異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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精霊様とアルティ

 首を傾げるアルティの手を握って、その場から転移。転移先はもちろん世界樹の前。

 アルティは目の前の大きな世界樹を見て、口をあんぐりと明けた。

 

「り、リタ。ここって、まさか……」

「ん。世界樹」

「せ、かい、じゅ……」

「今から精霊様……世界樹の精霊と会う」

「心の準備をさせてほしかった……!」

 

『草』

『これアリシアさんの時も言われてませんでしたかね?w』

『リタちゃんの顔が、あ、とか言い出しそうな顔になってるw』

 

 うん。ちょっとやってしまった。アリシアさんの時も心の準備が欲しかったって言われてる。私にとっては優しい精霊様でしかないから、あまり気にならなかった。反省しないと。

 そう思っている間に、目の前に精霊様が現れた。

 

「あ……」

 

 アルティの呆然としたような声。精霊様は静かにアルティを見据えてる。ハイエルフが相手だから、やっぱり冷たい目だ。笑顔もなく、じっとアルティを見据えてる。

 

『ヒェッ』

『やっぱりだめか!? だめなかやつなんか!?』

 

 アルティはつばを飲み込んで、その場で膝をついた。

 

「は、初めまして……。アルティ・エルフィネスト……です。そ、その……。リタの、双子の……えっと……どっちかは、分からないんですけど……」

 

 うん。すごく緊張してるのが分かる。これは、あれだね。やらかしたってやつだね。あとで謝っておこう。

 アルティの挨拶を聞いた精霊様は、そっと右手を出して。

 アルティの頭を撫でた。

 

「え?」

「ようこそ、アルティ。リタの双子の片割れだと聞いています。歓迎しましょう」

「あ、ありがとうございます……!」

 

『許された!』

『めちゃくちゃ目が怖かったからだめだと思ったぞ!』

 

 私もまた精霊様を止めないといけないかなと思ってたから、一安心だ。

 精霊様はコメントが聞こえているのか、ぼそりとつぶやいた。

 

「リタに嫌われたくないですし……。アリシアであれですよ? アルティだと嫌いになるとかじゃなくて、嫌いになった、になりそうですし……」

 

『精霊様www』

『これが世界を管理する精霊の姿です』

『気持ちは分かるけどw』

 

 さすがに精霊様を嫌いになったりはしないよ。まあ……。

 

「その時は十年は口をきかないようにしただけ」

「…………」

 

『精霊様のお顔がwww』

『恐怖からの安心がよく分かるw』

 

 冗談だから本気にしないでほしい。

 アルティはぽかんと呆けてる。コメントなんて聞こえてないから仕方ない。アルティからすると、精霊様が何かつぶやいたかと思ったら表情がころころ変わったように見えただろうから。

 こほん、と精霊様は咳払いをして、アルティに向き直った。

 

「シルフから報告を受けています。エルフの里を変えようとがんばっているとか。素晴らしいことです」

「い、いえ……! 当然のこと、です! また、双子だからって同じようなことが起きることがないようにしたいので……!」

「ふふ……。それに、挨拶にもちゃんと来ました」

「遅くなって申し訳ないです……!」

「リタ。この子かなり私に怯えていませんか?」

「ん……」

 

『ガチビビリしてますね』

『精霊様の言葉が全て脅しとか嫌みとかに聞こえてそう』

 

 それはあるかもしれない。いつの間にかアルティは顔を下に向けてぷるぷる震えてるし。アリシアさんよりも怖がってるように見える。精霊様もちょっと困り顔だ。

 

「アルティ。私はあなたの味方ですよ」

「は、はい……!」

「ふむ……。では、証を示しておきましょう」

 

 え、とアルティが顔を上げた時には、すでに精霊様はいなかった。どこかに転移していったみたい。精霊様はこの世界のどこにでも行けるから、もしかしたらエルフの里に行ったのかも?

 アルティが困惑している間に、精霊様が戻ってきた。

 

「戻りました」

「おかえり、精霊様。なにしに行ってたの?」

「ハイエルフたちに神託を。アルティの手助けをするように、邪魔をしないように、あまりにひどい場合は存在を抹消しますとも」

「うわあ……」

 

『うわあ……』

『リタちゃんと視聴者の感想が一致した瞬間である』

『これはひどいw』

『なにやってんのこの精霊様?』

『この世界にとっての神様からの直々の脅迫である』

 

 大騒ぎになってそうだけど……。私が気にすることじゃない、よね。アルティの頬がおもいっきり引きつってるけど、私は関係ないから気にしない。

 

「アルティ。帰ったらきっととってもやりやすくなってると思う」

「う、うん……」

「ああ、あと。アルティは今は精霊の森に滞在しているとも伝えておきました。ゆっくりしていって大丈夫ですよ」

 

『つまりアルティちゃんを大事にしてると示したわけですね』

『つまりアルティ以外はどうでもいいと分からせたわけですね』

『この精霊様、わりと鬼畜である』

 

「なんでですか!?」

 

 反応したくなるのは分かるけど、アルティが目を点にしてるから我慢してほしい。

 こほん、とまた咳払い。気を取り直して。

 

「ゆっくりしていくといいでしょう。リタ、この後はどうしますか?」

「アルティを日本に連れて行きたい」

「…………。はい?」

「アルティを日本に連れて行く」

「いえ聞き返したわけじゃなくてですね……。しれっと確定にしてはいけません」

「えー」

 

『やんちゃリタちゃん』

『ていうか待って、マジで日本に連れて行くの?』

『ついにリタちゃん以外に世界を渡る人が……!』

『いや真美ちゃんも拉致られてたやろ』

『そういえばそうだったw』

 

 拉致なんかしていない。失礼な言い方はやめてほしい。

 




壁|w・)お菓子もあげたしね! 日本に連れて行くぐらい同じだよね!
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