異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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讃岐うどん

 

 転移した先は商店街、という場所らしい。たくさんのお店が並ぶ道なのかな。人がいっぱい歩いてる。その道には天井があって、雨が降っても濡れることはなさそうだ。便利だね。

 

「商店街、初めて」

 

『あれ、そうだっけ?』

『ちなみにその屋根はアーケードっていって、大きめの商店街にはあったりなかったり』

『どっちだよw』

 

 あるかもしれない、てことだね。

 私が転移した場所だけど、そのアーケードの少し下側に転移した。人にぶつからないように少し高めに転移したけど、今度はアーケードにぶつかりそうだった。もう少し気をつけよう。

 地上からはたくさんの人が私を見つけて驚いてる。いつものことなので気にせずに、とりあえず地面に着地。たくさんのお店があるけど、トレーナーさんが言ってたお店はどこかな。

 スマホを見てみるけど、この商店街のどこかにあるのは間違いない。でも、詳しい場所はちょっと分からない。お店が多すぎる。

 

「人に聞いた方が早いかな……」

 

 周囲を見回すと、多くの人が私を遠巻きに見てる。とりあえず最初に目が合った人に……、あの主婦さんでいいかな。

 目が合った主婦さんに向かって歩いていくと、主婦さんは分かりやすいほどにうろたえ始めた。取って食べたりしないから落ち着いてほしい。

 

「聞いていい?」

 

 主婦さんに話しかけると、少し緊張した面持ちで頷いた。

 

「このお店に行きたい。場所、分かる?」

「え、ええ……。道案内ね。どこ?」

 

 主婦さんにスマホを見せると、知ってるみたいですぐに頷いた。こっちよ、と案内してくれる。

 

「あなた、もしかしなくてもリタちゃんよね」

「ん。讃岐うどんを食べにきた」

「あら! それは嬉しいわね。このお店は地元でも有名だから期待してね!」

 

『本場の地元で有名ってなかなかすごいのでは』

『これはとても期待できる』

『おうどんわくわく!』

 

 そうだね。とても楽しみ。

 そうして案内された場所は、二階建てのお店。一階でおうどんを買って、二階でも食べられるんだって。窓から商店街を眺めながら食べられるのも魅力の一つだとか。

 お昼を少し過ぎてるけど、それでも何人か並んでる。人気のお店ってことだね。それだけ美味しいのかな?

 私が列の最後尾に並ぶと、前の人たちが気になるのかちらちらと見てきた。

 

「案内ありがとう」

「いえいえ。ごゆっくり」

 

 主婦さんが手を振って帰っていく。あとはおうどんを食べるだけ。楽しみだ。

 

『リタちゃん、何のおうどんを食べるかは決めた?』

『シンプルなかけうどんも美味しいし、定番のきつねうどん、肉うどんも捨てがたい』

『ちょっと変わり種の豚汁うどんとかもいいぞ。あるか知らんけど』

『せめて調べてから言えよw』

 

 んー……。どれも美味しそうだね。とりあえず肉うどんを食べようかなと思ってるけど、他のおうどんも食べてみたい。トレーナーさんはざるうどんをオススメしてたし……。悩む。

 でも、こうして何を食べようかと悩む時間も楽しい気がする。わくわくする。わくわく。

 視聴者さんからおうどんの種類について聞きながら並んでいると、少しして私の順番になった。店員さんに促されて店内に入る。

 

 奥にカウンターがあって、左側に二階への階段がある。二階は座って食べる席があるみたいだけど、一階は立ったまま食べるようになってるみたい。椅子がないし、テーブルもちょっと高め。私は、食べられないことはないけど、ちょっと食べづらいかも。

 そして。私がお店に入った瞬間、何故か一瞬だけ静かになった。

 

「本当にリタだ……!」

「すげえ実在してたんだ……」

「何を食べるのかな……」

 

 注目されるのはいつものこと、だね。

 どこに行こうかなと考えていたら、店員さんがカウンターの隅に案内してくれた。当然のように立って食べる場所だけど、小さい台を用意してくれてる。小さい子供用かな。子供じゃないと言いたいけど。

 私がそこに立つと、カウンターの向こう側にいる店員さんが笑顔で聞いてきた。

 

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

「んー……。肉うどんとざるうどんで」

「肉うどんとざるうどん。半分ずつとかできますが、どうします?」

「両方とも普通で大丈夫」

 

 本当ならもっと食べたいところだけど、我慢しておく。

 待っている間は他の人が食べているのを観察してみる。本当にいろんな種類のおうどんがあるね。あれは、カレーかな? カレーにうどんを入れたりもするみたい。あれも美味しそう。気になる。

 

『これめちゃくちゃ食べづらそうw』

『リタちゃん、さすがにじっと見るのはやめてあげてw』

『ちらちら見られてリタちゃんも気になるのは分かるけどw』

 

 他のおうどんを見てみたかっただけだけど……。そうだね。私も見られてると少し気になる時もあるし、やめておこう。おとなしくおうどんを待つことにする。

 おうどんはすぐに運ばれてきた。お盆に載ったおうどんは、ほかほかと湯気の立つ肉うどんと、冷たそうなざるうどん。ざるうどんはなんだか麺が白く輝いてるように見える。

 うん。美味しそう。それじゃあ、早速。お箸を持って、手を合わせて。

 

「いただきます」

 

 最初は肉うどんから。おうどんをずるずるとすすってみる。

 んー……。真美に作ってもらったおうどんも美味しかったけど、このおうどんは全然違う。噛むともちもちしていて、なんだか楽しい。のどごしもつるつるしてる。同じおうどんでここまで違うものなんだ。うどん、すごい。

 

「ん……。すごく美味しい」

 

 私がそう言うと、店員さんだけじゃなくて何故か他のお客さんも安堵のため息をついていた。

 

『まあ地元のおうどんを食べに来たと言われて気にならないわけがないから』

『リタちゃんに受け入れられたら普通に嬉しいと思う』

『次は長崎ちゃんぽん食べに来てほしいな!』

 

 長崎ちゃんぽん。気が向いたらそっちも行きたい。

 お肉も濃いめの味付けだけどしつこくなくて、ほどよい加減だ。あっという間に食べることができた。

 

 次は、ざるうどん。こっちはカップに入ったつゆに少しずつ入れながら食べるみたい。他の人がそうやって食べてるから。

 つゆにおうどんをつけて、ちゅるっとすする。冷たいおうどんもすごく美味しい。つゆも濃すぎない味で美味しいけど、これはおうどんがしっかりと感じられる。食感とかを楽しむならざるうどんの方がいいかも。

 ちゅるちゅるすするのもちょっと楽しい。ざるうどん、すごくいい。

 二人前を食べ終わるのにあまり時間はかからなかった。満足。

 




壁|w・)私にメシテロを期待してはならない。

カレーうどんを食べてる人はもれなくリタにじっと見つめられます。
なお危険なので餌付けはしないでください。
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