異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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一緒に働く冒険者さん

 

 翌日、日の出と共に起床して、配信を開始。さすがに早朝だし誰も来ないかなと思ったけど、あっという間にコメントが流れ始めた。

 

『リタちゃんおはよー』

『今日は早朝から配信だろうなと思って待機してた!』

『よっしゃ間に合ったぜ!』

 

「暇なの?」

 

『辛辣ぅ!』

 

 いや、だって、まさか本当に朝から誰かいるとは思わなかったから。お仕事とか学校とか考えると、だめだと思う。

 

「睡眠時間は大事」

 

『と、亜空間に引きこもって研究をする魔女が言っております』

『リタちゃん鏡って知ってる?』

『でもリタちゃんに心配してもらえるのは嬉しいです』

 

 私は、例外だと思うから。魔女ってそういうものだよ。多分。

 宿を出て、港に向かう。一番大きい船だって聞いてるから、あの船かな。他よりも一回り大きいお船。帆は畳まれてるけど、とても大きい。

 

「おー……。お船。大きい」

 

『でっかいなあ』

『ワイバーンとかもたくさん入りそう』

『ゴンちゃんも入りそう』

『いやそれは絶対に無理だろw』

 

 ゴンちゃんはさすがに大きすぎると思う。

 お船の側には受付をしてるらしい人がいた。乗船する人が何かを見せて、受付の人が頷いてから乗船していってる。

 私もそれに並ぶと、すぐに順番になった。

 

「乗船券は?」

「ん」

「あ? 依頼票……」

 

 受付の人はそれを見て、怪訝そうに私を見てくる。ギルドカードを見せると、目を瞠って息をのんだ。

 

「まさか……! Sランクの冒険者が乗るとは聞いてたが、あんたがそうなのか……!?」

「ん」

「いや、驚いた……。見かけによらねえもんだな……。船の上に船長がいるから、声をかけてくれ。通ってよし」

 

 船長さん。誰だろ? 行けば分かるかな?

 船と桟橋を繋ぐ橋を渡って、お船の上へ。乗ってきた人を丁寧に案内する人や忙しそうに動く人がたくさんいて、そしてその忙しそうに動く人に指示を出してる人がいた。

 初老の男の人、だけど、体つきはがっしりしてる。筋骨隆々っていうわけでもないけど、一般の人よりは力があると思う。

 その人に近づくと、いぶかしげにしつつも柔和な笑顔を浮かべた。

 

「乗船ありがとうございます、お客様。客室はあちらの者が……」

「冒険者。隠遁の魔女。よろしく」

 

 そう名乗ると、男の人は一瞬だけ固まったけど、すぐにこっちを値踏みするような視線を向けてきた。ほう、と私を観察してる。

 

「Sランクの冒険者が格安で受けてくれるとは聞いていたが……。あんたがそうか」

「ん」

「ちっこいのにたいしたもんだな。俺は船長だ。名前なんてどうでもいいだろ」

 

 そう言って、船長さんは豪快に笑った。

 

「まずは冒険者で顔合わせしてほしい。ほら、あそこにいかにもな連中が集まってるだろ? 魔女さん以外は全員そろってるぜ」

 

 船長さんが指さした方には、六人ほどの人が集まっていた。盾を持ってる人、剣を持ってる人、ローブの人……。いろいろ。一応、剣を持ってる金髪の人がリーダーみたい。だって。

 

「なんだかちょっと偉そう」

 

『偉そうwww』

『いやまあちょっと偉そうには見えるけどw』

『もうちょっとこう、オブラートに包もう?』

 

 必要ならそうするけど。

 私がそっちに向かうと、真っ先にリーダーさんが気付いた。続いて、他のメンバーも。その中に二人、若く見える二人が険悪な表情で私を睨み付けてきた。

 一人は盾、もう一人は杖。盾で防ぎながら魔法で仕留める戦い方かな。悪くないと思う。

 

「おいお前! 冒険者だろ!」

 

 その二人の片方が叫んで、もう一人が続く。

 

「上位ランクの人より後に来るとか、冒険者としての常識がないのか!」

「ん……?」

 

『これは勘違いしてるかな?』

『まあ見た目は子供だしな、リタちゃん』

『よっしゃ、ちょっとぶっ飛ばしてわからせてやろうぜ!』

 

 やらないよ。血の気が多すぎると思うよ。必要以上に仲良くしたいわけじゃないけど、わざわざケンカする必要もないと思う。数日とはいえ、一緒に船に乗るからね。狭い場所なんだから、顔を合わせることも多いだろうし。

 

「まあ私は適当に森に帰るけど」

 

『それはそうだけど口には出さないようにね』

 

 ん。気をつける。

 私が無視していると、杖を持ってる人が眉尻を上げて私に近づいてこようとして、

 

「バカ野郎!」

 

 リーダーさんにわりと強めなげんこつを落とされていた。あれはちょっと痛いと思う。

 

「り、リーダー! 何するんすか!」

「お前が何やってんだよ! 最後の一人は誰か聞いてなかったのか!」

「え? いや、でも、こんな子供が……?」

 

 もういっそ、姿も何も分からないぐらいに隠蔽強くした方がいいのかな。いやでもそれをすると、ただの怪しい人になるだろうし……。難しい。

 

「見た目で判断するな。いいか、感じるんだ。相手の強さを。相手の魔力を。そうすれば、相手の力量が自ずと分かる」

「おー……」

 

 なんだかすごくかっこいいことを言ってる、気がする!

 

『アイタタタ』

『これはなかなかのちゅうにびょう!』

『お医者様! どなたか厨二病に詳しいお医者様はいらっしゃいませんか!』

『ほうほう仕方ないのう、見てしんぜよう。処置無し。死刑』

『なあんで刑罰が発生してるんですかねえ』

 

 視聴者さんにとっては、かっこいいとはまた違う感想みたい。この辺りの感覚はやっぱり分からないね。

 

「リーダー。あなたに魔力を感じる才能なんてなかったでしょう」

 

 そう言ったのは、ローブのお姉さん。同じパーティなのかな。リーダーさんがさっと目を逸らしたから、お姉さんが正しいらしい。リーダーさんは言ってみただけってやつだと思う。

 




壁|w・)お船です。
リタ「魔法使いはそんなもの」
灼炎さん「え」

お知らせ。10月中は更新が止まるか、不定期になるかと思います。
転職先の研修が始まり、それが終わるまでは睡眠時間が短くなりそうなので……。
申し訳ありませんがご理解ください……!


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