異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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つけ麺

 キッチンの方から真美が何か料理している音が聞こえてくる。何かを茹でる音とか、いろいろ。何が出てくるのか楽しみだ。

 

「リタ。機嫌がよさそうだね……」

「ん」

 

『鼻歌を歌い出しそう』

『真美ちゃんのご飯は例外なくリタちゃんの好みをついてくるから……』

『信頼がなせる技』

『ハードル上げまくっていて草なんだ』

 

 待っている間は、アニメでも見ようかな。アルティもいるし、アニメ映画ぐらいがちょうどいいかも。えっと、確かこのリモコンで、こうやって、こう……。

 

「あの、リタ、この世界について教えてほしいなって……」

「異世界」

「それ以外の情報は!?」

「だめ。精霊様に怒られる」

「私どんな世界に連れてこられてるの!?」

 

『間違ってないんだけど言い方がw』

『完全にやばい世界と思われてそうw』

『まあ明らかにあっちの世界にはないやばそうなものがいっぱいあるからな』

『テレビも異世界の人からすれば十分あり得なくてやばそうなものっぽいし』

 

 遠くの映像を不特定多数が見れるって、本当にすごいことだと思うよ。

 とりあえず、アニメ映画を再生。アルティは不思議そうにその映像を眺めていたけど、すぐに食いつくように見始めた。

 空に浮かぶ城に探検に行くアニメ、だね。結構古いアニメらしいけど、今でもすごく人気らしい。私もおもしろいと思う。

 

『例の言葉で掲示板が落ちた伝説があるアニメ』

『あったなあ、そんなことw』

『そういえば、リタちゃんの世界に空を飛ぶ城ってないの?』

 

「知らない。調べてもないし」

 

 作れないことはないだろうけど、動力を用意するのが大変だと思うから多分ない。私なら作れるから……一度、作ってみても楽しいかも?

 そうしてアニメ映画を見ていたら、ご飯ができたみたい。真美がお盆に載せて持ってきた。

 

「はい。お待たせ」

「ありがとう。おうどん?」

「ちょっと違うかな。つけ麺っていうの。このつけ汁に麺を入れながら食べるんだよ」

「おー……」

 

 ざるうどんに近い、かな? ざるうどんとはつけるものが全然違うみたいだけど。ちょっととろっとしてるみたい。

 アニメに夢中になってるアルティも呼んで、ご飯。アニメを気にしていたから、ちょっと停止しておく。ちゃんとあとで続きを見よう。

 それじゃあ、いただきます。

 

「えっと……どうやって食べるんですか……?」

「あ、ごめん! リタちゃんが普通にお箸を使うから忘れてた……!」

 

『リタちゃんは間違いなくコウタに仕込まれてるからな』

『お箸のみで食べるのは日本独自の文化だから』

『異世界にもさすがにないわなw』

 

 アルティはフォークで食べることになったみたい。ちょっと食べにくそうだけど、頑張ってほしい。

 私も早速食べてみる。お箸で麺をたっぷり取って、つけ汁によく浸す。そうして、ずるずるとすすった。

 

「おー……」

 

 ざるうどんとは全然違う。おうどんはもちろん美味しいんだけど、つけ汁の違いがすごい。すごくとろっとした濃厚な味だ。多分お魚とかそっちの材料だと思う。

 

「どうかな。一応リタちゃん好みに調整したけど」

「美味しい」

「よかった」

 

『なんか今さらっとまたとんでもないこと言わなかった?』

『つけ汁そのものは市販かなんかなんだろうけど、それを調整とか正気の沙汰か?』

『これが……料理だけでリタちゃんの心を掴んだ女か……!』

 

「言い方がひどくない?」

 

 真美の言葉にアルティが首を傾げる。なんでもないよ、と真美が手を振った。

 アルティには配信のことはまだ伝えてない。だからコメントが聞こえるのは、私と真美だけ。ちゃんとそういう風にしておいた。

 つけ麺、すごく美味しい。つけ汁がとろっとしてるから、麺にしっかりと絡まって味を楽しめる。つけ汁にはお肉とかも入っていて、それを一緒に食べるのもまた良しだ。

 うん……。とても美味しかった。残ったつけ汁は……もったいないから、飲み干そうかな?

