異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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水郷巡り

 ゆっくりと下りて、着地。改めて見ると、若いお兄さんだ。お兄さんの後ろにはお船がある。外輪船と違って、少人数用の小さいお船だね。十人ぐらいが限界かも?

 

「水郷巡りを選んでくれてよかった。琵琶湖琵琶湖言ってたかいがあったよ」

「ん……?」

 

 それじゃあ、やっぱりこの人が……。

 

『まさかお前が琵琶湖ニキか!?』

『めっちゃ若い! イケメン! かっこいい!』

『まさか琵琶湖ニキの手こぎなのか!?』

 

「まあそういう仕事だからな」

 

『マジかよ結構意外な仕事』

『このイケメン兄ちゃんが必死になって琵琶湖琵琶湖言ってたと思うとクソ面白い』

 

「やめて?」

 

 かっこいい、というのはよく分からないけど、視聴者さんからすると好ましい人なのかもしれない。

 それよりも。水郷巡りだ。お兄さんがお船をこいでくれるらしい。思えば手でこぐお船は初めてかもしれない。

 

「さあ、乗ってくれ。今日はリタちゃんの貸し切りだよ」

「ん……」

 

 他の人の視線がないってことだね。それはちょっといいかも。

 お兄さんに案内されて、小さいお船に乗る。座る場所には屋根があって、小雨程度なら平気かもしれない。

 

「それじゃあ、行くよ」

「ん」

 

 お兄さんがお船をこぎ始めると、ゆっくりと進み始めた。そのまま川を進んでいく。ゆっくりのんびり。速度は遅いけど、じっくり景色を眺められるのは楽しいかもしれない。それに、お船の独特な揺れも今回はなんだか気持ちいい。

 風もほどよく吹いていて、これはとてもいいかもしれない。

 

「お昼寝に最適」

「いやリタちゃん、せっかく水郷巡りに来てるんだから、是非とも船を楽しんでほしいんだけど……」

「んー……」

 

 景色は、とってもいいんだけど……。それだけにお昼寝したくなっちゃう。気持ちいいから。

 もちろん悪いわけじゃない。何度も言うけど、とってもいいと思う。ただ気持ちいいのが悪い。適度な風と適度な揺れ。眠たくなるのは仕方ないと思う。

 

「退屈じゃなくて、心地いいから眠い」

「くっ……! 嬉しいはずなのになんとも言えない……!」

 

『良い評価なのは間違いないけど、お昼寝されちゃうとそれはそれで悲しいだろうなあw』

『これも全て琵琶湖ニキがイケメンなのが悪い』

『お前はイケメンに恨みでもあるのかw』

『うん』

『なにそれこわい』

 

 他人の人間関係に口を出すつもりはないけど、この人とは関係ないだろうから責めちゃだめだよ。

 そのままうとうとしながら三十分ほど揺られて、元の場所に戻ってきた。満足。

 

「それじゃあ……」

「待った! 待ってほしいリタちゃん!」

「ん?」

 

 何故か止められてしまった。また写真とかかな?

 そう思ったけど、お兄さんはどこかに電話をかけてる。五分ほどそれを眺めていたら、唐突にガッツポーズ、というものをしていた。何かいい話でもあったのかな。

 

『勢いでガッツポーズってよくあるけど、こうして見ると変な人だな』

『ああはなりたくないもんだ』

『お前ら琵琶湖ニキに対して辛辣すぎん?』

 

 悪い人ではないと思うよ。むしろいい人だと思う。

 お兄さんはスマホをしまうと、改めてこっちに向き直った。

 

「リタちゃん。この船ごと、ちょっと転移してほしいんだけど」

「ん? どこに?」

「ここ」

 

 お兄さんが地図を取り出して場所を見せてくる。遠くはないけど……。川の上、かな?

 

『八幡堀巡りやな?』

『リタちゃん、それもオススメ。町の中の川を進むやつだよ』

 

「へえ……」

 

 それもちょっと楽しそう。乗ってみたい。

 お兄さんの指示する場所、その少し上にお兄さんとお船を浮かせて転移。眼下に川が見える場所だ。日本の町って聞いたから都会みたいな場所かなと思ったけど、日本らしい建物が並ぶ場所みたい。

 

「うわあ!? 浮いてる! こわい! めっさ怖い!」

 

『草』

『ざまあwww』

『おまえらwww』

 

 魔法を使えなかったら、空を飛ぶのは怖いよね。すぐに下ろしてあげないと。

 近くの川にお船を下ろして、その側にお兄さんも下ろす。すぐ近くのお船の人が目を丸くしてこっちを見ていた。驚かせてしまったかもしれない。

 

「よ、よし……。それじゃあ、乗ってくれ! リタちゃん!」

「もう乗ってる」

「あ、うん……。よし、いくよ!」

 

 またお船がゆっくりと進み始めた。

 今回は聞いていた通り、町中の川を進んでいってる。その町の景色もビルとかじゃなくて、日本家屋みたいな家ばかりで見ていて飽きない。

 横の道を歩いている人も当然いて、こっちに気付いた人が手を振ってきてる。振り返しておこう。ふりふり。

 

『やった! リタちゃんの船見つけた! 写真撮った!』

『八幡堀巡りにも来てくれるはずと思って急いで駆けつけたかいがあったぜ』

『すげえ猛者がいるw』

『巡り会った人おめでとう! 写真くれ!』

『リタちゃん、撮った写真あげていい?』

 

 あげるって、なんだっけ。みんなが見れるようにする、だっけ。別にそれぐらいならしてもいい。というより多分、結構もういっぱいあると思うから。

 

「いいよ」

 

『ありがとう』

『マジで!? 船に乗るリタちゃんの写真がもらえるんですか!?』

『言ってみるもんだなあ!』

 

 これぐらいで喜んでくれるなら、いつでもしてもいいんだけどね。

 お船に揺られながら、景色を楽しみつつ手を振り返す。たまに橋の下を通るのもなんだか新鮮だ。

 そうしてのんびりゆっくりと進んでいって、出発地点に戻ってきた。一応、元の場所に転移しておこう。

 

「おっと……。ありがとう、リタちゃん」

「ん。私も楽しかった」

「はは。それは良かった。あと、よければ、写真を……」

「ん」

 

 いつも通り写真を撮って、握手して。水郷巡りと八幡堀巡り、なかなか楽しかったと思う。森に帰ったらお船を作ってみようかな?

 




壁|w・)八幡堀ははちまんぼりと読みます。
あのお船でお昼寝したら気持ちよさそうですよね。有料なのでもったいないですが……。
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