異世界魔女の配信生活   作:龍翠

105 / 543
留学生のリタ

 

 朝。学園の自室に転移して、バナナを食べながらのんびりと待つ。誰かが迎えに来てくれるって話だったよね。先生の誰かとは思うんだけど、誰かな。

 配信を開始しつつのんびりと待っていると、日がすっかり昇ってからドアがノックされた。

 

「はい」

 

 ドアを開けると、そこにいたのは中年ぐらいのおじさんだ。どうしてか少し緊張してるみたい。んー……。学園長から何か聞いてるのかな。

 おじさんは私を少しの間見て、どうしてか安心したようなため息をついた。

 

「初めまして、リタさん。僕はタレス。君のクラスの担任になる」

「担任?」

 

『そのクラスをまとめる先生と思えばいいよ』

『何かあったらその先生に相談すればいいと思う』

 

 ふうん……。とりあえずこの先生を覚えておけばいいってことだね。なら、大丈夫。

 

「リタです。よろしく」

 

 手を差し出すと、タレスさんは少しだけ驚いた後、嬉しそうに手を握ってくれた。

 

「魔女の弟子って聞いていたからどんな子かなと思ったけど……。安心したよ」

「どう予想されていたのかとても気になる」

「あ、あはは……」

 

 ごまかすように笑いながら歩き始めるタレスさん。このまま教室に案内してくれるらしい。

 

『多分、高慢で生意気な子供を予想していたのでは?』

『気を配るように間違いなく言われてるだろうし』

 

 そうなのかな。私は勝手に見て回るから気にしないでほしいんだけど。

 女子寮を出て、お城に向かう。階段を一つだけ上って、二階の廊下を歩く。さすがお城と言えばいいのかな、床は石造りですごく綺麗だね。

 

『校舎とは思えないほどに豪華やなあ』

『再利用してるだけとは言え、贅沢すぎるわこれ』

『だがしかし教室にエアコンはない!』

『やっぱクソだわここ』

 

 エアコンって、部屋の温度を変えてくれる機械だっけ。それ一つあるかないかでここまで言われるなんて、そんなに便利なんだね。ちょっと気になる。

 

「リタさん」

「ん?」

「これから案内するのが僕のクラスで、リタさんが一応は在籍するクラスになるけど……。これは、強制じゃない。他に受けてみたい授業があれば、リタさんは自由に見学することが許されてる」

「おー……」

 

 それはとても嬉しい。でもそこまで特別扱いしていいのかな。他の生徒が怒ったりしないのかな。

 聞いてみると、タレスさんは笑いながら教えてくれた。

 

「確かに特別待遇ではあるけど、魔女の弟子というのは伝えさせてもらうつもりだよ。その肩書きさえあれば、この学園で疑問に思う人は生徒含めていないはずさ」

 

 さすがは魔法学園、なのかな。私が思ってる以上に魔女の名前は重たいものみたい。あまり軽々しく使わないようにしないといけないね。

 案内された教室には大きなドアがあった。タレスさんが言うには、ドアの向こうは生徒が座る席が並んでいて、一番奥に魔法板があるらしい。

 

『魔法板ってなんぞや』

『多分黒板みたいなものじゃない? チョークの代わりに魔法で文字を書いたりとか』

『なにそれ楽しそう!』

 

 楽しいかどうかは分からないけど、その認識で間違いないよ。というより。

 

「私がみんなのコメントを流してる黒板も、魔法板だけど」

 

『まって』

『それ初耳なんだが』

『今明かされる衝撃の事実!』

 

 言っても分からないだろうから言ってなかっただけだよ。今まで誰も疑問に思ってなかったのがいい証拠だと思う。多分師匠も同じ考えだったんじゃないかな。

 

「それじゃあ、一緒についてきてほしい」

「ん」

 

 タレスさんがドアを開けて入っていく。私もすぐにそれに続く。

 教室の中は、長いテーブルがいくつも並ぶ部屋だった。三人ほど並んで使える程度のテーブルが、横三列、縦五列で並んでる。実際には二人ずつ使ってるみたいだけど。

 教室の奥に広い台が置いてあって、その台の上にもテーブルと、そして真っ黒な魔法板が浮かんでる。あそこが先生用ってことだね。

 タレスさんに手招きされたので、一緒にその台の上へ。みんなの視線が、タレスさんじゃなくて私に向いてる。どれもが興味深そうな視線だ。

 

『転校生に興味津々な生徒って感じ』

『とても分かる』

『リタちゃんの噂とか流れてたりすんのかな』

 

 あるかもしれない。だって、視線の中に知ってるものがあったから。

 最前列に座るエリーゼさんが、目をきらきらさせて私を見ていた。ちょっと怖いかも。

 

「みんな、おはよう」

 

 タレスさんがそう言うと、さすがに視線はタレスさんの方へと向いて……、いや半分以上は私に向けられたままだね。

 

「今日は留学生の紹介だよ。この子はリタ。期間は詳しく決まってないけど、しばらくの間、君たちと一緒に学ぶことになる。ただ、この子はどの授業に出てもいいと学園長から許可されているから、いないこともある」

 

 エリーゼさん以外の生徒たちが不思議そうに首を傾げた。改めて聞いても特別待遇だからね。人によっては不快かもしれない。

 

「何故、と思うかもしれないけど……。この子は、隠遁の魔女の弟子なんだ」

 

 そうタレスさんが言うと、みんなが目を丸くした後に小さな声でささやき始めた。さすがに黙って聞き流すのは難しかったらしい。

 でも、反応は千差万別だね。

 

「隠遁の魔女って聞いたことある?」

「ないよ。先生が言うぐらいだから自称じゃないだろうけど」

 

 そんな、そもそもとして知らない人がいるのはもちろんだし、

 

「隠遁の魔女って、つい最近に魔女の称号と二つ名が与えられた最新の魔女だよね!」

「スタンピードをたった一人で解決したなんて聞いた!」

 

 私のことを知ってる人もやっぱりいるみたい。スタンピードの方で知った人が多いみたいだね。あれはさすがに少しやりすぎた気がする。

 タレスさんが苦笑いしつつ手を叩くと、すぐに静かになった。

 

「質問がある人は、リタさんの迷惑にならない程度に本人に聞いてください。席は……」

「ここ! ここが空いてます!」

 

 叫んだのは、エリーゼさんだ。確かにエリーゼさんの隣は空いてるけど、そのもう一つ隣は普通に生徒がいるよ? どの机もみんな空けてる部分だよ?

 

「えっと……。いいのかな?」

 

 さすがにタレスさんも困惑しながらそう聞くと、もう一人の生徒も笑いながら頷いてくれた。

 

「それじゃあ、リタさん。今日はあの席で」

「ん」

 

 正直なところ、エリーゼさんの隣はあまり気が進まないんだけどね。悪い子じゃないけど、質問がすごく来ちゃうから。楽しくないわけじゃないんだけど、たまに疲れる。教えるより研究する方が楽しいから。

 でも、知らない人の間に座るのもちょっと怖いし……。それなら、エリーゼさんの隣の方がいい。

 

「よろしくね」

 

 そう言って隣に座ると、エリーゼさんは花が咲いたような笑顔で頷いた。

 




壁|w・)さらっと配信魔法の補足説明。
学園生活、ようやくスタートです。なお、あまり長くはやらない予定……かもしれない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。