異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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焼きマシュマロ

 師匠が取り出したのは、マシュマロだ。視聴者さんから送られてきたお菓子で食べたことがある。甘くて、柔らかいお菓子。美味しいよね、マシュマロ。

 おやつかな? そう思って見ていたら、竹串をマシュマロに刺し始めた。

 

「何やってるの?」

「え? キャンプと言えばこれだぞ」

「そうなの……?」

 

『そうだぞ』

『いや好みはあるだろうけどw』

『俺も毎回やるかなあ、焼きマシュマロ』

 

 マシュマロって焼くものなんだ。

 たき火から少し離れた場所でマシュマロを固定させる。少しずつ回していって、綺麗な焦げ目がついたら完成、らしい。ほら、と師匠に渡された。

 綺麗な焦げ目。見た目は美味しそうだね。それじゃあ、いただきます。

 

「んー……。ふわふわしてる」

 

 外はカリっとしていて、中はとってもやわらかい。とろっとしてるって言えばいいのかな? 普通のマシュマロとは違う食感で、これは悪くないと思う。むしろ美味しい。

 マシュマロにこんな食べ方があったんだ……。視聴者さんも教えてくれたらいいのに。

 

「ついでに、これだ」

 

 次に渡されたのは、小さめのクッキー。二枚のクッキーで挟んで食べると、また美味しいらしい。

 じゃあ、早速……。

 

「おー……。これも、美味しい。サクサクのクッキーの食感とふわふわマシュマロがちょうどいい感じ。美味しい」

「だろ?」

 

 にっと師匠が笑って、そして言った。

 

「まあ俺は食べたことなかったんだけどな!」

「え」

 

『だと思ったよ』

『だってこいつ、キャンプ初めてだからなw』

『家のコンロでもできるはずだけど、こいつがやったとは思えないし』

 

 師匠も今回初めて食べるらしい。そうして、食べて、なるほどと頷いた。

 

「意外と美味いなこれ」

「意外と……?」

「気にしてはいけない」

「ん」

 

 別にいいんだけどね。ただ、勧めてくるくらいだから、食べたことがあると思ってただけで。

 結構たくさんのマシュマロを持ち込んでいたみたいで、マシュマロもたくさん食べた。

 

『これ、いつもと大差ない生活では?』

『シーッ』

『思ったけど言うなw』

 

 いつもと大差ない……。そんなことは……ある、かもしれない。マシュマロを焼くのも、お家でできたことだと思う。

 でも。私は、結構楽しいよ。

 たっぷり食べて、あとはのんびり。日もすっかり沈んで、辺りは真っ暗……には、なってない。いろんな人が明かりをつけてるから、周辺は結構明るく感じる。

 それでもやっぱり、お日様が出てる時よりは暗いけど。

 椅子に座って、のんびりと。師匠がテーブルの上に置いたスマホから音楽が流れてくる。師匠が知ってる歌、らしい。周りの迷惑にならないように、音量は抑えめで。

 なんだか……すごく贅沢な時間の使い方のような気がする。気がするだけかもしれないけど。

 

『ええなあ、やっぱキャンプはこうでないと』

『都会の喧噪から逃れて、ゆっくりとした時間を過ごす、これぞキャンプ』

『老人みたいな発想してないか?w』

 

 それはちょっと失礼だと思う。私もこういうのは好きだよ。

 そうして、本を読んだり、夜空の星を眺めたり、目の前の湖を見ていたり……。ゆったりとした時間を楽しんでいたんだけど、なんだか急に騒がしくなってきた。

 

「ん……?」

「あ?」

 

 私と師匠がそっちを見る。大音量で音楽を流して騒ぐ集団があった。ちょっと離れてるけど、それでもこっちにはっきりと聞こえてくるぐらいの音。

 それぐらい大きい音だから、あそこに近い人たちはすごく迷惑してるんじゃないかな。

 

「なにあれ」

 

『なんかうるさいなあ』

『リタちゃんがのんびりしてるのをのんびり眺めながらにやにやしてるところなのに』

『さらっとやばいことを言うなw』

『多分迷惑客ってやつだろうな』

『迷惑なやつっていうのはどこにでもいるものだからさ』

 

 やっぱりみんなにとっても迷惑、なんだね。

 んー……。どうしよう。せっかくゆっくり本を読んでたのに、あれはちょっとうるさいなあ……。音を遮断する結界でも張っておこうかな。

 魔法を使おうとして、ちょっとだけ、目に入ってしまった。

 側のテント。世菜さんたちのテントで、三人とも迷惑そうにそっちを見てる。そして世菜さんたちが、迷惑客の方へと向かい始めた。

 

『え』

『ちょっと待ってあれまずいんじゃない?』

『無謀にもほどがあるだろ放置した方がいいのに』

 

 多分、だけど……。普段なら、迷惑に思いながらも無視するんだと思う。でも今回は、注意しようと思ったみたい。理由は多分、私だ。

 一瞬だけ、ちらっと。三人とも、こっちを見てたから。

 助けを求めてたわけじゃない。だって本当にちょっとだけ見られただけだから。

 私に気を遣ってくれたのかな? 気にしなくてもいいのにね。

 うん……。そろっと、後をついていこう。何かあったら嫌だから。

 

「師匠」

「殺さなければ好きにしていいぞ」

「ん」

 

『師匠さん!?』

『あ、これ、シッショもちょっとイラッとしていたやつかw』

『ほどほどになリタちゃん!』

 

 ほどほどに気をつけるよ。

 




壁|w・)人様に迷惑をかけるのはやめましょう……!
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