異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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異世界魔女コーナー

「み、見て! 本当にリタちゃん!」

「すごい本物だ!」

「ちっこくてかわいい!」

 

 ちっこい言うな。ちっこいけど。

 私を題材にしたコーナーらしい。カレーの人はともかく、ここの人は物好きの集まりなのかな。私の本なんてものも作ってるみたいだし……。

 

『おれ、参加者。リタちゃんが目の前でどきどきしてる』

『テメエ羨ましいぞこの野郎!』

『俺も……リタちゃんの本を作っておけば……』

『でもこれ、肖像権とかなんとかやばいのでは?』

『それはそう』

『だからナマモノはだめだってあれほど』

 

 何がだめなんだろう。ちょっと気になる。そっと一つのテーブルに近づいて、さっと本を取ってみた。テーブルの奥側にいた人が、あ、と驚いているけど、気にせず開く。

 

「り、リタのコーナー……! リタの同人誌! マジかよ腹痛い……しぬ……!」

「シッショめちゃくちゃ爆笑してるじゃん……」

「あれが親の姿か……?」

 

 師匠のことは気にしなくていいよ。

 この本は、写真集みたいなものになってる。配信の切り抜きみたいな感じで……。えっと。私が、ご飯を食べてる写真がいっぱい。

 表紙を見てみる。異世界魔女のグルメ記録、だって。

 

「…………」

「…………」

 

『無言のリタちゃんと参加者さん』

『なんだこの謎の緊迫感』

『俺まで緊張してきた……』

 

 いや、うん。別にこれぐらいで怒ったりはしないよ。むしろ私も買っておこう。私は写真とかはほとんど撮ってないから、いずれ昔を思い出す時とかこういうのがあったら便利かも。

 

「一冊ください」

「ぶふ……リタが……リタが自分の本を買ってる……! い、息が……!」

「そろそろ真面目に本気で怒るよ、師匠」

「すみませんでした」

 

 すっと真顔になった。それでも口元がひくひくしてるけど……。それぐらいなら、まあ、うん。

 

「あの……本当に買うの?」

「ん。私は写真とか残してないから、ちょうどいい」

「な、なるほど……! で、ではどうぞ! お金はいいですもらえないです絶対にいらないです!」

 

 いくらか聞こうとしたらなんだか全力で拒否されてしまった。本を作るのは高いって聞いたから、気にしなくてもいいのに。肖像権? とかいうのも私は今更だし、むしろ本を作る手間とか考えたら……。まあ、いいけど。

 本をアイテムボックスに入れて、と。あとは他の本は……。

 

「待ってリタちゃん自身に検閲されるとか聞いてないんだけど」

「あかんて。俺の本はマジであかんて。卑猥なものじゃないけど、ちょっとあかんて」

「リタちゃんとアルティちゃんのいちゃいちゃを描いちゃったのに!」

「オリ主とリタちゃんが仲良くする話書いちゃった……」

 

『こいつらwww』

『だからナマモノは以下略』

『公開処刑か何かかな?』

『これ首相さんとかリタちゃんと接している人の胃が死んでそうw』

 

 何も気にしなくていいよ。どんな内容でも私は気にしない。むしろどんなことを書いているのか興味があるぐらい。

 師匠もいつの間にかそろっと他の人の本を見始めてる。しかも、みんな私の方を見ていることを利用して、さりげなく気配を消してる。何やってるのかな。

 私も他のものを見てみよう。本以外にもある。えっと……。

 

「異世界魔女なりきりセット……」

「リタちゃんのコスプレ衣装をサイズごとに用意してみました! 各サイズ限定三着です!」

 

『マジかよ欲しい』

『ていうかなんでこんな堂々と説明してるんだこの人w』

『リタちゃんの目が正気を疑うものになってるぞw』

 

 いや、うん……。私も日本に来始めた頃にコスプレというのは見ているから、そういうのがあるというのは分かるんだけど……。服を売るんだ……。そういうのもあるんだね……。杖まであるし。

 

『あの、リタちゃん。真美です。ちいが、欲しいって……』

「…………」

 

『草』

『さすがにリタちゃんも反応に困ってるwww』

『でもちいちゃんの気持ちも分かるw』

『ちなみに私も欲しいなって』

『真美さんwww』

 

 えっと……。うん……。売ってる人が、手元のスマホで配信を見ていたみたいで、にやにやしながら梱包し始めた。大きな袋に入れて渡してくる。なんだかとっても素敵な笑顔だ。恥ずかしいのでやめてほしい。

 

「はい、どうぞ。ちなみにお金はいいので、配信でリタちゃん三人並んでほしいな! 並べ!」

「あ、はい……」

 

『リタちゃんが圧に屈した瞬間である』

『理解できない変態として扱われてそう』

『あり得るw』

 

 否定はしない。人それぞれの好みだって思っておく。でも、なんと言うか……。

 

「自分のコスプレ衣装を持って帰ることになるとは思わなかった……」

 

『それなwww』

『リタちゃんのコスプレをする人は絶対いるだろうとは思ってたけど、リタちゃん自身がもらうことになるなんてw』

『ちいがすごく喜んでるよ。一緒に写真撮ろうね』

『真美ちゃんが案外図太くて好き』

 

 お世話になってるから、こういうことで喜んでくれるならいくらでもやるけど。ちょっと、複雑。

 他にもいろいろなものがあった。ちょっと興味深かったのは、私の魔法を科学で再現するためには、なんて本もある。開いてみると、文字がびっしり。図とかもあるけど、イラストとかじゃない。

 科学を魔法で再現するのは難しい。当然、魔法を科学で再現するのも難しいと思うけど……。でも、こういうのは面白いと思う。

 あと変わり種なのは……。CDというもの。音源の配布とかなんとか。

 

「私の声のまとめ……?」

「あ、いえ、その……。んふー、とかまとめてみたり……」

「…………」

 

『あかん腹痛いwww』

『いろんな物作られてるなあw』

『いわゆる声フェチに近いものがあるのかなw』

 

 私にはよく分からない。売っちゃだめ、と言うつもりもないから好きにしてほしい。

 だいたい見て回ったかな、と思っていたら、それが聞こえてきた。

 

「テメエぶっ殺すぞ……!」

 

 師匠の怒声。そっちに振り返れば、師匠が本を開いて怒っていた。

 




壁|w・)自分の同人誌を読む魔女の図。
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