異世界魔女の配信生活   作:龍翠

317 / 543
ブラックバスの天丼

「ほら! みんな! 魔女さんが困っているでしょう! 戻って! 座って!」

 

 大人たちがそう声をかけると、子供たちは少し不満を口にしながらも元の場所に戻って座り始めた。ちょっとだけびっくりしたから、一安心だ。

 

『なんなんこれ?』

『学校の見学とかじゃないかな?』

『よし。俺の息子が配信に映った。満足』

『なんかやべえ策士がおるw』

 

 視聴者さんの子供がこの中にいるらしい。いるからといって何かをするつもりはないけど。

 私は気にせず見学しよう。博物館。博物館って初めてだ。琵琶湖の歴史が分かるものがあるのかな。ちょっと楽しみだね。

 そうして、受付をして中に入っていく……。それだけのはずだったのに。

 

「どうしてこうなったの?」

 

 気付けば子供たちと一緒に回ることになっていた。子供たちと一緒に展示物を見て回ってる。

 

『俺らが聞きたい』

『リタちゃんの周りにちっちゃい子がいっぱい集まって微笑ましいなって』

『かわいい集団だなあw』

 

 迷惑になってないか、ちょっとだけ不安だよ。

 きっかけは、先生の一言。私が受付をしていたら、よければ一緒に見ませんか、と聞かれた。断る理由もなかったから頷いたら、こうして子供たちにまとわりつかれるようになってしまった。

 不愉快というわけではないけど。みんないい子でかわいいから。展示物への感想も、なんだかかわいい感想でいいと思う。

 大きい動物の模型の感想がでっかい、だったからね。私はもっと大きいのを知ってるけど。ゴンちゃんとか。

 

『比較対象がおかしい』

『リタちゃんの森は生態環境がマジで謎すぎるから』

『何を食べて生きてるんだ……?』

 

 魔力で生きてるから、そこまで食べ物は必要としてないよ。

 特に印象に残ったのは、大きな水槽のトンネルみたいなところ。左を見ても右を見ても上を見てもお魚がいっぱい。なんだかちょっとおもしろい。

 

「このお魚は美味しいの?」

「リタちゃん、食べちゃだめだからね……?」

「ん……。分かってる」

 

 先生に注意されてしまった。気をつけよう。

 

『嘘だぞ。分かってないぞ』

『食べていいって言われたら食べたぞこの子』

『生き物の評価に味が含まれるからなw』

 

 そんなことは……ないとは言えないけど。

 みんなで展示物を見終わった。子供たちは外に行くらしい。私はレストランに行くからここでお別れだ。

 

「リタちゃんまたねー!」

「ん……。またね」

 

 子供たちが手を振ってくる。私も振り返して、レストランに向かった。

 

『お手々ふりふり』

『もっと大きく振ってもいいのよ?』

 

 恥ずかしいから拒否する。

 レストランに行くと、真っ先に店員さんに声をかけられた。若い女性の店員さんで、私を見てにっこり笑って会釈をしてきた。とりあえず私も返しておく。ぺこり。

 

「いらっしゃいませ、リタさん。お待ちしていました」

「ん……? 知ってたの?」

「博物館の方が教えてくれましたから」

「ああ……」

 

『そりゃそうだw』

『しかも配信でブラックバスを食べに行くって言ってたからなw』

『リタちゃんが来てから調べても十分間に合うか』

 

 面倒なことをさせてしまってちょっとだけごめんなさい。

 店内の中には他のお客もいたけど、そこまでは混雑してないみたい。私が店員さんに案内されたのは、壁際の席だった。壁一面がガラスみたいになっていて、外の景色が見れるようになってる。その景色も緑がいっぱいで、なんだか心地いい。

 

「メニューはこちらですが、ブラックバスの天丼でいいでしょうか?」

「んー……」

 

 そうだね。ブラックバスの天丼と……。

 

「琵琶湖カレーも」

「はい。準備しています」

「え」

 

『いや草』

『リタちゃんまたカレー食うんかと思ったらレストラン側がその上を行ったw』

『まさかの準備済みw』

 

 準備済みという言葉に嘘はなくて、店員さんが戻って一分で料理が出てきてしまった。ブラックバスの天丼と琵琶湖カレー。早いのは嬉しいけど。

 それじゃあ、まずはブラックバスの天丼から。揚げたてみたいで、衣がサクサクしてる。お魚の身も柔らかくて、結構美味しい。

 

『ブラックバスってなんか臭いって聞くけど、どう?』

 

「ん? そんなことないけど」

 

 普通のお魚だよ。ビワマスみたいにすごく美味しいというわけじゃないけど、普通に美味しい。臭みとかは感じられないけど……。

 

「下処理をしていますから」

 

 そういうことらしい。

 店員さんが言うには、ブラックバスのせいで琵琶湖の本来の魚が減っていて、今はどうにか数を減らそうとしてるんだって。いつかはブラックバスの天丼も食べられなくなるかもしれないね。その方がいいらしいけど。

 琵琶湖カレーは、ご飯が琵琶湖の形をしていてちょっとおもしろい。なんだかかわいいカレーだ。小さい旗もある。

 

「もらっていいの?」

「もちろん」

 

 とりあえず旗はアイテムボックスに入れておいた。

 

『リタちゃん、意外なところで子供っぽいなあ』

『旗ならお子様ランチを頼めばだいたいついてくるのに』

『お子様ランチはいいぞ!』

 

 たまに聞くね、お子様ランチ。機会があればそれも食べたい。

 うん。いっぱい食べて、満足。今日はたくさん食べた気がする。

 最後にみんなで写真を撮って、今度こそ琵琶湖を、滋賀県を後にした。お土産もいっぱいだ。真美とちいちゃんに会いに行こう。

 




壁|w・)リタ自身の感想の単純さは触れないものとする……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。