異世界魔女の配信生活   作:龍翠

125 / 543
スマホの宇宙進出

「んー……。他のも気になる……」

 

 おうどん、たくさん種類あるみたいだけど、どうしようかな。お持ち帰り、だっけ。それもやってるなら欲しいけど……。

 

「お持ち帰りってできる?」

 

 近くの店員さんに聞くと、言葉に詰まって困ったように眉尻を下げた。やってないってことだね。

 

「ん……。残念」

「ちょ、ちょっと待ってください……!」

 

 慌てたように奥に小走りで去ってしまった。ちょっと無茶なことを言ってしまったかも。あとで謝らないと……。

 そう思っていたら、カウンターの奥から中年ぐらいのおじさんが出てきた。私を見て、少し驚いたように目を丸くしてる。でもすぐににこやかな笑顔になった。

 

「リタちゃんだね。うどんを持ち帰りたいとか」

「ん。でも、やってないなら無理を言うつもりは……」

「そうだな。本来ならやってないけど……。でもせっかく来てくれたんだ。一杯ぐらいなら、器ごと持ち帰ってくれて構わないよ」

 

 内緒だぞ、とウインクというものをしてくれる。でも、その……。

 

「配信中だから内緒になってない……」

「…………。内緒だぞ!」

「あ、うん」

 

『草』

『いい店主さんだなあw』

『俺らは何も聞いていないし、この後に見るものもちょっと覚えられる気がしないな!』

 

 みんなで内緒、だね。

 

「それで? ご注文は?」

「んー……。オススメは?」

「あー……。肉うどんとざるうどんを食べたんだよな……。それなら、天ぷらうどんかな」

「じゃあ、それで」

「あいよ。ちょっと待っててくれよ」

 

 おじさんが中に戻っていく。私はアイテムボックスを開けておこう。ここに入れておけば、なかなか劣化しないから。暇な日のお昼ご飯にしようかな。楽しみ。

 待つこと数分。さっきのおじさんが天ぷらうどんを持ってきてくれた。肉うどんに似てるけど、お肉の代わりに違うものがたくさん載ってる。これが天ぷらなのかな。

 

「ちょっとサービスだ。とり天にえび天、そしてかき揚げ。アイテムボックス、というものの仕組みは一応理解してるつもりだけど、早めに食べてくれよ」

「ん。ありがとう」

 

 おうどんの器ごと、アイテムボックスに入れる。正直、今すぐ食べたくなっちゃうけど……。我慢。お楽しみにするから。

 

「ありがとう。ここのおうどん、とても美味しかった」

「こちらこそ、ここを選んでくれてありがとうよ。気をつけてな」

「ん」

 

 スマホの電子マネーでお支払いをして、お店を出る。いいお店だった。

 

「まだちょっと早いけど……。あ」

 

 そういえば、首相さんから連絡が来てたはず。スマホを起動させて、えっと……。こう、だっけ。こう……。

 

『もたもた』

『電子マネーには慣れたのに操作は慣れないなw』

『電子マネーはかざすだけだからw』

 

 自分でも研究前よりひどくなってる気がする。

 スマホのメッセージを呼び出して、首相さんからの連絡を確認する。結構前、私が研究中の時に送られていたメッセージみたい。また話をしたい、というものだったけど……。返信、遅すぎるかな。とりあえず、いつ、どこがいいかを送信しておこう。

 

「ああ、そうだ。電波を森まで届くようにするのを忘れてた」

 

『そんなこと言ってたなあ』

『また研究かな?』

『リタちゃん、晩ご飯忘れないでね?』

 

 それは大丈夫。竜カツカレーは私も楽しみにしてるから。生でもあれだけ美味しかったんだし、カツならもっと美味しいはず。

 でもその前に。やっぱり電波はどうにかしたい。

 

「んー……。よし。ちょっと研究してくる」

 

『マジでやるのかw』

『がんばれー』

『どれだけかかるかな』

 

 

 

 森に戻って亜空間に入って研究して。魔法を形にして精霊様に確認してもらった時には、おうどんを食べてから一時間が経っていた。配信魔法を真似して作ればすぐかなと思っていたけど、結構時間がかかってしまった。

 晩ご飯はまだ大丈夫、だよね。それを楽しみにしながら頑張ったから。

 電波の魔法陣はもらったスマホの裏に刻み込んだ。壊れないかちょっと心配だったけど、問題なさそう。魔法陣に魔力を流すと、すぐにスマホのアンテナって言うのかな、それが立った。

 

 この魔法陣、仕組みは配信魔法の簡易版と言えるものだ。配信魔法から映像も声も全て削除して、電波のみをやり取りする、そんな感じだね。ただ、さすがに常に電波を送受信することはできなくて、私が魔力を流している間のみになってしまった。

 こればかりは仕方ない。かなり無茶なことをしようとしていたのは自覚してるから。

 とりあえず、試しに真美にメールを送ってみよう。えっと……。ここを、こうして……。お、う、ち、か、ら……。送信。

 少し待つと、すぐに返信があった。

 

『もしかしてもう完成したの!?』

 

 驚いてるみたい。ちょっとだけ嬉しいかも。あとは配信で、だね。それじゃあ、いつも通りに配信開始、と。

 

「ただいま」

 

『おかえりゃー!』

『わりと早い気がする。行き詰まった?』

 

「んーん。完成した。試しに真美にもメール送ったよ」

 

『ちゃんと届いたし返信もした!』

『おおおおお!』

『すげえええ!』

『ついにスマホが宇宙に進出かあ……! 胸熱やな!』

 

 これで真美といつでも連絡が取れる。予定も聞きやすくなるからちょうどいい。

 首相さんからの返信も届いてる。えっと……。明日のお昼、東京のいつものホテル。渡したいものがある、だって。

 たまにお守りの依頼は受けてるけど、それとは違うみたい。なんだろう。

 

「まあ、いっか。とりあえず明日も日本で」

 

『やったー!』

『安価は!? 安価はやりますか!?』

『連続安価!』

 

「安価はしない」

 

 もう行く場所は決まってるから。晩ご飯をどうするか、ぐらいだ。

 




壁|w・)しれっと研究して話数を変えることなく一瞬で終わってますが……、いや何でもない。
スマホがリタの世界でも使えるようになりました。ただし常時接続型ではないので、リタが忘れるとやっぱり放置されたままになります。

次回は、竜カツカレー、の予定。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。