるけど、この世界の人だけでこの訓練はできないと思う。魔力を扱える人が他にいるなら別だけど。

 

「ところでリタちゃん」

「ん?」

「今日はお出かけするって言ってなかった?」

 

 そう。いつも真美の家にばかり入り浸っているから、そろそろ別の場所も見に行こうと思ってる。真美は気にしなくていいって笑ってくれるんだけど、いつもお世話になって迷惑をかけて、というのもさすがにだめかなって。

 

「ん。ちょっと、しゅと? 東京だっけ。見てくる」

「え」

 

『とうきょう? 東京!?』

『まじで!? いきなりすぎん!?』

『東京なら案内できるぞ!』

 

 そんなコメントが黒い板を流れていく。真美はそれを一瞥して、そして私の両肩に手を置いた。

 

「リタちゃん。絶対に、男の人にはついて行っちゃだめ」

「ん……? えっと……。なんで?」

「女の子一人に声をかける男なんてろくな奴がいないよ!」

 

『辛辣ぅ!』

『偏見でござる! 偏見でござる!』

『でもそのアドバイスは正しいと思う』

 

 どっちだよ、と言いたくなった私は悪くないと思う。

 ふむ。男の人はだめ、と。

 

「なら女の人なら大丈夫?」

「そっちもだめ!」

「ええ……」

 

『これは草』

『そりゃリタちゃんも困惑するわw』

『結論、誰かについて行くなってことですね』

『でもわりと間違ってないかも。変な人も増えてるし』

 

 なに? 東京って魔境か何かなの? すごく危なそうな場所に聞こえてくるんだけど。

 でも、相手は所詮人間だ。そこまで警戒が必要とも思えない。

 

「私は自分の身は自分で守れるから大丈夫」

「それは……そうかもだけど……」

「ん。でも、心配してくれてありがとう。嬉しい」

「リタちゃん……!」

 

『これはてえてえ?』

『わからん』

『なんだかんだと仲良くなったよなこの二人』

 

 真美は、性格が近いってわけでもないけど、なんとなく話していて楽しい。とても気楽にお話しできるから。真美がどう思っているか分からないけど、私は友達だと思ってる。

 

「ちいちゃん。今日はここまでにするから、訓練は続けておいてね」

「はーい」

 

 両手を見つめて、うむむと唸るちいちゃん。その姿はとっても可愛らしくて、思わず頬が緩む。

 師匠も、こんな気持ちだったのかな?

 

「それじゃあ、そろそろ行く」

「うん。気をつけてね」

 

 ん、と頷いて、コメントの板を消す。配信は……まあ続けてても大丈夫かな。

 真美とちいちゃんに手を振って、私は予め決めていた場所に転移した。

 




壁|w・)(百合要素は)ないです。友情です。
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