異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ドラゴンステーキ

 

 晩ご飯はステーキ。ドラゴンのお肉で、だ。真美にはお肉の塊を渡しておいたから、適度な大きさに切ってくれるはず。

 私はちいちゃんの魔力制御の訓練を見守るだけ。

 正直なところ、ちいちゃんが洗浄の魔法とかを使えるようになるのは、多分年単位の時間がかかると思う。まだまだ気長に続けないといけない。

 

 もちろんこれはちいちゃんにも伝えてある。残念そうではあったけど、それでも諦めずに頑張るらしいから、ちいちゃんはすごい。

 ちいちゃんの訓練を眺めながら待っていると、真美がリビングに入ってきた。真美が持つお皿からは、とても美味しそうな香りが漂ってくる。

 

「お待たせ」

 

 ドラゴンのお肉は生でも食べられるからか、かなり分厚いお肉になってる。分厚くて大きいステーキだ。シンプルに焼いただけではあるけど、だからこそお肉本来の味が分かると思う。

 

『すっげえ分厚いステーキ』

『これがゲームでおなじみのドラゴンステーキか……!』

『めちゃくちゃ美味そう!』

 

 うん。すごく美味しそう。匂いだけでもお腹が空きそうになるほど。

 ちいちゃんもすぐに訓練を切り上げて、そわそわしながらご飯を待ってる。気持ちはとても分かる。私もこんなに美味しそうな匂いを感じたら、研究どころじゃないと思うから。

 

「いただきます」

 

 ごはんやサラダもそろったところで、二人と一緒に手を合わせた。それじゃあ、早速お肉から。ナイフとフォークで一口サイズに切って……。柔らかい。

 

『めちゃくちゃ柔らかそう!』

『マジでドラゴンのお肉ってどんな構造になってんだよ』

『あれだけ飛び回ってるぐらいだから、もっと筋張ってそうなのに』

 

 ドラゴンもワイバーンも、飛行には魔法の力を使ってるはずだから、あまり筋肉とかは関係ない。むしろ魔力が行き渡ってるからこそ美味しくなってる、のかもしれない。

 一口サイズのドラゴンステーキを口に入れる。これは、すごい。肉汁があふれてくる。カツの時に感じた美味しさがそのままだ。柔らかく、味も良く、それでいてくどくない。まるで溶けるような柔らかさ。いくつでも食べられそう。

 

 お肉の味が強いから、ソースとかもあまりいらないね。サラダやご飯とよく合っていて、一緒に食べると美味しい。お肉の味がやっぱり強すぎるけど、おかずとしてはとても良いかもしれない。

 真美を見てみると、こちらも満足そうに頷きながら食べていた。真美にとっても、満足できるものだったみたい。私も一安心だ。

 

『これが生殺しってやつか……』

『見た目からして美味しそうだなあ』

『あまりに美味しそうだから買い置きのステーキで我慢する』

『それじゃ代わりにはならんだろw』

 

 牛のステーキも美味しいけどね。豚のステーキも。ドラゴンのステーキはお肉の味が強すぎるから、苦手な人もいるかもしれないし。

 分厚いステーキだったけど、あっという間に完食した。とても満足。

 

「はあ……。美味しかった。お肉ありがとう、リタちゃん」

「ん」

 

 焼いてもらうだけでも私はとても楽だからね。

 ちいちゃんも食べ終わったところで、いつものように洗浄魔法で食器を綺麗にする。綺麗になった食器を片付けている間に、ちいちゃんにプレゼントだ。

 

「ちいちゃん、はい」

「あ! イルカさん!」

 

 真美と同じものをちいちゃんにも渡してあげる。ちいちゃんはぬいぐるみをぎゅっとして、嬉しそうにはにかんだ。とてもかわいい。

 ちいちゃんの頭を撫でてあげると、一瞬だけきょとんとした後、にっこりと笑った。

 

「かわいい」

 

『かわいいがかわいいを抱いてかわいいに撫でられててかわいいがかわいい』

『お前は何を言いたいんだw』

『つまりかわいい』

『なるほど』

 

 何がなるほどなのかな。

 

「大事にする!」

「ん。それじゃあ、私は帰るから」

「うん!」

 

 こんなに喜んでくれるなら、買ってよかったと思えるよ。また何かあったら買おうかな。

 

「あ、リタちゃん帰るの?」

「ん」

「気をつけてね」

 

 手を振ってくれる真美に手を振り返して、森へと転移。今回は世界樹の前に。精霊様にも渡しておかないと。

 

「精霊様」

 

 呼ぶと、精霊様はいつも通りすぐに出てきてくれた。

 

「はい。おかえりなさい、リタ」

「これあげる」

 

 イルカのぬいぐるみを手渡してみる。精霊様はとりあえず受け取ってくれたけど、不思議そうにイルカのぬいぐるみをもふもふしていた。首を傾げて、ぬいぐるみをひっくり返したりしてる。

 

『ぬいぐるみをもふもふする精霊様』

『珍しいものを見た気がする』

『精霊様にもにもにされたいだけの人生だった』

『その夢は絶対に叶わないから諦めろ』

 

 また変なこと言ってる視聴者さんがいる。精霊様もそれに気付いて、苦笑しながらぬいぐるみを側に浮かせた。

 

「リタ、これは何でしょう?」

「ぬいぐるみ。イルカっていう、地球のお魚……、動物? そんなの。お土産」

「リタが食べ物以外のお土産を買ってきた……!?」

「驚くところなの?」

 

『驚くところだよ』

『よくよく思い出しても食べ物しか渡してねえw』

『ははーん、さてはリタちゃん、偽物だな!?』

 

 怒るよ? いや、でもそんなに言われることなの? 私だって食べ物以外のお土産を渡したことぐらいあるよ。ほら。

 

「師匠の家族の資料とか」

 

『リタちゃん、本当にそれをお土産にカウントしてええんか?』

『精霊様見てみ? すごくかわいそうなものを見る目で見てるから』

 

 そんなはずはないと思って見てみたら、なんだかとっても優しい笑顔だった。うん。忘れよう。

 

「ぬいぐるみ、かわいいでしょ?」

「そうですね。ごまかそうとするリタもかわいいと思いますよ」

「…………」

「ごめんなさい。冗談ですから拗ねないでください」

 

『ちょっとふくれてるリタちゃんかわいい』

『さすがリタちゃん、あざとかわいい』

『あざとい幼女』

 

「帰る」

 

 ちょっと腹が立ったので配信を終了させて、家に帰る。転移の直前、精霊様は笑いながら手を振っていたから振り返しておいた。

 別に、怒ってるわけじゃないから。うん。

 

 

 

 ちなみに。

 完璧な保存魔法をかけられたイルカのぬいぐるみが世界樹の枝に丁寧に置かれていて、ちょっぴり嬉しかった。ちょっとだけ、ね。

 




壁|w・)ぬいぐるみをもふもふする精霊様とちょっと拗ねるリタを書きたかった。ドラゴンステーキはおまけでs……、なんでもない

次回から第十四話、のイメージです。
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