異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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宿はどこも似たようなもの

 受付さんの声が聞こえたらしい周囲の人も動きを止めてこっちを見てる。そんなに見られても何もしないよ。

 

「闘技場のある街に行きたい。から、船に乗りたい。護衛の仕事、ある?」

「護衛ですか? 魔女様なら、お客様として船に乗ることもできると思いますが」

「小遣い稼ぎ」

「こづか……」

 

 あ、受付さんが固まっちゃった。

 

『小遣い稼ぎが目的とは思わんだろうなあw』

『でも実際のところ、客としてでもいいんじゃないの?』

『確かに、なんか自然と護衛することになってるけど』

 

 久しぶりの護衛の仕事をしてみたい、と思っただけだよ。お客さんとして乗ったら、すごく暇な船旅になりそうだし。転移で移動はちょっともったいないしね。

 

「あの……。護衛でSランクに見合う報酬を出せるかと言われると……」

「構わない。暇つぶしと思ってくれてもいい。目的地にまっすぐ行くなら、なんでもいいよ」

「はあ……」

 

 受付さんはなんだか困った様子だったけど、紹介状を開いてぴたりと固まった。そして一言。

 

「やっぱりSランクの方は物好きな人が多いわね……」

 

 うん。セリスさん、何を書いたの?

 

『きっと聞き取られると思ってなかっただろうなあ』

『セリスさんが何を書いていたのかちょっと気になるw』

『とても自由な子だから言う通りにしてあげてほしい、とか?w』

『あり得そうw』

 

 それはそれで、セリスさんとお話をした方がいいような気がしてくるね。

 受付さんは頷くと、カウンターの下から一枚の紙を取り出した。依頼票かな? それを私に渡してくる。えっと……。

 

「明日出発の船なのですが、できればもう一人護衛が欲しい、と依頼が来ております。大型船なので他の冒険者の方も多く、飽きてしまった場合は途中でやめても問題ありません。例えば船の探検をしていただいても構いませんよ」

「…………」

 

 セリスさん本当に何を書いたの……?

 

『扱いが子供のそれで草なんだ』

『お船の探検www大事だよねwww』

『紹介状の中身がマジで気になるw』

 

 でも、私にはちょうどいい依頼だと思う。思うところがないわけじゃないけど、これでいいかな。

 

「じゃあ、その依頼を受ける」

「かしこまりました。出発は明朝、日の出すぐになります。遅れないようにお気をつけください」

「ん」

 

 ギルドカードと紹介状、あと依頼票を受け取って、依頼の受諾は完了。あとはこれを、明日持っていけばいいってことだね。

 

「船ですが、現在停泊中の船で最大のものです。明朝出発はその船だけとなりますので、もし分からなければ港の者に聞いてください」

「わかった」

 

 依頼も受けたから、一度帰ろう。明日まで待たないといけないみたいだし、お家に帰って、いや真美に晩ご飯をもらってもいいかも……。

 

『リタちゃん、今日は宿泊かな?』

『港町だしな。異世界の魚料理とか出てくるかも』

『うまそう!』

 

 魚料理! そっか、港町だから、お魚もいっぱいとってるかもしれない。宿の食堂とか、魚料理があるのかも。それはとても、とっても気になる。

 

「どこかいい宿ある?」

 

 受付の人に聞いてみると、一瞬だけ驚いた顔をした後、すぐに教えてくれた。

 

 

 

 ギルドの人に教えてもらった宿は、これもやっぱり港の側にある宿で、この街の宿ではとても有名な宿らしい。美味しい魚料理を提供してくれるお店だって聞いてる。

 

「お魚、楽しみ」

 

『ワイらも楽しみやで』

『どんな魚料理が出てくるんかなあ』

『お前ら異世界に何を期待してんだよ』

 

 宿の中に入ると、他の街の宿でも見かけたような、一階が食堂になってる宿屋だった。ミレーユさんが利用してる宿みたいな感じだね。

 

「おや、いらっしゃい。宿泊かい?」

「ん。一泊。あと、ご飯」

「はいよ」

 

 カウンターの中にいるおばさんに受付をしてもらう。金額はほどほど、かな?

 

「二階の一番奥の部屋だよ。これ、鍵ね」

「ん」

 

 おばさんから鍵を受け取って、壁際の階段から二階に向かう。一番奥、突き当たりのドアを開けると、ベッドとテーブルのあるシンプルな部屋だった。

 

「どこも同じ?」

 

『貴族とかでもない限り、最低限が基本なんじゃないかな』

『その日だけ泊まれればいいって人がほとんどだろうしな』

 

 それはそうだと思う。最低限の質と安さが優先かも。連泊とか、拠点にするならミレーユさんみたいに勝手に居心地良くするだろうし。

 うん。部屋についてはこれ以上言うことはないかな。それより、ご飯。

 

「ご飯。お魚。楽しみ」

 

『リタちゃんがうきうきしてるのがよく分かる』

『でも晩ご飯まではまだまだ時間あるぞ』

『ていうか昼ご飯は?』

 

 お昼ご飯は……お魚は、やっぱりだめかな。いや、どうせなら真美のお家でお魚を……、あ、学校だっけ。むう。

 

「考えるのが面倒だから森に帰る」

 

『ちょwww』

『宿の意味w』

『いや、まあリタちゃんらしいけどw』

 

 しっかりと鍵をかけてから、森に転移。ここまで来たら、誰の視線も気にしなくていいから自由だ。

 今日のごはんは……どれにしようかな……。

 

「んー……。お菓子食べよう」

 

『なんて?』

『お菓子www』

『お昼ご飯じゃなかったんかいw』

『いや確かにリタちゃんならお昼ご飯にお菓子を食べても不思議じゃないけどw』

『でもあまり良くないよ?』

 

 今日だけ。そう、今日だけだよ。うん。多分。

 




壁|w・)セリスさんのお手紙要約『Sランクの魔女だけど見た目通りの子供の感性だと灼炎の魔女から伝えられています。大型船の護衛で、かつわりと手が余りそうな護衛の依頼があれば紹介してあげてください。格安でSランクを雇えるチャンスです。探検できそうならなお良し』



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