異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ウナギみたいなお魚

 

 陸に戻って、向かった先は港の隅にある小さい建物。時間のある漁師さんがここで休憩してるらしい。釣ったけど売り物にならないお魚はここで食べたりしてるんだって。

 小さい石造りの建物だけど、お部屋の中にはしっかりとした炊事場があって、部屋の中央には大きなテーブルがあった。男の人だけじゃなくて女の人もまじってわいわいと騒いでる。

 そんな中に、私が護衛していた人が入っていった。

 

「おまえらー! 今年初のナギニだぞー!」

「おお! 早いな! 今日邪魔な鳥どもの討伐じゃなかったのかよ!」

「おう! なんと魔女さんが手伝ってくれてな! 討伐が一瞬で終わっちまったから、ちょっと釣り竿で釣ってきた!」

「効率悪すぎるだろそれ」

「こんなに早く終わるとは思ってなかったからなあ」

 

 漁師さんがそう言いながら炊事場に向かう。炊事場といっても別室とかにはなってなくて、みんなの前で調理することになるみたい。

 

「全員一切れずつは食べられる量があるからな。みんなで食うぞ!」

「よっしゃあ!」

「よっ! 太っ腹!」

 

 すごく騒がしいけど、みんな明るくて楽しそう。静かな方が好きだけど、でもこういうのは嫌いじゃない。

 

「魔女さんは一匹まるまる食ってくれよ。今回の主役だからな」

「ん」

 

 一匹ぐらいなら食べられる。楽しみだね。

 

『めっちゃ気のいい人たちばかりだなあ』

『ナギニってやっぱり異世界ウナギのことかな』

『そんなことより味だよ味が気になるんだよ』

 

 どんな味だろうね。

 漁師さんが手早くさばいていく。包丁で頭を落として、すぱすぱっと。

 

「おー……」

「いやあ……。そんな見られると、照れちまうな……」

「ん。すごい」

「そ、そうか? 魔女さんにそう言ってもらえると、光栄だな……」

「おうおう照れてるぞあいつ!」

「恋か!? 禁断の恋ってやつか!?」

「お前らうるせえよそんなわけあるか!」

 

 怒りながらも漁師さんは手を止めない。手際よくウナギをさばいていく。

 そうして切り終わったら串に通して、焼いていく。んー……。香ばしい匂いがただよってくる。お腹が空く匂いだ。

 

『いい音』

『日本のウナギに負けず劣らず……これは素晴らしい』

『ばかな……異世界側のメシテロだと……!?』

『異世界なのに!』

『お前らバカにしすぎだろw』

 

 こっちにも美味しいものはあるよ。日本の方が多いのは認めるけど。

 焼き終わったところで、完成。お皿に並べて渡してくれた。

 

「ほれ、魔女さん。この調味料をつけて食べると美味しいぞ」

「ありがと」

 

 お魚と一緒に渡されたのは、黒いタレみたいな調味料が入った小皿。言われた通りにつけて食べてみよう。全体に調味料をかけていく。

 日本のウナギに使うタレと違って、こっちはとろみがほとんどない。見た目はお醤油の方が近いかも。でも香りは醤油とはまた違う、かな?

 とりあえず食べてみよう。ぱくりと。

 

「んー……。うん。柔らかい。骨がちょっと気になるけど、これぐらいなら十分食べられると思う。この調味料はちょっと辛みが強いけど、美味しい」

「だろ? よければ次は買ってくれよ」

「ん」

 

『やっぱりウナギやないか!』

『辛いタレが……。それも悪くないなあ……』

『でも見た目はちょっと違和感がすごかった。マジで醤油じゃん』

 

 日本のタレとは全然違ったのは間違いない。こっちも悪くはないけど。

 食べ終わった後は食器を返して、ギルドで報告。そうしてからまっすぐ宿の部屋に戻った。

 部屋に入った後は森に転移。精霊様に報告しよう。

 

「精霊様」

 

 呼ぶといつも通り、精霊様はすぐに出てきてくれた。

 

「おかえりなさい、リタ」

「ん。闘技場、明日出る」

「急ですね……。闘技場ですか」

 

 なんだか精霊様が悩んでる。もしかして、出るのはだめだったかな? 今からでも辞退してくるべきかな。受付の人は辞退はだめだって言ってたけど、あれは多分冗談だと思うし。

 精霊様が何か悩んでるから、その間にお菓子でも食べよう。今日は何を食べようかな。

 

「んー……。これ」

 

 引っ張りだしたのは、ちょっと黒っぽいお菓子が描かれた袋。黒くて小さいつぶつぶのお菓子だ。麦チョコだっけ。これ、好き。

 

『麦チョコ!』

『麦チョコはチョコ菓子の中でも完成形の一つだと思う』

『俺はコーンチョコの方が好きかなあ』

 

 コーンチョコも美味しい。食べたくなってきたからそれも食べよう。

 

『俺らが余計なこと言ったからお菓子が増えてるw』

『おまえらリタちゃんが虫歯になっちゃったらどうするんだ!』

『リタちゃんが虫歯になるわけ……ないよね?』

 

 虫歯なら、大丈夫。魔法で毎日体を綺麗にしてる。それにはもちろん歯とかも含まれる。それにそもそも、虫歯菌だっけ。死滅してると思うよ。魔法というか、精霊様が何かやったって聞いてる。詳しくは知らないけど。

 とりあえず麦チョコを食べる。麦チョコはこの食感が楽しい。

 

「あの……リタ……。何をいきなりお菓子を食べ始めてるんですか?」

「気のせい」

「気のせい!?」

 

『気のせいw』

『いくらなんでもそれは無理があるw』

 

 そうかな。そうかも。

 

「食べる?」

「…………。いただきます」

 

『おいこら精霊様』

『相変わらずリタちゃんに甘い精霊様やで』

 

 精霊様は麦チョコを食べながら、話し始めた。なんでもいいけど、お口は空にしてから話した方がいいと思う。

 

「闘技場、参加は構いませんが、ちゃんと手加減するんですよ? 人間はあなたが思っているよりもか弱い生き物なんですから」

「ん」

 

 それは、大丈夫。分かってるつもり。でも十分気をつけよう。

 精霊様と一緒にチョコを食べながら、のんびりとお話。明日の闘技場はちょっとだけ楽しみだね。

 

『なお精霊様のお許しが出たので冒険者の望みは消え果てました』

『お労しや、冒険者たち……』

『これはもうだめかもわからんね』

 

 やりすぎないようにするよ。多分。

 




壁|w・)会話文でもぐもぐいれまくるとさすがに邪魔かなと思ったので、省略しています。
「闘技場、もぐもぐ、参加は構いませんが、もぐ……、ちゃんと手加減するんですよ? もぐもぐ。人間はあなたが思っているよりもか弱い生き物なんですから。もぐもぐ」
「ん。もぐもぐ」
チョコレートは美味しいからね、仕方ないね!
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