異世界魔女の配信生活 作:龍翠
「さあリタちゃん! 次は桃を食べさせてあげるから! 来て!」
「ん」
なんだかすごく勢いがある人だ。鼻息が荒い妹さんに連れられて、私は車に乗った。ミニバンっていう種類の車らしい。お兄さんは後ろの椅子に座った。
「ふふ……。諦めな、妹よ。やはりブドウが一番美味しいんだよ」
「黙りなさいクソ兄貴。桃が一番だから!」
『こいつら、どっちの方が美味しいって言われるのか勝負でもしてんのかw』
『どっちも子供に大人気のフルーツだからな』
『これはリタちゃん、責任重大だな!』
『この状況楽しんでるだろw』
どっちが美味しいのか、そんなに気になるのかな?
妹さんが運転する車にのんびり揺られる。あまり人が多い場所じゃないみたいで、車の数は少ない。でも民家は結構あるみたい。
「いい場所」
「でしょう?」
住むならいい場所、かもしれない。
車で走って、五分ぐらい。すぐにそこにたどり着いた。
たくさんの木が並んでいて、こっちも取りやすいようになってる。木には、ピンク色って言えばいいのかな? そんな色の果物がたくさん実っていた。なんだか甘い香りがしてくる。
側には小さい建物。普段はお店になってるらしい。今日はお休みだけど、普段はお店にたくさん桃を並べているのだとか。地元でも結構人気だって妹さんは自慢げにしていた。
「というわけで、はい」
「ん」
またハサミをもらって、早速桃を取りに行く。んー……。どれがいいのかな?
「お勧めは?」
「どれでも美味しいよ!」
「ん……」
『そういうことじゃないんだよなあ』
『客商売へたくそか?』
『もっとこう、こみゅにけーしょんをですね……』
どれでも美味しいならそれが一番だけどね。
「あ、取る時は握りすぎないように気をつけてね。桃って強く押すだけで変色したり傷んだりするから」
「かよわいくだもの」
『かよわいは違う気がする?』
そうかな? そうかも。
じゃあ……。これで。ハサミでぱちんと切り取って、持ってみる。持っただけで、他の果物よりも柔らかいっていうのが分かってしまった。
確かにこれは、強く握ったらすぐに潰れてしまうかも。危ない。
「じゃあ切るね」
妹さんがナイフを持ってきてくれて、手早く桃を切ってくれた。
なんだかちょっと白っぽいけど……。赤みも混じってる。出してもらったフォークで刺すと、するっと簡単に刺さってしまった。やわらかい。
それじゃあ、いただきます。
「おー……。すごく濃厚な甘さ。やっぱりすごく柔らかい。甘くて美味しい」
「でしょう!?」
「ん。すごく美味しい!」
「ふふん! どうよ!」
「くっ……!」
満足げな妹さんと、悔しそうなお兄さん。二人は、それで、と身を乗り出してきた。
「どっちの方が美味しい!?」
なんだか、圧を感じる。そんなに気になるのかな。
「どっちも」
「強いて言うなら!?」
「ええ……」
どうしてそんなにこだわるのかな。ブドウと桃って、どっちも違う味なのに。私はどっちも好き。どっちもすごく美味しい。桃もたくさん持って帰りたい。
「お客様にもやってるなら、うっとうしいと思うよ?」
「…………」
二人とも黙り込んでしまった。
『これはいい両成敗』
『まあせっかく美味しいもの食べて気分良くなってんのに、どっちがとか何度も聞かれたらうるさいわな』
自分が育ててる方が美味しいって言ってもらいたい気持ちは分からないでもないけど、ね。
「そ、そうだな……。来てもらった人が美味しいって笑顔で食べてくれる。それで十分さ」
「私はリタちゃんに美味しいって言ってもらいたい」
「なんでお前は余計なこと言い続けるの?」
「だってえ!」
『草』
『いや気持ちは分かるけどw』
私は美味しいものが食べられたら満足だけど。桃、おいしい。もぐもぐ。
とりあえず、桃は二十個ほど持って帰らせてもらうことになった。ブドウはみんなで分けやすいけど、桃は一人で一個食べちゃいそうだから。
お会計もちゃんとやっておいた。二人とも、いらないって言ってくれてるけど、お金はちゃんと払わないといけない。
十万円ずつぐらいなら余裕だよ。お守りのお金がいっぱいだから。
「いやそこまで高い果物じゃないからな!?」
「高級なやつは確かに高いけど……!」
「ブドウと桃にもそういうのあるの?」
『あるぞ』
『有名どころだと、シャインマスカットとか』
『マスカットはブドウのくくりでいいのか?w』
それもちょっと気になる。お店とかで見かけたら是非買っておこう。
最後に、それぞれの果樹園の前で写真を撮った。ブドウの方に戻る時は転移を使ったけど、二人ともなんだかちょっと感動していた。
「ありがとう、リタちゃん。店に飾らせてもらうよ」
「私も!」
「ん……。どうぞ」
意味があるのかは分からないけど、自由に使ってくれていいよ。
それじゃあ……。次は、どこに行こうかな?
壁|w・)桃もぐもぐ。
桃は木になっている間は完熟でもない限りかたい、というご指摘をいただきました。
申し訳ありません。普通に知りませんでした……。
妹さんが完熟の桃がある木にそれとなく誘導した、と脳内補完をお願いします。
修正は……気が向いたらするかも、です。