異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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第三の世界

 

 カリちゃんが見せてくれた魔法陣で、転移。そうして移動した先は、空の上だった。眼下には草原と、大きな街がある。こうして見ると、私の世界と大差ないかもしれない。見た感じでは分からないぐらい。

 

「私の世界の知らない場所、と言われても驚かないよ」

 

 そう言ってみたけど、視聴者さんから反応はない。どうしたのかな。

 黒い板を見てみると、転移した瞬間からコメントが途切れていた。

 うん……。ちょっと焦ったけど、考えてみると当たり前だ。私の世界と地球にしか対応してない魔法だから、初めて来るこの世界で使えるはずがない。

 魔法陣を出して、調整。開始地点から地球の場所を考えて……。こんな感じ、かな?

 

「見える?」

 

『見えた!』

『いきなり暗転したからかなりびびった!』

『リタちゃん無事でよかったよおおお!』

 

 みんな心配してくれてたみたい。なんだかそれが、とても嬉しい。

 

「この世界に師匠がいるはず」

 

『てことは、ここはまた別の銀河の惑星なのか』

『なんか……リタちゃんの世界と変わらなくない?』

 

「ん……。でも、間違いなく別の場所。精霊たちに警戒されてるから」

 

 周囲を軽く見回してみるけど、精霊の気配が薄い。もともといないとかじゃなくて、明らかに私を避けてるのが分かる。いきなり現れた私を警戒してるんだと思う。

 ちょっと寂しいけど、別にいい。それよりも師匠だ。

 

「師匠はどこにいるのかな?」

 

『星は見つけられましたけどー。くわしい場所はリタちゃんでお願いしますー』

『まって』

『カリちゃんがコメント参加だと……!?』

 

 私もちょっと驚いた。精霊様と一緒に見てくれてるのかも。そう思ったら安心だね。

 とりあえず……魔力を探して……さが、して……。

 

「あ……」

 

 あった。遠くない。近くにいる。師匠の、魔力だ。師匠の……。

 

「ぐす……」

 

『!?!?!?』

『あわわわわ』

『え、だ、だいじょうぶ? どうかした? いたい?』

 

「大丈夫……。師匠の魔力、見つけたよ」

 

 なんだか、すごく懐かしい魔力だ。ちっとも変わってない。今すぐに転移して……。あ、でも、この世界で何かやってるかもしれないんだよね。まずは、様子見。うん。大丈夫。大丈夫。

 小さく深呼吸して、転移。少し上空に転移してみたら、大きめの街があった。その大きな通りを歩いてる、黒いローブの男の人。気付かれないように魔力を隠して、そっと下りてみる。

 ああ……。師匠だ。本を読みながら歩いてるけど、間違いなく師匠だ。

 

『どうしよう、なんかあいつの元気そうな姿見たら泣きそう』

『ちゃんと生きてたんだなあ』

『ばっかお前ら! あのバカがリタちゃん残して死ぬはずないだろ!』

『いや全員死んだこと疑ってなかっただろ』

 

 何をしてるか、ちゃんと見てからと思ってたけど……。我慢できない。すぐに声をかけたい。

 だから。

 

「ししょ……」

「師匠!」

「……っ!?」

 

 聞き慣れない声に、私は慌ててまた姿を隠した。

 師匠に駆け寄るのは、女の子。見た目は私ぐらいの年、かな? ショートカットの青い髪に瞳も薄い青。ローブも青色で、杖を持ってる。

 師匠。師匠、だって。師匠って呼んでる。

 なんで? ここで弟子を取ったの?

 

『あれ、リタちゃんの様子が……』

『あからさまに膨れてる……拗ねてらっしゃる……』

『そりゃまあ、心配してたのに、新しい弟子がしれっと増えてたらちょっと不愉快か』

『ところでなんで言葉分かんの?』

『精霊です。言語を調べて翻訳魔法をかけています』

『精霊様までキタアアア!?』

 

 師匠は青い子を見て、なんだかため息をついてる。そして言った。

 

「またお前か、ヤト。何度も言うが、俺を師匠って呼ぶなって言っただろ? 俺は弟子を取るつもりはない」

「どうしてですか! 魔法を教えてくれたじゃないですか! もっと教えてください!」

「やることがあるんだよ。それに、俺の弟子は後にも先にも一人だけだ」

「…………。えへへ……」

 

『今度は頬がゆるゆるになってるw』

『かつてないほどに表情が動いてるなw』

『ほんと師匠さん大好きだなw』

 

 ん。師匠大好き。

 

「またそのお弟子さんですか! そんなどこにいるかも分からないお弟子さんより、私を見て……」

「お前リタをバカにするなら殺すぞ?」

「あ、ごめんなさい冗談です」

 

『あいつはあいつで沸点低すぎませんかねえ!?』

『この師弟いろいろとだめすぎるだろwww』

 

 ん……。私もちょっとひどいと思う。いや、嬉しいけど。うん。嬉しいけど。

 でも師匠もその子を無視するつもりはないみたい。ヤトというらしい子から魔法について聞かれて、面倒そうにしながらも答えてる。

 いいなあ……。私も、師匠とお話ししたい。でも、せめて師匠が一人になった時にしよう。我慢。我慢する。がんばる。

 

「師匠が一人になったら、話しかける」

 

『おk』

『ついに再会か』

『どうしよう、なんか泣けてきた』

『俺知ってる。この師弟の再会が涙ありになるとは思えないw』

 

 それは、うん。知らないけど。

 師匠とヤトは会話をしながら、大きな建物に入っていった。木造の三階建ての建物。私もフードを被って中に入る。師匠には隠蔽も気付かれるだろうから、魔力も隠して見つからない場所で……。

 

「ん?」

「……っ!?」

 

 危ない。振り返って、こっちを見てきた。とっさに本棚に隠れたけど……。ちょっと気をつけないと。

 

『マジかよ、振り返ったぞあいつ』

『リタちゃんの隠蔽が通じないとか、さすがとしか言えねえ』

『あいつマジですごい魔法使いだったんだな』

 

 ん。師匠はとってもすごい。

 

「むふー」

 

『自慢気なリタちゃんかわいい』

『でも見つかりかけたの分かってる?』

 

「ん……。そうだった」

 

 隠蔽は通じないと思っておかないとね。

 




壁|w・)ついに本編中で師匠のセリフが……! 長かった……!
いやまあ、あとがきとか特典とかではちょくちょく、というかわりと出てますけども。

配信魔法は、やり取りする先の座標がある程度分かっていないと効果がありません。
逆に言うと場所さえ分かっていれば、今回リタがやったように調整することが可能。
師匠が連絡できなかったのはこれが理由ですね。場所知らないからどうしようもない、という。

さて。というわけで。次回、再会。
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