異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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師匠と実家

 

 翌日。師匠が部屋から出てきた時、カリちゃんも一緒だった。師匠が言うには、カリちゃんを見つけて、これ幸いと部屋で話を聞いていたらしい。

 なぜか師匠の部屋にいるなと昨日の夜は思ったけど、そういうことだったんだね。

 

「とりあえず、いろいろとこいつから話は聞いた。なんというか……。本当にすごいな、リタは」

「えへへ……」

 

 師匠から褒めてもらうのはとても嬉しい。もっと撫でてもいいよ?

 師匠のなでなでを堪能しつつ、この後のことを話す。師匠もしばらくは遠出するつもりはないらしいけど、でも師匠のご両親には会った方がいいと思う。きっと配信も見てると思うから。

 

「あー……。そっか……。そうだよなあ……」

「どうしたの?」

「いや、普通に会いづらい」

「ん……?」

 

 よく分からない。きっとご両親も会いたがってるから、会いに行けばいいと思う。むしろ絶対に会うべきだと思う。

 家族が急にいなくなるのは、すごく寂しいと思うから。だから、師匠はご両親と早く会うべきだ。

 そう言うと、師匠は苦笑いしていた。

 

「まさかリタに諭されるなんてなあ……」

「ん。師匠がいなくなって寂しかったから」

「いや、うん。それは本当にごめん」

 

 たくさんたくさん反省してほしい。もちろん師匠だけが悪いわけじゃないって分かってるけど。むしろ帰ろうとしていて、わりと目と鼻の先にまで来た上での召喚だったみたいだから。

 本音を言えば。もっとゆっくり師匠とお話ししたい。でも師匠はしばらくここでゆっくりするって言ってるから、私の方は後でも大丈夫。それよりも、ご両親と会ってほしい。

 あのお母さんもお父さんも、すごくいい人だから。

 

「だから、行こう?」

「ああ……。分かったよ」

 

 諦めたように師匠は嘆息して、私の手を取ってくれた。

 そうして転移した先は。

 

「あ、間違った」

「リタちゃん!?」

 

 真美のお家。ごめん、普通に間違えた。いやだって、いつも最初に来てるから……。

 師匠は、私と真美の様子からすぐに察したらしかった。なるほど、と頷いて。

 

「君が真美って子かな」

「あ、はい。えっと……。中山真美です。リタちゃんとは、仲良くさせてもらってます」

「ああ……。これからも仲良くしてあげてほしい。こいつ、わりと寂しがり屋だから」

「師匠。変なこと言わないでほしい」

「知ってます」

「え」

 

 師匠が変なことを言い始めたから止めようとしたら、真美にまで頷かれてしまった。別に寂しがり屋ではない……と、思う。でもどうなんだろう。二人からこうして言われるなら、実はそうなのかもしれない。分からない。

 

「朝ご飯、食べられました? よければ何かお作りしましょうか?」

「んーん。師匠は早くご両親に会うべきだから、また後で来る」

「そっか」

「ここに来たのはリタの転移だけどな?」

「師匠。ぴかっとしていい?」

「やめてください死んでしまいます」

 

 もちろん本気でやるつもりはないけど。

 噴き出したように笑う真美に見送られて、今度こそ師匠の実家の前に転移した。

 実家を見た師匠は、明らかに言葉に詰まった。家を見て、じっと固まってる。じっと、じっと、家を見つめてる。

 

「師匠。大丈夫?」

「…………。ああ……。大丈夫だよ」

 

 師匠がゆっくりと深呼吸する。緊張をごまかすみたいに。そうして、インターホンに手を伸ばして、押して。

 

『はい』

 

 お母さんの声が聞こえてきた。

 

「…………」

『あの?』

「師匠」

 

 もう一度、声をかける。すると師匠が何かを言う前に、多分あっち側が気付いたみたいで、なんだかばたばたと音が聞こえてきた。そうして、ドアが開かれて。

 

「コウタ……」

 

 出てきたご両親を見て、師匠はぎこちない笑顔を浮かべた。

 

「あー……。ただいま」

 

 

 

 三人でゆっくりお話しした方がいい。そう思って、私は師匠をその場に残して森に帰ってきた。夜に迎えに行く予定。でも泊まることになるかもしれないから、その時は明日、かな? 一応やっぱり夜には様子を見にいくけど。

 

「だから夜までいていい?」

「それはもちろん構いませんが……」

 

 世界樹の側で、精霊様とお話しする。精霊様はなんだか難しい表情だ。

 

「リタ」

「ん?」

「あの子は……地球の出身で、そしてあのご両親は本当の家族です」

「ん」

「地球に残ることを選んだら……どうするのですか?」

「…………」

 

 それは。それは、考えてなかった。だって森にいるって言ってくれたから。一緒にいてくれるって聞いたから、何も心配してなくて。でも確かに、精霊様が言うように、地球に残るという可能性もあるのかも。

 それは……。どうしよう。もっとちゃんと師匠とお話ししてからの方がよかったかもしれない。

 

「精霊様……どうしよう……」

「ああ、いえ……。あの子はリタのことを大切に想っています。きっと大丈夫ですよ」

「ん……」

 

 もちろん師匠の気持ちを優先したいけど……。でもやっぱり、一緒にいてほしい。

 結局夜まで、私の不安な気持ちは拭えなかった。

 




壁|w・)間違い転移。
もうちょっと感動の再会にできればよかったんですが……これが限界でした……。
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