異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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※別視点です。



・姉妹の決意

 

   ・・・・・

 

 リタとアリシアが消えて。アルティは椅子に座ってぼんやりとしていた。

 双子。お姉ちゃんなのかな。妹、なのかな。わからないけど、でも、姉妹なのは間違いない。

 姉妹がいるなんて知らなかった。でも、はっきりと顔を見た時、確かな繋がりがあるのを感じて、それがなんだかとても嬉しくて。

 そして同時に、それを奪われていたと知った時に、アルティは両親を初めて軽蔑した。

 今からまたお城に戻ることになる。それがとても、憂鬱だ。

 

「はあ……」

 

 ため息をつくアルティの目の前に、シルフがふわりと舞い降りた。ぽすんと椅子に座り、どこか楽しげな笑顔でアルティを見つめてくる。

 

「おつかれ、アルティ。リタはどうだった?」

「優しい子、です。きっとお父様たちを殺したいと思っていたのに、私のために我慢してくれました」

「うん。アルティがいなければ、リタは多分ハイエルフを根絶やしにしただろうね。あの子は、敵には容赦がないから」

 

 それを聞いてしまうと、自分の判断は間違いなかったのかと不安になってしまう。アルティから見ても、両親は救いようがなかった。邪悪しか感じなかった。殺されても文句はなかったかもしれない。

 それでも、自分の両親で。そしてそれ以上に、あんなクズのために、リタに手を汚してほしくなかった。なんとなく、気に病むと思ったから。わたしから両親を奪った、ということに。

 

「もっと仲良くなりたいなあ……」

「あの子は精霊側だ。譲らないよ」

「分かっています……」

 

 シルフの態度から、リタが精霊たちに愛されているのはよく分かる。リタも精霊たちに懐いていて。それが、とても羨ましい。わたしもリタと仲良しになりたいのに。

 でも、これで縁が切れたわけじゃない。聖域には来てくれるみたいだから、またお話ししたいな。

 

「ところで、アルティ。ここからが本題だ」

 

 シルフの真剣な表情に、アルティは居住まいを正した。こくり、と小さく喉が鳴った。

 

「ボクたち精霊は、君たちエルフを、特にハイエルフを絶対に許さない」

 

 そうだろうな、と思う。先代の守護者と今代の守護者、両方に敵対して、精霊が怒らないわけがない。すでに里を滅ぼしたと言われても、アルティはきっと驚かないだろう。

 もっとも、精霊たちが直接手を下すことはない、はずだ。ただ魔力の流れを遮断するだけ。たったそれだけで、里は滅びるだろうから。

 

「でも」

 

 シルフの言葉に、アルティは顔を上げた。

 

「アルティは、別だ。リタも言ったように、君のことはボクたちも好ましく思ってる。他のハイエルフの言葉に惑わされず、ちゃんとボクたちの言葉を聞いてくれた君は」

 

 だからチャンスをあげるよ。シルフはそう言った。

 

「君がエルフたちをまともにするんだ。今の大人たちはもうどうしようもない。だから今すぐにとは言わない。けれど、君たちの世代からは変えられるはずだ。それが、君の責務だ」

「わたしの、責務……」

「できるよね?」

 

 自信があるかと言われると、微妙なところだ。けれど、少なくとも。アルティの片割れは守護者になった。そんなにすごいことをした人の姉妹だ。これぐらいできなくてどうする。

 

「わかりました。わたしが……エルフを、変えてみせます」

 

 アルティがそう宣言すると、満足そうにシルフは笑った。

 

「ちなみに。さすがに罰ぐらいは与えるから。魔力の遮断まではしないけど、制限は受けると思ってほしい」

「当然です。ご温情に感謝します」

 

 シルフの期待に応えるために。そしてリタを失望させないために。アルティは決意を新たに立ち上がった。

 

 

 

 そうして、お城に戻って。

 

「あいつを、追え……! このままにしておけるか!」

「忌み子は殺さなければ……!」

 

 狂ったように叫ぶ両親とうろたえる兵士たちに、アルティは心が冷めていくのを感じた。

 つかつかと、父たちの方へと向かう。父もすぐにそれに気付いた。

 

「おお、アルティ! お前からも……」

 

 父が何かを言うよりも先に、魔法を使う。両親を床に叩きつけ、父から指輪と王冠を奪った。

 

「精霊様。両親に魔法を使えなくするための呪いを」

『おっけー』

 

 そんなシルフの声が聞こえて、そして両親の顔面に黒い幾何学的な模様が刻まれた。こうして目立つ場所に刻むあたりに精霊たちの怒りを感じられる。

 

「な……っ!」

 

 父たちは狼狽してる。いい気味だ。

 アルティは王冠を被り、そして臣下たちへと振り向いた。

 

「エルフは先代の守護者と今代の守護者を敵に回し、精霊の怒りに触れました」

 

 ざわめくエルフたち。中には絶望して膝をついた人もいる。それらは全て自業自得なのに。

 

「今代の守護者、リタが見逃してくれたため、最悪の事態は免れています。けれど、精霊たちの怒りは薄れていません」

 

 このままなら、きっとエルフの里は滅びる。それはみんなも分かっているはず。だから。

 

「直接の原因の王は、排除します。ここから先は、わたしが……。私が皆を導きます」

「は!」

 

 そう宣言すると、皆がその場に跪いてくれた。アルティを認めてくれるかのように。まだ幼いアルティに従うように。

 もう何も知らない子供ではいられない。まだまだ未熟だと自分でも分かっているが、そうも言っていられない。だから、アルティは皆の前で堂々と立つのだ。

 

「あ、アルティ……。考え直すのだ……」

「そうよ……アルティ、いい子だから……」

 

 未だにそんなことを言う両親にアルティは冷え切った視線を向け、そして言った。

 

「この二人を、部屋に閉じ込めてください」

「了解致しました」

 

 兵士たちに連れられていく両親。何かをわめいているが、もうアルティの耳には届かない。血の繋がった両親なので処刑したりするつもりはないが、王としてはもうだめだ。

 ゆっくりと息を吸って、吐き出して。そうしてから、アルティは新たな王として、エルフたちに向き直った。

 

「世界に、精霊たちに誇れる里にしましょう」

 

 それに異を唱える者は、誰もいなかった。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)スランドイルとタイテーニアは幽閉されました。二度と出てくることはないでしょう。
今後はアルティが里を導くことになります。
この先のエルフの里がどうなるかは、それはまだ誰にも分からないことです……。

そんなわけで、両親とのごたごたはこれで終わりです。
あとはもう少しその後のリタを書いて、エルフの里編は終わり、なのです。
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