異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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どこからどう見ても不審者

 ふと、師匠がじっと私を見ていることに気が付いた。そして、次に別の場所を。視線の先には、別のテント。あれを見て、なんとなく組み方を察してみよう、ということかな?

 そう思っていたら、師匠がちょうどいいかとつぶやいて、そっちのテントに向かっていった。

 

「失礼。ちょっといいか?」

 

 そして躊躇なく、そのテントを持ってる人に話しかけた。

 そのテントは、赤くてちょっと大きいテント。椅子に座っているのは、女の人。多分だけど、真美と同い年ぐらいだと思う。その女の人ははい、と顔を上げて、師匠を見て、凍り付いた。

 

「ふ……」

「ふ?」

「不審者だ!」

 

『あーw』

『間違いではないなw』

『いきなり女の子に声をかけるやつがあるか!』

 

 不審者……。うん。確かに、日本で私や師匠みたいな服装の人はほとんどいない。だから不審者と思われてもおかしくない、と思う。

 師匠はと言えば、何とも言えない表情だ。言われて当然とは思ってるみたいで、苦笑い、に近いかも。

 

「師匠。戻ろう」

「うーん……。せっかくならリタと仲良くしてくれたらと思ったんだけどなあ……」

 

『おお……。ちゃんと考えてたのか』

『発想はいいけどう行動はだめだと思う』

『いきなりお前が行くのは女の子も怖いと思うぞ』

 

 黒いローブ、だしね。

 声をかけられた人はスマホを手に持っていて何かをしようとしていた。でも私を見て固まってる。

 

「え、え……」

 

 そうして混乱している間に、テントから別の人が出てきた。こちらも女の人で、かなり慌ててる様子だ。

 

「待て! 世菜、ちょっと待て!」

「あ、部長!」

「その人たち、本物! マジの異世界の人! 生配信中!」

「うえええ!?」

 

『そりゃ驚くわなw』

『自分の醜態が一般公開された気分はどうですかー?』

『やめたれw』

 

 見てる人からだと、リアルで会ってもこの人だと認識できないはずだから大丈夫、だと思うけどね。ちょっとずつ改良してるから、安心安全。だと思う。

 

「え、えっと……。え? 本物なんですか? 本物の、リタちゃんと、師匠さんですか?」

「ん。本物」

「リタの側にカメラ代わりの光球浮かんでるだろ?」

「あ、ほんとだ……」

 

 世菜と呼ばれた人は、それで納得してくれたみたい。安心したように安堵のため息をついた。その後ろのテントから出てきた人もため息をついてる。

 

「それで、えっと……。あたしたちに何か用ですか?」

 

 世菜さんに部長と呼ばれた人が師匠に聞いた。

 

「いや、なんかずいぶんとキャンプに慣れてるみたいだったからさ。テントの組み立て方、教えてほしい」

「く、組み立て方?」

「説明書とかありませんでした?」

「…………」

 

 思わず師匠と顔を見合わせた。説明書。そういえば、日本の道具はちゃんといろいろ詳しく書いてる紙が入ってるんだった。テントにも入っていて当たり前だ。

 師匠が早歩きで見に行って、そしてすぐに戻ってきた。

 

「あったよ」

「ん……」

 

『これは草』

『説明書とか仕様書とかぐらい入ってるわなw』

『誰一人として何も言わなかった視聴者たちよ……』

『お前もだろうがw』

 

 誰かちゃんと言ってほしかった。ちょっと恥ずかしい。不審者扱いまでされた師匠の方が恥ずかしいかもしれないけど。

 なんだかちょっと気まずい沈黙になってる。世菜さんと部長さんも、どうしようかみたいな感じでちらちらお互い見てる。もう組み立て方も分かるみたいだし、戻っても……。

 

「あ、あの!」

「ん?」

「よければ、お手伝いしましょうか?」

 

 そう世菜さんが言ってくれた。

 そんなわけで、みんなで組み立て。世菜さんと部長さん、それにもう一人、テントの中にいた人が出てきて手伝ってくれることになった。お昼寝していたらしい。涼葉(すずは)さんという人。

 

「わあ……。いいテント買ってますね……」

 

 世菜さんがテントを袋から取り出しながらそう言った。

 

「結構大きいやつだな、これ。高かったんじゃないっすか?」

 

 普通に話していいって師匠が言ってから、部長さんはこんな感じになった。ちょっとさばさばした人、と言えばいいのかな? 話しやすくていいと思う。

 

「八万ほどだったかな。正直選び方は分からなかったけど」

「まあそりゃそうっすね。値段が高いからっていいものとは限らないし。あ、リタちゃん、もうちょっと外側に刺してくれ」

「ん」

 

 部長さんが指示を出して、みんなでテントを組み立てていく。そうすると、わりとあっさり組み立てることができた。簡単、だね。私と師匠だけだったら説明書を読みながらでも難しかったかもしれない。

 

「完成!」

「おー……」

 

『マジで結構いいテントやん』

『部長さんの指示だしがうまかったからあっさりやったな』

『もっと右往左往するリタちゃんが見たかったw』

 

 やる気がなくなったらお家に帰りたくなりそうだからそれは困る。

 なんとなくテントは真ん中が尖ってるイメージだったけど、これは台形みたいになってる。結構大きなテントで、私と師匠が二人で寝るなら余裕な広さだ。出入り口部分はオーニングみたいになっていて、雨が降ってもそこで作業ができる。

 天井はメッシュって言えばいいのかな? 空が見えるようになってる。夜は寝転びながら夜空を眺められそうだ。

 あと今はつけてないけど、テント全体を覆う雨よけも付属していた。雨が降ってもかければ大丈夫、というテントみたい。

 

『これ、買おうか悩んでたやつだ。是非感想が欲しい』

 

「広くて楽しそう」

 

『違うそうじゃないw』

 

 何か違ったらしい。そもそもキャンプが初めてだから、あまり期待しないでほしい。

 




壁|w・)世菜さんが最初、スマホで何かをしようとしていますが、当然通報です。
不審者スタイルだからね、仕方ないね!
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