異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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動物園カレー

 

 夜。師匠が世界樹を見てつぶやいた。

 

「なんだこれ……」

「何か文句がありますか!?」

 

 精霊様が私の頭の上で叫んでる。ケンカはだめだよ?

 世界樹にはぬいぐるみがいっぱい。ぬいぐるみだらけ。もふもふがいっぱい。持ってきた私が言うのもなんだけど、なんだかすごいことになってると思う。

 私がぬいぐるみを見せた時、精霊様もさすがに頬を引きつらせていたから。私もさすがに買いすぎたと思う。アイテムボックスに入れておこうかなと思ったんだけど、精霊様が世界樹に飾りだしたから見守っておいた。その結果です。

 

『世界樹(笑)』

『むしろぬいぐるみの木では?』 

『バカヤロウ! 世界樹は成長するとぬいぐるみを実らせるんだよ!』

『怖いわそんな世界樹w』

 

 世界樹の見た目は木だけど、実際は魔力を生み出すこの世界のシステムだ。別に木の実ができるわけじゃないから、木の実のかわりにぬいぐるみというのも違う、はず。いや冗談だっていうのは分かってるけど。

 

「リタが買ってきてくれたんですよ!? それ以上の理由がいりますか!」

「なあ、精霊様。俺がいない間にリタを溺愛しすぎじゃないか……?」

「あなたが急にこの世界からいなくなったからですが?」

「あ、はい。その節は申し訳なく……」

 

『もはや定番のやり取り』

『どうしてコウタは自分から弱点の方へと向かうの? バカなの?』

『バカだよ』

 

「バカで悪かったな……!」

 

 私も精霊様も、本気で怒ってるわけじゃないけどね。師匠も被害者だから。だから、あまり引っ張るのもだめだと思う。

 精霊様を上目遣いで見る。さっと視線を逸らされた。

 

「ところで精霊様」

「なんですか?」

「なんでリタを抱きしめてんの?」

「なんとなく?」

 

 精霊様から後ろから抱きしめられてる形。私は嫌じゃないからそのまま。なんだか幸せ。

 でも、師匠も来たし、そろそろ晩ご飯にしよう。もぞもぞ動くと精霊様がはなしてくれた。カレーを温めよう。

 

「師匠。今日はカレー」

「ああ、うん。レトルトか? パッケージに書いてないみたいだけど……」

「ん。試作品。真美のカレー」

「おお……。なんというか、こう、特権だな」

「ん」

 

 師匠と精霊様の分のカレーを温めて、お皿に盛って渡してあげる。私は動物園カレーだ。エゾシカのお肉が入ってるカレーだね。どんなカレーか楽しみ。

 

「なんか、ご飯を食べてるのをぬいぐるみに見られてる気分だ……」

「私が言うのもなんですが、不気味ですね……」

 

『飾った本人が言うのか』

『不気味も何も、あなた自身が霊的な存在ですが?』

 

 精霊様は幽霊とは違うから同じ扱いにしたら失礼だよ。

 動物園カレーも温め終わった。お皿にご飯を入れて、カレーを入れて……。完成。

 動物園カレーはちょっと濃いめだね。ぱくりと食べてみると、ちょっと控えめの辛さだった。中辛って書いてるけど、甘口と中辛の間ぐらいかも。もうちょっと辛い方が好みだけど、悪くないと思う。

 お肉は小さいお肉がいっぱい入ってる感じだね。大きいお肉がごろごろ入っているのも好きだけど、こういうのもいいかも。お肉とご飯を一緒に食べられるし。

 うん。美味しい。これはいいもの。

 

「んふー」

 

『動物園カレーうまそうやな』

『通販は!? 通販はまだありますか!?』

『残念だったな! 売れ切れてるぞ!』

『ですよねー!』

 

 美味しいからね。売り切れるのも仕方ないと思う。

 もう一個動物園カレーを食べる。師匠と精霊様も食べたけど、美味しいって言ってた。やっぱりこれはいいもの。

 

「カレーはやっぱりいいもの」

「本当にカレー好きになったなあ……」

「ん。師匠のなまご……カレーもまた食べたい」

「今生ゴミって言おうとしただろ? なあ?」

「むうううう」

 

 師匠が顔をわしづかみにしてきた。ちょっと痛い。やめてほしい。はなしてほしい。冗談だから。本当だよ。本当に冗談だよ。師匠のカレーも美味しかったよ。

 

「でも日本のカレーと比べるとどうしても……」

「大丈夫だ、俺のカレーは生ゴミだって自覚してるから」

「じゃあなんでわしづかみにするの……?」

「様式美」

「ようしきび」

 

『さすが様式美で箒に乗ることを教えたお師匠さんだぜ!』

『空を飛ぶ時は箒に乗るのが様式美、だったっけ』

『あったなあ、そんな話w』

 

「え、今もやってんのか、リタ」

「ん」

「お、おう……。とっくにやめてると思ったよ……」

 

 でもあれはあれで楽しいよ。乗り物に乗ってる気分だから。

 カレーは三杯ほど食べた。とても美味しかったです。満足。

 

 

 

 お家に戻って、自分の部屋。とりあえずぬいぐるみを飾っておく。さすがに全部は邪魔になるから、レッサーパンダのぬいぐるみを枕元に。たまに取り替えたりすればいいかな。

 ベッドに座って、ぬいぐるみを抱いてみる。うん。ふわふわで抱き心地がすごくいい。今日はこのまま、抱いたまま寝てみようかな。

 真美が結構そういうことをしてるらしい。落ち着くんだって。動物の大きなぬいぐるみを抱き枕にしてみるのもいいのだとか。

 大きいぬいぐるみも買っておいたし、いつかはそれも試してみたい。ぬいぐるみはとてもいいものだから。

 とりあえず、ベッドに横になってぬいぐるみを抱いておく。気持ち良く眠れそう。

 

 今日も日本への旅行は楽しかった。動物園は日本のあちこちにあるらしいから、また別の動物園に行くのも悪くないかな。考えておこう。

 でもとりあえず……。次は、久しぶりにギルドに行こうと思う。たまには冒険者として活動した方がいいかもいれないから。ミレーユさんとも会いたいし。

 そんなことを考えながら、目を閉じた。もふもふ……。

 




壁|w・)動物園編、終了。次回から異世界側、ちょっとギルドに行きます。
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