異世界魔女の配信生活   作:龍翠

392 / 543
朱音さんと萌花さん

 ポスターを貼り付け終えてから、朱音さんがこっちに振り返った。

 

「あ、あの……」

「ん?」

「握手してください!」

「ん」

 

『アイドルを目の前にしたお前らを見てるようだ』

『実際そんなものなのでは』

 

 握手をしたがる人って結構いるけど、何がそんなにいいのかな。よく分からない。

 朱音さんと萌花さんと握手。にぎにぎと。二人とも、なんだかちょっと握手が長かった気がする。私は別にいいんだけどね。

 

「す、すごい……。朱音、すごくちっちゃくて柔らかかった……!」

「我が人生に一片の悔いなし」

「朱音!?」

 

『草』

『お前はどこの世紀末に生きてるんだw』

 

 こんなので喜んでくれるなら、もうちょっとぐらいやってあげてもいいんだけどね。

 それよりも。私は本が気になってる。確かちいちゃんも必ず見てるアニメだったはず。中を開いて確認してみたけど、ちゃんとした漫画だった。

 魔法少女の日常を描いたもの、みたいな感じで、悪くないと思う。魔法少女たちがキャンプに行く話で……。あれ、なんだか見覚えのあるキャラクターがまた増えて……。これ、キャンプのアニメのキャラのような……。

 

「ねえ、これって……」

「クロスオーバーってやつです!」

 

 えっと。なんだっけ。二つのお話をまぜまぜするんだっけ。確かそんな感じだったはず。

 

「朱音。リタちゃんが、私たちの本を手に取ってるよ……!」

「緊張で死にそう」

「いっそ死ね」

 

『辛辣www』

『さすがに相手するのが面倒になってきたかw』

 

 冗談だというのは見ていて分かるからいいけど。萌花さんはちょっと呆れているような顔だ。でも仲良しなのはよく分かる。

 とりあえずこの本を買っていこう。ちいちゃんと一緒に読むのもいいかもしれない。

 

「あ、あの! リタちゃん!」

「ん?」

「あとでコスプレブースに来ませんか……!?」

 

 コスプレブース。みんなでコスプレをする場所、かな? 私はコスプレなんてしてないけど……。でも、せっかく誘ってくれたんだし、行ってみるのもいいかも。

 

「いいよ」

「本当ですか!? じゃ、じゃあ……。お昼から交代する予定なので、その時に是非……!」

「ん」

 

『さらっとリタちゃんがコスプレブースに行くことが確定したぞ!』

『よっしゃよくやった!』

 

 なんだかコメントも盛り上がってる。今のところは見に行くだけ、だよ。

 朱音さんたちに手を振って、その場から離れる。次はどこに行こうかな……と思ったら、放送が流れてきた。これから一般の人の入場が始まるみたい。

 

『きたあああ!』

『祭りだあああ!』

『お前らまた後で会おう!』

 

 視聴者さんにも来てる人はいるんだね。みんなそれぞれ、見に行きたいサークルというのがあるらしくて、ここからはそっちに集中するらしい。

 私は……。邪魔にならないように、魔法で気配を薄くしておこう。師匠も多分そうするはず。

 そうして、少し待つと。たくさんの人が入ってきた。本当に、本当にたくさんの人だ。

 

「わあ……」

 

『相変わらずすっごい人だなこのイベント』

『有休取った会社の上司が見えた気がした』

『お前の上司さんとはいい酒が飲めそうだよ』

 

 みんな、決して走りはせず、でも早歩きで、目的地に向かっていってる。ちょっと移動するのも大変な状態になりそう。本当にすごいイベントなんだね。

 とりあえず……。私は飛びます。天井が高いし。

 

『あー!』

『姿を消して飛ぶのはずるいと思います!』

『ずるっこだー!』

 

「だって人が多いから……」

 

 楽しそうなみんなを邪魔したくはないから、ね。

 私はどうしよう。師匠の付き添いみたいな感じで来ただけだから、私自身は何かを見てみたいというものはないわけで。ただ、この様子を眺めているだけでもちょっと楽しいかもしれない。

 

『リタちゃんどこにいるのかなと思ったら姿消して空飛んでんのか』

『ちょっとぐらい見れるかなと思ったんだけど』

 

 私を見ても仕方ないと思う。自分の欲しいものを探しに行った方がいいよ。

 とりあえず……。カレーの方に行ってみよう。そのまま空を飛んでふわふわと。何故かある私のコーナーに向かって、カレーのところに……。

 

「うわあ……」

 

『すっごい行列』

『事前情報なんてなかったはずなのにw』

『みんなどれだけカレー試食したいねんw』

 

 何の行列かなと思ったら、カレーを食べるための行列だった。みんな、カレーが好きなのかな。視聴者さんが言うには、カレーの試食があるなんて誰も知らなかったみたいだけど。

 

「やっべ、思った以上にこれ美味しい」

「発売いつっすか!?」

「絶対買います!」

 

 そんな声が聞こえてくる。これならカレーも安心、かな? 会社の人も大変そうだけど、嬉しそうだ。

 

『カレー食ってきたぞ!』

『マジでか。どうだった?』

『あくまでリタちゃんの好みに合わせただけ、なんて言われてるけど、普通に美味しい。とりあえず販売されたら買うわ』

『人並びすぎでは?』

『並んでる間に聞いてみたけど、みんな視聴者だったぞ』

『あーw』

 

 つまり、私の配信を見て、この試食があるって知ったってことだね。むしろそれだけでこんなに人が集まったことがちょっと驚きだ。

 まだ余ってたらもうちょっと欲しいと思ったけど……。これはさすがにだめそうだね。ちょっとだけ、残念。

 カレーを食べた人はそのまま別のブースで本とかいろいろ買ってるみたい。もちろん、私の本も。別に嫌というわけじゃないけど、なんだか不思議な感じだ。

 




壁|w・)みんなで食べようリタのカレー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。