異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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まねきねこ

「あ、見えてきた。ねこ」

 

『え?』

『あ』

『そういえば招き猫を見に来たんだったなw』

『パンのインパクトで普通に忘れてたわw』

 

 パンも美味しかったけど、今の目的は招き猫だ。

 ちょっとした広場に大きな台があって、そこにその招き猫があった。結構大きいけど、台の方が大きくてちょっと触れそうにない。

 本音を言えば触りたいけど……。さすがにそれはやめておこう。触れないようにあの場所にあるのかもしれないし。それに、確かにもふもふはしてないみたいだしね。

 

「んー……。もうちょっとかわいいと思ったのに」

 

『招き猫ですから』

『かわいいのを目的にしてるものじゃないからなあ』

『でもかわいいでしょ?』

 

「かわいい……。うん。かわいい、と思う」

 

 ずっとあそこで、みんなを見守ってくれてると思ったら、ちょっとかわいいかも。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

 呼ばれて振り返る。セーラー服を着た人がいた。手には、スマホを持ってる。なんだろう?

 

「なに?」

「リタちゃんですよね? あの、よければ写真、いいでしょうか……!」

「勝手に撮ってくれていい」

「あ、いえ、そうじゃなくて……。その、招き猫の下に立ってほしいなって……」

「ん?」

 

 あの下? まあ、別にいいけど。

 招き猫の下に立って、さっきの人の方に向く。するとその人だけじゃなうて、その周囲の人も一斉に写真を撮り始めた。なんなんだろう。

 

『あああ! いいなあいいなあ! 俺も一緒に撮りたい!』

『お前らずりーぞ! 俺だってリタちゃんと招き猫を一緒に撮りたい!』

『せめてどっかに投稿してくれ保存するから!』

 

 ええ……。何の意味があるのかな。物好きだ。

 でもまあ、私としては困らないし、好きにしてくれていいかな。

 

「ねえ」

「はい! ありがとうございます!」

「その写真、どこかに、えっと……。あっぷろーど? とうこう? してほしい。視聴者さんが欲しがってるから」

「え……。リタちゃんはいいんですか?」

「ん」

 

 どうせいろんな人に撮られてるし、それにこうしていつも配信してるし、私は困らない。

 女の人はすぐに頷いて快諾してくれた。あとは視聴者さんが自分で保存してくれたらいいと思う。

 

『リタちゃんも学生さんもありがとー!』

『ふへへリタちゃんコレクションが増えるぜ……』

 

「…………」

 

 なんか、へんな人がいるみたいだけど、気にしないでおこう。

 それじゃ、そろそろ次だ。最後に土手煮を買って帰りたいけど、どこに行けばいいかな。

 

「土手煮は? どこに行けばいいの?」

 

『スレたてしてちょっとした相談したぜ!』

『名古屋のテレビ塔の側に美味しいお店があるらしい』

『ちなみに今は別の名称らしいけど』

 

「テレビ塔。じゃあ、まずはそこに転移する」

 

 スマホでテレビ塔を検索。あ、すごく近い。名古屋城よりも近い。じゃあ飛んで行けばいいけど……。そろそろ面倒だし、転移しよう。

 

「それじゃ」

「あ、はい! 気をつけて!」

 

 たくさんいる人に手を振って、テレビ塔に転移した。

 

 

 

 テレビ塔は、ちっちゃい東京タワーみたいな感じだ。北海道の時みたいに、テレビ塔の側は細長い公園があるみたい。結構多くの人が行き交ってる。あ、男の人が手を振ってる。気付くの早いね。

 振り返しておこう。ふりふり。

 

『よっしゃリタちゃんに手を振ってもらえた!』

『行きたかったけど地味に遠かったよ……』

『土手煮だけど、そこから見える路地に入って少し行ったところに小さいお店があるよ』

 

「見える路地が多すぎて分からない」

 

『そりゃそうだw』

 

 視聴者さんにお店の名前を教えてもらって、またスマホで検索。最初からこうすれば良かったんじゃないかな、とちょっと思う。

 んー……。あそこの道、だね。すぐに行こう。

 さっと飛んで目的地へ。小さいビルの一階が目的のお店みたい。近くに大きいビルがあるせいで、余計に小さく見える。

 ここで買えるのかな。でもまだ営業時間じゃないみたいで、お店は暗い。どうしよう。

 一度帰ろうかなと思ってたら、ドアが開いておばさんが出てきた。なんだかにこやかなおばさんだ。私を見て、にっこりと笑ってる。

 

「いらっしゃい。息子から電話があったよ。おいで」

「ん」

 

 よく分からないけど、誰かが連絡してくれたってことかな?

 店内もやっぱりちょっと狭い。カウンター席しかないぐらい。カウンターの奥に調理場があって、おじさんが調理をしていた。

 

「おお、ニュースで見たまんまだなあ。かわいい魔女ちゃんだ」

 

 おじさんがそう言って、おばさんが頷いてる。

 

「本当にね。何も知らなかったら仮装かなって思うところだよ」

 

 かわいいかはよく分からないけど、とりあえず私は土手煮が欲しい。

 

「土手煮、ある? まだだったら、後で来るけど……」

「ああ、大丈夫。作っておいたから」

 

 おじさんが大きなお皿を渡してくれた。なんだかちょっと黒っぽいかな……? お肉と、多分こんにゃくが入ってる。

 

「牛すじの土手煮だ。お酒のおつまみによく注文されるんだが……」

「ま、おかずとしても十分だよ。ごはんと一緒に食べな」

「ん。ありがと」

 

『すっげえ美味そうな土手煮』

『よく見たらわりと有名なお店やんけ』

『息子さんが視聴者にいるとか運がいいというか、リタちゃんも有名になったというか』

『いや多分へたな芸能人より有名だと思うぞ。それも世界的に』

『リタちゃんも大きくなったなあ』

 

「ん? 小さい方だと思う」

 

『違う、そうじゃないw』

 

 違うの? 日本語はたまに難しい。

 支払いをして、写真を撮って、手を振って。そうしてから、私は真美のお家に転移した。

 




壁|w・)にゃー。
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