異世界魔女の配信生活   作:龍翠

412 / 543
みんなでやればこわくない

「いや、あの……。そ、そう! ここで僕がひどいことをしてしまうと、日本のみんなに知られてしまう! それはまずいんじゃないかな!」

「分かった。やってる間は配信を止める」

「逃げ道が塞がれていく!?」

 

『もう逃げられないぞ(はぁと)』

『また懐かしいものを……』

『逃げ道が塞がれてるのは先王なのか勇者なのかw』

 

 コウキさんが頭を抱えてしまってる。あまりひどいことはしたくないらしい。優しいと思う。その優しさは大事にしてほしい。

 でも今は気にしなくていいよ。ほら、王様も今か今かとわくわくしながら待ってるから。

 

『王様がうきうきしてるのがなんとも言えねえw』

『これでやっぱりやめるは許されざるですよ』

『覚悟を決めろ、勇者ァ!』

 

「うう……」

 

 コウキさんは喉を鳴らして、先王に向き直った。こんなに騒いでるのにすやすや寝てるけど、音が聞こえないようにしてるだけだから、いくら騒いでも大丈夫。

 んー……。もしかして、だけど。

 

「血を見るのは嫌?」

「当たり前なんだけど!?」

「ふむ……。勇者殿は平和な場所で暮らしていると言っていたな……。ならば! 人を斬ることなんて今回だけの経験ではないか? 貴重だ!」

「そんな貴重いるかバカ!」

 

『王様こんなおもしろい人だったのかw』

『貴重だ、じゃねえんだよw』

『まあコウキの気持ちも分からんでもないかな』

 

 日本の人はみんな優しいね。私なら、遠慮なくやるのに。

 でも、そっか。血は見たくない。それなら確かに、剣とかは嫌だよね。仕方ない。

 

「じゃあ、コウキさん」

「う、うん……」

「先王に魔法をかける。ちょっと強めの結界。ただし痛みはしっかり伝わる結界。どう?」

「拷問用の結界かな?」

 

『優しさに見えてえげつなさが増してる気がする』

『それつまり、死んで楽になることは許されないってことで』

『拷問の魔女かな?』

 

 拷問用じゃないから。でもとにかく、これで安心できるよね。

 

「まあ、それなら……」

 

『いいんかいw』

『何もせずに帰ることは雰囲気的に許されそうにないしなw』

 

 それじゃあ、先王に魔法をかけて、と……。あとは、道具。

 

「王様」

「任されよ」

 

 王様が頷いて部屋を出て行く。そうして、十分ほどして戻ってきた。王様の他に、何人かメイドとか執事を連れていて、剣とかの武器を持ってる。何故かみんな笑顔だ。

 

「え……。これ、捕まるやつでは……」

「安心してほしい、勇者殿。鬱憤がたまっているのはみんな同じだ」

「ええ……」

 

 よっぽど、ろくでもない王様だったってことだね。こうして、みんなが協力してしまうほどに。じゃあやっぱり遠慮はいらないということだ。

 

「じゃあ、どうぞ」

「う、うん……」

 

 まずは……目覚めの一撃。

 

「おらあ!」

「ぐふっ……」

 

 先王が目を覚ました。がばりと起き上がって、コウキさんを睨む。

 

「きさま……! 勇者! どういうつもりだ!」

「コウキさん、弱い」

「弱いな、勇者殿」

「う、うるさいな!?」

 

『これはひどいw』

『日本人はそっちの人と比べて非力なんや! 見逃して!』

 

 分かってるつもりだったけど、もうちょっと鍛えた方がいいと思う。いや、私も人のことは言えないけど、私には魔法があるから。

 でもこのままじゃ逃げられそうだし、捕まえておこう。ぎゅっと。

 

「うおお!? なんだこれは!? おい貴様ら! わしを助けろ!」

 

 影の縄で手足を縛られた王様がその場に転がった。何かわめいているけど、気にしない。

 

「あとは好きにしてね。さっきも言ったけど、攻撃は届かない。痛いだけ」

「う、うん……」

 

 コウキさんは試しにとばかりに思い切り王様を蹴った。躊躇していたわりには力いっぱい蹴ったと思う。

 

「ぐお!?」

 

 ん……。ちゃんと魔法は発動してる。安心だ。コウキさんにもなんとなく分かったのか、無言で王様が持ってる剣を受け取った。

 

「クソジジイが! よくもさらいやがって!」

 

 そんなことを言いながら、剣でべしべし叩いてる。ちなみに結界があるから斬れないけど、痛みは斬ったのと同じ痛みになってるはず。

 

「魔女殿」

「ん?」

「これは、我らが参加しても……?」

「どうぞ」

 

 コウキさんの攻撃だけ防ぐ、というわけでもないからね。この際だから、みんなで参加してくれていいと思う。

 そうして、なんだかいつの間にかたくさんの人が集まってきて、先王をこれでもかというほど痛めつけていた。よほど悪い王様だったみたい。途中から護衛のはずの兵士さんまで集まってたから……。

 

「うわあ……」

 

 コウキさんがどん引きして戻ってきたぐらいだからね。

 

『これはひどい』

『ここまで憎まれてるって、よほどでは……?』

『よく今までクーデターとか起きなかったな』

 

 それだけうまくやってた、ということかもしれない。近くに魔道具も置いてあるから、それで身を守っていたとか。

 枕元に置いてある魔道具は、二つ。結界と、攻撃用のもの。もちろん無効化してあるから問題はない。

 それにしても……。これはしばらく、終わらないかな?

 

「王様。私はコウキさんを送ってくるから。魔法は、朝日が昇るまでだよ」

「了解した! おらあ!」

「あわわわわ……」

 

 怯えてるコウキさんを連れて、私はその場から転移した。きっと自業自得なんだと思うから、コウキさんは気にしなくていいいよ。

 




壁|w・)周りの勢いに逆に冷静になった勇者(笑)でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。