異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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信玄餅

 

「次はどこに行こう?」

 

 ちょっと上空に転移して聞いてみる。せっかくだから、他に何か美味しいものがあればそれも食べてみたい。

 

「美味しいものとかない? お菓子とか。お菓子とか。あとお菓子とか」

 

『何回も言うなw』

『大事なことなので三回言いましたってか』

『フルーツいっぱいあるのにまだ甘いものが欲しいのかw』

 

 それとこれとは別ってやつだよ。フルーツはフルーツ、お菓子はお菓子、ごはんはごはん。

 

「知らないの? 甘いものと甘いものは別腹なんだよ?」

 

『ちょっと何言ってるのか分からない』

『ごはんが入る余地はないんですか!?』

『リタちゃんの腹は十個ぐらいになっているのではなかろうか』

 

 そんなことはない。ちゃんと全部一緒。食べ過ぎたら魔力になるだけで。いやそんなことはいいから、お菓子の情報が欲しい。お菓子じゃなくてもいいけど。

 

「それで、何かないの?」

 

『山梨のお菓子なら……やっぱ信玄餅か?』

『今ならまだ工場見学とかも間に合うはず』

『簡単に言うと、きなこをまぶしたお餅に黒蜜をかけて食べるあまーいお菓子』

 

「おー……。すごく美味しそう。食べたい」

 

 きなこに黒蜜。美味しいよね。是非行きたい。それじゃあ、場所だ。工場の見学というのも、是非見てみたいね。

 スマホを取り出して……。えっと……。し……ん……げ……ん……も……ち……。

 

『もたもた』

『いつもの』

『癒やされるなあ』

『なんでだよw』

 

 よし。出てきた。工場は、ここだね。行ってみよう。ちょっと上空に転移して、と。

 おー……。結構広い工場みたい。お店もあるみたいで、たくさんの人がいる。なんだか緑もいっぱいで、気持ちよさそうな場所だね。

 えっと……。うん。広い。どこから入ればいいのかな?

 ちょっと下りてみる。入り口は……んー……。

 

「あ! リタちゃんだ!」

「おーい!」

 

 いっぱいの人が手を振ってきた。振り返しておこう。ふりふり。

 

『俺、このリタちゃんのふりふりを直接見たいんだけど』

『完全に運だ。がんばれ』

『何をどうがんばればいいんだよw』

 

 広くて入り口が分かりにくいね。いや、入り口は分かるけど、列がいくつかあって、どれが見学なのか分からない。えっと……。

 ちょっと悩んでいたら、見た目は私と同い年ぐらいの女の子がこっちに手を振っているのが見えた。手にはスマホが握られてる。なんだろう?

 

「リタちゃーん! 見学こっち! こっち!」

 

 ああ、そっか。配信、見てくれてたんだね。それで呼んでくれたんだ。とても助かる。

 私がそっちに行くと、並んでいる人がみんな見てきた。割り込むのは悪いから、最後尾がどっちかを聞いて……。

 

「初めまして! 一緒に見よ?」

「え、でも……」

「いいよね?」

 

 女の子が周りを見る。大人も何人かいたけど、笑顔で頷いてくれた。みんな優しいね。

 それじゃあ、お言葉に甘えてここに並ぶことにする。まだ信玄餅がどんなお菓子なのかも分からないけど、どうやって作ってるのか先に見てみるのもいいと思う。

 そう思ったけど、女の子が手提げの紙袋から何かを取り出して渡してきた。

 

「はい! これが信玄餅だよ」

「おー……。ありがとう」

「いえいえ! 詰め放題でがんばったんだ!」

 

 詰め放題。そういうのもあるんだね。聞いてみると、早朝から整理券を配布して、朝のうちに配布は終わってしまうらしい。大人気だ。だから今からはさすがにできない。ちょっと残念。

 でも今は、とりあえず信玄餅。見てみると、ちょっと柄の入った透明なビニールに包まれてる。カップに入ってるみたいで、黒蜜もその上にちょこんと置いてあった。ようじって言えばいいのかな? 食べるための道具も一緒に入ってる。

 んー……。美味しそう。食べてみたい。

 

「いくら?」

「一個ぐらいあげるよ?」

「いいの?」

「うん!」

 

 この子、とてもいい子。いい人。ありがたくもらおう。

 包みを開いて、中のカップを取り出す。んー……。先に黒蜜をかければいいのかな?

 

「リタちゃん、ちょっとお餅持ち上げて」

「うん? こう?」

「そうそう」

 

 私がようじでお餅をちょっと持ち上げると、女の子が黒蜜をその下に入れてくれた。これで、ちょっとこねこねして混ぜながら食べるといいらしい。

 

「他にも食べ方はいろいろあるよ! みんなに聞いてみてね」

「ん」

 

 それじゃあ、ぱくりと。

 おー……。すごくもちもちしてる。きなこと黒蜜の甘さがほどよくて、とっても美味しい。とってももちもち。食感がすごく楽しいね。

 

「これはとてもいいもの」

「でしょ!」

 

 うん。お土産にも最適だね。あとでたくさん買おう。きっと師匠や精霊様も喜んでくれるはず。

 そのまま女の子と少し話しながら待っていると、案内が始まった。みんなでぞろぞろ並んで建物の中へと入っていく。

 大きな窓……ガラスのある通路。そのガラスの向こうのちょっと下側で、白い服を着たたくさんの人が働いていた。よく見てみると、たくさんの信玄餅の中身が、べるとこんべあ、だっけ? そういうので運ばれてきてる。それをビニールで、一つずつ手作業で包んでいた。

 

「すごくはやい」

 

『さすがその道のプロの人たち』

『早い人だと六秒ほどで包んでいくらしいね』

『俺一分ぐらいかかりそう』

『それはかかりすぎではw』

 

 慣れるまではとても大変そう、だね。

 さらに包まれた信玄餅を詰めていく人たちもいた。これが、効率化。すごい。

 

「私の世界では考えられないね」

 

『機械があるからこそできること、だと思う』

『その分リタちゃんの世界には魔法とか魔道具とかあるから……』

『魔道具でコンベアを作ればワンチャン……?』

 

 魔道具でこんべあはさすがに無理だと思う。

 




壁|w・)食べ方がたくさんあるお菓子です。もにもにしてもいいよ!
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