異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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おもしろ主従

 階段を上がって、廊下を見る。さて、どこの部屋に……。

 

「ああ! 待ってくださいメグ! その素材は……!」

「素材? この黒焦げなのが? 何に使えるの?」

「それは……。で、でも、その、きっとまたいつか使うと……」

「いつかって、いつ? 明日? 明後日? それとも、これは貴重な素材とか?」

「いえ、あの……。別に、貴重では……」

「は? …………。はあ?」

「捨てます」

「よろしい」

 

 うん……。ミレーユさんの部屋みたい。そこから声が聞こえてるから。

 

『現在進行形で怒られてるらしいミレーユさんかわいいね!』

『かわいそうはかわいい』

『かwwwわwwwいwwwそwwwうwww』

『芝刈り機でも足りないから除草剤もってきてー』

 

 廊下を歩いて、ミレーユさんの部屋の前に立つ。なんだかノックしても気付いてもらえない気がするから、そのまま開けてみた。

 床の上で半べそで素材を選り分けてるミレーユさんがいた。その真後ろでメグさんが腕を組んで仁王立ちをして睨み付けてる。こわい。

 

『これが主従の姿か……?』

『主がメグで従がミレーユですね分かります』

『これはおもしr……ひどい』

『おもしろいって言ってやるなよw』

 

 どう言われても仕方ないと思う。だって、うん……。

 

「うわあ……」

「え……。り、リタさん!?」

 

 ミレーユさんが私に気付いて、慌てて立ち上がった。メグさんも少しだけ驚いて姿勢を正してる。さすがにそこはちゃんとしてるみたい。

 

「よ、よく来たわね! 依頼はどうなったのかしら!」

「終わった」

「さ、さすがですわ! とってもすごいですわね!」

「様子を見にきたらすごかった」

「うぐ……」

 

 私が言うと、ミレーユさんはメグさんを睨み付けた。涙目で睨んでも怖くないと思う。

 

「わたくしは……リタさんにだけはかっこよく見せたかったのに……! メグのせいで!」

「誰のせいだって?」

「ひえ……。片付けていないわたくしのせいです申し訳ありません……」

 

「うわあ……」

『うわあ……』

『一般メイドにびびる灼炎の魔女様』

 

 まあ、仕方ないよね。いつものことだけど、片付けてないミレーユさんが悪いから。

 

「これ、おみやげ。カカスさんにもらった」

 

 アイテムボックスからカカスさんにもらった果物を一つ取りだして、メグさんに渡す。メグさんはその果物を見て、少し驚いてるみたいだった。

 

「これは……。ここでは手に入らない果物ですね……。ありがとうございます」

「んーん。セリスさんと一緒に食べてね」

「美味しそうですわね。ところで、リタさん。カカスさんというのは?」

「多分、あの国で王様の正妃? になる人」

「あなたどんな人と縁を結んでいますの……?」

 

 縁、というほどではないと思う。でもまた気が向いたら、カカスさんには会いに行きたいと思ってる。王様には二度と会いたくないけど。

 それじゃあ、と手を振って、私はその場から転移した。

 

 

 

 転移先は、もちろん精霊の森だ。世界樹の前で師匠が待っていた。

 

「ただいま。おみやげ、もらってきた」

「おかえり。なんか食べてたやつか」

「ん」

 

 師匠に果物が入ったバスケットを渡す。師匠が一粒食べて、なんだか難しい表情をしていた。美味しいと言いたいような、でも何か違うような、そんな顔。

 

「ブドウ……に見えるけど、なんか違うな……。いや、美味しいのは間違いないんだけど、なんだこれ……?」

「ブドウ食べたい」

「あー……。そうだな。日本に行ったら食べるか」

「ん」

 

『ブドウなら是非山梨に!』

『桃もあるよ! 美味しいよ!』

『ちょうど今が旬だから是非是非!』

『山梨の人の熱いラブコールが始まってるw』

『ブドウ確定っぽいし、これは次は山梨かな?』

 

 んー……。そうだね。山梨っていうところに行ったら、ブドウと桃が食べられるらしい。是非行きたい。

 師匠が行きたがってる即売会はまだもう少し先だし、先に山梨、かな?

 

「そういえば、ここにもブドウみたいな果物がある」

「あー……。一応、あるな……」

 

『え』

『なにそれ』

 

 配信では見せたことなかったかな。理由は単純だけど。

 

「師匠がブドウもどきとすら名付けなかったぐらいには、美味しくない」

「はっきり言うが、めちゃくちゃ酸っぱい。酸味の塊。すごいぞ、あれは」

 

『そこまで言われると気になるんだけどw』

『レモンみたいなものかな?』

 

「レモンより上だな」

 

『マジかよ』

 

 すっごく酸っぱい。でも調味料として使うなら、まだいけるかなって。焼いたお肉にちょっとかけると、違った味になってそれはそれで楽しいから。

 でも。今は、日本のブドウと桃だね。

 

「じゃあ、次は山梨で。ブドウと桃、食べる」

「お土産よろしく」

「ん」

 

『なんだ。師匠さんは来ないのか』

『お土産を娘にたかる父親……』

『端的に言ってクズでは?』

 

「やめてくれないかな!?」

 

 別に私は気にしないから放っておけばいいのに。

 次は、山梨。ブドウと桃、楽しみだね。

 




壁|w・)自分がこのバカの性根をたたき直さないと思ってるメイドさんと、いつも片付けてもらってる手前頭が上がらない主さん、という関係。

次は先に山梨です。ふるーつ!
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