異世界魔女の配信生活   作:龍翠

408 / 543
時間稼ぎ

 そうして少し待つと、王様が戻ってきた。

 

「待たせたな、魔女殿。そして申し訳ない。どうやら勇者殿は魔女殿と会いたくないと……」

「ん。仕方ない」

「お詫びというわけではないが……。魔女殿、本日の宿は決まっているかな?」

「んーん」

「では城の一室を用意させよう。もちろん、夕食も」

「ごはん……」

 

 お城のご飯を食べられる、てことだよね。つまり、美味しいご飯。この国の豪華なご飯を食べられるかもしれない。それは是非とも食べてみたい。

 正直泊まる必要性はないけど……。でも、別に本当に泊まらなくても、夜になったら森に帰ればいいだけとも思う。転移ですぐに帰れるから。

 

「お願いする」

 

 私がそう言うと、王様は分かりやすいぐらいに安堵のため息をついた。どうしたんだろうね。

 

『いや、あのねリタちゃん』

『王様からすれば、魔女様の要望を叶えられなくてどうしよう、とかそんな感じだったんじゃないかな』

『Sランクって一人で街の一つぐらい破壊できそうな奴らばっかだろうし』

 

 それは……そうかもしれない。ミレーユさんもアリシアさんも、本気を出せば簡単だと思う。やらないだけで。

 

「では、部屋に案内しよう」

「ここでもいいよ?」

「いや……。魔女殿、ベッドがないのだが……」

「…………。そうだった」

 

『本人実際に泊まるつもりがないからw』

『王様からのマジかよこいつ、みたいな視線がw』

『下手に口を開くとぼろしか出ない魔女』

 

 余計なことは言わないでほしい。あまり否定できないから。

 改めて案内された部屋は、さっきよりもずっと広い部屋。豪華な調度品にふかふかのベッド。多分、とても高いやつだと思う。

 

「では、夕食の時間にお呼びする」

 

 そう言って、王様は部屋から出て行った。

 あとはご飯と夜を待つだけ、だけど……。

 

「精霊様。聞きたいことがある」

 

 そう言うと、すぐに精霊様のコメントが流れてきた。

 

『はい。どうぞ』

 

「どうしてあんな魔法陣があったの?」

 

 召喚の魔法陣。いろいろと残念な部分が多すぎて魔力効率がすさまじく悪くて、私でも使えないと思う。それでも、発動さえできればちゃんと召喚できる魔法陣だった。精霊たちがそんな魔法陣に気づかないはずがないと思う。意図的に見逃した、としか。

 つまり……何かしらの理由があったんだと思う。それを許さないといけない理由が。そしてこの国ではっきりと効果が分かっている以上は、以前にも一度使われたはず。だから、精霊たちは知ってるはずだよね。

 そういうのを話してみたけど……。精霊様からの反応がない。どうしたんだろう。

 

「精霊様?」

 

『精霊様が……沈黙した……?』

『どうしたんや精霊様!』

『おいシッショ! 精霊様に何かあったんか!』

『どう言い訳しようか右往左往してる精霊様がおもしろいから待っててくれ』

『草』

『おいwww』

 

 い、言い訳なんだ……。え、まって、つまり、別にそんな大した理由じゃない、ということ……?

 師匠が言う通りに待っていると、精霊様のコメントが流れてきた。

 

『えー……。召喚された日本人を保護してください。その、説明はですね、一度で終わらせたいので……。その時に説明しますね! はい! そうしましょう!』

 

 ん……。これは、私でも分かるよ。

 

「つまり時間稼ぎがしたいと」

 

『はい』

『素直かwww』

『普通に認めるのは草なんだ』

『もうそれたいした理由がないって自白してるようなものやんけw』

 

 私はどっちでもいいんだけどね……。精霊様がそうしたいなら、私はそれに従うから。

 でもこれ、大丈夫かな。この配信、日本の偉い人も見てるんだよね。きっと精霊様に説明を求めるとか、そういうのが出てくると思う。

 今回のことは完全にこっちの世界が悪いから、いつもみたいに突っぱねたりはさすがにだめかなって。お金とかいっぱいもらっちゃってるから、それぐらいはしないといけないと思う。

 でも今はいいかな。とりあえず、ちゃんと送り返すことを先に考えよう。とりあえず。

 

「魔女殿、夕食の準備ができました」

 

 お城の! ご飯だ!

 

「ん。すぐ行く」

 

『お城のご飯だー!』

『勇者(笑)は放置してていいんかと思っちゃうけど……』

『雑に扱われてるわけじゃなさそうやし、別にええやろ』

『ていうか(笑)をつけてやるなよw』

 

 一応被害者だから、さすがにかわいそうだと私も思う。ちょっとだけ。

 それよりもご飯。お城のご飯、楽しみだね。

 

 

 

 結論を言うと、微妙だった。量が多いだけ、みたいな感じ。大きなお肉の塊とか……。いっぱい料理を出して、余ったら使用人たちが食べる、みたいな感じらしい。

 私は王様と一緒に食べたから温かいご飯だったけど、後から食べる人は量が少なくてかわいそうだと思う。さすがに私も食べる量を自重しちゃったし。

 味は、薄味。多分香辛料の類いが少ないんだと思う。交易があまりないみたいだから仕方ないのかな?

 

「物足りない」

 

『せいぜい三人前食べたぐらいだもんな』

『十分多いと思うんですがそれは』

『いっぱい食べる時はいっぱい食べる子だから……』

 

 勇者さんを迎えに行ったら、一緒にご飯を食べようかな。きっとその人も、味が薄くて物足りないと思ってるだろうから。

 それじゃあ……夜までちょっと寝よう。

 

「ふかふかベッド」

 

『ふかふかやな』

『お昼寝したら気持ちよさそう』

『つまり、そういうことですね!』

 

「ん。夜までお昼寝」

 

 みんなが寝てから、迎えに行かないと、ね。

 




壁|w・)(精霊様が)時間稼ぎ。
マジで大した理由じゃないので今回ばかりは負い目を感じてる精霊様です。シッショの後だしね。

次回は、勇者(笑)視点です。
なお、更新日は4月3日になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。