 そう思ってつけ汁のお椀を持ったところで、真美からストップがかかった。

 

「ちょっと待ってね」

 

 真美がキッチンに入る。そして戻ってきた時に手に持っていたのは、白いご飯の入ったお椀。そのご飯を、つけ汁のお椀に入れてしまった。

 

「はい。しっかり混ぜて食べてね」

「ん」

 

『はああああ!?』

『それ絶対に美味しいやつやん!』

『つけ麺のシメはやっぱりこれだよこれ』

 

 そういうもの、なのかな? スプーンも渡してもらったから、それでしっかりと混ぜて口に運んだ。

 

「おー……!」

 

 すごい。ちゃんと白いご飯にも合う。白いご飯にもしっかりとつけ汁が絡まるし、こっちはそのままかき込むこともできる。すごくすごく美味しい。

 つけ汁を飲むだけだったら、ここまでにはならないと思う。白いご飯と絡ませることで、つけ汁もしっかりと味わうことができる。濃いめの味もほどよくなって、これはとてもいい組み合わせだ。

 

「んふー」

 

 とっても、とっても美味しい。

 

『んふー入りました』

『ちょっと出前でつけ麺注文してくるわ』

『手遅れだよ(絶望)』

『いやさすがにそんなわけwww あったわ……』

 

 みんな頼んだみたい。つけ麺、美味しいからおすすめだ。

 アルティも夢中で食べていたみたいで、あっという間に完食してご飯をもらっていた。こっちも幸せそうに食べてる。連れてきてあげてよかった、かな。

 

「アルティ、でいいよね? どうだったかな?」

「すごく美味しかったです……!」

「あはは。よかった。晩ご飯も期待しておいてね」

 

 そう言って、真美は食器を片付けに向かった。かなり足取りが軽そうに見える。すごく機嫌が良さそうだ。

 

『そりゃまあ、あんなに美味しいって言ってもらえたら嬉しいだろうから』

『俺も……料理を作って美味しいって言ってもらいたい……!』

 

 それは……うん。なんとなく分かる、かな?

 

「こんなに美味しいものがあるなんて思わなかった……」

「エルフの森のご飯はちょっとあれだからね」

「あれ……」

 

『あれ言うなw』

『素材の味を生かしたとてもいいご飯じゃないか!』

『そうそう、果物に肉とかな』

『うん……。主食が欲しい』

 

 やっぱりお米が欲しい。パンでもいい。どっちでもいいから何か欲しいと思う。エルフはそれだけで十分生きていけるはずではあるんだけど、食べていて物足りないから。

 

「食べ物はちょっとリタが羨ましいかも」

「スランドイルたちから離れられたから私は恵まれてる方だって思うよ」

「あはは……。あの人たちも、私にとってはいい両親だったんだよ……? この間のことで見損なったけど」

 

 曲がりなりにもエルフの王様をずっとしていたということは、それだけ優秀だったということでもあると思う。その点は認めていいとは思うよ。

 それでも、私は嫌いだけどね。もう二度と会いたくもない。

 

「まだ時間はいっぱいあるから、テレビを見ていて大丈夫だと思う」

「う、うん……。晩ご飯も美味しいんだよね?」

「私は一番好き」

「そっか……。楽しみだなあ」

「ん。楽しみにしていていいよ。期待は絶対に裏切らないから」

 

『ハードルが際限なく上がってないこれ!?』

『推定真美さん、ハードルの高さにびびる』

『しかも悪意一切なしなのがある意味たちが悪いw』

 

 真美のカツカレーは世界一美味しいからね。私は何も心配してないよ。

 あとは晩ご飯の時間を待つだけ。アルティと一緒に映画を見ながらのんびり待とう。

 




壁|w・)真美とアルティの会話には気を利かせた精霊様が翻訳をかけています。
そのうち触れるかもしれませんが、突っ込まれる前にここで書いておきます……。

つけ麺の余ったつけ汁にご飯をぶち込むのが大好きです。
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