異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ここをキャンプ地とする!

 

 師匠と転移した先は、小さな建物の前。二階建ての建物で、ここで受付をするみたい。

 

「少しここで待っててくれ。受付してくるから」

「わかった」

 

 建物の中に入っていく師匠を見送って、私は……。えっと。

 

「何しよう」

 

『ついていけばよかったのにw』

『自販機でジュースでも買う?』

 

 自販機。買ってみよう。

 建物の入り口の側には自販機が三台ほど設置してあった。オレンジジュース……あった。お金を入れて、ボタンを押して……。缶ジュースが出てきた。

 

「ててーん」

 

『ててーん』

『オレンジジュースか』

『誰もててーんには突っ込まないのかw』

 

 突っ込まなくていいよ。反応に困るから。

 果汁百パーセントのジュースだ。この果汁というのが大事らしい。百パーセントじゃなかったら、他にもいろいろ混ぜている、みたいな感じ、なのかな?

 

「真美がジュースなら百パーセントが一番って言ってた」

 

『偏見だー!』

『なんでや! 他のジュースも美味しいやろ!』

『ちゃんと私はそう思うって言ったから! 個人の感想だから!』

『真美ちゃんの意見はリタちゃんの中でかなり大きいって自覚しなさいw』

 

 そんなことは……ある、かな? 他の人と真美の意見だったら、真美の方を信じるのは間違いないと思う。

 とりあえずジュースを飲む。んー……。ほどよく酸味のある、オレンジの味。みかんもどきとは全然違う。やっぱり美味しい。

 

『くぴくぴ』

『両手で大事そうに握って飲むのかわいい』

『お父さんを待ってる子供かな?』

『あながち間違いじゃないのがなんともw』

 

 ジュースを飲みながら待っていたら、師匠が戻ってきた。私を見て、ジュースを見て、すっと自販機に向かった。

 

『おい師匠w』

『子供を一人にするなよお父さん!』

 

「いや、リタを襲うやつなんていないだろ。いたら同情するよ。襲ったやつに」

「師匠?」

「なんでもありません」

 

 少しぐらい心配してくれてもいいと思う。いや、私も一般人に襲われた程度で結界がどうにかなるとは思わないけど。適当に拘束すると思う。

 師匠が買ったのは、アイスココア。ココア、いいよね。甘くて美味しい。私も好き。

 

「師匠。師匠。一口欲しい」

「はいよ」

「ん」

 

 うん……。甘い。とっても美味しい。

 師匠に返すと、師匠はそれを一気飲みしてゴミ箱に捨てた。私も捨てておこう。

 

『自然なお父さんムーブだ!』

『俺たちに自慢していくスタイルですね分かります』

『殺す』

『殺したいとかじゃなくて殺すなのかよw』

 

「俺なんか悪いことした?」

 

 あまり反応しすぎても仕方ないよ。

 師匠と一緒に歩いて、道路から下の方に下っていく道に向かう。森林の中の道をしばらく歩くと、広い湖が見えてきた。

 

「おー……」

 

 ここが本栖湖。あの大きい山が富士山、かな? 晴れているからよく見える。とてもいい場所だ。

 

「き、きた!」

「うわ、マジで本物が来てる……!」

「絶対ネタだと思ったのに!」

 

 そんな声が周りから聞こえてくる。すでに人も結構多くて、テントもたくさんだ。

 

『さすが大人気のキャンプ場なだけはある』

『普通は当日行っても無理だろうからな、ここ』

『場所ある?』

 

 テントを組み立てる場所、だね。師匠は周囲を軽く見回して、あっちに行くか、と手を引いてきた。そのままついていく。

 

『てくてく』

『何も知らなかったら、仮装した親子だなこれ』

『真夏に黒いローブを着込む剛の者』

 

 暑さ寒さは魔法でどうとでもできるからね。

 空いてるスペースがあったから、そこを使うことにするみたい。あまり迷わずこっちに来たから、あらかじめ場所を聞いていたのかも。

 

「よし! では、リタ!」

「ん?」

「ここをキャンプ地とする!」

「……? うん」

「言ってみたかっただけだ!」

 

『おいwww』

『めちゃくちゃ古いネタだぞw』

 

 何かのネタ、というものらしい。師匠も私に通じるとは思ってなかったみたいで、気にせずアイテムボックスから道具を取り出し始めた。

 

「うわ、何もないところから何か出てきてる……」

「やっば、これネタじゃなくてマジだ、本物だ!」

「お前声かけてこいよ!」

「ばくっとされたらどうするんだよ!」

 

 周りがちょっとうるさい。あとそこの人、話しかけられたからっていきなりばくっとはしないよ。襲われたらばくっとするかもしれないけど。

 師匠が取り出したのは、細長く丸まった何か。なにこれ。

 

「これがテントだ」

「おー……」

「そして問題がある」

「ん?」

「組み立て方が分からない」

「…………」

 

『おいwww』

『くっそwww』

『分からないものを買ってくるなよ馬鹿なんじゃないかお前』

 

「正論すぎて反論できないな!」

 

 いや、反論とかはどうでもいいけど……。これ、どうするの? 私も組み立て方なんて分からないよ。仕組みも分からないから、魔法でどうにかすることもできないし。

 

「どうするの?」

「どうしよう」

「どうしようじゃないよ?」

「ごめんなさい」

 

『ガチ謝罪である』

『お父さん枠かと思ったらそうでもなかったわ』

『たよりないいきもの』

『言い方がひどいw』

 

 でもこれ、本当にどうしよう。誰かに聞いてみるのが一番、かな?

 




壁|w・)なお私は、ここをキャンプ地とする、はリアルタイムで見ていたわけではありません。
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