異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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広縁でのんびりと

 

 焼き鳥を食べ終わった後は、温泉へと向かう。さすがにお昼みたいな温泉巡りはせずに、今回は一カ所だけ。あの広い露天風呂がお気に入りだから、そこに行く予定。

 それで、お昼も通ったいろんなお店がある通りを歩いてるんだけど……。すごく人が多くなってる。たくさんだ。時折手を振られるから、とりあえず振り返してる。ふりふり。

 

「リタちゃんって、そういうサービス精神はあるよね」

「ん? 振り返してるだけだよ」

「あ、そういう感覚なんだ」

 

『挨拶を返してる、みたいなもんか』

『でも俺らにとっては十分なサービスです』

『俺もリタちゃんに手を振りたいし振り返されたい』

 

 気付けば振り返すぐらいはするよ。時間がかかることでもないから。

 時折おまんじゅうやお菓子を買い食いしながら、西の河原公園に入った。

 

「おー……」

 

 薄暗い道になるかなと思ったら、なんだか色とりどりの光に照らされてる。すごい。

 

「なにこれ」

「ライトアップ。これをリタちゃんと見たかったんだ。綺麗でしょ?」

「ん。すごくきれい」

 

『これが有名な草津温泉のライトアップか』

『湯畑もなんか光らされてたけど、こっちは青とか赤とか幻想的やな』

『なんかご利益ありそう』

 

 本当に綺麗だね。みんなも見たいっていうぐらいだから、日本でもあまり見られない光景なんだと思う。私の世界だとまず無理だ。

 そんなお昼とは全然違う公園を歩いていく。神秘的っていうのはこういう時のことを言うのかな。歩いていて、ちょっと楽しい。

 そうしてたどり着いた、とっても広い露天風呂。真美と一緒に中に入ると、

 

「わあ」

 

 そこもライトアップされていた。温泉そのものは控えめだけど、そこから見える山が綺麗な色になってる。なんだかすごい。

 

「ここからの景色もすごく綺麗だよね」

「ん。とてもすごい」

 

『そんなにすごいの?』

『是非見たいんですが』

『するっとフェニちゃんの映像に切り替わってて草だよ』

『こちらはフェニちゃんがまた溶岩浴をしているところでございます』

 

 またやってるんだ。フェニちゃんにとってはお風呂だろうから、気持ちいいのかな?

 温泉に入って、一息。のんびりとライトアップされた景色を眺められるのは、なんだか贅沢をしてる気がする。

 

「はふぅ」

「ふにゃふにゃだね」

「んー……」

 

 とても、とっても、気持ちいい。

 ゆっくりのんびり温泉と景色を堪能して、宿に戻ることになった。

 

 

 

「あら。おかえり」

 

 部屋に戻ると、高崎さんがのんびりテレビを見てくつろいでいた。お酒を片手に焼き鳥を食べてる。買ってきたのかな?

 

「焼き鳥、買ってきたんですか?」

「あなたたちの配信を見てたら食べたくなったのよ」

「ん。焼き鳥はいいもの」

「そうね!」

 

『やっぱ高崎さんもあの後見てたんかw』

『あれだけ焼き鳥美味しそうに食べてたらな……お酒と一緒に食べたいわな……』

『気持ちは分かるが、女優の姿かこれが?』

『なお仕事中です』

『だめなやつでは?w』

 

 もう夜だし、私は別にいいと思う。

 それよりも。

 

「真美。真美。あそこ座ろう」

「あ、うん。そうだね」

 

 真美と一緒に、一番奥、広縁に向かう。広縁の真ん中に小さいテーブルがあって、それを挟むように椅子が置かれてる小さなスペース。そのふかふかの椅子に座ると、なんだろう、不思議な心地よさがあった。窓からの景色も、温泉街が見れるだけだけど、悪くないと思う。たくさんの人が歩いてるね。

 

「リタちゃん、おまんじゅう食べない?」

「食べる」

 

 アイテムボックスからおまんじゅうを一箱取り出す。包装を破っていたら、テレビの人がジュースを持ってきてくれた。オレンジジュースだ。嬉しい。

 

『熱いお茶じゃないんかいw』

『おまんじゅうには熱いお茶だろがい!』

『味覚がお子ちゃまなリタちゃんに何を求めてるんだお前らは』

 

 なんだかすごくバカにされたような気がする。でも今はいいかな。おまんじゅうを食べたい。

 のんびり椅子に座って、おまんじゅうを食べて、ジュースを飲んで、景色を見る。おー……。とても、いい。すごくいい。ここ、好き。

 

「ここ、いいね」

「でしょ? 不思議な居心地の良さがあるよね」

 

『わかる』

『なんなんだろうな、あの良さ。言葉にしづらいものがある』

『日本人の心に語りかけてくる何かがあるんだよきっと』

 

 私は日本人じゃないんだけど。でも、ここはとてもいいと思う。

 

「リタちゃん」

「ん?」

「温泉、楽しかった?」

「ん。楽しかった。気持ち良かった。また来たい」

「あはは。そっか」

 

 真美は、なんだかほっとしたような顔だった。不安だったりしたのかな? でも今回の旅行が失敗でも、それはテレビの人の責任だと思えばよかったと思う。楽しかったけどね。

 

「ああ、そうそう。リタちゃん、真美ちゃん」

「ん?」

「はい?」

「この宿にも温泉の大浴場があるけど……」

「入る」

「まだ入るの!?」

 

『草』

『温泉気に入りすぎやろwww』

 

 まだ入ってない温泉。是非とも入りたい。最後にそこに入ってから、今日は休もう。

 ちなみに。宿の温泉はただ広いお風呂といった感じだった。気持ち良かったけどね。

 




壁|w・)広縁は魅惑的な場所。
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