異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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フラグさんを立てました

 

 翌日。この日はエリーゼさんが朝に迎えに来てくれた。今回は最初の教室には行かずに、それぞれの授業を回ってくれるみたい。とりあえず出発前にこっそりと配信は開始しておこう。

 

『なんかさらっと始まってる』

『リタちゃんちゃんと挨拶はしないと』

『ちゃんとちゃんをかさねた激ウマギャグですwww』

『そんなつもりないが!?』

 

 視聴者さんは朝でも元気だ。視聴者さんのコメントに耳を傾けながらエリーゼさんについて行く。

 

「エリーゼさんは、魔道具の授業だっけ。行かなくていいの?」

「少しぐらい大丈夫です! むしろリタさんと一緒にいた方が、アイデアがわきそうです!」

 

 それはどういうことなの……? ちょっと意味が分からないよ。

 エリーゼさんの案内に従って歩いて行くと、廊下の向こう側からフォリミアさんが歩いてきた。エリーゼさんが立ち止まって、フォリミアさんもすぐ側で立ち止まる。ちゃんと仲直りはしてるから、挨拶だけで……。

 

「あら、エリーゼ様。今日は基礎学でなくてもよろしいのですか? それともまたおもちゃ作りでしょうか。飽きないですね、あなたも」

「フォリミア様こそ、少しは他の魔法も学んではいかがですか? 中級魔法とか」

 

 そう言って、二人は笑顔で睨み合った。怖い。

 

『ヒェッ……』

『なんでまだ険悪なんですかねえ!?』

『エリーゼちゃんが突っかかってるから前よりもひどいw』

 

 昨日はエリーゼさんは受け流そうとしてたのにね。どうしたんだろう。

 二人はしばらく睨み合うと、一瞬だけふっと笑って、そしてフォリミアさんは通り過ぎていった。

 んー……。ケンカ……してるの?

 

「エリーゼさん、仲直りしたんじゃないの?」

 

 そう聞いてみると、エリーゼさんは周囲を少し見回してから小声で教えてくれた。

 

「私にも、フォリミア様にも立場がありますから」

「ん?」

「派閥って分かります? 私とフォリミア様はそれが違うんです。お互いに情報交換はするつもりですけど、しばらくは演技ですね。いきなり和解すると、何が起こるか分かりませんから」

 

 よく分からないけど、貴族のしがらみか何かなのかな。ミレーユさんの話を聞いた時も思ったけど、貴族って大変だね。私は……捨てられて良かったと思うよ。

 また少し歩いて、教室に入った。最初の授業は、炎魔法。その使い方。

 

「そういえば、リタさんはどれが得意ですか? 勝手に炎魔法を選びましたけど……」

「全部使える」

「あ、はい」

 

『あ、ハイ』

『属性みたいなものってやっぱりあるんかな』

『よくある有利不利とかがあるかは知らんけど、ざっくり分けられてはいそう』

『リタちゃんぽんぽん何でも使うから……』

 

 私も分ける必要性を感じない方だから、何も言えない。

 先生が来て、講義をして……。それを聞いた結果としては、ちょっとだけ納得できるものだった。魔力の変換の得手不得手が人によってあるらしい。あとは効率的な魔法陣の考え方とか、聞いていてちょっとだけ楽しかった。

 

『俺たちはちんぷんかんぷんだけどな!』

『ちんぷんかんぷんなんて久しぶりに聞いたな』

『魔法の説明のはずなのに説明が呪文にしか聞こえなかったw』

 

 魔法を使えないんだから仕方がないよ。

 

「みんな、魔力の変換でもすごく考えてやってるんだね。考え方もいろいろあるんだって勉強になったよ」

 

 次の授業は水魔法。その教室へ行く途中に、エリーゼさんにそう言った。

 

「それはもちろん、変換の効率は魔法の回数にも関わってきますし……。待ってください、リタさんはどうやって使ってるんですか?」

「感覚」

「え」

 

『かwwwんwwwかwwwくwww』

『知ってたw』

『ミトさんに教える時もめちゃくちゃ抽象的だったしなw』

『なんだっけ、ぎゅっとしてふにゅってしてどかーん、だっけ』

『適当すぎるわw』

 

 だって、いちいちそんなことを考えていたら素早く使うことなんてできないし。魔法使いは瞬時に把握して即座に使う、これが鉄則だよ。師匠もそう言ってた。

 そうエリーゼさんに言うと、エリーゼさんはにっこり笑って頷いた。

 

「魔女に教わるというのがどういうことか、よく分かった気がします」

 

 少し距離が開いた気がするのは気のせいだよね?

 

 

 

 午前は授業を見学して、午後は実技を見学して、夜は真美のお家でご飯を食べて……。そんな日々を一週間ほど過ごして。

 

「飽きた」

 

 やることが本当になくなった。

 

『リタちゃん……』

『いやまあ、正直俺らも理解できない魔法の授業ばかりで飽きてきてるけど……』

『どこぞの研究機関ぐらいだろうな大喜びなの』

 

 そうらしい。地球ではどこの国も魔法を解明しようと頑張ってるみたいだよ。絶対に無理だと断言するけど。解明できたとしても、魔法を使うことは絶対にできない。断言する。

 それはともかく。私も、見るべきものは見たと思う。それなりに楽しかったけど、学びがあるかと言われるとちょっと首を傾げるから。これ以上ここにいても、あまり意味はないかなって。

 

「なので今から学園長に言ってくる。明日には出て行くって」

 

『急すぎるw』

『学園長先生もさすがに困るぞw』

『いやあの人なら笑って許してくれる気がする』

 

 私もそんな気がするよ。

 今はまだ朝だから、学園長も部屋にいるかな。とりあえずエリーゼさんを待ってから……。

 そう思っていたら、ドアがノックされた。開けると、そこにいたのはエリーゼさん。いつも通りだ。

 

「おはようございます、リタさん!」

「ん。ちょうどよかった、エリーゼさ……」

「それで、ごめんなさい!」

 

 私の言葉を遮って、エリーゼさんが頭を下げてきた。急でちょっとだけびっくりだよ。

 

「これから魔道具の素材を集めに、東の森に行ってきます! なので今日はちょっとご一緒できないです!」

「あ、うん……。それはいいけど、一人?」

「フォリミア様も一緒です。こっそりと」

「ん。それなら、いっか」

 

 エリーゼさんは魔道具の作成だけじゃなくて、それなりに魔法も使える。ミレーユさんとは比べられるほどにもなってないけど、それでも中級魔法も一応は使えるみたいだし、大丈夫。その上フォリミアさんもいるなら安心だ。

 

『なんだろう。フラグが立った気がする』

『おいばかやめろ』

『フラグ回収しちゃったらどうするんだバカ』

 

 不安になることは言わないでほしいよ。

 

「私も、今日は学園長に用があるから。気をつけて行ってきてね」

「はい! ありがとうございます!」

 

 エリーゼさんはそう行って頭を下げると、足早に去ってしまった。

 素材集め……。いいなあ。私もやりたい。何か受けようかな。

 

「そういえば、ギルドで依頼受けてない気がする……。まあ、いっか」

 

『よくはないんじゃないかなw』

『この街を出る前に何かしら受けてあげてもいいかもなー』

『でも無理する必要はないと思う』

 

 すぐに終わる依頼があれば、考えてみるよ。

 




壁|w・)そろそろ日本のシーンを書きたいので学園編はもうすぐ終わりです。
機会があれば、いずれ休日のお話でも……。


前話にて、本当にたくさんの評価をいただけてとても嬉しいです。
ありがとうございます……!
これはしっかり完結までがんばるしかない……!
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