異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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たき火とお肉

 それじゃあ、師匠と食べよう。師匠に渡すと、へえ、と少し珍しそうにしていた。初めて食べるのかな。

 

「食べたことないの?」

「ないな。というか、リタ。日本人だからって日本を隅々まで知ってるってわけじゃないからな?」

「師匠ならあっちこっち行ってそうだった」

「まだ仕事すらしてなかったからなあ」

 

 お金がなかった、ということかな? 今なら転移でどこでも行けるね。寒くなったら師匠と温泉に行きたい。それも楽しみ。

 でも今は、信玄餅。あの女の子に教わったやり方で食べて……。

 

「師匠、なにやってるの?」

「信玄餅を食べようとしてる」

「どうしてひっくり返すの……?」

 

 師匠は信玄餅をテーブルに置いて、そこで包みをほどいてビニールに全部出していた。お餅を出して、黒蜜をかけてる。

 どうやって食べるのかなと思って見ていたら、包みをまた手のひらに置いて軽く握り始めた。もみもみしてる。

 

「信玄餅と言えばこの食べ方と思ってた」

 

『お前絶対アニメの影響だろそれ』

『あのアニメで信玄餅の食べ方を学びました』

『わかるw』

 

 えっと……。ああ、思い出した。そんなシーンがあったはずだ。じゃあ、私も真似してみよう。もみもみ。

 そうしてから開いて、食べてみる。うん。これもしっかり混ざっていて、美味しい。本当にいろんな食べ方があるんだね。他にもありそう。

 師匠と二人でいくつか信玄餅を食べてから、ご飯は終わり。とっても美味しかった。世菜さんたちも自分たちのテントに戻っていったから、師匠と二人きりだ。

 

「日も沈んできたな」

「ん」

 

 辺りはちょっと薄暗くなってきてる。もうすぐ夜、だね。

 師匠がアイテムボックスからランタンを取り出した。キャンプの道具かなと思ったら、私の家にもあるものだ。確か、昔の守護者が作ったもののはず。

 

『オイルランタンかな?』

『キャンプランタン、いいよね。特にちゃんと火が出るやつ』

『LEDランタンも悪くはないけど、雰囲気はやっぱりオイルランタンとかの方が好き』

 

 オイルランタン。油とかを使って火を出すもの、かな?

 でもこれはそういうものじゃない。私たちにとってはとても便利で、日本の人だと絶対に使えないもの。

 師匠がパチンと指を鳴らすと、ランタンの中に火が灯った。

 

『は?』

『おいこらコウタなんだそれ』

 

「あっち側のランタンだよ。ちなみにこれは俺が魔法で灯したけど、あっちには灯すこともできる魔道具あるぞ」

「そうなの?」

「ああ。明かりの魔道具は結構流通してるぞ」

 

 そういえば、宿とかにもあったと思う。

 師匠はランタンをテーブルに置くと、よし、と頷いて、

 

「たき火やるぞ!」

「おー」

 

 そういうことになった。

 

『たき火だー!』

『やっぱりキャンプと言えばたき火だよね』

『旅慣れた師匠だ、きっとしっかりとしたやり方が……』

 

「よしリタ。適当に枝を集めてこい。長さ太さとかどうでもいいから適当に山にしてしまえ」

「ん」

 

『ちょ』

『そういえば魔法でむりやりつけるとかなんとか……』

『手抜きだー!』

 

「やかましい! 便利なものは使わなくてどうする!」

「師匠、不便を楽しむって……」

「それはそれ、これはこれだ!」

「ん……」

 

 師匠がいいならそれでいいけど。私も詳しいやり方は知らないから。

 それじゃあ枝を探してきて……と思ったけど、師匠はそれすら面倒になってしまったみたい。転移でちょっとどこかに行ったかと思ったら、大きな薪の束を二束持ってきた。どこかで売ってるらしくて、買ってきたらしい。

 というわけで、その薪を適当に積んでいく。ある程度積んだところで、魔法で燃やす。するとしっかりと燃え始めてくれた。ぱちぱちと、特有の音。この音、結構好き。

 

『魔法で燃やしてもちゃんとたき火の音はするんだな』

『たき火ってなんでこんなに落ち着くんだろうな』

『この明かりと音だけでなんか眠たくなってくる……』

 

 これでたき火は完成。いい明かりになった気がする。あとはのんびりと……。

 

「師匠、なにそれ」

「肉」

「肉」

 

 またアイテムボックスから何かを取り出した。串と、お肉。このお肉もキャンプ場の他の人からもらったものらしい。本当に、すごくたくさんもらってたみたい。

 お肉を串にしっかり刺して、たき火に近づける。これで本当に焼けるのかな?

 

『なんか、素人が適当にやってる感じが出てるw』

『大丈夫か、生焼けにならないか』

 

「魔法でどうとでもなるさ」

 

『ずるいw』

 

 ただ、やっぱり時間はかかるみたい。のんびり椅子に座って本を読みながら待つことにした。

 この椅子、とてもいい。座る部分も背もたれも柔らかいけど、こういうのも悪くないと思う。のんびりできそう。

 そうして本を読んでいたら、焼き終わったみたいで師匠が串焼き肉を渡してきた。

 

「ほら」

「ん。ありがと」

 

 とっても大きな串焼き肉。魔法使いじゃなかったら、この一本でお腹いっぱいになってしまうかも。

 

『すごくワイルド』

『でも美味しそう』

 

 味は……うん。ちょっと焦げちゃってるけど、悪くない。焼いている間に味付けとかしていたのか、ちょっとお醤油みたいな、それに近い味がする。美味しい。

 もぐもぐ食べていたら、また師匠がアイテムボックスから何かを取り出していた。師匠、さっきからいろいろ出しすぎじゃない?

 

『これ、師匠さんの方が楽しんでるんじゃないか?』

『楽しめないよりはいいはず!』

 

 それはそう。せっかく師匠も来てるんだから、師匠にも楽しんでもらいたい。

 




壁|w・)たき火のあの音は魅惑的。
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