異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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キャンプ効果

 そのまま湖に沿って歩いてみよう。

 聞いていたとおり、すごく人気のキャンプ場みたいで、たくさんのテントがある。車もいっぱい、だね。もうすでに晩ご飯を食べ始めてる人もいたりする。むう……。晩ご飯、食べたくなる。

 

「リタちゃーん!」

 

 呼ばれてそっちを見ると、いろんな人が手を振っていた。いつも通り、ふりふり。女の人たちがきゃあきゃあ言ってるけど、何が楽しいのかよく分からない。

 さらに歩いていく。てくてくと。ん、ちょっといい香りがしてくる……。

 

「おー……」

 

 バーベキューっていうやつかな。大きな網でお肉とか野菜とか載せて焼いてるみたい。じゅうじゅうとお肉の焼けるいい音が聞こえてくる。バーベキューも楽しそう。

 ちょっと見ていたら、お肉を焼いてる人がこっちに気付いた。

 

「わ、リタちゃんだ!」

 

 その場にいた人たちがみんなこっちを見てくる。家族、かな? 男の人と女の人、それに小学生と中学生ぐらいの男の子。

 中学生の人がスマホを取り出して、わあ、と歓声を上げた。

 

「配信、本当に俺たちが映ってる!」

「いやあ……。まさか、こんなことが本当にあるなんてなあ」

 

『くっそ羨ましいんですが』

『嫉妬で狂いそう……!』

 

 そこまでなの?

 ふと、父親らしい人が手招きしてきた。なんだろう? ちょっと近づいてみる。

 

「初めまして。リタちゃん、晩ご飯はまだかな?」

「ん。あとで師匠と一緒にカレーライスを作る」

「あら。いいわね。楽しみね?」

「ん」

 

 母親らしき人がにこやかに言ってきたので頷いた。カレーライス、楽しみ。

 父親が紙皿を取り出すと、ささっとお肉とお野菜を盛り付けて。そしてタレをさっとかけて私に差し出してきた。お箸も一緒。

 

「よければどうぞ。バーベキューもキャンプの醍醐味だからさ」

「いいの?」

「もちろん。まあ、バーベキューの醍醐味は、みんなでわいわい食べること、になるんだけどね」

 

『わかる。みんなでお肉を焼いて取り合ったりしたり』

『じっくり育ててるお肉を横取りされてブチギレたりw』

『そして焼き肉奉行が現れる』

 

 そういうものらしいけど、それは本当に楽しいの? 今日はカレーライスって決めてるからそれはちょっとできないけど、機会があったらやってみたい。

 手を振って、その場から離れる。のんびり歩きながらお肉を食べよう。

 

「もぐもぐ」

 

『歩きながら食べるんじゃありません!』

『好きにすればいいけど、人にぶつからないようにな』

 

 ちゃんと気をつけてる。

 お肉は結構柔らかくて、タレもしっかりかかっていて美味しい。お野菜もちょっと焦げ目がついちゃってるけど、それもまたいい感じ。

 食べ終わったゴミはアイテムボックスへ。ゴミ箱とかはないみたいだから、あとでまとめて燃やそうと思う。

 

 湖にそってしばらく歩く。ずっとテントがいっぱいだ。さっきまで湖の反対側は入り口みたいになってたけど、今はちょっとした森みたいになってる。

 なんだか段差になっていて、そこでもテントが張られていた。いろんな場所でキャンプができるみたいだね。

 そして、そんな段差の上で、一人でキャンプしてる人がいた。なんだかちょっと渋いおじさんだ。椅子に座って、たき火を起こして、何かをやろうとしてる。

 あれは……小さなフライパン? それに、分厚いお肉が側のまな板に置かれてる。調味料とかもあるから、今からあれを焼くのかも。

 そのおじいさんと目が合った。

 

「…………」

「…………」

「…………。見ていくかい?」

「ん」

 

 じゃあ、見学します。

 

『昔のアニメを思い出しましたw』

『あれは食べるか聞いたから!』

『でもあの人、狙ってやったのではなかろうかw』

 

 おじいさんの側に行ってみる。おじいさんはなんだか小さな木の棒みたいな道具で、木の実、なのかな。あと塩とか、そのあたりを砕いて細かくしていっていた。

 

『なんかすごく本格的』

『おいこれ絶対腹が減るやつだろ!』

 

 そうして準備してから、大きなお肉に調味料をかけていく。表にも裏にも横にも、念入りに。

 次はフライパン。しっかりと油をなじませて、お肉を入れた。お肉の焼けるいい音が聞こえてくる。見ているだけで美味しそう。香り付けなのか、香草も入れていた。

 じっくり焼いて、しっかり焼いて。そうしてから、お皿に盛り付け。おじいさんが薄く切ると、ほんのりピンク色をした断面が見えた。

 

『あああああ!』

『いいなあいいなあ!』

『めっちゃ食べたい!』

 

 うん。すごく美味しそう。私もお肉を食べたくなって……。

 おじいさんと目が合った。

 

「食うかい?」

「ん」

 

『ついにやりやがったw』

『やっぱり絶対狙ってるだろw』

 

 よく分からないけど、もらえるものはもらおう。それじゃあ、一口。

 

「ああ、全部持っていくといい」

「え?」

「いや、リタちゃんのために焼いたから。配信見ていたから。俺の分はまた別にある」

「おー……」

 

『こいつ、やはり視聴者……!』

『おのれ有能視聴者! 好き!』

『でも飯テロは許せない!』

 

 どっちなんだよと言いたくなるね。

 遠慮なくもらうことにした。早速一口。

 

「おー……。香ばしくて、スパイスもしっかり効いてる。でもそれ以上に、なんだかすごく美味しい気がする」

「それがキャンプ効果ってやつさ」

「キャンプ効果……!」

 

『物は言い様だなw』

『でもあながち間違いでもない。外のご飯は不思議と美味しいもの』

 

 確かに、味付けはあれだけでただ焼いただけに見えたのに、すごく美味しく感じる。不思議。

 おじいさんにご飯ももらって、お肉でご飯を食べる。んー……。美味しい。幸せ。

 

「ははは。そんなに美味しそうに食べてくれると、作ったかいがあるよ」

「もぐもぐ。そう?」

「ああ。でも食べ過ぎには注意だ。この後はカレーライスだろう?」

「大丈夫。いっぱい食べる」

「ははははは」

 

 私が食べている間、おじいさんはずっと笑顔で私を見つめていた。なんなんだろうね。

 

『孫ぐらいに年が離れてるからな』

『年を取るとね、小さい子が美味しそうに食べてるのを見てるとほっこりするんだよ』

『とても分かる』

 

 私はよく分からない。美味しいものはやっぱりちゃんと食べたいから。

 最後におじいさんと写真を撮って、その場から離れた。それじゃあ、次は湖がよく見える場所に行ってみようかな。

 




壁|w・)キャンプで焼いたお肉にある謎の魅力……。
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