異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ブドウ狩り

 

 お店の外、ちょっと上空で行き場所を決める。どこにしようかな?

 

「フルーツが買えるところはどこかある?」

 

『いや、ぶっちゃけどこでも買えるんだが……』

『フルーツ狩りができる農園の方がいいと思う』

 

「ん……? 日本のフルーツって動物が持ってたりするの?」

 

『どういうことだってばよ』

『リタちゃん、狩りは動物を捕まえる他にも、フルーツや野菜をとったりする時にも使えるんだよ』

『普段はそっちの意味であまり使わないけどな!』

 

 そうなんだ。日本語はいつも難しい。もうかなり読み書きできて話せるようになったと思ってるけど、それでもたまに意味を誤解してしまう。

 もっと簡単な言葉にしてほしいね。私の世界の言葉はまだ分かりやすい方だと思うのに。

 

『ブドウ狩りと桃狩りなら……俺の出番だ!』

『お前は! 見覚えないニキ!』

『見覚えないニキってなんだよ』

『いや、マジで見たことないから』

『知ってるみたいに言うなよw』

 

 うん。それはいい。出番だっていうことは、何かあるのかな。

 

『俺の家の農園で! ブドウも桃も! 育ててるぞ!』

『マジかよ』

『相変わらずここの視聴者層が意味不明すぎる』

『そりゃコメントできないだけで外国の偉い人も見てるらしいから……』

 

 そうなの? 日本語を勉強したらコメントできるから、頑張ってほしい。それよりも、農園だ。農園って、つまりそこに行けばブドウ狩りとか桃狩りができるってことだよね。

 

「どこ?」

 

『農園の名前と住所送るからスマホで調べてくださいな』

 

 書いてもらった住所をスマホで調べてみる。えっと……。や、ま、な、し、け、ん……。

 

『なんでリタちゃん魔法だとつよつよなのに、スマホはいつまでたってもよわよわなの?』

『ばっかお前! 少しずつ早くなってるような気がするだろうが!』

『気だけなのかよw』

『ヒント、野生児だから』

『なるほど』

 

 怒るよ? そもそも、私はそろそろ野生児からは脱してると思う。

 

「日本にもたくさん行って、ギルドでお仕事もして、お城も見たりした。あと、私も一応は王族。どう? 野生児じゃないよ」

 

『住んでる場所は?』

 

「この話はやめよう」

 

『おいwww』

 

 住んでる場所を言われたら何も言えなくなる。それよりも農園だよ。野生児だって農園でフルーツ狩りがしたいんだよ。

 えっと……。うん。場所は分かった。それじゃあ、転移、と。

 

「ここ、かな?」

 

 なんだか、背の低い木みたいなのがいっぱいある。その枝なのかな。葉っぱのついたものが横に広がっていて、屋根みたいになっていておもしろい。その枝に紫色の小さい玉がたくさんついた果物、ブドウがあった。いっぱいだ。

 

「いらっしゃい」

 

 その声に振り返る。男の人と女の人だ。

 

『ご夫婦かな?』

『夫婦で農園を経営か。いいなあ』

『ちょっと羨ましい生活に思えてしまうw』

 

「兄妹です」

 

『夫婦じゃねーじゃん!』

『どっちか上かは知らんけど、兄弟でやってるのはなかなか珍しいのでは?』

 

 そうなの? それは知らないけど。

 

「二人でブドウを育ててるの?」

「ブドウは俺の担当。桃は妹の担当さ」

「リタちゃんが来るかもってお兄ちゃんから連絡があって、すっ飛んできました」

 

『草』

『気持ちは分かるw』

『俺も妹さんの立場だったら同じことするかなw』

 

 桃は別の場所なら結局行くことになるから、待っていればいいのにね。

 ともかく、最初はブドウ狩りだ。お兄さんからカゴとハサミを受け取る。このハサミでブドウを切り取るみたいだね。

 

「ちなみに、今日はお休みにしてるから、ゆっくり選んでいいよ」

「ん? いつもは違うの?」

「いつもは他の人もブドウ狩りに来るかな」

 

 今日のお休みは本当に偶然だったらしい。だから普段は他にも従業員さんがいるらしいけど、今日はその人もお休みなんだとか。

 

『その従業員さん、めちゃくちゃ悔しがってそうw』

『こればっかりはリタちゃんの気分次第だからな』

 

 ここに来るとも限らなかったから、仕方ないと思う。

 それじゃあ……。どれでもいいらしいけど、どれにしよう。大きい方がいいかな? これとか?

 

『迷わずに大きいものを選んでるw』

『行動が子供そのものなんだ』

『なお実年齢』

『それには触れるなw』

 

 むう……。だって、大きい方がいっぱい食べられるから。

 ぱちんと切り取ってみる。ここで食べていいらしいから、早速食べてみよう。皮をむいて、ぱくりと。

 

「おー……。甘くて美味しい。あと、ちょっぴり酸味があるかな? でも、美味しい。好き」

 

 これなら何粒でも食べられそう。それにこの皮の薄さなら、皮ごと食べても問題なさそうだね。

 ぱくぱく食べていく。美味しい。これは、とても、いいもの。

 

「んー……。甘さが増してきた、かも?」

「お、分かる? ブドウって枝に近いほうから熟していくんだ。だから離れてる方から食べると、ずっと美味しく食べられるよ」

「へえ……」

 

『なにそれ知らんかった』

『横に半分食べてすっきりしていてきゃっきゃと喜んでいた子供の頃』

『いたなあ、そういうやつw』

 

 食べ方楽しみ方は人それぞれ、だね。食べ物で遊ぶのはあまりよくないことだと思うけど。

 うん……。日本のブドウ、美味しい。日本の方が好きだ。

 

「お土産にもうちょっと欲しい」

「いいよ。いくついるかな?」

「んー……。十個……?」

「はは。いいよいいよ。選んでくれ」

 

 それじゃあ、お言葉に甘えて……。今回はお兄さんにお勧めを選んでもらった。今日の晩ご飯に師匠と食べよう。

 

「いやあ、それにしてもいい反応だ。これは俺の勝ちかな?」

「何言ってるのよ! 桃の方が美味しいんだから!」

 

 そう言ったのは、妹さんの方だった。

 




壁|w・)ブドウもぐもぐ。
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