異世界魔女の配信生活   作:龍翠

397 / 542
私がたくさんいる

 いつかのコスプレイベントみたいに、たくさんの人がいろんな服を着てる。剣士さんだったり、魔法使いさんだったり、格闘家さんみたいだったり……。たくさんだ。

 そんな人たちが並んでポーズをとって、いろんな人にカメラで撮られてる。恥ずかしくないのかな?

 

「おや……。あまり騒ぎになりませんね」

 

 社長さんが周りを見回しながらそう言った。

 

「ん。軽く認識阻害をかけてる。多分私たちもただのコスプレをしてる人ぐらいに思われてる」

「なるほど……」

「本当に軽めのやつだからな。多分声をかけたりかけられたりしたら、すぐに意味がなくなる程度のものだよ」

 

 私のコスプレをしている人も一定数いるからこそ通用する程度の認識阻害、だね。あとは視聴者さんが声をかけてくるのを控えてくれているのもあると思う。

 さてと……。朱音さんはどこにいるのかな?

 

「それでは、私はこれで。楽しんでくださいね」

「ん。ありがとう」

「気をつけてなー」

 

 社長さんを見送ってから、朱音さんを探し始める。師匠は……ふらっとどこかに行った。好きなゲームキャラのコスプレでも探すのかな?

 のんびり歩いて探して……。そうして、見つけた。

 

「おー……。私がたくさんいる」

 

『私がたくさんいる、というパワーワード』

『ちっちゃいリタちゃんからおっきいリタちゃんまでいっぱいだ!』

『リタちゃんの定義が迷子になってるw』

 

 十人ぐらいが集まってポーズをとってる。杖を掲げたり、なんだか幸せそうな表情をしてみたり……。いや、なにあれ。

 

『多分美味しいものを食べた時のお顔』

『リタちゃんと言えばご飯だからな!』

『ぶっちゃけ魔法よりもご飯だからな!』

 

 なんだろう。否定はできないんだけど、その言い方は認めたくない気もする。

 また杖を掲げるポーズに……。こそっと、まざろう。

 

『お』

『やるのか!? やるんだな!? 今ここで!』

『謎に緊迫感のあるセリフを出してくるのはやめるんだ』

 

 端っこは、朱音さん。その朱音さんの隣に立って、同じポーズをとってみた。どうかな?

 普通に撮影されて、みんなが撮影したものを見て……。あ、気づいたみたい。ざわざわと騒がしくなってきてる。朱音さんたちは戸惑っているみたいだけど……。

 

「お、おい! 一人増えてる!」

「ほんとだ! いやまて、これ……!」

 

 撮ってる誰かがそう言ったところで、朱音さんと目が合った。朱音さんも私に気づいたみたい。目を瞬かせて、次にまん丸に見開いて。

 

「リタちゃん!」

 

 そう、言った。認識阻害、解けたみたい。

 

「ほんとだリタちゃんがいる!」

「しれっと混ざってる……だと!?」

「知らない間にリタちゃん撮ってた……嬉しい……」

 

『よっしゃあ俺も撮れたぞ!』

『配信見ながら多分あの辺と思って撮りました!』

 

 写真ぐらいで大げさだと思う。

 コスプレしていた人たちもちょっと騒がしくなってたけど、とりあえず撮影続行するみたい。よく分からないけど、好きだね。

 ちなみに私は真ん中になった。朱音さんは、私と約束を取り付けたという功労者とかなんとかで、隣。よく分からないけど、私にこだわりはないから任せる。

 そこからまた写真撮影。たまに隣の人が入れ替わったりして、何枚か撮っていく。

 しばらく撮った後に、一度終わり。誰かがそう言うと、撮影していた人はみんな散らばっていった。ちらほらとまた撮りに来る人はいるけど、さっきみたいな集団にはならない。

 なんだか統率が取れているというか……。すごいね。

 

「リタちゃん、来てくれてありがとう!」

 

 朱音さんを皮切りに、みんながお礼を言ってくる。私はちょっと見に来ただけなんだけどね。

 

「ん……。これでよかった?」

「うん! 十分! それじゃあ、リタちゃん!」

「ん?」

「コスプレ、しよっか!」

「…………。ん?」

 

 なんだか……変なことを言われた気がする。

 

『コスプレ!? リタちゃんがコスプレ!?』

『普段ずっとコスプレしているような子がさらにコスプレ!?』

『リタちゃんの普段着をコスプレ扱いはやめるんだ』

 

 んー……。どうしよう。正直、自分がやることにあまり興味はないけど……。朱音さんは、なんだか期待に目を輝かせてる。

 まあ……。コスプレぐらい、いいかな?

 

「少しだけなら」

 

 私がそう言うと、朱音さんは目を瞠って、そして笑顔になった。この反応、私が引き受けるとは思ってなかったのかもしれない。まあ言ったことをひっくり返したりはしないけど。

 

『マジでコスプレすんの!?』

『剣士になろうぜ剣士!』

『テイルスの忍者で頼む』

 

 いや、たくさんのコメントに紛れてるけど、師匠までリクエストみたいなことしないでほしい。そもそも私は何も持ってないから、他の人に任せるしかないし。

 朱音さんに連れられて、更衣室へ。なんだか登録とかが必要みたいでお金がいるんだけど……。周りの人が出してくれた。それはありがたいけど、そんなに高くないみたいだからみんなで出そうとしないでほしい。みんな五百円出したらいくらになるんだろうね。

 光球は更衣室の外で待機させておいて、更衣室に入る。そして朱音さんが叫んだ。

 

「リタちゃんが! コスプレします! 衣装何かありますかー!」

 

 いや、そんな都合良く私のサイズの衣装を持ってるわけが……。

 

「待ってた!」

「こういうイベントだからね! 期待してた!」

「多分これぐらいのサイズかなって作ってるやつあるよー!」

 

 あるんだ……。

 ばたばたと、みんなが衣装を取り出してくる。何かのアニメで見た白い剣士さんの服だったり、かけっこをする人の服だったり……。いろいろあるみたい。

 

「さあさあリタちゃん選んで!」

「選んでくれた衣装を作った人と、できればツーショットしてあげてほしいなって……」

「それぐらいならいいけど」

 

 歓声が上がった。何が嬉しいのか、ちょっとよく分からない。

 




壁|w・)魔女がたくさん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。