異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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うるさい人たち

 姿を消して、三人の後ろに転移してついていく。三人はやっぱり、まっすぐに迷惑客の方へと向かってる。ちょっとだけ怯えの色もあるけど……。それでも、意志の強い目だ。すごい。

 そうして、世菜さんたちは迷惑客のグループの側まで来た。ここまで来ると本当にうるさい。周りの人もすごく迷惑そう。ゴミも散乱してるし……。ひどい。

 

『こういうやつがいるから、キャンプ場の人の仕事が増えるんだぞ』

『マジでクソだよね』

『殴りたい、あの笑顔』

 

 私も殴りたい、あの笑顔。

 ふと周りを見たら、何人かがスマホを持ってきょろきょろしてる。多分、私の配信を見てるのかも。それで私の姿を探してる、とかかな? こっちに視線を向けるタイミングもあったから。私の姿は見つけられなかったみたいで、すぐに視線が逸れたけど。

 そして、部長さんが言った。

 

「おい! おまえら!」

「あん?」

「ぴぃ……」

 

『部長さんwww』

『萎縮するのが早すぎるw』

『隣の子がマジかよこいつみたいな顔で見てるのがまたw』

 

 口論してほしいわけじゃないけど、ちょっと早かったね。でも部長さんたちは何か武道とかを習っているわけでもないみたいだし、仕方ないと思う。

 部長さんの代わりに、世菜さんが言った。

 

「と、とてもうるさい、ので! やめてください!」

「そ、そうだそうだ! 今は異世界の人も来てるんだからな!」

 

 あ、部長さんが復活した。二人で文句を言ってくれてる。もう一人はじっと静かに睨み付けていて、それが逆に怖いかもしれない。

 でも迷惑客さんは舌打ちしただけだった。ぞろぞろと、人が集まってくる。金髪の人とか入れ墨が入った人とか、十人ぐらい。

 

「おいおいどうしたよ」

「なにその子ら。うるさいわね」

 

 男の人も女の人もいる。みんな、お酒を飲んでるみたい。

 

「うるさいのはお前らだろ!」

 

 部長さんが叫ぶと、一番前にいた迷惑客がじろりと部長さんを睨んだ。

 

「うるせえよ。それに何が異世界だよ。あれを信じてるとか、頭おかしいんじゃねえの?」

「異世界の魔女だっけ。馬鹿らしいよな。で、言いたいことはそれだけなわけ?」

 

 十人が、世菜さんたちを取り囲んでいく。んー……。そろそろ、だめ、だよね。世菜さんたちも怯え始めてしまった。そろそろ助けてあげないと。

 

「でもお前ら、結構かわいいじゃん? 一緒に遊ばない?」

「お前冗談だろロリコンかよ!」

「うるせえなかわいけりゃいいんだよ!」

 

『これは最低なクズ野郎』

『リタちゃん気楽にやっていいぞ殺さなければOKだ』

 

 私も、ちょっと不愉快、かな。

 

「だいたい異世界人なんているわけないのに、バカばっかだよなあ」

「いるなら見せてくれよほらはやく!」

 

「ん。来たよ」

 

「は? ……ぶっ」

 

 とりあえず、風で無理矢理押さえつけてみた。地面に顔がめり込んでちょっとおもしろいかもしれない。

 

「眠いの? 大丈夫?」

 

 拾ってきた枝でつんつんしてみる。頭をつんつん。

 

『めちゃくちゃ煽ってるw』

『これはいい煽りw』

『いいぞもっとやれ!』

 

 過激だなあ。やるけど。

 

「り、リタちゃん!?」

「いたの!?」

「いたよ」

 

 姿は消していたけど、ちゃんと側にいたよ。それよりも、こっちだ。

 顔が見れないから、手で無理矢理顔を横向きにしてみる。ぐえ、みたいな声が聞こえたけど、きっと気のせいだと思う。

 

「お、おま、え……」

「ん。魔女のリタ。よろしく、うるさい人」

 

 枝でほっぺたをつんつんする。いつかの王子みたいにあまり鳴いてくれない。ちょっとつまらない。口を閉じて私を睨み付けてる。

 そうしてしばらくつんつんしていたら、男が叫んだ。

 

「こんなこと……していいと……思ってんのか……! 殺すぞ!」

「分かった。殺されたくないし、殺すね」

「え」

 

 ばくっとしよう。ゆっくりと、影から口を出していく。迷惑客たちの影から、影の口がずるずると出てきて、迷惑客たちを食べるために閉じようとし始める。ばくっと、いこう。

 

「え、な、なにこれ!? うそまって! なにこれ!」

 

 今度は女の人がそう叫んだ。

 

「私の魔法。ばくっとする」

「どうなるの!?」

「死ぬ」

「ヒッ……」

 

『とても冷静に端的に死ぬって言われるのってこんなに怖いんだなって』

『脅す意図もなくガチで言ってるのが分かるから怖い』

『ぶっちゃけリタちゃんはマジでやりかねないと思ってる』

 

 ちょっと失礼だと思う。否定は……しておきたいところ。

 さて。

 

「でも、うん。法律は大事。この国で遊ぶ以上、この国の法律には従わないといけないと思う」

 

 男がにやりと笑った。大丈夫、希望はないよ。

 

「だから……。はい」

「は……、うぎああああ!?」

 

 男が叫び始めた。のたうち始めてる。蛇みたいだね。

 

「大丈夫。安心してほしい。痛いだけだから」

「あ、安心できないわよ!」

「なにやったんだテメエ!」

「激痛を感じてるだけ。大丈夫。死んだりはしないよ」

 

 でも。

 

「痛すぎて、おかしくなることはあるかも?」

「…………」

 

 迷惑客たちが絶句してしまった。世菜さんたちもかなり引いてしまったのが分かる。やりすぎ、かな? でも迷惑なのはだめだと思う。

 

「どうせうるさくするなら一緒でしょ? だから、全員、やろう」

 

 私がそう言うと、迷惑客たちが一斉に謝り始めた。もうしない、だから許してほしい、絶対に今後二度とやらないから、なんて言ってくる。

 世菜さんたちを振り返ると、三人も何度も頷いていた。もういいみたい。じゃあ、これで終わり。

 魔法を解除すると、男の人の叫び声も途切れた。でも気を失ったみたいで、ぐったりとしてる。静かになって一安心だ。

 

「本当に、二度とやらないでね」

「わ、わかった」

 

 迷惑客たちが一人ずつ立ち上がって、静かにそろそろと戻っていく。男の人を引っ張って、テントに入れて、そして全員テントに入ってしまった。もう寝るみたい。

 

「これで一安心」

 

 何故か世菜さんたちの表情は引きつっていた。不思議だね。

 




壁|w・)ちゃんと生きてるからヨシッ!
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