異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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お菓子は大事

 王様に案内されて、小さいけどちょっと豪華な部屋へ。なんだか高そうな家具とかいっぱい置いてある。あと、クッキーも出してくれた。お菓子。

 

「へ、陛下! ただの冒険者に貴族用の部屋を用意するなど……!」

「バカか? バカなのかお前は? 相手は魔女だぞ? 相手の機嫌を取って損になることはないだろうが」

「ですが……!」

 

 なんだか外でもめてるけど、そういうのは私がいないところでやってほしい。

 ふかふかのソファに座って、クッキーを食べてみる。んー……。

 

「まあまあ……?」

 

『見た目美味しそうなクッキーなのに』

『サクサクしてそう』

『ていうかあの王様、わりといい王様ではなかろうか』

『クッキーまで用意してくれたしな!』

 

 悪い王様ではないと思う。クッキー用意してくれたから。お菓子は大事、だよね。

 ちなみにこのクッキーは、甘さがかなり控えめ。お砂糖とかが少ないのかも。すぐ隣の国と仲が良くないなら、仕方ない、のかな? 戦争ばっかりしていたら、商人さんもあまり来れなくなると思うし。

 それでも、クッキーはクッキー。食べる。

 クッキーを食べながら部屋の外の様子をうかがってるけど、王様が別の部屋に向かったみたい。勇者に確認を取るとか言っていたから、会話を聞かせてもらおう。

 

「王様側の声、流すよ。聞こえなかったら言ってね」

 

『盗聴でもすんの?』

『そういえばあったな、盗聴の魔法』

『盗聴は悪い文明!』

 

「確認のためだから仕方ないということで」

 

 いきなり乗り込んで確認、とかよりはましだと思うから。

 それじゃあ、魔法を調整して、と……。

 

「勇者殿、失礼するぞ」

 

 ん。王様の声が聞こえてきた。

 

『ついに勇者登場か』

『おらわくわくしてきたぞ!』

『どんなチートもらってんのかなあ!』

『召喚されただけでチートってもらえんのかな』

 

 チート。日本の漫画でもあるよね。多分だけどそんなものはもらえてないと思う。精霊様が召喚したなら何かもらえるかもしれないけど、あくまでここの人たちが召喚しただけだから。

 

「お、王様……!? な、なに……?」

 

 王様の声の次に聞こえてきたのは、若い男の人の声。怯えているのが声の感じで分かる。

 

「戦う決意はできたかな?」

「だから……僕は戦い方なんて分からないって……!」

「ふむ……。確かに、直接戦うのは辛いかもしれないな。だが、安心してほしい。そんな勇者殿に、最適な方が偶然この国を訪ねてきた。まさに精霊様のご意志だ」

「さ、最適な……?」

「そう、魔女殿だ。魔法を教わるといい。きっとその才能があるはずだ」

「ま、魔女……!?」

 

 んー……。とりあえず……。とりあえず、ね。精霊様がどうして私に頼んできたのか、まずは分かってしまった。

 

「これ、みんなには日本語に聞こえてる、よね?」

 

『まあこの配信魔法って翻訳かかるんだろ?』

『普通に日本語に聞こえてます』

『なんだよ、勇者は男かよ。ケッ』

『女の子な勇者を期待してました』

 

 変な欲望は今は後回しだ。いや、後で聞いてあげるつもりもないんだけど。

 

「召喚魔法にも多分翻訳の何かしらがあると思う。勇者の声を直接聞いたら、この世界の言葉になってるはず」

 

 小精霊たちが頑張ってると思う。でも、それはあくまで、直接声を聞いてる人にだけの効果。

 

「つまり、私にはこの勇者の言葉がそのまま勇者の世界の言葉で聞こえてる」

 

『ほほう』

『つまり、どういうことだってばよ?』

『あ、待って察した。精霊様が言ってたもんな、日本が関わってるかもって』

 

 うん。つまり、そういうこと。私に聞こえてる勇者の言葉。それは。

 

「日本語、だね」

 

『うわあ……』

『ですよねー!』

『日本からの勇者召喚、王道ですねえ!』

『だからその王道は俺らの目の前でやってくれないと意味がないって言ってんだろうがバカ!』

『召喚された人からすればそんな問題じゃないだろうけどな』

 

 いきなり見知らぬ場所に気づいたらいたって感じだろうからね。不安でいっぱいだったと思う。普通の日本人なら戦うことなんてほとんどできないだろうし、声が若いからきっと学生さんだと思う。なおさらだめだ。

 このまま会えたら一番手っ取り早いけど……。

 

「魔女殿に会いたくはない、と……」

「ぜ、絶対嫌だ! 魔女だなんて……何をされるか……!」

「むう……。仕方あるまい。しかし、我らも無駄飯ぐらいをいつまでも置いておくわけにはいかんぞ」

「お、おまえたちが……勝手に召喚したくせに……!」

「それを言われると辛いんだがなあ……。いや本当に、父が申し訳ない……」

 

 勇者に私と会う意思はあまりないみたい。仕方ない、よね。魔女だなんて、怪しさしかないから。

 

『リタちゃんと会いたくないとか助ける価値なし』

『いや、さすがにいきなり魔女に会えって言われたらびびるだろ』

『優しいかもわからんしな』

『後からリタちゃんだって知ったら後悔しそうw』

 

 伝えたら、会ってくれるのかな。

 あとは、あまり切羽詰まった状況でもなさそう、だね。これが今すぐにでも戦いにかり出されるっていう状況なら、もういっそ無理矢理連れ出すのも仕方ないと思ったけど……。

 どうやら王様にそういうつもりはないみたい。促しはするけど、強制はしない。王様のお父さんが召喚をしたみたいで、今の王様はそれを申し訳なく思ってるみたい、だね。

 これ、もしかしたら王様に伝えたら、すぐに解決するかも。それだったら、楽でとってもいい。戻ってきたら言ってみようかな。

 でも視聴者さんに聞いてみたら、こっそりやろうと言われてしまった。

 

『いやだってリタちゃん、それはつまり、盗聴してましたって自白するようなもんじゃん?』

『いくら優しい王様でも普通に怒りそう』

 

 それは……。うん。言われてみると、そうだね。いい気持ちにはならないはずだ。じゃあやっぱり、こっそり会う方針にしよう。夜にでも会いに行こうかな。

 あとは王様に挨拶してから、一度帰ろうと思う。さすがに何も言わずに帰ったら困らせてしまうと思うから。

 




壁|w・)お菓子は何よりも大事。お菓子が全てを解決する。お菓子。
シッショ「…………(無言で頭を抱える)」
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